AWSは日本法人からの請求、国外法人が請求するネット広告はリバースチャージ、では ChatGPT や Notion は――。海外のSaaS・広告・AIツールの消費税区分は、サービス名を見ても決まりません。
決まるのは請求元の
- 法人
- 契約の形
- 取引日
の3点です。
本記事では、電気通信利用役務の提供の判定を7つの分岐に分解したうえで、経理部・会計事務所の実務で特に誤りが多い3つの論点を、国税庁の一次情報にあたって確認します。とくに3つ目は、誤りやすい論点です。
最後に、主要86サービスを取引日・課税方式と連動して一括判定できるツールも用意しています。
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解説動画
スライド解説










結論:判定は「サービス名」ではなく、請求元・契約形態・取引日で決まります
海外サービスの消費税処理は、次の4点を押さえれば大半のケースを整理できます。
- 内外判定は「役務の提供を受ける者の住所地」
国外事業者から買っても、受け手が国内の事業者であれば国内取引として消費税の課税対象になります(消費税法4条3項3号)。 - 国外事業者からの仕入は「事業者向け」か「消費者向け」かで処理が真逆になります
事業者向けならリバースチャージ方式、消費者向けなら提供者側が申告納税します。 - 消費者向けで提供者が適格請求書発行事業者でない場合、仕入税額控除はできません
免税事業者等からの仕入に係る7・5・3割(旧8割・5割)の経過措置は、この取引には適用されません。 - 指定プラットフォーム経由なら、指定開始日以後に限りインボイスで判定
プラットフォーム事業者名義のインボイスで判定します(消費税法15条の2)。
逆に言えば、「Googleだから」「業務で使うツールだから」といったサービス単位・用途単位の判定は、いずれも根拠になりません。
以下、判定の骨格から順に確認します。
「電気通信利用役務の提供」とは何か(該当する取引・しない取引)
定義:ネット経由の役務提供のうち、他の役務に付随しないもの
電気通信利用役務の提供とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供(利用の許諾に係る取引を含みます)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供をいいます(消費税法2条1項8号の3)。
ただし、次の2つは定義から除かれます。
①電話等の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供(=通信そのもの)
②他の資産の譲渡等の結果の通知など、他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供
この「付随して行われるものは除く」という一文が、実務上の線引きの要になります。ネットを使っていれば何でも該当するわけではなく、ネット経由の提供そのものが取引の目的かどうかで判断します。
該当する取引・該当しない取引の具体例
国税庁のQ&Aは、該当する取引と該当しない取引を次のとおり例示しています。
| 該当する(電気通信利用役務の提供) | 該当しない(別の規定で判定) |
|---|---|
| 電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(アプリを含む)の配信 | 電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報の伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信) |
| クラウド上のソフトウエア・データベースを利用させるサービス | ソフトウエアの制作等 |
| クラウド上で電子データの保存場所を提供するサービス | 国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングを含む) |
| インターネットを通じた広告の配信・掲載 | 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等 |
| ショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス | 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等 |
| ゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス | 著作権の譲渡・貸付け |
| インターネットを介して行う宿泊予約・飲食店予約サイト、英会話教室 | ― |
実務で迷いやすいのは右列の2行目・4行目です。
海外のフリーランスに制作を委託し、成果物をデータで受け取る取引は、ネット経由でも「ソフトウエアの制作等」に近く、電気通信利用役務の提供には該当しません。
