監査報酬の相場|業種・規模別で見る上場会社の実データ【2026】

「自社の監査報酬は高いのか、安いのか」

——経理・財務やCFOが監査報酬の妥当性を検討するとき、最初にぶつかる問いです。ところが、検索で出てくるのは「平均は5,000万円台」「時間単価は1万円台」といった全体平均ばかりで、自社の規模に近い会社がいくら払っているかは分かりません。

本記事は、当サイトが有価証券報告書から独自集計した上場会社3,801社の監査報酬をもとに、規模別・区分別の相場、5年推移、そして「高い/安い」を測る指標を整理します。平均ではなく中央値と自社に近いセグメントで見るのが、この記事の最大の特徴です。

読了後には、

  • 監査報酬の実態的な相場水準
  • 自社の規模での目安
  • 自社の報酬が相場から外れていないかを判断する方法

の3点が整理できます。

目次

結論:監査報酬は「平均5,408万」より「中央値約3,800万」で見る

当サイト集計(監査報酬が判明した上場会社3,801社)の要点は次のとおりです。

  • 監査報酬の中央値は約3,800万円(第1四分位2,700万円、第3四分位6,500万円)
    日本公認会計士協会の平均5,408万円は一部の巨大企業に引き上げられており、典型的な会社の実感には中央値が近いといえます。
  • 規模で大きく変わる
    従業員300人未満で中央値2,500万円、5,000人超で1億5,900万円と、規模により6倍以上の差があります。
  • 最小は800万円、最大は約60億円規模
    同じ「上場会社の監査報酬」でも、会社によって桁が違います。

数値は当サイトが有報の「監査公認会計士等に対する報酬」から抽出・集計したもので、提出会社と連結子会社の監査証明業務報酬の合計です。母集団は上場会社約3,800社です。

なぜ「平均」ではなく「中央値」で見るべきか(現状)

監査報酬は上昇が続いています。

日本公認会計士協会の「監査実施状況調査」では、金融商品取引法監査の平均監査報酬は5,408万円と10年連続で増加しています(日本公認会計士協会)。監査の厳格化・KAM対応・人手不足による単価上昇が背景にあります。

ただし「平均」には注意が必要です。トヨタやソフトバンクグループのような超大企業の監査報酬は数十億円規模に達し、平均値を大きく押し上げます。当サイト集計でも最大は約60億円規模でした。こうした一握りの巨大企業が平均を引き上げるため、平均5,408万円という数字は、多くの中堅・中小上場会社にとっては「高すぎる目安」になってしまいます。

なお、JICPA調査(会員が提出する監査概要書等の集計)と当サイト集計(有報の監査証明業務報酬・提出会社+連結子会社)では、集計元・対象範囲・報酬区分が完全に一致するものではありません。本記事では、全体平均と有報ベースの中央値の水準差を把握するための参考比較として扱っています。

そこで本記事では、外れ値の影響を受けにくい中央値と、自社に近い規模・業種のセグメントで相場を見ます。監査品質の状況を公表する公認会計士・監査審査会の資料(CPAAOB モニタリングレポート)とあわせて見ると、報酬水準の妥当性をより立体的に判断できます。

従業員規模別の監査報酬相場

監査報酬を最も強く左右するのは会社の規模です。連結従業員数の区分ごとの中央値は次のとおりです。

連結従業員数監査報酬の中央値目安
〜300人約2,500万円小規模・新興企業
300〜1,000人約3,400万円中堅企業
1,000〜5,000人約5,600万円大企業
5,000人〜約1億5,900万円超大企業

従業員300人未満と5,000人超では、中央値で6倍以上の開きがあります。

監査報酬は「上場会社だから一律いくら」ではなく、連結の規模・子会社数・海外拠点に応じて積み上がるためです。自社の報酬を評価するときは、まず同じ規模帯の中央値と比べるのが出発点になります。

全体の分布と区分別の水準

監査報酬の分布は、中央値付近に多くの会社が集まり、一部の大企業が高額側に長く裾を引く形です。四分位で見ると次のようになります。

指標監査報酬
最小約800万円
第1四分位(Q1)約2,700万円
中央値約3,800万円
第3四分位(Q3)約6,500万円
最大約60億円規模

この分布の形は、報酬の妥当性を測るうえで示唆に富みます。

自社が中央値付近にいれば「相場並み」、第3四分位(6,500万円)を超えていれば規模に照らして高めの可能性、第1四分位(2,700万円)を下回れば監査工数が十分かを別途確認する、といった読み方ができます。単一の平均値では見えないこの「位置づけ」を把握することが、監査報酬の議論の第一歩になります。

