米国基準からIFRSへ移行した4社の影響|2021年6月期〜2026年3月期の実額分析

米国基準を適用していた日本企業がIFRSへ移行すると、財務諸表はいくら動くのでしょうか。条文レベルの違いを整理した記事は多くありますが、移行影響額を実額で並べた資料はほとんど見当たりません。

結論を先に言えば、

本調査で収録した適用初年度2021年6月期から2026年3月期までのIFRS初度適用64社のうち、米国基準から移行した会社は4社で、うち3社の資本の増減率は△1.1%から△5.2%にとどまりました。

「日本基準からの移行より影響は小さい」という直感は、この3社に限れば当てはまります。ただしソニーグループだけは資本が1兆2,100億円増えており、この直感は半分しか当たりません。

この記事では、有価証券報告書のIFRS第1号「初度適用」注記から、4社の資本と当期利益の実額、調整項目別の内訳を抜き出し、日本基準から移行した60社と対比します。

目次

解説動画

スライド解説

結論:3社は数%の減少、ソニーグループだけが+25.3%という例外

要点は4つです。

  • 本調査64社のうち、米国基準からの移行は4社です
    60社は日本基準からの移行で、米国基準からはソニーグループ、TDK、ワコールホールディングス、村田製作所の4社でした。なお本調査の対象は適用初年度2021年6月期〜2026年3月期であり、それ以前にはパナソニック、日本電産(現ニデック)、トヨタ自動車なども米国基準からIFRSへ移行しています。「日本企業全体で4社」ではありません
  • 3社は資本が数%減り、1社だけが大幅に増えました
    TDKが△439億円(△5.2%)、ワコールホールディングスが△37億円(△1.7%)、村田製作所が△239億円(△1.1%)と続きます。これに対しソニーグループは1兆2,100億円の増加(+25.3%)です。
  • 主要な認識・測定調整では、退職後給付が4社、のれんの減損が3社に現れました
    これとは別に、4社すべてが累積換算差額をゼロとみなす免除規定を選択し、利益剰余金とその他の資本の構成要素の間で振り替えています(資本内振替)。日本基準からの移行に広く現れる未消化有給休暇を明示した項目は、4社では確認できませんでした。
  • 4社すべてで比較年度の当期利益は減っています
    資本の方向は分かれるのに、利益は4社そろって減益です。

米国基準とIFRSはどこが違うのか|移行で効く論点だけに絞る

日本の会計基準の枠組みでは、一部の会社に米国基準による連結財務諸表の作成が認められてきました。米国市場での資金調達を背景に採用した会社が中心で、社数は限られています。

パナソニック(移行日2015年4月1日)、日本電産(現ニデック、同)、トヨタ自動車(移行日2019年4月1日)などがすでにIFRSへ移行しており、本調査期間の4社はその流れに続くものです。

米国基準とIFRSは、どちらも投資家への財務報告を目的に組み立てられた基準です。日本基準との比較でよく論点になる項目のうち、両者で扱いが揃うものは少なくありません。たとえばのれんは、どちらも規則的な償却を行わず減損テストで評価します。リースも双方が使用権資産をオンバランスする点で近い枠組みです。

一方、開発費には差があります。米国基準は研究開発費を原則として発生時に費用処理しますが、IFRSは要件を満たす開発費の資産化を求めます。

今回の4社では独立の調整項目として現れていませんが、開発活動の大きい会社では論点になり得ます。4社の開示を読み解くうえで重要な論点は次の3つです。

退職後給付:積み上がった差異の置き場所と、その後の組替が違う

米国基準でも確定給付制度の積立状況は貸借対照表に認識されます。ただし、当期の退職給付費用に含めなかった数理計算上の差異や過去勤務費用はその他の包括利益累計額に計上し、その後一定期間で純損益へ組み替えます。

これに対しIFRSでは、再測定を発生時にその他の包括利益へ認識し、その後純損益へ組み替えません。このため移行時には、それまで積み上がった残高について利益剰余金とその他の資本の構成要素の間で大きな振替が生じる一方、資本合計への影響は限定的な場合があります。

実際にTDKでは、利益剰余金が△95,893百万円、その他の資本の構成要素が+95,709百万円動いており、退職給付による資本合計への影響は概ね△184百万円(約△2億円)です。