この場合は役務提供地で内外判定を行うため、結論が正反対になります。
内外判定は「役務の提供を受ける者の住所地」
電気通信利用役務の提供に該当すると、内外判定の基準が通常の役務提供とは変わります。
原則の「役務の提供が行われた場所」ではなく、役務の提供を受ける者の住所若しくは居所、または本店若しくは主たる事務所の所在地で判定します(消費税法4条3項3号)。
したがって、米国法人からクラウドサービスを購入しても、受け手が日本の会社であれば国内取引です。
逆に、日本の会社が国外の事業者・消費者にネット経由でサービスを提供する場合は国外取引(消費税の課税対象外)となり、輸出免税(消費税法7条)の適用ではない点にも注意が必要です。
なぜ平成27年に判定基準が変わったのか
この受け手基準は、平成27年10月1日から適用されているものです。
それ以前は、電子書籍や音楽配信の内外判定を「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」で行っていました。その結果、同じ電子書籍でも国内の事業者が配信すれば消費税が課税され、国外の事業者が配信すれば課税されないという状態が生じ、国内外の事業者間で競争条件に差がついていました。
この不均衡を解消するために内外判定の基準が見直され、あわせて、事業者向けについてはリバースチャージ方式、消費者向けについては国外事業者申告納税方式という2つの課税方式が整備されました。
現在の複雑さは、この「2つの方式の使い分け」に由来しています。判定に迷ったときは、「この取引の消費税を納めるのは売り手か買い手か」という問いに立ち返ると整理しやすくなります。
消費税の判定を分ける7つの分岐
ここまでを踏まえると、判定は次の7段階に整理できます。上から順に見ていけば、結論は1つに定まります。
| 分岐 | 確認すること | 分かれ方 |
|---|---|---|
| 1. 該当性 | ネット経由の提供そのものが目的か | 非該当なら通常の役務提供として判定 |
| 2. 内外判定 | 役務の提供を受ける者の所在地 | 国内なら課税対象/国外なら課税対象外 |
| 3. 請求元 | 請求書の発行元は国内法人か国外法人か | 国内法人なら通常の課税仕入で終了 |
| 4. 事業者向けか | 役務の性質・取引条件から通常事業者に限られるか | 事業者向けならリバースチャージ |
| 5. プラットフォーム | 指定プラットフォーム経由か、その指定開始日以後か | 該当すればPF事業者名義のインボイスで判定 |
| 6. 登録の有無 | 提供者が適格請求書発行事業者か | 登録なしなら仕入税額控除不可 |
| 7. 少額特例 | 税込1万円未満か、自社が売上規模要件を満たすか | 満たせば帳簿保存のみで控除の余地 |
この7分岐を、上から順にたどる形で図にすると次のようになります。
分岐1〜3:まず「請求書の発行元」を見る
実務で最初に見るべきは、サービス名ではなく請求書に記載された発行元の社名と本店所在地です。同じブランドでも、日本法人が請求していれば国内取引として通常の課税仕入で判定が終わります。
ここで注意したいのは、1つのブランドに複数の請求主体があることです。
Google の場合、日本の適格請求書発行事業者として
- 「グーグル合同会社(T1010401089234)」
- 「グーグル・クラウド・ジャパン合同会社(T6010003022051)」
- 「Google Asia Pacific Pte. Ltd.(T4700150006045)」
の3者が公表されており、どの法人名で請求されるかはサービスと契約によって異なります。
したがって「Googleだから国内取引」とは言えず、手元の請求書に記載された法人名と登録番号で判定する必要があります。
日本法人が請求している場合は、国内取引として通常の課税仕入で判定が終わります。一方、同じ Google でも Google Play を通じた国外開発者のアプリ購入は、後述のプラットフォーム課税の話になります。
Microsoft 365 は日本マイクロソフト株式会社、Zoom は Zoom Communications Japan 株式会社からの請求が一般的です。いずれも契約時期により異なる場合があるため請求書で確認してください。
分岐4:事業者向けか消費者向けか
事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質または取引条件等から、役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいいます(消費税法2条1項8号の4)。国税庁は次の2類型を例示しています。
・ウェブサイト上への広告の掲載のように、その役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