過半の会社が2,700万〜6,500万円のレンジに収まります。

監査法人の区分別に見ると、大手(四大)の中央値は約5,300万円、準大手・中堅は約2,900万円、中小は約2,500万円です。大手は大企業を多く抱えるため水準が高く、準大手・中小はその半分程度が中央値です。

監査報酬の推移(直近4期)

当サイトが集計した上場会社の監査報酬の中央値は、直近4期で一貫して上昇しています。

決算期監査報酬の中央値
2022年3月期約3,450万円
2023年3月期約3,550万円
2024年3月期約3,700万円
2025年3月期約3,800万円

年率でならすと数%の上昇が続いており、JICPAの「平均10年連続増」とも整合します。

KAM対応監査手続の高度化が続く限り、当面は上昇基調が続くと見込まれます(これは傾向からの見通しであり、断定ではありません)。監査報酬の増額提示を受けた際は、この上昇トレンドを踏まえたうえで、増額幅が相場並みか突出しているかを見ることが大切です。

業種別に見る監査報酬の傾向

監査報酬は規模だけでなく業種によっても水準が変わります。

会計処理が複雑で監査工数がかさむ業種ほど、同じ規模でも報酬が高くなる傾向があります。

一般に高めになりやすいのは、金融・保険業(金融商品の評価や規制対応が重い)、海外売上比率の高い製造業商社(連結範囲が広く海外監査が必要)、そして持株会社体制で子会社数が多いグループです。

逆に、単体中心事業がシンプルな内需型の中小企業は、同じ従業員規模でも相対的に低めに収まりやすくなります。

そのため「同業・同規模」で比べることが決定的に重要です。

製造業の平均と自社(金融業)を比べても意味がありません。自社と業種・規模の両方が近い会社の中央値と照らすことで、初めて自社の報酬が高いのか安いのかを客観的に語れます。業種×規模での相場は、データベースで条件を絞って確認できます。

▼▼▼ データベース

監査報酬に含まれるもの・含まれないもの(報酬内訳)

「監査報酬」と一口に言っても、有報の開示は複数の区分に分かれています。自社の水準を正確に比較するには、どの範囲を指しているかを揃える必要があります。

  • 監査証明業務に基づく報酬
    会計監査・内部統制監査など、法定監査に対する報酬。本記事の相場はこの合計(提出会社+連結子会社)です。
  • 非監査業務に基づく報酬
    監査以外の助言業務などへの報酬。当サイト集計では監査報酬全体に占める比率の中央値は約6.8%でした。
  • 提出会社/連結子会社の別
    親会社単体分と子会社分が分けて開示されます。子会社が多いグループは連結子会社分が膨らみます
  • ネットワークファーム分
    監査法人と同じネットワークの海外事務所等への報酬。海外展開の大きい会社で発生します。

他社と比較するときは、この区分を揃えることが前提です。

非監査報酬の比率が高い場合は、監査人の独立性の観点から内容を確認しておくと安心です。当サイトのデータベースでは、法人プロフィールで提出会社・連結子会社・非監査の内訳(中央値)も確認できます。

「高い/安い」を規模補正で測る3つの指標

金額そのものは規模が大きいほど高くなるため、単純比較では大企業ほど「高い」と見えてしまいます。妥当性を測るには、規模で割った指標が有効です。

指標中央値の目安意味
監査報酬 ÷ 売上高約13.7bp(0.137%)売上に対する監査コストの比率
非監査報酬 比率約6.8%監査報酬全体に占める非監査業務の割合
監査報酬 ÷ 従業員数規模帯で確認1人あたりの監査コスト感

たとえば売上高に対する監査報酬が0.137%を大きく上回るなら、事業規模に比して監査コストが重い可能性があります。逆に極端に低い場合は、監査工数が十分に確保されているかという別の観点が出てきます。

非監査報酬の比率が高い場合は、監査人の独立性の観点から内容を確認しておくとよいでしょう。こうした比率は業種でも変わるため、同業・同規模と比べるのが基本です。

※非監査報酬比率は、非監査業務報酬「監査証明業務報酬+非監査業務報酬」の合計で除して算出しています。

監査報酬が上がる仕組み(工数の内訳)

監査報酬は「監査時間 × 単価」で決まります。ここ数年の上昇は、時間と単価の両方が押し上げられていることが背景です。

時間側の要因は、KAM(監査上の主要な検討事項)への対応、内部統制監査の厳格化、収益認識やのれん・繰延税金など見積り項目の検討深化、そして不正リスク対応の強化です。

単価側では、公認会計士の人手不足による人件費上昇が効いています。会社にとっては、子会社の増加・海外展開・新規事業・システム更改なども監査時間を押し上げる要因になります。

