減価償却方法はなぜ変更される?定率法から定額法への変更理由と開示事例

「大型設備が稼働して落ち着いてきたので、減価償却を定率法から定額法に変えたい」

——経理でこの話が出るとき、たいてい同時にもうひとつの論点がついてきます。多くの場合、変更が当期の利益を増やす方向に働くということです。だからこそ「利益操作だと見られないか」「監査人にどう説明するか」という問いが避けられません。

減価償却方法の変更には、他の会計方針の変更と決定的に違う特徴が2つあります。

ひとつは遡及適用をしないこと。もうひとつは、開示を探索した範囲では変更の方向がほぼ一方通行で、影響額の記載もほとんどが増益方向だったことです。この2つが重なるため、「正当な理由」の説明はむしろ重くなります。

この記事では、実在する上場会社の開示原文から、なぜ定率法から定額法ばかりなのか・何が契機になるのか・「正当な理由」として何を書いているのか・増益をどう扱うのかを整理し、税務手続(変更承認申請と「相当期間3年」)まで扱います。

なお本記事では、TaxJudge「会計変更ナビ」で関連する開示を横断的に探索し、掲載事例は各社の開示内容を個別に確認したうえで整理しています。ナビの分類・集計は事例探索を目的としたもので、件数や分類は開示の記載方法等により変動する可能性があります。

目次

結論

遡及しないが、説明は軽くならない

  • 「見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」に当たり、遡及適用せず将来に向かって適用する
    過去の財務諸表は作り直しません。
  • ただし「遡及しなくてよい=説明が軽くてよい」ではない
    会計方針の変更である以上、正当な理由は必要です。
    過去に遡って処理しないぶん、変更の影響は当期以降の損益や資産額に反映されます。
  • 開示を探索した範囲では、変更の方向は一方通行だった
    確認できた事例はいずれも定率法から定額法で、逆方向は見当たりません。
  • 正当な理由の核心は、多くの事例で「今後は安定的に稼働する」という判断にある
    設備投資や中期経営計画の策定といった契機だけでは足りません。
    契機を受けて使用実態を再検討し、今後は安定的に稼働すると見込まれるため均等配分が資産の使用実態をより適切に反映する、という説明までつながることが重要です。
  • 会計と税務は別立て
    税務上は変更承認申請が必要で、現によっている償却方法を採用してから3年を経過していない場合は、合併や分割に伴うものである等の特別な理由があるときを除き、原則として承認されません(法人税基本通達7-2-4)。

まず区分の確認:なぜ遡及適用しないのか

減価償却方法は、どの方法を選ぶかという意味では会計方針です。しかし、どの方法が適切かという判断は、その資産が将来どう使われ、経済的便益がどのように費消されていくかという見積りと不可分です。設備が今後安定して稼働するのか、それとも初期に集中的に使い込まれるのか——これは将来の見通しの問題であり、方針の問題と切り分けられません。

そのため企業会計基準第24号では、減価償却方法の変更は「会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」として扱われ、見積りの変更と同様に、遡及適用せず将来に向かって適用します。通常の会計方針の変更が原則遡及適用であるのとは扱いが異なります(3区分の切り分けはハブ記事で扱っています)。

実際の開示でも、注記の見出しはほぼ例外なく「(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更)(有形固定資産の減価償却方法の変更)」という形です。

ここで注意したいのは、遡及しないことと、理由を説明しなくてよいことは別だという点です。区別が困難であっても、これは会計方針の変更であり、正当な理由の説明義務がなくなるわけではありません。むしろ次に見るように、この類型には説明を求められやすい構造があります。

開示は一方通行だった:定率法から定額法へ

会計変更ナビで減価償却方法の変更を横断的に探索すると、ひとつはっきりした特徴が浮かびます。確認できた事例は、いずれも定率法から定額法への変更でした。業種も規模も決算期もばらばらですが、向きだけが揃っています。

