平成29年(2017年)の徴収関係判決まとめ|取立訴訟・第二次納税義務56件

平成29年(2017年)に出された徴収関係の裁判例56件を整理した年度版インデックスです。更正処分など「課税の当否」を争う課税関係判決とは別に、滞納処分・差押え・取立訴訟・第二次納税義務・詐害行為取消し・納税義務の承継など「徴収」をめぐる争いだけを集めています。各事案名から検索ツールで要旨を開けます。

結論:平成29年の徴収関係で、納税者側が主張を通したのは一部認容1件のみ。
収録56件のうち国側勝訴方向が55件、納税者側が一部認容を得たのは1件(東京地裁・徴収法39条/離婚に伴う財産分与の不相当性)にとどまりました。争点は「差押債権の取立訴訟(継続収入・過払金・譲渡担保)」「第二次納税義務(徴収法39条・37条)」「公売・見積価額・不服申立前置」「詐害行為取消し・消滅時効」に集約されます。

1. 数字で見る平成29年の徴収関係判決

56
収録件数
1
納税者側が勝った件数
55
国側勝訴方向
0
却下・訴えの利益なし
29
地方裁判所
19
高等裁判所
5
最高裁判所
23
確定(残り33件は上訴等)

徴収局面では国側勝訴方向が中心で、納税者側の救済は限られます。平成29年は特に差押債権の取立訴訟(継続収入・過払金)が多く、勝ち負け以上に「どの論点でどう判断されたか」を確認する実務的価値が中心になります。

2. 徴収関係でよく争われた論点(平成29年)

差押債権の取立訴訟・取立権(継続収入・過払金・譲渡担保)

平成29年の徴収関係で最も多いのが差押債権の取立訴訟・取立権です。継続収入の債権(給与等)の差押えの効力と終期・差押え後の弁済/相殺(国税徴収法62条・66条/順号2017-5・6・7・33・34・35)、過払金返還請求権(2017-40・41・56)、供託金・営業保証金・ゴルフ会員権・預り保証金(2017-21・22・24・31)、譲渡担保財産の物的納税責任(徴収法24条/2017-42)など、対象債権ごとに論点が細かく分かれました。

第二次納税義務(国税徴収法39条・37条)

第二次納税義務では、無償譲渡等の時期(登記時か契約時か)や離婚に伴う財産分与の不相当性(39条/順号2017-16・20)、共同的な事業者の第二次納税義務(37条/2017-26・54)が争われました。唯一の一部認容(順号2017-20)も、財産分与と39条をめぐる事案です。

公売・見積価額・不服申立前置と訴えの利益(訴訟要件)

見積価額の公告・売却決定・配当処分の適否や、不服申立前置・訴えの利益・処分性といった訴訟要件が数多く争われました(順号2017-3・15・17・19・23・28・29)。取立完了により訴えの利益が消滅する点も繰り返し確認されています。

詐害行為取消し・債権者代位と徴収権の消滅時効

滞納者の責任財産を確保するための詐害行為取消し(通謀的害意・転得者の悪意・消滅時効の起算点/順号2017-9・36)や、徴収権の消滅時効と株式差押えによる時効中断(2017-1・27)が争点になりました。

相続税の連帯納付・物納/還付金の充当・予納

相続税法34条の連帯納付義務の範囲(延滞税・加算税を含むか/順号2017-32・46)、物納許可・却下と延滞税(2017-2・38)、還付金の充当や予納・過誤納金(2017-10・13・30)など、相続・還付をめぐる徴収の論点も登場しました。

3. 代表的な事例

平成29年の徴収関係判決から、論点ごとの代表例をピックアップしました(先頭は唯一の一部認容)。

一部認容順号2017-20

離婚に伴う財産分与と徴収法39条第二次納税義務(納付すべき限度額の一部取消し)

東京地方裁判所・平成29年6月27日(控訴)

離婚に伴う財産分与として滞納者から不動産の譲渡を受けた元妻への徴収法39条の第二次納税義務の納付告知処分の取消請求。裁判所は、相当な財産分与の範囲は高く見ても合計3000万円程度で、これを超える部分は不相当に過大な「著しく低い額の対価による譲渡」に当たるとする一方、離婚時に財産分与の確定的な協議が成立しており原告は特殊関係者に当…