詳しくは当サイトのIFRSの退職給付と数理計算上の差異でも整理しています。

のれん:減損テストの単位が「報告単位」か「資金生成単位」か

最も見落とされやすい論点です。のれんを償却しない点は共通ですが、減損テストを行う単位が違います。

米国基準は報告単位、IFRSは資金生成単位(CGU)またはCGUグループを単位とします。

IFRSの単位が常に細かいわけではありませんが、単位の割り直しで従前は単位内で相殺されていた劣化が表に出ることがあります。

TDKは実際に細分化が減損につながった事例です。TDKの原文項目名は「のれんの減損の調整(減損テスト単位の差異)」で、項目名そのものがこの論点が金額になったことを示しています。

未消化有給休暇:米国基準でも一定の要件で負債認識される

日本基準からの移行では、未消化有給休暇の調整が広く現れます。ところが今回の4社では、有給休暇を明示した独立の調整項目は確認できませんでした。

米国基準でも一定の要件を満たす有給休暇について負債を認識するため、日本基準からの移行に比べて大きな追加調整が生じにくいことが一因と考えられます。

ただし認識条件や測定方法が完全に同一とは限らず、「その他」に含まれている可能性や重要性による非開示もあり得るため、差額が完全にゼロであることを示すものではありません

【実額】米国基準からIFRSへ移行した4社の影響

4社の資本の調整表から、米国基準の資本合計とIFRSの資本合計を並べます。金額は億円に換算しました。

会社(証券コード)移行日適用初年度米国基準の資本IFRSの資本増減額増減率
ソニーグループ(6758・電気機器)2020年4月1日2022年3月期4兆7,845億円5兆9,945億円+1兆2,100億円+25.3%
TDK(6762・電気機器)2020年4月1日2022年3月期8,486億円8,047億円△439億円△5.2%
ワコールホールディングス(3591・繊維製品)2021年4月1日2023年3月期2,186億円2,149億円△37億円△1.7%
村田製作所(6981・電気機器)2022年4月1日2024年3月期2兆2,639億円2兆2,400億円△239億円△1.1%

次に、比較年度(移行日を含む事業年度)の当期利益です。こちらは方向が揃います。

会社米国基準の当期純利益IFRSの当期利益方向
ソニーグループ1兆1,914億円1兆439億円減益
TDK792億円746億円減益
ワコールホールディングス45億円16億円減益
村田製作所2,534億円2,436億円減益

資本が増えたソニーグループも減益です。「移行すれば利益が良く見える」という発想は、4社の実額からは支持されません。

なお移行日は2年ぶんばらけており、条件は同一ではない点に留意が必要です。

【内訳】4社の調整項目別の金額

次に項目別の金額です。いずれも移行日時点の利益剰余金に対する調整の内訳で、億円換算です。

4社すべてが、IFRS第1号の免除規定(D13項)により移行日の累積換算差額をゼロとみなして利益剰余金へ振り替えています

この振替は反対額がその他の資本の構成要素に計上される資本内の振替で、原則として資本合計を変えませんが、利益剰余金調整の内訳には大きな行として現れるため、表に含めました。最下段の「残差」の意味は表の直後に説明します。

なお税効果の表示も揃っておらず、ソニーグループとワコールホールディングスは項目別を税効果控除前で示して税効果を別掲し、TDKと村田製作所は税効果を含んだ項目別金額が中心とみられます。単純比較には限界があります。

調整項目ソニーグループTDKワコールHD村田製作所
退職後給付△3,172億円△959億円△9億円△96億円
のれんの減損△968億円△388億円(減損テスト単位の差異)△33億円(移行日減損テスト)
資本性金融商品・負債性金融商品+375億円△37億円△224億円(公正価値測定)
みなし原価・有形無形資産の調整△40億円△4億円(有形固定資産・減損)、△1億円(無形資産)
持分法で会計処理されている投資(減損)△39億円
賦課金△7億円△43億円
政府補助金△97億円
その他の長期従業員給付債務△3億円
使用権資産・リース負債+1億円
報告期間の統一+3億円
税効果+642億円+2億円
非支配持分に係る調整+1億円
その他+66億円△10億円△1億円△24億円
在外営業活動体の累積換算差額の振替(資本内振替)△5,099億円△944億円+29億円+1,043億円
内訳合計と資本合計の差(残差)+2兆255億円+1,937億円+215億円△990億円