これは基幹システムの刷新を契機とした会計方針変更と比べると際立ちます。棚卸資産の評価方法の変更では、移動平均法から総平均法へ、最終仕入原価法から移動平均法へ——と方向は各社の実態次第でばらばらでした。減価償却では、そうなっていません。

なぜ向きが揃うのか

理由は説明の構造にあります。定率法から定額法への変更は、「今後は設備が安定的に稼働する」という一本の説明で成立します。設備投資が一巡した、中計で長期安定稼働の方針を定めた、技術的・経済的な陳腐化が見られない——いずれも「安定」に接続でき、だから均等配分が実態に合う、と結論できます。

逆方向は、より説明が難しくなります。

定額法から定率法への変更を正当化するには、たとえば今後は資産の使用や収益への貢献が初期に相対的に大きくなるなど、前倒しの費用配分が使用実態をより適切に反映する理由を説明する必要があります。その場合、設備の稼働計画や事業見通しとの整合も確認されやすくなります。会計変更ナビで探索した範囲では類例も乏しく、説明を個別に組み立てる必要性が高いと考えられます。

何が契機になっているのか(契機の型)

向きは揃っていても、そこに至る契機は多様です。開示原文の「〜を契機として」という記述を読み比べると、いくつかの型に整理できます。

契機の型開示に現れる具体的な事実実際の開示例
A 設備投資・新工場・製造ライン大規模な設備投資の実行、新工場の建設・稼働、製造ラインの増設湖池屋(2021年6月期)/太平洋セメント(2025年3月期)/ローム(2026年3月期)
B 中期経営計画の策定・見直し新しい中期経営計画で設備投資方針・生産体制方針を定めたレカム(2021年9月期)/中部電力(2023年3月期)/阿波製紙(2025年3月期)
C 事業構造・ビジネスモデルの変化収益構造の転換、市場構造の変化、事業の主軸のシフトさいか屋(2023年8月期)/インテリジェント ウェイブ(2025年6月期)
D 特定資産の稼働開始・取得大規模施設のオープン、新スタジオ・新型機器の稼働開始オリエンタルランド(2022年3月期)
E 合併・グループ再編・処理統一吸収合併・吸収分割、生産拠点の集約、グループ会計処理の統一ヤマトホールディングス(2022年3月期)/品川リフラ(2025年3月期)/フジ(2025年2月期)
F 保有形態の変更リース調達から自社購入への方針変更、資産の取得形態の変化ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(2022年6月期)

※開示の傾向を事例探索の観点から整理したものです。ひとつの事例が複数の型にまたがることもあります。

型A・B:設備投資と経営計画は、しばしばセットで現れる

よく見られるのが、設備投資と経営計画を組み合わせた説明です。

湖池屋は2021年6月期に、

「高付加価値商品及び長期安定的な収益獲得を見込める商品を中心とした商品戦略のもと、大規模な設備投資の実行を契機として減価償却方法を再検討いたしました。」

とし、設備は安定的に稼働しているため均等配分がより適切と判断したと説明します。

阿波製紙は2025年3月期、

「新工場の建設と新たな中期経営計画の策定を契機に、資産の使用実態に鑑み償却方法を見直した」

と、AとBを明示的に併記しています。

型C・型F:設備投資をしていなくても契機になる

新しい設備を入れていなくても契機は生まれます。

さいか屋は2023年8月期、

「従来、売上の大半を占めていた百貨店事業から、より収益が安定したテナント業へのウェイトを高めていくに従って、有形固定資産の使用状況が、より長期的かつ安定的に推移すると見込まれるため」

として定額法へ変更しました。同じ建物でも、自ら売り場を回すのかテナントに貸すのかで使われ方が変わる、という説明です。

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズは2022年6月期、

「これまでリースで調達していた有形固定資産を、原則として自社での購入とする方針に変更することを契機に有形固定資産の使用実態を再検討した」

として変更しており、調達方法の変更も契機になります。

正当な理由の核心:「安定的に稼働」という一語

契機は多様でも、変更理由の説明は多くの事例で、次の「契機 → 再検討 → 判断」の3段構成として整理できます。これに、変更による影響額の開示が続くのが典型的な形です。