・事業者ごとに個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われ、契約において事業として利用することが明らかなもの
これに該当すると、買い手である国内事業者が「特定課税仕入れ」として申告・納税するリバースチャージ方式になります。
ただし、一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間、簡易課税制度が適用される課税期間、2割特例・3割特例が適用される課税期間については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます(平成27年改正法附則42条・44条2項。2割特例・3割特例については平成28年改正法附則51条の2第4項・51条の3第4項)。この場合は申告に含める必要がなく、仕入税額控除のみを行うこともできません。
なお、2割特例と3割特例は簡易課税制度そのものではなく、それぞれ別に設けられた特例です。とくに令和8年度税制改正で創設された3割特例は、インボイス発行事業者の登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者の令和9年分・令和10年分が対象で、法人には適用されません。法人の経理担当者は、自社が「一般課税か簡易課税か」「課税売上割合が95%以上か」を確認すれば足ります。
両建て計上が必要になるのは、一般課税かつ課税売上割合が95%未満の場合です。不動産賃貸業など非課税売上の多い会社では、ここが実際に効いてきます。
分岐5:プラットフォーム課税は「指定開始日」とセットで確認する
令和7年4月1日から、国外事業者が特定プラットフォーム事業者を介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供について、そのプラットフォーム事業者が提供者とみなされる制度が始まりました(消費税法15条の2)。買い手は、開発者本人ではなくプラットフォーム事業者名義のインボイスで控除可否を判定します。
国税庁が公表している特定プラットフォーム事業者名簿(令和8年6月10日現在)は次のとおりです。
| プラットフォーム | 事業者 | 適用開始日 |
|---|---|---|
| App Store/Apple Books/Apple Podcasts | iTunes株式会社 | 令和7年4月1日 |
| AWS Marketplace | アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 | 令和7年4月1日 |
| Google Play | グーグル アジア パシフィック プライベート リミテッド | 令和7年4月1日 |
| Nintendo eShop | 任天堂株式会社 | 令和7年4月1日 |
| Epic Games Store/Fab | エピック ゲームズ コマース ゲーエムベーハー | 令和8年12月1日 |
名簿に載っていない Steam などのプラットフォームは対象外です。また Epic Games Store は令和8年12月1日より前の購入には適用されません。
同じサービスでも取引日で結論が変わるため、期中の判定では取引日の確認が欠かせません。
分岐6:登録の有無は請求書の登録番号で確認する
消費者向けと判定した場合、最後に確認するのが提供者の登録の有無です。
請求書に記載された「T+13桁」の登録番号を、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで照合します。公表サイトの通常の検索画面は登録番号での検索ですので、法人名しか分からない場合は法人番号公表サイトで法人番号を調べ、頭にTを付けて検索するのが実務的です。
分岐7:少額特例は国外B2Cにも使えます
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます(少額特例)。
この特例は、消費者向け電気通信利用役務の提供にも適用できます。
国税庁のQ&A(令和8年6月改訂)問29は、国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供について少額特例の適用を受けることができる旨を明記しています。月額数千円のツール類は、提供者が未登録でもここで救済される可能性があります。
ただし、リバースチャージの対象となる特定課税仕入れは少額特例の対象外です。また、特定期間の判定に給与支払額を用いることはできず、課税売上高で判定します。1万円未満かどうかは1回の取引の税込金額で見ますので、月額課金なら1か月分の請求単位で判定します。
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取引日と自社の課税方式を入力すると、判定ウィザード・サービス早見表・仕訳パターン・実務ケースが連動して切り替わります。月次チェックリストとしてそのまま使えます。