まず読むべき注意点:この内訳は資本合計のブリッジになっていません

有報を開いた人が最初につまずくのがここです。上の内訳を足しても、資本合計の増減額には一致しません。4社が開示する項目別の内訳は、多くの場合利益剰余金に対する調整の内訳であり、資本合計にはこれに加えて、その他の資本の構成要素(その他の包括利益累計額)、非支配持分、資本剰余金等への調整が含まれるからです。

最下段の残差がその差額で、ソニーグループでは+2兆255億円に達します。電卓で足すと必ず合わないので、先に構造を理解しておくと迷いません。

TDKはこの構造がはっきり出た例です。退職後給付の△959億円は、ほぼ同額のその他の資本の構成要素の増加と相殺しており、資本合計への正味の影響は限定的だと注記から読み取れます。

内訳の1項目だけを取り出して「これで資本が959億円減った」と読むのは不正確です。

4社すべてでマイナスになった退職後給付

認識・測定の調整で4社に共通するのが退職後給付です(累積換算差額の振替は別枠で、4社共通の資本内振替です)。

ソニーグループ△3,172億円、TDK△959億円、村田製作所△96億円、ワコールホールディングス△9億円で、規模の差は確定給付制度の大きさの差を映しています。

この2社は64社全体でも際立ちます。

退職給付の調整を開示した26社(金額集計は円建て25社・単純合計△5,261億円)のうち、ソニーグループの△3,172億円が1位、TDKの△959億円が2位です。

ただしこれは利益剰余金調整額の比較であり、その多くはその他の資本の構成要素との振替を伴うため、資本合計への影響額を示すものではありません。TDKの例のとおり、資本合計への正味の影響はごく小さい場合があります。

のれんは「非償却の恩恵」ではなく「減損テスト単位の差異」から生じています

のれんの調整は3社に現れ、いずれもマイナスです。

ソニーグループ△968億円、TDK△388億円、村田製作所△33億円で、ワコールホールディングスには調整がありません。どちらの基準でものれんを償却しないため、償却負担が消える「非償却の恩恵」は生じません。

金額になったのは、TDKでは減損テスト単位の差異、村田製作所では移行日の減損テストによる減損でした。のれんの論点は、償却の有無ではなく減損の認識のしかたに移っています。

のれん・無形資産の調整を開示した17社の合計は△2,351億円で、ここでもソニーグループが1位、TDKが2位です。

ソニーグループだけが+25.3%になった理由をどう読むか

内訳は退職後給付△3,172億円、のれんの減損△968億円とマイナスが目立ち、プラスは資本性金融商品及び負債性金融商品+375億円、税効果+642億円、その他+66億円にとどまります。

内訳だけを見れば資本は減るはずです。

答えはその他の包括利益累計額の側にあります。同社の調整表では、移行日の資本合計+1兆2,100億円の内訳は、利益剰余金△8,155億円、累積その他の包括利益+1兆5,605億円、非支配持分+4,572億円、資本剰余金+78億円です。利益剰余金は減っているのに、その他の包括利益累計額が大きく増えて全体を押し上げています。

同社の注記は、この増加の要因として、生命保険事業で保有する負債性金融商品をIFRSでその他の包括利益を通じて公正価値測定したこと、保険関連勘定への調整(いわゆるシャドウ・アカウンティングを含む。当時の保険基準はIFRS第4号)、およびこれらに伴う繰延税金・非支配持分への影響を説明しています。

推定ではなく、注記の記載から裏付けられる構造です

64社の資本増加額の順位を見ると、上位は保険会社が占め、その中でソニーグループが3位に入っています。今回集計した64社では、資本増加額・増加率の上位に保険事業を持つ企業が集中している、というのがデータから直接言えることです。

日本基準からの移行60社と比べると何が違うのか

64社全体の集計と並べて相対化します。

指標IFRS初度適用64社(日本基準から60社)米国基準からの移行4社
社数64社4社
資本増減率の中央値△1.7%3社が△1.1%〜△5.2%、1社が+25.3%
資本が増加した会社増加20社/減少43社増加1社/減少3社
比較年度が減益だった会社29社/63社(46%)※4社/4社(100%)
未消化有給休暇の調整47社が開示、合計△1,308億円有給休暇を明示した項目は4社ともなし※2
退職給付の調整26社が開示、合計△5,261億円ソニーグループが1位、TDKが2位
のれん・無形資産の調整17社が開示、合計△2,351億円ソニーグループが1位、TDKが2位
資本増加額の順位上位は保険会社が占めるソニーグループが3位