📖 原典PDFを確認

国側勝訴方向順号2017-33

将来債権差押えの効力の及ぶ範囲と延滞税相当額の取立て(29-7の控訴審・4件併合)

東京高等裁判所・平成29年9月12日(上告・上告受理申立て)

滞納会社4社の委託業務報酬債権(将来債権)の差押えに基づく取立訴訟の控訴審(整理番号29-7の控訴審)。差押えの効力は滞納国税に満つるまで報酬債権に及び、取立てにより徴収したとみなされるまで延滞税は発生し続けるから、履行期到来時点で差押えの終期が到来したとする控訴人の主張は前提を欠くとして控訴を棄却した事例。

📖 原典PDFを確認

国側勝訴方向順号2017-9

滞納会社の一人取締役への弁済に仮託した財産流出の詐害行為取消しと転得者・消滅時効の起算点

札幌地方裁判所・平成29年3月28日(控訴)

滞納会社に対し租税債権を有する国が、同社が唯一の取締役(被告Y1)と通謀して同人への貸金弁済に仮託して財産を流出させ、被告Y1が取得金員を自ら代表する被告会社に転得させたとして、国税通則法42条・民法424条に基づき各弁済の詐害行為取消しと価格賠償を求めた事案。裁判所は、通謀的害意と転得者性を認め、消滅時効も未完成として請求を認…

📖 原典PDFを確認

国側勝訴方向順号2017-32

贈与税の連帯納付義務(相続税法34条4項)を巡る督促処分・誤納金・国賠・更正の請求の総合訴訟

大阪高等裁判所・平成29年9月7日(上告・上告受理申立て)

贈与者Aの妻(相続人)である控訴人X1が、Aの子らの贈与税滞納につき相続税法34条4項の連帯納付義務に基づく督促処分等を受けた事案の控訴審。土地と定期預金の各贈与の成立・時期を認定して本来の納税義務を肯定し、延滞税・無申告加算税も連帯納付義務の対象になるとし、課税庁の徴収義務・告知義務違反も否定して、督促処分取消し・誤納金還付・…

📖 原典PDFを確認

国側勝訴方向順号2017-3

公売換価代金の配当処分取消訴訟の不服申立前置と立替金債権の国税に対する優先性

札幌高等裁判所・平成29年1月20日(確定)

滞納会社所有の土地の公売換価代金の配当処分で配当額を零円とされた配当要求債権者(控訴人)が、その債権は国税に優先するとして配当処分の取消しと配当を求めた事案の控訴審。控訴審は、立替金債権は一般債権にすぎず国税に優先せず、配当処分に公序良俗違反はないから不服申立前置を欠く訴えは不適法とした原判決を維持し控訴を棄却した。