- 86サービスの早見表
- 取引日・課税方式で自動判定
- 一括判定+CSV出力
- 実務ケース54件
制度情報基準日 2026年9月/実務適用時は最新の請求書と国税庁公表サイトでご確認ください
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経理実務で誤りが多い3つの論点
ここからが本題です。判定の骨格は上のとおりですが、実務では次の3点で処理が分かれます。いずれも、税額に直接影響します。
誤解1:「業務で使うSaaSだから事業者向け=リバースチャージ」ではありません
Notion、Figma、Asana、Cloudflare、Zapier のようなツールを、法人プランで契約しているという理由だけで事業者向けと整理していないでしょうか。これは危険な判定です。
国税庁の質疑応答事例は、事業者向けに該当するかどうかについて次のように述べています。
利用料が高額であるとか、利用者のほとんどが事業者であるとしても、その事実のみをもって、その役務の性質から事業者向け電気通信利用役務の提供に該当すると判断することはできません。
つまり基準は「自社が業務で使っているか」ではなく、提供者が消費者の申込みを事実上制限しているかです。
条文は「役務の性質又は取引条件等」から判定すると定めていますので、規約や契約の内容も判定要素にはなります。ただし、ウェブサイトから個人でも同じ条件で申し込めるセルフサービス型のプランについては、規約に「事業者向け」と書かれているだけでは事業者向けと判定する根拠になりません。
実務上の有力な判断材料になるのが、営業担当を介した個別交渉契約(Enterprise等)かどうかです。
個別に取引内容を取り決めた契約は国税庁の例示する2類型目にあてはまりやすく、ウェブから誰でも申し込めるプランは事業者向けとは言いにくくなります。ただしこれは法令上の判定基準そのものではなく、あくまで「役務の性質又は取引条件等」を見るための手がかりです。
請求書に消費税10%が計上されているかどうかも、提供者側がどちらで整理しているかを知る有力な手がかりになります。
判断に迷ったときは、次の3問で切り分けてください。
- 個人名義・個人のクレジットカードでも同じプランを契約できますか。
できるなら、事業者向けとは言いにくくなります。 - 申込時に法人番号やVAT番号の入力を求められましたか。
提供者が事業者であることを確認して契約している場合は、取引条件から事業者向けと整理される方向に働きます。 - 請求書に消費税10%が計上されていますか。
計上されていれば、提供者は消費者向けとして自ら納税している可能性が高く、リバースチャージではなく登録の有無で判定する取引です。
なお、国税庁が「役務の性質から客観的に事業者向けであることが明らかなもの」の例として挙げているのは、ウェブサイト上への広告の掲載と、ゲームソフト等を販売する場所を提供するサービスです。
Meta広告・X広告・TikTok広告は、この3問を経るまでもなく事業者向けと整理できます。
宿泊予約サイトの掲載手数料については、国税庁の質疑応答事例が「宿泊施設の運営者しか利用しない」という取引条件から事業者向けに該当すると回答しています。
誤解2:「Apple・Google経由ならプラットフォーム課税」ではありません
プラットフォーム課税には、見落とされやすい3つの限定があります。
- 指定開始日前の取引には適用されません
Epic Games Store/Fab は令和8年12月1日からの適用であり、それ以前の購入は提供者本人の登録の有無で判定します。 - プラットフォーム事業者自身が提供する役務は対象外です
制度は「国外事業者が」プラットフォームを介して行う提供をみなし対象としています。Apple Music、iCloud+、YouTube Premium などは、プラットフォーム上の第三者コンテンツではなく提供者自身のサービスであるため、通常どおり提供者の所在地と登録の有無で判定します。結論が同じ「課税仕入」でも、法的根拠は別物です。 - 法令上、事業者向けの役務は対象外です
プラットフォーム課税は消費者向け電気通信利用役務だけを対象とするため(消費税法15条の2)、事業者向けに該当する役務はこの制度の外にあります。ただし制度の射程と、実際に誰が請求しているかは別問題です。たとえば AWS は、AWS Marketplace で販売される製品について AWS Japan(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)が10%の消費税を徴収し、同社の登録番号(T6011001106696)で適格請求書を発行すると案内しています。この場合、買い手は AWS Japan 名義のインボイスで控除判定することになります。「事業者向けだから自動的にベンダーとのリバースチャージ」と決めつけず、請求書の発行元と消費税の計上有無を必ず確認してください。