※1 IFRS初度適用の収録は64社ですが、うち1社は資本の調整表の金額が未収録のため、割合の計算では母数から除いています。このため分母が63社となっている箇所があります。

※2 未消化有給休暇の47社は、項目名または注記の説明で有給休暇が明示されている調整項目を集計したものです。米国基準からの移行4社のうちワコールホールディングスには「その他の長期従業員給付債務の認識に係る調整」△2.9億円がありますが、注記の説明に有給休暇の記載がないため集計に含めていません。

読みどころは3つです。

  • 第一に、3社はいずれも一桁台の減少にとどまり、ワコールホールディングスと村田製作所は64社の中央値△1.7%に近く、TDKはそれよりやや大きい結果となりました。
  • 第二に、今回の4社ではそろって減益でした(64社全体では46%)。4社という少数のため一般化はできませんが、今回の観測結果としては対照的です。
  • 第三に、47社に現れる未消化有給休暇の明示項目が4社では確認できず、代わりに退職給付のれんの利益剰余金調整の上位を米国基準からの移行組が占めています。

64社の全データは、当サイトのIFRS移行影響ナビで会社別・調整項目別に絞り込めます。資本の増減だけを横断で見たい場合はIFRS初度適用64社の資本増減もあわせてご覧ください。

自社で検討するときの5つの見どころ

日本基準からの移行を前提にしたチェックリストは、そのまま使えません。4社の実額から逆算した優先順位です。

ステップ1:確定給付制度の未認識項目を先に洗い出す

4社すべてで利益剰余金調整のマイナスが出た項目です。

その他の包括利益累計額に計上されている数理計算上の差異等の残高と、その組替スケジュールを先に洗い出します。移行時にはこの残高が利益剰余金へ振り替わるため、利益剰余金の見え方が大きく変わります。制度の規模が大きい会社ほど金額が張るため、影響試算の起点はここに置きます。

ステップ2:のれんの減損テスト単位を報告単位から資金生成単位へ割り直す

のれんの残高そのものではなく、減損テストの単位(CGUまたはCGUグループ)をどう割り直すかが金額を左右します。

移行日の減損テストで損失が出るかを机上で先に確かめておくと、開示の直前に慌てずに済みます。

ステップ3:資本性金融商品の測定区分を決める

3社で金融商品の調整が出ています。

ワコールホールディングスの△224億円は、同社の内訳で最大のマイナス項目です。その他の包括利益を通じて公正価値で測定する区分を選ぶと、売却損益を純損益へ振り替えられなくなる点が実務上の分岐になります。

ステップ4:IFRS第1号の免除規定のうち、どれを使うかを早めに固める

みなし原価の適用のように、初度適用時にだけ選べる取扱いがあります。

TDKはみなし原価の適用により△40億円、ワコールホールディングスは一部の無形資産へのみなし原価適用等により△1億円を計上しています(同社の有形固定資産△4億円は減損による調整です)。金額は小さいものの、選択の結果は移行後の減価償却費に長く残ります。原文はIFRS財団のサイトで確認できます。

ステップ5:内訳表と資本合計のブリッジを最初に作る

項目別の内訳は利益剰余金に対する調整であり、資本合計の増減にはその他の包括利益累計額、非支配持分、資本剰余金等の動きが加わります。

社内説明の資料を作る段で差額に気づくと、組み立てをやり直すことになります。最初から、利益剰余金、その他の資本の構成要素、非支配持分・その他の資本項目に分けて組むのが安全です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 米国基準からIFRSへの移行は、日本基準からの移行より影響が小さいのですか

本調査の4社だけから、米国基準からの移行影響が一般に小さいとは断定できません。

ただし4社中3社では、資本の減少率が△1.1%〜△5.2%にとどまり、64社全体の中央値△1.7%と同水準でした。一方、ソニーグループは+25.3%、1兆2,100億円の増加と大きく動いており、事業構成や保有資産による個社差が大きいことが分かります。