📖 原典PDFを確認

4. 平成29年 徴収関係判決 全56件

全56件の一覧(順号順)を開く/閉じる
結論順号裁判所事案原典
国側勝訴方向順号2017-1東京地方裁判所納税保証人に対する差押処分の取消し・法人税延滞税の債務不存在確認と徴収権の消滅時効原典
国側勝訴方向順号2017-2神戸地方裁判所物納許可処分の既判力と差押処分の無効確認・延滞税の起算点及び免除義務付け原典
国側勝訴方向順号2017-3札幌高等裁判所公売換価代金の配当処分取消訴訟の不服申立前置と立替金債権の国税に対する優先性原典
国側勝訴方向順号2017-4東京地方裁判所公売の売却決定を前提とする換価手続の続行の執行停止(重大な損害を避けるため緊急の必要)原典
国側勝訴方向順号2017-5横浜地方裁判所滞納会社の委託業務報酬債権(継続収入の将来債権)の差押えと取立て・弁済の対抗・相殺原典
国側勝訴方向順号2017-6横浜地方裁判所滞納会社の委託業務報酬債権(継続収入の将来債権)の差押えと取立て・弁済の対抗・相殺(別債権)原典
国側勝訴方向順号2017-7横浜地方裁判所複数滞納会社の委託業務報酬債権の差押えと取立て・差押債権の特定・弁済の対抗・相殺原典
国側勝訴方向順号2017-8前橋地方裁判所高崎支部換価猶予に伴う物上保証・納税保証の担保として設定された抵当権設定登記・差押登記の抹消の可否原典
国側勝訴方向順号2017-9札幌地方裁判所滞納会社の一人取締役への弁済に仮託した財産流出の詐害行為取消しと転得者・消滅時効の起算点原典
国側勝訴方向順号2017-10名古屋地方裁判所更正処分・還付金の充当処分及び異議決定書・催告書の記載を巡る国家賠償請求原典
国側勝訴方向順号2017-11福岡高等裁判所新設分割・商号続用下の売掛金債権の譲渡担保と滞納処分差押え・不当利得返還請求原典
国側勝訴方向順号2017-12大阪高等裁判所借入金全額による自宅購入と滞納処分の停止の取消処分の適法性原典
国側勝訴方向順号2017-13東京高等裁判所相続税5億1000万円の予納金の還付請求(通則法59条の予納・過誤納金と充当)原典
国側勝訴方向順号2017-14東京高等裁判所宗教法人に対する徴収法39条の第二次納税義務と前訴棄却判決の既判力原典
国側勝訴方向順号2017-15東京高等裁判所公売公告・見積価額公告の取消請求(見積価額公告の処分性と低廉主張の可否)原典
国側勝訴方向順号2017-16大阪地方裁判所親子間の不動産贈与と徴収法39条第二次納税義務(無償譲渡の時期は所有権移転登記時)原典
国側勝訴方向順号2017-17大阪高等裁判所相続税担保不動産の公売に係る売却決定・配当処分の取消訴訟と不服申立前置原典
国側勝訴方向順号2017-18東京高等裁判所外国子会社合算税制の適用(居住者認定)と納税の猶予不許可・差押処分の適法性原典
国側勝訴方向順号2017-19静岡地方裁判所贈与税の督促処分と督促取消通知を巡る取消訴訟(処分性・訴えの利益)原典
一部認容順号2017-20東京地方裁判所離婚に伴う財産分与と徴収法39条第二次納税義務(納付すべき限度額の一部取消し)原典
国側勝訴方向順号2017-21新潟地方裁判所営業保証金返還請求権の差押えと第三債務者への取立訴訟(支払督促認可)原典
国側勝訴方向順号2017-22大津地方裁判所ゴルフ会員権差押えと差押債権者による退会の意思表示・預託金返還請求(会則変更の効力否定)原典
国側勝訴方向順号2017-23東京地方裁判所公売公告・最高価申込者決定・売却決定の取消請求(見積価額の低廉主張と公売特殊性減価・市場性減価)原典
国側勝訴方向順号2017-24山形地方裁判所差し押さえられた預り保証金返還請求権の帰属を巡る第三債務者の不当利得返還請求原典
国側勝訴方向順号2017-25東京高等裁判所納税保証人への第2差押処分取消し・法人延滞税債務不存在確認の控訴審(29-1の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-26仙台地方裁判所同族会社の判定の基礎となった株主への徴収法37条2号の第二次納税義務(名義株主の主張排斥)原典
国側勝訴方向順号2017-27大阪地方裁判所徴収権の消滅時効(株式差押えによる中断)と信用組合持分の会社分割承継の効力を巡る差押処分取消請求原典
国側勝訴方向順号2017-28広島地方裁判所建物建設代金の会社負担を無償譲渡とした徴収法39条告知処分と不服申立期間徒過による訴え却下原典
国側勝訴方向順号2017-29大阪地方裁判所取立完了後の債権差押処分の訴えの利益・配当処分の不服申立期限と差押処分の適法性(弁護士の滞納国税)原典
国側勝訴方向順号2017-30名古屋高等裁判所還付金充当・納付催告書面を巡る国家賠償請求の控訴審(29-10の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-31東京地方裁判所差し押さえた供託金還付請求権の取立権確認(譲渡禁止特約違反の譲渡と譲渡人の無効主張)原典