構成要素太平洋セメント(2025年3月期)の記載書くときのポイント
①契機(事実)26中期経営計画において、工場及び鉱山の強靭化を中心に大規模な設備投資を行い、長期安定的な生産体制の構築を目指しておりますいつ・何が変わったのかを事実ベースで。契機はここまで
②再検討(プロセス)これを契機として有形固定資産の減価償却方法を検討した結果契機を受けて何を検討したのかを明示。「検討した」の一言が要る
③判断(正当な理由の本体)今後生産設備が長期にわたり安定的に稼働することが見込まれるため、従来の定率法から均等に費用配分を行う定額法に変更することが、有形固定資産の使用実態をより適切に反映できると判断したことによるものでありますここが本体

「安定稼働の見込み」→「だから均等配分が実態に合う」の因果を書く
④影響額当連結会計年度の営業利益は7,464百万円、経常利益及び税金等調整前当期純利益は7,470百万円それぞれ増加しております軽微とする場合もその旨を記載

③の語彙もほぼ共通しています。

  • 「長期的に安定的な稼働が見込まれる」
  • 「急激な技術的・経済的な陳腐化は見られない」
  • 「耐用年数にわたり均等に費用配分する」
  • 「使用実態をより適切に反映する」

——この4つが、繰り返し現れる部品です。

中部電力の2023年3月期の開示は、この型を最も丁寧に展開した例です。電力需要が今後安定的に推移する見込みであること、電力システム改革により効率的・安定的な事業運営が求められていること——と外部環境を積み上げ、中期経営計画の方針を示したうえで、

「以上を踏まえると,今後は,電気事業を中心に設備の安定的な使用が見込まれることから,有形固定資産の減価償却は,耐用年数にわたり均等に費用配分を行う定額法が,経済的便益の費消パターンをより適切に反映すると判断した。」

と結んでいます。

ここで注目したいのが「経済的便益の費消パターン」という表現です。

開示実務では、減価償却方法の変更を「資産の使用実態」や「経済的便益の費消パターン」がどう変わったかという形で説明する事例が多く見られます。定率法から定額法への変更であれば、従来よりも長期・安定的な使用が見込まれ、均等な費用配分のほうが実態を適切に反映するようになった、という説明です。

裏を返せば、変更の説明とは、この見立てが変わった理由を述べることにほかなりません。「設備投資をしたから」は、それ自体では見立ての変化を説明していないのです。

増益になるからこそ、問われること

ここからが、この類型に固有の難所です。定率法から定額法への変更は、一般に取得後まもない資産では償却費が減り、利益が増える方向に働きます。定率法は初期の償却費が大きく、期間の経過とともに小さくなるためです。

開示を探索した範囲でも、影響額を記載している事例のほとんどが増益方向でした。

会社(決算期)開示された契機開示された影響額
中部電力(2023年3月期)事業環境の変化・中期経営計画営業利益29,677百万円増加(経常利益・税金等調整前当期純利益は29,509百万円増加)
ローム(2026年3月期)民生向けから車載向けへのシフトに伴う大規模な設備投資減価償却費17,125百万円減少、営業利益・経常利益15,554百万円増加
ヤマトホールディングス(2022年3月期)グループ7社の吸収合併・吸収分割営業利益13,075百万円増加(※減価償却方法の変更と耐用年数の変更の合算)
太平洋セメント(2025年3月期)26中期経営計画に基づく大規模な設備投資営業利益7,464百万円増加
富士製薬工業(2021年9月期)富山工場の設備投資影響は軽微
松尾電機(2022年3月期)中期経営計画・生産体制の再構築営業利益・経常利益がそれぞれ8,310千円「減少」

「変更したら増えました」では、順序が逆に見える

この構造が意味するのは、減価償却方法の変更は、放っておくと「増益のための変更」に見えてしまうということです。しかも遡及適用しないため、変更の影響は過年度に遡って処理されず、当期以降の損益や資産額に反映されます。監査人が正当な理由の検討に時間をかけるのは、これが理由です。

