売上げの消費税を計算しよう ── 課税標準額・割戻しと積上げ・返品と貸倒れ
「税込の売上げから、納める消費税はどう計算するの?」に、課税標準額 → 税額 → 返品・貸倒れの順で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 課税標準 | 税額を計算するもとになる金額。国内の売上げなら、課税資産の譲渡等の対価の額(消費税・地方消費税を含まない額) |
| 課税標準額 | 課税期間の課税標準を税率ごとに合計した額。税率ごとに千円未満を切り捨てる |
| 割戻し計算 | 税込の売上げの合計を割り戻して課税標準額を出し、国の税率を掛ける計算(原則) |
| 積上げ計算 | 交付したインボイス(適格請求書・適格簡易請求書)に書いた消費税額等を合計し、78/100を掛ける計算(特例。適格請求書発行事業者だけ) |
| 売上げに係る対価の返還等 | 返品を受けた・値引きや割戻しをしたことで、売上げの代金を返したり減らしたりすること。その税額を控除する |
| 貸倒れ | 売掛金などが、相手の破産などで回収できないことが確定すること。その税額を控除する |
| 法令と数字 | この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
売上げの消費税は、①税込の売上げを税率ごとに割り戻して課税標準額(千円未満切捨て) → ②国の税率を掛けて消費税額 → ③返品・貸倒れの税額を引くの順で計算する。割戻し計算と積上げ計算の違いと、どちらを選ぶかの考え方も説明できるようになること。
※ 入門の範囲として、特定課税仕入れ(リバースチャージ)、みなし譲渡の課税標準、輸入取引は名前だけ扱います。
図で見る:売上げの消費税を計算する順番(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 課税標準額
標準 22,000,000円 ×100/110 → 20,000,000円 軽減 64,800,000円 ×100/108 → 60,000,000円
STEP 2 消費税額
20,000,000円×7.8%+60,000,000円×6.24% = 5,304,000円
STEP 3 割戻しと積上げ
割戻し 1,755,000円(課税標準額×7.8%)/積上げ 1,755,015円(インボイスの税額2,250,020円×78/100)
STEP 4 返品・値引き
324,000円 × 6.24/108 = 18,720円(返品・値引きをした課税期間の税額から控除)
STEP 5 貸倒れ
5,304,000円 − 18,720円 − 7,800円 = 5,277,480円(貸倒れ 110,000円×7.8/110)
さくら食品の売上げの消費税
さくら食品の1年間(2026年4月1日〜2027年3月31日)の売上げの消費税を、計算の順に並べると次のとおりです(割戻し計算)。
やってみよう:割戻し計算と積上げ計算を比べる
同じ売上げを、割戻し計算と積上げ計算で計算してみましょう。違いが出るのは、レシート1枚ごとの税額の端数処理です。
よくある間違い
① 税込の売上げ × 10%が消費税
税込の売上げには、すでに消費税が含まれています。まず×100/110(軽減税率は100/108)で税抜にして課税標準額を出し、国の税率(7.8%・6.24%)を掛けます。地方消費税は、国の税額をもとに別に計算します。② 入金が遅れている売掛金は貸倒れ
貸倒れの税額控除ができるのは、相手の破産手続の終結などで、回収できないことが法律上・事実上確定したときです。入金が遅れているだけでは控除できません。貸倒れの事実を証する書類の保存も必要です。③ 積上げ計算は、得なほうを自由に選べる
売上げの積上げ計算は適格請求書発行事業者だけが使え、交付したインボイスの写しの保存が前提です。売上げを積上げ計算にすると、仕入れも積上げ計算にしなければなりません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 課税標準額は、税込の売上げを税率ごとに×100/110・×100/108で割り戻し、千円未満を切り捨てた額。
- 消費税額(国)は、課税標準額×7.8%・6.24%。地方消費税は国の税額×22/78で別に計算する。
- 割戻し計算が原則。積上げ計算は適格請求書発行事業者が、交付したインボイスの税額を積み上げる特例で、選ぶと仕入れも積上げになる。
- 返品・値引きをした課税期間に、返した額×7.8/110(軽減は6.24/108)を税額から控除する。
- 貸倒れは回収できないと確定した課税期間に控除する。さくら食品の売上げの税は 5,304,000円 − 返品 − 貸倒れ。
参照条文・出典
参照条文:消費税法28条1項(課税標準)、45条1項・5項(課税標準額・積上げ計算)、38条(売上げに係る対価の返還等をした場合の税額控除)、39条(貸倒れに係る税額控除)、消費税法施行令59条・60条(貸倒れの範囲)、62条(積上げ計算)、消費税法施行規則18条・19条(貸倒れの事実を証する書類)、国税通則法118条1項(千円未満切捨て)
参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第5章第1節「課税標準と税率」(pp.34〜37)・第2節「課税標準額等の計算」(pp.38〜40。積上げ計算の例 p.40)、第6章第6節「売上げに係る対価の返還等をした場合等の税額控除等」(pp.62〜63)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)/国税庁タックスアンサー No.6367(貸倒れ)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例の数字は講本の計算例をそのまま使っています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。