「App Store の請求だからプラットフォーム課税」と一括りにすると、この3つのいずれかで判定を誤ります。
誤解3:「登録なしでも80%(70%)控除できる」は誤りです
これが最も影響の大きい論点です。国外事業者から受ける消費者向け電気通信利用役務の提供について、提供者が適格請求書発行事業者でない場合、免税事業者等からの仕入に係る経過措置(80%・70%・50%・30%控除)は適用されません。
国税庁の質疑応答事例は、次のとおり明記しています。
適格請求書発行事業者の登録を受けていない国外事業者から提供を受けたものについては、仕入税額控除の対象とはなりません。
※ 適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置(中略)の適用はありません。
この質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令等にもとづくため、引用中の括弧内は改正前の「80%・50%」という表記です。
より新しい令和8年6月改訂の国税庁Q&A(問29)では、令和8年度税制改正後の割合を明示したうえで「一定割合(80%・70%・50%・30%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることはできません」と述べられています。改正の前後を問わず、この取引に経過措置は適用されません。
この誤りが広まりやすいのには理由があります。7・5・3割の経過措置は国内の免税事業者等からの課税仕入れには確かに適用されるため、「登録なし=経過措置」という発想が定着してしまうのです。しかし国外B2Cについては、登録国外事業者制度の時代から続く控除制限が別に置かれており、経過措置の射程外です。
| 登録なしの相手先 | 一般課税での取扱い | 取引日による変動 |
|---|---|---|
| 国内の免税事業者等 | 7・5・3割の経過措置あり(80%→70%→50%→30%) | あり(取引日で控除割合が変わる) |
| 国外事業者・消費者向け電気通信利用役務 | 仕入税額控除の対象外(少額特例の要件を満たす場合を除く) | なし(令和8年10月1日をまたいでも結論は同じ) |
なお、令和8年度税制改正で導入された「同一の相手先からの課税仕入れが年または事業年度で1億円を超える部分には経過措置を適用しない」という上限(改正前は10億円)も、あくまで7・5・3割の経過措置についての話です。この上限は令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるため、取引日だけでは判定できない点にも注意してください。
自社が該当していないかを5分で確認する手順
誤りが起きているかどうかは、会計データから短時間で確認できます。
- 手順1:
会計ソフトで、税区分に「経過措置80%」「経過措置70%」が使われている仕訳を期間指定で抽出します。 - 手順2:
抽出結果の取引先を見て、国外法人名(Inc.、LLC、Ltd.、Pte. Ltd.、GmbH など)が含まれていないかを確認します。 - 手順3:
含まれていた場合、その取引が事業者向け(リバースチャージ対象)でなければ、経過措置は使えません。控除不可の課税仕入に振り替えます(具体的な税区分の名称は会計ソフトの設定に従ってください)。
逆に、国内の免税事業者(個人の外注先など)に経過措置の区分が当たっているのは正しい処理です。この2つを取り違えないことが、確認作業のポイントになります。
誤解3を放置すると、いくらの是正になるのか
金額感を持っておくと、社内の優先順位づけがしやすくなります。仮に、登録が確認できない国外事業者の消費者向けサービスを月額税込11,000円で10本利用している会社を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間支払額(税込11,000円 × 10本 × 12か月) | 1,320,000円 |
| うち消費税相当額 | 120,000円 |
| 誤って70%控除していた場合の控除額 | 84,000円 |
| 本来の控除額(一般課税・登録なし) | 0円 |
| 控除超過額(是正が必要な金額) | 84,000円 |
1年でこの水準ですので、複数年にわたって同じ処理をしていれば、本税に加えて過少申告加算税や延滞税の対象になり得ます。
逆に、簡易課税や免税事業者であれば納税額に影響しないため、優先度は下がります。まず自社の課税方式を確認してから、該当取引を洗い出すのが効率的です。
公開前に社内点検しておきたい3つのポイント
この論点は金額が小さく件数が多いため、1件ずつの是正よりも処理の型が正しいかが問われます。次の3点は、説明を求められたときに答えられるようにしておきたい部分です。
- 税区分の一貫性