国側勝訴方向順号2017-32大阪高等裁判所贈与税の連帯納付義務(相続税法34条4項)を巡る督促処分・誤納金・国賠・更正の請求の総合訴訟原典
国側勝訴方向順号2017-33東京高等裁判所将来債権差押えの効力の及ぶ範囲と延滞税相当額の取立て(29-7の控訴審・4件併合)原典
国側勝訴方向順号2017-34東京高等裁判所委託業務報酬債権の将来債権差押えと延滞税相当額の取立て(29-5の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-35東京高等裁判所委託業務報酬債権の将来債権差押えと延滞税相当額の取立て(29-6の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-36札幌高等裁判所滞納会社の取締役への弁済と関連会社への転得に係る詐害行為取消し(29-9の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-37東京地方裁判所税務署職員のe-Tax誤入力と勤務先への特別徴収税額変更通知を巡る国家賠償請求(プライバシー侵害の主張)原典
国側勝訴方向順号2017-38大阪高等裁判所物納と未納相続税に係る差押処分の無効確認・延滞税の不存在確認・免除の義務付け(29-2の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-39最高裁判所第三小法廷相続税5億1000万円の予納金還付請求の上告受理申立て不受理(29-13の上告審)原典
国側勝訴方向順号2017-40東京簡易裁判所滞納者の過払金返還請求権の差押えと貸金業者への取立訴訟(悪意の受益者・期限の利益喪失)原典
国側勝訴方向順号2017-41東京簡易裁判所過払金返還請求権の差押えと取立て(みなし弁済否定の意思表示不要・悪意の受益者)原典
国側勝訴方向順号2017-42横浜地方裁判所川崎支部譲渡担保財産(将来の傭車代金債権)への徴収法24条の物的納税責任と供託金還付請求権の取立権確認原典
国側勝訴方向順号2017-43鳥取地方裁判所米子支部滞納会社の簿外資金の証券口座入金と不当利得返還請求権の差押え・取立て(慰謝料・財産分与名目の主張排斥)原典
国側勝訴方向順号2017-44仙台地方裁判所16年前の申告所得税を巡る給料差押え・充当への9項目の請求(出訴期間・訴えの利益・更正の請求期間徒過)原典
国側勝訴方向順号2017-45最高裁判所第三小法廷担保物処分の公売の売却決定・配当処分を巡る上告棄却・上告不受理(29-17の上告審)原典
国側勝訴方向順号2017-46横浜地方裁判所相続税の連帯納付義務に係る督促処分の無効確認と前訴棄却判決の既判力原典
国側勝訴方向順号2017-47大阪地方裁判所譲渡禁止特約付き請負代金債権の代物弁済譲渡と滞納処分差押えの優劣(譲受人の悪意・重過失)原典
国側勝訴方向順号2017-48東京地方裁判所遺産分割の遡及効と分割前にされた共同相続人持分の差押え(民法909条ただし書の「第三者」)原典
国側勝訴方向順号2017-49最高裁判所第一小法廷宗教法人の第二次納税義務の不存在確認を巡る上告棄却・上告不受理(29-14の上告審)原典
国側勝訴方向順号2017-50大阪高等裁判所親子間贈与の第二次納税義務・無償譲渡の時期は対抗要件具備で判断(29-16の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-51最高裁判所第二小法廷公売公告・見積価額公告の取消請求を巡る上告棄却・上告不受理(29-15の上告審)原典
国側勝訴方向順号2017-52水戸地方裁判所充当処分取消訴訟の敗訴確定後にする延滞税相当額の不当利得返還請求と既判力(先決問題)原典
国側勝訴方向順号2017-53最高裁判所第三小法廷納税保証人の差押処分・延滞税を巡る上告棄却(29-25の上告審・29-1系列の終局)原典
国側勝訴方向順号2017-54仙台高等裁判所徴収法37条の第二次納税義務の成立要件と納付通知書の「徴収しようとする金額」の記載(29-26の控訴審)原典
国側勝訴方向順号2017-55東京高等裁判所督促取消通知の処分性を肯定しつつ訴えの利益を否定(29-19の控訴審・理由の差替え)原典
国側勝訴方向順号2017-56東京簡易裁判所過払金返還請求権の差押えと取立て(みなし弁済の立証なし・悪意の受益者の推定)原典

5. 関連まとめ

徴収関係の判決・裁決を横断検索
徴収関係の事例を検索する →

まとめ

平成29年の徴収関係判決56件は、納税者側が主張を通したのは一部認容1件という結果でした。徴収局面では国側勝訴方向が中心ですが、差押債権の取立訴訟(継続収入・過払金・譲渡担保)、第二次納税義務(徴収法39条・37条)、公売・見積価額・不服申立前置、詐害行為取消し・消滅時効といった論点が、滞納者側の防御の分かれ目になります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次