監査人が自発的な会計方針の変更について正当な理由を検討する際は、おおむね次の視点が用いられます(日本公認会計士協会「正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い」第8項をもとに整理)。

視点内容
経営環境の変化企業の事業内容、または企業内外の経営環境の変化に対応した変更か
より適切な反映変更後の方法が、会計事象等を財務諸表により適切に反映するか
会計処理の妥当性変更後の会計方針が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に照らして妥当か
利益操作の有無利益その他の財務情報を不当に操作する目的ではないか
変更の時期なぜその事業年度に変更するのか。変更の適時性があるか

「契機」は、このうち第1の視点(経営環境の変化)に対応します。契機は正当な理由の構成要素ではあるが、それだけでは足りない——だから、契機だけで説明を終えず、「変更後の方法が実態をより適切に反映する」という判断までつなげることが重要になります。

実務上重要なのは、「契機 → 再検討 → 判断」という順序と、その判断を裏付ける実態を証拠で示すことです。設備投資の意思決定、稼働実績のデータ、中計の策定時期、使用実態の調査結果——これらが変更の意思決定より先に存在していることを、日付の入った社内資料で示せるかどうか。

本記事で確認した主要な開示では、この順序で説明を組み立てているものが多く見られます。単なる様式ではなく、この順序自体が変更理由の説明として重要だからです。

反例:定額法にしたのに減益になった松尾電機

「定率法から定額法=増益」は、しかし必然ではありません。

松尾電機の2022年3月期は、

「従来の方法と比べて、当事業年度の営業利益、経常利益はそれぞれ8,310千円減少し、税引前当期純損失は8,310千円悪化しております。」

と開示しています。

この開示から、減益となった具体的な原因の内訳までは分かりません。ただし一般論として、定率法は初期の償却負担が相対的に大きく、その後は低下していきます。そのため、保有資産の取得時期や年齢構成、変更後の償却計算によっては、定額法への変更で当期の償却費がかえって増えることがあります。

増益か減益かは一律に決まらず、保有資産の構成を反映した事前試算が欠かせない——「定額法にすれば利益が増えるはずだ」という前提で経営に説明すると、決算で逆の結果が出かねません。

もうひとつの落とし穴:償却費の減少額は、利益の増加額と一致しない

ロームの2026年3月期の開示は、この点をはっきり示しています。

「この減価償却方法の変更により、従来の方法に比べて、当連結会計年度の減価償却費は17,125百万円減少し、営業利益及び経常利益は15,554百万円増加し、税金等調整前当期純損失は15,554百万円減少しております。」

——償却費の減少は17,125百万円ですが、営業利益の増加は15,554百万円。差額が1,571百万円あります。この差額の具体的な内訳は、当該注記だけからは特定できません。

ただし一般論として、製造業では生産設備の減価償却費は製造原価に含まれます。製造原価の一部が期末の棚卸資産として貸借対照表に残れば、減価償却費の減少額がすべて当期の売上原価の減少として現れるわけではありません。つまり「償却費がいくら減るか」と「当期利益がいくら増えるか」は一致しないことがあり、試算で前者だけを計算すると損益への影響を過大に見積もるおそれがあります。

耐用年数の変更を併せて行う場合は、切り分けを意識する

ヤマトホールディングスの2022年3月期は、グループ7社の吸収合併・吸収分割による「Oneヤマト」体制への移行を契機として定額法へ変更しましたが、同時に

「有形固定資産の減価償却方法の変更の検討を契機に、有形固定資産の使用実態の調査を行った結果」

一部の車両運搬具について耐用年数も見直しています。開示されている営業利益13,075百万円の増加は、この両方を合わせた影響額です。

使用実態を調べれば両方に論点が及ぶのは自然ですが、前者は「見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」、後者は「会計上の見積りの変更」で区分は異なります。注記の見出しも「(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更及び会計上の見積りの変更)」と併記されています。