同じ相手先・同じサービスなのに、月によって「課税仕入10%」「経過措置80%」「対象外」が混在していないか。担当者や入力経路(カード連携・手入力)で区分がぶれているケースが典型です。 - 登録番号の確認記録
「登録あり」として全額控除している取引について、登録番号を公表サイトで照合した記録が残っているか。請求書に番号の記載がないまま控除していると、指摘の対象になり得ます。 - 課税売上割合との整合
課税売上割合が95%を下回った課税期間について、特定課税仕入れの両建て計上が漏れていないか。前期まで95%以上だった会社が、資産の売却などで一時的に95%を割り込む年に起きやすい漏れです。
いずれも、判定時に根拠を残しておけば説明で済む論点です。逆に記録がないと、正しく処理していたことを示すのに時間がかかります。
自社の課税方式で、仕訳はこう変わります
同じ取引でも、自社の課税方式によって仕訳は変わります。税抜100,000円(税込110,000円)の取引を例に整理します。
| 自社の課税方式 | 国外・事業者向け(RC) | 国外・消費者向け+登録なし |
|---|---|---|
| 一般課税・課税売上割合95%以上 | 計上不要(特定課税仕入れはなかったものとされる) | 税込110,000円を全額費用。仮払消費税の計上なし |
| 一般課税・課税売上割合95%未満 | 仮払消費税10,000円と仮受消費税10,000円を両建て計上 | 税込110,000円を全額費用。仮払消費税の計上なし |
| 簡易課税、2割特例・3割特例 | 計上不要(特定課税仕入れはなかったものとされる) | 税込処理。相手方の登録の有無は納税額に影響しない |
| 免税事業者 | 申告義務なし | 税込処理。仕入税額控除の論点なし |
会計ソフトの税区分では、国外・消費者向け+登録なしの取引に「経過措置80%」「経過措置70%」の区分を使わないことがポイントです。
この取引は国内における課税仕入れではあるが、適格請求書の保存要件を満たさないため仕入税額控除ができないという位置づけですので、「課税仕入れ(仕入税額控除不可)」に相当する区分で登録し、消費税相当額は本体費用に含めます。不課税(課税対象外)とは意味が異なる点に注意してください。
主要サービスの判定早見表と、86サービスの一括判定ツール
代表的なサービスの整理は次のとおりです。
請求元の法人名と登録の有無は国税庁が公表している情報ではなく、各社の請求書・公表情報にもとづく2026年8〜9月時点の整理です。同じサービスでも契約時期・プラン・地域によって請求元が変わることがあります(とくにGoogle広告・AWSは旧契約が残っているケースがあります)。
実際の処理にあたっては、必ず手元の請求書の発行元と登録番号を確認してください。
| サービス | 請求元の例 | 判定の考え方 |
|---|---|---|
| Google広告 | グーグル合同会社(T1010401089234)等 | 日本法人請求なら国内取引・通常の課税仕入。請求書の法人名で確認 |
| Google Workspace/Google Cloud | グーグル・クラウド・ジャパン合同会社/Google Asia Pacific Pte. Ltd. 等 | 広告と請求主体が異なる場合がある。登録番号で確認 |
| Microsoft 365/Azure | 日本マイクロソフト株式会社 | 国内取引・通常の課税仕入 |
| AWS(本体) | アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 | 2022年2月1日以降は同社が契約当事者。旧契約の米国法人請求は要確認 |
| AWS Marketplace(第三者製品) | アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(T6011001106696) | AWSの案内では同社が消費税を徴収し適格請求書を発行。明細の発行元を確認 |
| Meta広告/X広告/TikTok広告 | 国外法人(請求元要確認) | 事業者向け・リバースチャージ |
| Booking.com/Airbnb の掲載・仲介手数料 | 国外法人 | 事業者向け・リバースチャージ |
| ChatGPT(直接購入) | OpenAI OpCo, LLC | 直接購入は課税・適格請求書あり。個別交渉契約は要確認 |
| Notion/Figma/Cloudflare 等 | 国外法人 | プラン・契約条件で判定(セルフ申込か個別契約か) |
| App Store の第三者アプリ | iTunes株式会社 | プラットフォーム課税(令和7年4月1日〜) |
| Apple Music/YouTube Premium | 提供者自身 | PF課税ではなく提供者の所在地・登録で判定 |
| Steam | Valve Corporation | 指定外。登録なしなら控除不可 |