Q2. なぜ4社すべてで退職後給付がマイナスになるのですか

置き場所と組替の違いが理由です。

米国基準では、費用処理前の数理計算上の差異等をその他の包括利益累計額に置き、その後一定期間で純損益へ組み替えます。

IFRSでは再測定を純損益へ組み替えないため、移行時にこの累積残高が利益剰余金とその他の資本の構成要素の間で振り替わり、利益剰余金調整の行にマイナスとして現れます。

残高は制度の規模、数理計算上の前提と実績との差異、過去勤務費用の発生状況などによって大きくなる一方、資本合計への影響は振替の反対側と相殺されて限定的な場合があります

Q3. のれんを償却しなくなることは、移行のプラス要因にならないのですか

プラス要因になりません。

米国基準IFRSものれんを規則的に償却しないため、償却負担が消えるという効果が生じないからです。4社のうちのれんが現れた3社はいずれもマイナスで、原因は減損の側にあります。日本基準からの移行を前提にした「非償却で利益が増える」という説明を、そのまま持ち込まないよう注意が必要です。

Q4. 未消化有給休暇の調整が4社に出てこないのはなぜですか

米国基準でも一定の要件を満たす有給休暇について負債を認識するため、日本基準からの移行に比べて大きな追加調整が生じにくいことが一因と考えられます。

日本基準からの移行では47社が有給休暇を明示した調整項目を開示し合計△1,308億円に達しますが、今回の4社では独立項目として確認できませんでした。ワコールホールディングスに「その他の長期従業員給付債務の認識に係る調整」△2.9億円がありますが、注記の説明は一部の連結子会社の長期従業員給付制度についてのもので、有給休暇には触れていません。

ただし、差額が完全にゼロであることを示すものではありません。日本基準からの事例を参考にすると、この項目を過大に織り込む可能性があります。

Q5. 4社の内訳を足しても資本の増減額に合いません。どこを見ればよいですか

合わないのが通常です。各社が開示する項目別の内訳は、多くの場合、利益剰余金に対する調整の内訳です。資本合計にはこれに加えて、その他の資本の構成要素(その他の包括利益累計額)、非支配持分、資本剰余金等への調整が含まれます。

本記事の内訳表(累積換算差額の振替を含む)に対する4社の残差は、ソニーグループ+2兆255億円、TDK+1,937億円、ワコールホールディングス+215億円、村田製作所△990億円です。差額が出たら、その他の資本の構成要素、非支配持分、資本剰余金等を確認してください。

なお従前基準との調整表は、原則として最初のIFRS財務諸表(適用初年度の有報)に掲載され、翌年度以降の有報には通常再掲されません。適用初年度の四半期報告書等にも一定の開示が求められます。

まとめ:影響の大小は、項目別に見ないと判断できません

米国基準からの移行は事例が4社と少なく、基準の一般的な比較だけでは自社の影響を見積もれません。ただし実際の開示に当たると、影響が集まる場所はかなり明確でした。

  • 本調査64社(適用初年度2021年6月期〜2026年3月期)のうち米国基準からの移行は4社です。TDK△5.2%、ワコールホールディングス△1.7%、村田製作所△1.1%と数%の減少にとどまり、ソニーグループだけが+25.3%、1兆2,100億円の増加でした。
  • 主要な認識・測定調整では、退職後給付が4社すべて、のれんの減損が3社でマイナスとなりました。これとは別に、4社すべてが累積換算差額をゼロとみなす免除規定を選択しています。
  • のれんの調整は非償却の恩恵ではなく、減損テスト単位の差異など減損の認識のしかたから生じています。
  • 日本基準からの移行で47社に現れる未消化有給休暇について、4社では明示した独立項目が確認できませんでした(差額が完全にゼロであることを示すものではありません)。
  • 4社すべてで比較年度は減益です。資本が増えたソニーグループも減益でした。
  • 項目別の内訳は資本合計のブリッジになっていません。ソニーグループの資本増加+1兆2,100億円は、利益剰余金△8,155億円に対し、累積その他の包括利益+1兆5,605億円と非支配持分+4,572億円が押し上げた構造です。

次の一歩として、自社の確定給付制度の未認識残高と、のれんの減損テスト単位の割り方を確認してみてください。他社の調整表を比べたい場合は、IFRS移行影響ナビから会社別・項目別に絞り込めます。

参考一次情報


最終更新日:2026年8月15日
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・会計判断は税理士または公認会計士にご相談ください。

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