社内資料では、どちらの論点かを分けておくほうが監査人との議論がかみ合います。

税務は別立て:変更承認申請と「相当期間3年」

会計方針を変更しても、税務上の償却限度額の計算方法が自動的に変わるわけではありません。変更には所轄税務署長の承認が必要です。

項目内容
手続減価償却資産の償却方法の変更の承認の申請(国税庁の手続案内C1-38)
提出期限新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日まで
根拠法令法人税法施行令第52条第2項
法人税法施行規則第15条
承認されない場合現によっている償却方法を採用してから相当期間を経過していないとき、または変更しようとする償却方法によっては各事業年度の所得の金額の計算が適正に行われ難いと認められるとき
「相当期間」の目安現によっている償却方法を採用してから3年を経過していないときは、その変更が合併や分割に伴うものである等の特別な理由があるときを除き、相当期間を経過していないときに該当する(法人税基本通達7-2-4)
みなし承認申請書を提出した事業年度終了の日(中間申告書を提出すべき法人は事業年度開始の日以後6月を経過した日の前日)までに承認または却下の処分がなかったときは、その日において承認があったものとみなされる

ここで会計と税務がきれいにつながる点があります。

3年ルールには例外があり、その変更が合併や分割に伴うものである等の特別な理由があるときは該当しないとされています。前掲の型Eのうち、合併や分割に伴う変更は、この例外に当たり得ます。ヤマトホールディングスやフジのように合併を契機とする変更は、会計上の正当な理由と、税務上の3年ルールの例外の説明が、同じ事実の上に乗ります。

ただし型Eでも、生産拠点の集約やグループの会計処理統一が自動的に例外になるわけではありません。

逆にいえば、型A(設備投資)や型B(中期経営計画)は、通達で例示されている「合併や分割」とは異なるということでもあります。3年未満の場合は「特別な理由」に当たるかを個別に検討する必要があります。

設備投資は数年おきに走りますから、現在の償却方法を採用してから3年を経過しないうちに新しい大型投資が稼働することは起こり得ます。会計上は正当な理由があると判断できても、税務上は承認されない可能性があります。

さらに同通達の注書きでは3年を経過した後の申請であっても、変更することについて合理的な理由がないと認められるときは承認しないことができるとされています。税務でも「3年経ったから自動的にOK」ではありません。会計上の「正当な理由」と税務上の理由は別立ての判断ですが、根っこでは同じ事実関係——資産が今後どう使われるのか——を見ています。

会計側の検討資料は、税務側の説明にも流用できるよう整理しておくと効率的です。なお、税務上の変更が承認されなければ、会計上と税務上で償却方法が異なることがあります。その場合は、税務上の償却限度額との関係で償却超過額などを管理し、必要な申告調整を行うことになります(会計上の償却費が税務上の償却限度額を超える場合には、償却超過額の加算調整が必要となり得ます)。

詳細はタックスアンサーNo.5407および手続案内C1-38をご確認のうえ、個別の判断は税理士にご相談ください。

減価償却方法の開示事例を自分で探す(会計変更ナビ)

本記事の事例は一部です。自社と近い業種・契機の他社開示を探すには、当サイトの会計変更ナビで、上場会社の有価証券報告書における会計方針の変更・表示方法の変更・見積りの変更・訂正を横断的に検索できます。減価償却方法なら、論点を「減価償却方法」でしぼり、原文検索に「設備投資」「中期経営計画」「安定的に稼働」といった語を入れるのが効率的です。

業種でしぼれば、同業他社がどの粒度で契機を書いているかを読み比べられます。

注意点が3つあります。

第一に、開示区分は「会計方針の変更(見積りと区別困難・将来適用)」が基本ですが、「会計上の見積りの変更」の区分で開示されている事例もわずかにあります。取りこぼしを避けるなら両方の区分を見てください。

第二に、ナビの開示区分は企業がXBRLのどの要素に注記を記載したかにもとづくため、区分の表示と原文の説明が一致しないことがあります。区分は入口として使い、理解は必ず開示原文で確認してください。

第三に、連結財務諸表を作成していない会社の注記は「単体(個別)注記」側にあります。初期表示は連結注記のため、探している会社が見つからないときはタブを切り替えてみてください。

原文はEDINETでも参照できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 減価償却方法を変更したら、過去の決算を作り直す必要がありますか?