同じブランドでも判定が分かれる3つの典型例
海外SaaSの判定でつまずくのは、たいてい次のような「同じブランドなのに結論が違う」ケースです。
- Google:
請求主体が「グーグル合同会社」「グーグル・クラウド・ジャパン合同会社」「Google Asia Pacific Pte. Ltd.」に分かれており、広告・Workspace・Cloud で同じとは限りません。Google Play 経由の国外開発者アプリはプラットフォーム課税、YouTube Premium は Google 自身のサービスなのでプラットフォーム課税ではなく提供者の所在地と登録で判定します。いずれも請求書の法人名と登録番号で確認してください。 - Amazon:
AWS本体は2022年2月1日以降、AWS Japan が日本国内のアカウントの契約当事者となり適格請求書を発行します。AWS Marketplace の第三者商品も、AWS の案内では AWS Japan が消費税を徴収し同社名義の適格請求書を発行するとされています。一方、Amazon出品の販売手数料は国外法人請求で事業者向けと整理されるのが一般的です。同じ「Amazon」でも請求元が分かれます。 - Apple:
App Store の第三者アプリはプラットフォーム課税。Apple Music・iCloud+ は Apple 自身のサービスとして通常の課税仕入。Apple Developer Program の年会費は、消費者としてアプリを購入する場面とは立場が逆になるため、請求元法人と契約条件を個別に確認してください。
いずれも「請求元は誰か」「第三者のコンテンツか自社サービスか」「消費者向けか事業者向けか」の3点で分かれています。
より詳細な判定は、taxjudge の電気通信利用役務の提供 消費税判定ダッシュボードをご利用ください。取引日と自社の課税方式を設定すると、判定ウィザード・86サービスの早見表・仕訳パターン・実務ケース54件が連動して切り替わります。月次チェックリストとして一括判定した結果は、CSVでの出力にも対応しています。
電気通信利用役務の提供 消費税判定ダッシュボード
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- 86サービスの早見表
- 取引日・課税方式で自動判定
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月次で回す5ステップ
最後に、実務に落とし込む手順を整理します。
- ステップ1:自社の課税方式を確定する
一般課税か簡易課税か、一般課税なら課税売上割合が95%以上かを先に確認します。ここで以降の作業量が大きく変わります。 - ステップ2:海外サービスへの支払を洗い出す
法人カードの明細、経費精算、外貨建ての振込を対象に、支払先ごとにリストを作ります。個人カードでの立替精算も対象です。 - ステップ3:請求書の発行元と登録番号を確認する
サービス名ではなく、請求書に記載された社名・住所・登録番号を見ます。登録番号は公表サイトで照合します。 - ステップ4:7分岐で区分を確定し、税区分マスタに反映する
とくに「登録なしの国外B2C」に経過措置の区分を割り当てていないかを確認します。 - ステップ5:判定根拠を証跡として残す
判定日・取引日・請求元・登録番号・結論をセットで保存します。担当者が代わっても再現できる形にしておくことが、税務調査対応の負担を最も軽くします。
会計事務所が顧問先に案内するときの伝え方
顧問先に「海外サービスの消費税を確認してください」と伝えても、経理担当者にはどこから手を付ければよいか分かりません。次の3点に絞って依頼すると、回収率が上がります。
- 依頼するのはリストではなく「請求書のPDF」
科目や摘要だけでは請求元法人を特定できません。1件でよいので実物を送ってもらうのが最短です。 - 優先順位は金額ではなく「登録が確認できないもの」
国外の消費者向けと判定済みの取引のうち、提供者の登録が確認できるものは通常の課税仕入で処理が固まります。判断が分かれるのは登録が確認できないもので、ここが控除できるかどうかの境目になります。 - 課税方式が簡易課税・免税の顧問先は後回しでよい
相手方の登録の有無が納税額に影響しないため、優先度が構造的に低くなります。限られた時間を一般課税の顧問先に振り向けてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本の会社が海外の顧客にSaaSを提供する場合、輸出免税になりますか?
いいえ。
電気通信利用役務の提供は、役務の提供を受ける者の所在地で内外判定を行います。受け手が国外であれば国外取引(消費税の課税対象外)となり、そもそも課税対象外です。輸出免税(消費税法7条)は国内取引であることが前提の規定ですので、適用の場面が異なります。
Q2. 特定課税仕入れを申告に含めていませんでしたが、修正が必要ですか?