したがって、監査法人から増額提示を受けたときは、「なぜ増えるのか」を工数の観点で確認することが重要です。

子会社が増えた、KAMが追加された、システムを刷新した、といった具体的な工数増があるのか、それとも単価改定なのかを切り分けると、相場と照らした交渉がしやすくなります。単に「高い」と感じるだけでなく、増額の根拠を工数で分解する視点を持つと、監査法人との対話が建設的になります。

自社の監査報酬を評価する5ステップ

  1. 自社の規模帯の中央値と比べる
    まず連結従業員数の区分で、自社が相場のどのあたりかを確認します。
  2. 業種の傾向を重ねる
    金融・保険や海外展開の多い業種は水準が高めです。同業のレンジと照らします。
  3. 規模補正指標で見る
    売上比・従業員あたりで、金額の大小に惑わされず妥当性を評価します。
  4. 5年推移と自社の推移を比べる
    相場並みの上昇か、自社だけ突出して増えていないかを確認します。
  5. 増額提示は根拠とセットで検討する
    監査工数の増加要因(子会社増加・KAM・システム対応など)を確認し、相場と照らして交渉材料にします。

これらは1社ずつ有報を集計すると手間がかかります。業種・規模で絞って「自社に近い会社の監査報酬の相場」をその場で確認するには、監査人・監査報酬データベースが便利です。中央値・四分位・分布を、条件を変えながら比較できます。

▼▼▼ データベース

よくある質問(FAQ)

Q1. 上場会社の監査報酬の相場はいくらですか?

当サイトが有報3,801社から集計した中央値は約3,800万円、過半の会社は2,700万〜6,500万円のレンジに収まります。

JICPAの平均5,408万円は巨大企業に引き上げられているため、典型的な会社の実感には中央値が近いといえます。

Q2. なぜ会社によって監査報酬にこれほど差があるのですか?

監査報酬は会社の規模・連結子会社数・海外拠点・業種で積み上がるためです。

従業員300人未満で中央値2,500万円、5,000人超で1億5,900万円と6倍以上の差があります。上場しているかどうかより、監査工数の大きさが金額を決めます。

Q3. 自社の監査報酬が高いかどうかはどう判断すればよいですか?

金額そのものではなく、同じ規模帯・業種の中央値と比べ、さらに売上高比(中央値約0.137%)や従業員あたりの指標で規模補正して見ます。

相場から大きく上振れしていれば、監査工数の増加要因を確認し、妥当性を検討する材料になります。

Q4. 監査報酬は今後も上がり続けますか?

当サイト集計でも中央値は直近4期連続で上昇し、JICPAの平均も10年連続増です。

KAM対応や監査の高度化が続く限り上昇基調が続くと見込まれますが、これは傾向からの見通しであり断定ではありません。増額提示時は上昇トレンドを踏まえて相場並みか判断してください。

Q5. 監査報酬を下げるにはどうすればよいですか?

まず自社の報酬が相場から上振れしているかを確認し、上振れの要因(過剰な体制・非監査業務の多さなど)を特定します。

監査法人の変更で下がるとは限らず、当サイト集計では交代前後の報酬変動は中央値でほぼ横ばいでした。コスト削減ありきではなく、監査品質と工数に見合った適正水準への是正という観点で検討することをおすすめします。

まとめ:相場は「中央値 × 自社に近い規模」で見る

  • 監査報酬は平均5,408万円より中央値約3,800万円が実態に近い。過半は2,700万〜6,500万円。
  • 規模で6倍以上変わる(〜300人2,500万円、5,000人超1億5,900万円)。
  • 妥当性は売上比(中央値約0.137%)などの規模補正指標で測る。
  • 中央値は直近4期連続で上昇。増額提示は相場並みかを確認して検討する。

監査報酬の議論は、感覚的な「高い・安い」から抜け出し、同業・同規模の中央値という共通のものさしを持つことで一気に建設的になります。監査役会・取締役会でも、相場データを示せば、監査法人との交渉や会計監査人の再任・変更の検討を客観的な根拠に基づいて進められます。

まずは自社の規模帯・業種の中央値を確認し、自社の報酬がその相場のどこに位置するかを把握するところから始めましょう。業種・規模別の相場は、監査人・監査報酬データベースで条件を変えながら確認できます。

このデータベースでできること

本記事の相場は、監査人・監査報酬データベースで自社基準に絞って確認できます。会社名・業種・従業員規模・監査法人区分で絞り込み、監査報酬の中央値・四分位・分布、非監査報酬比率、監査人交代の有無まで把握できます。

監査報酬記事の観点では、「自社の監査報酬が、同業・同規模の中央値や四分位のどこに位置するか」を確認するのが実務的な使い方です。

監査役会資料や監査報酬交渉の客観的な根拠になります。

参考一次情報

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