ありません。

「会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」に該当し、遡及適用せず将来に向かって適用します。修正再表示も不要です。ただし遡及しないことと、理由を説明しなくてよいことは別で、正当な理由の説明は必要です。

Q2. 「大型設備を導入したため」だけでは、変更理由として不十分ですか?

不十分です。

設備投資は再検討を始める契機であり、それ自体が正当な理由になるわけではありません。実際の開示は契機を述べたうえで、使用実態を再検討した結果として今後は安定的に稼働すると見込まれるため均等配分が実態をより適切に反映する、という趣旨を続けています。契機(事実)・再検討(プロセス)・判断(なぜ適切か)の3つをそろえるのが基本形です。

Q3. 定額法から定率法への変更はできますか?

制度上できないわけではありませんが、会計変更ナビで探索した範囲では、確認できた事例はいずれも定率法から定額法への変更で、逆方向は見当たりませんでした。

定率法へ変更するには、たとえば今後は資産の使用や収益への貢献が初期に相対的に大きくなるなど、前倒しの費用配分が使用実態をより適切に反映する理由を説明する必要があります。類例が乏しいため、自社の資産の使用実態や事業計画との整合を踏まえ、説明を個別に組み立てる必要性が高いと考えられます。

Q4. 定率法から定額法に変えれば、必ず利益が増えますか?

必ずではありません。

定率法は初期の償却負担が相対的に大きく、その後は低下していきます。そのため、保有資産の取得時期や年齢構成、変更後の償却計算によっては、定額法への変更で当期の償却費がかえって増えることがあります。実際、営業利益・経常利益がそれぞれ8,310千円減少したと開示した事例(松尾電機・2022年3月期)があります。増益か減益かは一律に決まらないため、保有資産の構成を反映した事前試算が欠かせません。

Q5. 会計上変更すれば、税務上も自動的に変更されますか?

されません。

税務上の償却方法を変更するには所轄税務署長の承認が必要で、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を提出します。加えて、現によっている償却方法を採用してから3年を経過していないときは、合併や分割に伴うものである等の特別な理由があるときを除き、原則として「相当期間を経過していないとき」に該当するとされています(法人税基本通達7-2-4)。

会計側の変更を決めた時点で、税務側の段取りも並行して進めてください。

まとめ

契機は設備、理由は「使われ方の見立てが変わった」

  • 遡及適用はしない。しかし説明は軽くならない
    「見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」として将来に向かって適用するが、正当な理由は必要。
  • 開示を探索した範囲では、変更は一方通行だった
    確認できた事例はいずれも定率法から定額法へ。「安定稼働」の説明で組み立てやすいのが、この向きだから。
  • 契機は多様、結論は共通
    入口はさまざまだが、出口は「今後は安定的に稼働するから均等配分が実態に合う」に収束する。契機だけでは足りず、そこまで説明をつなぐ。
  • 増益方向に働く構造こそが難所
    だから「契機 → 再検討 → 判断」の順序と、その判断を裏付ける実態を、日付の入った社内資料で示せるかが分かれ目になる。ただし増益は必然ではなく、保有資産の構成によっては減益にもなる。
  • 税務は別立て
    変更承認申請の期限は事業年度開始の日の前日、しかも現行方法の採用から「相当期間3年」の要件がある。合併・分割に伴う変更はその例外に当たり得る。

検討するときは、まず「この設備の使われ方について、去年と今年で何の見立てが変わったのか」を一文で書いてみてください。それが書けないなら、変更の理由もまだ立っていません。近い契機の他社開示を会計変更ナビで読み比べると、記載の粒度感がつかめます。

参考一次情報

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