一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間、簡易課税制度が適用される課税期間、2割特例・3割特例が適用される課税期間については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。
この場合は申告に含める必要がなく、修正も不要です(3割特例は個人事業者の令和9年分・令和10年分が対象です)。一方、一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間については、両建て計上と申告が必要です。
Q3. 少額特例は海外のサブスクにも使えますか?
使えます。
基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)であれば、税込1万円未満の課税仕入れについて帳簿のみの保存で控除できます。国税庁のQ&A(令和8年6月改訂)問29は、国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供についても少額特例の適用を受けられる旨を明記しています。ただし特定課税仕入れ(リバースチャージ対象)は対象外で、期限は令和11年9月30日までです。1万円未満かどうかは1回の取引の税込金額で判定し、特定期間の判定に給与支払額を用いることはできません。
Q4. 社員が個人名義で契約した海外SaaSを立替精算する場合はどうなりますか?
課税仕入れの相手方は社員ではなく提供者(国外事業者)ですので、帳簿の相手方も提供者名で記載します。
社員が受領した領収書に立替金精算書を添付して保存する取扱いです。判定そのものは会社が直接契約した場合と変わりません。
Q5. 決済代行会社(Stripe・PayPal等)を経由した支払はどう判定しますか?
決済代行会社は送金経路にすぎませんので、実質的な役務提供者で判定します。
ChatGPTの利用料をStripe経由で支払った場合、判定対象はOpenAIです。なお、決済代行会社に支払う決済手数料そのものは別取引です。債権譲渡型の加盟店手数料は非課税ですが、決済処理サービスの対価として課税される例もありますので、請求書の消費税表示で確認してください。
まとめ:判定の基準は「サービス名」から「請求書」へ
- 電気通信利用役務の提供は、役務の提供を受ける者の所在地で内外判定を行います。国外事業者からの購入でも国内取引です。
- 事業者向けかどうかは用途ではなく、提供者が消費者の申込みを制限しているかで決まります。個別交渉契約かセルフ申込かは、役務の性質・取引条件等を判断するための有力な手がかりです。
- プラットフォーム課税は指定開始日以後・第三者のコンテンツ・消費者向けの3条件を満たす場合に限られます。
- 登録なしの国外事業者からの消費者向け役務には、7・5・3割の経過措置は適用されません。一般課税では控除不可(少額特例の余地のみ)です。
- 判定の証跡は、取引日・請求元・登録番号・結論をセットで残します。
まずは今月の法人カード明細から、海外サービスへの支払を10件だけ抜き出してみてください。そのうち何件で「登録なしの国外B2C」に経過措置の税区分が当たっているかを確認するのが、最も費用対効果の高い第一歩です。判定には消費税判定ダッシュボードをあわせてご利用ください。
電気通信利用役務の提供 消費税判定ダッシュボード
取引日と自社の課税方式を入力すると、判定ウィザード・サービス早見表・仕訳パターン・実務ケースが連動して切り替わります。月次チェックリストとしてそのまま使えます。
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- 取引日・課税方式で自動判定
- 一括判定+CSV出力
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制度情報基準日 2026年9月/実務適用時は最新の請求書と国税庁公表サイトでご確認ください
電気通信利用役務の提供 消費税判定ダッシュボード(無料・登録不要)
参考にした一次情報
- 国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について」(国内事業者向けパンフレットは令和8年6月版)
- 国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(令和8年6月改訂)(該当・非該当の例示は問2-1、消費者向けの控除は問29)
- 国税庁 質疑応答事例「いわゆる『消費者向け電気通信利用役務の提供』を受けた場合の仕入税額控除」
- 国税庁 質疑応答事例「事業者向け電気通信利用役務の提供の範囲」
- 国税庁 タックスアンサー No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係
- 国税庁「消費税のプラットフォーム課税について」(特定プラットフォーム事業者名簿は令和8年6月10日現在)
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」(7・5・3割控除、1億円上限)
- 国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト
最終更新日:2026年9月3日
※本記事は2026年9月3日時点の法令・国税庁公表情報にもとづく一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断は税理士または公認会計士にご相談ください。
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- 【国税庁タックスアンサー|消費税】No.6568 プラットフォーム課税
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