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第12回 簡易課税制度|消費税入門講座

消費税 入門講座|第12回(v6)

簡易課税制度 ── 売上げの税から仕入れの税を計算する

「仕入れの税を1件ずつ集めなくても、申告できる方法はある?」に、みなし仕入率・事業区分・届出の3つで答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第8回(仕入税額控除)・第4回(基準期間)条文:消費税法37条・消費税法施行令57条令和8年度改正後の法令で解説
第1章 全体像123
第2章 誰が納める45
第3章 売上げの税67
第4章 仕入れの税8910111213
第5章 申告と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
簡易課税制度基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、届出によって選べる計算方法。仕入れの税を、売上げの税×みなし仕入率で計算する
みなし仕入率事業区分ごとに決まった割合。第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%
事業区分卸売業(第1種)・小売業等(第2種)・製造業等(第3種)・その他(第4種、飲食店業など)・サービス業等(第5種)・不動産業(第6種)
簡易課税制度選択届出書適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに出す。やめるときは不適用届出書。原則として2年間は続ける
一般課税(本則課税)実際の課税仕入れ等の税額で控除する計算(第8〜11回)
法令と数字この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
簡易課税制度は、売上げの税 × みなし仕入率を仕入れの税とみなして控除する方法。基準期間の課税売上高5,000万円以下で、前もって届出をした事業者だけが使える。事業区分とみなし仕入率を読み取り、一般課税と比べて選ぶかどうかを考えられるようになること。
由紀さん:2027年分の売上げの税425,412円
→
料理教室はサービス業(第5種)× 50%
→
納める額(国+地方)272,600円
さくら食品:基準期間の課税売上高8,000万円
→
5,000万円を超える使えない
→
一般課税で計算第8〜11回

※ 入門の範囲として、事業区分の細かな判定(加工賃・製造問屋など)と、調整対象固定資産・高額特定資産を取得した場合の制限は名前だけ扱います。

ハルカ先生、仕入れの税を1件ずつ集めるのは大変そうです。由紀さんも毎年やるんですか?
先生売上げの税から仕入れの税を計算する方法があるんだ。それが簡易課税制度だよ。
ハルカそんなに便利な方法なら、さくら食品も使えばいいのに。
先生使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者だけなんだ。さくら食品は超えているよ。
ハルカ由紀さんなら使えるんですね。
先生そうだよ。由紀さんの2027年分を簡易課税で計算すると272,600円になるんだ。

図で見る:簡易課税の仕組みと選び方(5ステップ)

先生最初は由紀さんで5ステップを通してみよう。講本の計算例と、さくら食品にも切り替えられるんだ。
ハルカさくら食品は、使えるかどうかを確かめるんですね。
先生そうだよ。ステップ3で、要件を1つずつ見ていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 簡易課税:売上げの税 × みなし仕入率 を、仕入れの税とみなす一般課税(第8〜11回)売上げの税− 実際の仕入れの税(インボイスを集計) さらに課税売上割合・方式も考える= 納める税仕入れが多い年・設備投資の年に有利(控除が売上げの税を超えれば還付)簡易課税売上げの税− 売上げの税 × みなし仕入率 仕入れの税を1件ずつ集めない= 納める税なぜある? → 中小事業者の事務負担に配慮するため(仕入れが多くても還付はない)由紀さん(2027年分):売上げの税 425,412円 × 50%(第5種) = 212,706円差引税額(百円未満切捨て) 212,700円 + 地方 59,900円 = 272,600円
425,412円 − 425,412円 × 50% → 差引 212,700円、地方を足して 272,600円
ハルカ由紀さんは、仕入れの税を1件ずつ集めないと申告できないんですか?
先生売上げの税にみなし仕入率を掛けて、それを仕入れの税とみなす方法があるんだ。それが簡易課税制度だよ。由紀さんの2027年分なら、425,412円×50%で212,706円を控除するんだ。
🤔 迷いポイント簡易課税は、仕入れの税を少なめに見積もる「おまけ」の制度?
ハルカ手間を省くかわりに、損をする制度だと思っていました。
先生損とは限らないんだ。サービス業のように仕入れが少ない事業では、実際の仕入れの税より、みなしの額のほうが多いこともあるよ。中小事業者の事務負担に配慮した制度なんだ。
ハルカでも、仕入れが多い年は損をしそうです。
先生そうだね。簡易課税では、仕入れの税が多くても、それを理由とする還付は受けられないんだ。だから選ぶ前に比べるんだよ。
💡 そうだったのか!簡易課税=売上げの税×みなし仕入率を仕入れの税とみなす方法。仕入れの税を1件ずつ集める必要がない。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 簡易課税の仕組み

ハルカ由紀さんは、仕入れの税を1件ずつ集めないと申告できないんですか?
先生売上げの税にみなし仕入率を掛けて、それを仕入れの税とみなす方法があるんだ。それが簡易課税制度だよ。由紀さんの2027年分なら、425,412円×50%で212,706円を控除するんだ。
🤔 迷いポイント簡易課税は、仕入れの税を少なめに見積もる「おまけ」の制度?
ハルカ手間を省くかわりに、損をする制度だと思っていました。
先生損とは限らないんだ。サービス業のように仕入れが少ない事業では、実際の仕入れの税より、みなしの額のほうが多いこともあるよ。中小事業者の事務負担に配慮した制度なんだ。
ハルカでも、仕入れが多い年は損をしそうです。
先生そうだね。簡易課税では、仕入れの税が多くても、それを理由とする還付は受けられないんだ。だから選ぶ前に比べるんだよ。
💡 そうだったのか!簡易課税=売上げの税×みなし仕入率を仕入れの税とみなす方法。仕入れの税を1件ずつ集める必要がない。

425,412円 − 425,412円 × 50% → 差引 212,700円、地方を足して 272,600円

STEP 2 6つの事業区分

ハルカみなし仕入率は、どうやって決まるんですか?
先生この図の6つの事業区分ごとに決まっているんだ。料理教室は教えるサービスだから第5種、50%だよ。
🤔 迷いポイント食べ物を出すお店は、全部「小売業」の第2種?
ハルカお店で売っているなら、小売業だと思っていました。
先生買った商品を形を変えずに売るのが小売業なんだ。自分で作った弁当を売るのは製造小売で第3種、店内で食べさせる飲食店業は第4種だよ。
ハルカ同じお店でも、売り方で区分が変わるんですね。第6回の税率の判定と似ています。
先生いい気づきだね。区分は、売上げごとに判定するんだ。
💡 そうだったのか!みなし仕入率は事業区分ごと(第1種90%〜第6種40%)。仕入れの割合が大きい事業ほど率が高い。区分は売上げごとに判定する。

みなし仕入率:第1種 90%・第2種 80%・第3種 70%・第4種 60%・第5種 50%・第6種 40%

STEP 3 使える人と届出

ハルカ簡易課税は、だれでも使えるんですか?
先生基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、前もって届出を出した事業者だけなんだ。
🤔 迷いポイント今年の売上げが少なければ、今年から簡易課税にできる?
ハルカ申告のときに、簡易課税で計算しますと書けばいいと思っていました。
先生判定は第4回と同じ基準期間で、届出は適用したい課税期間が始まる前日までに出すんだ。由紀さんの2027年分なら原則は2026年12月31日までだよ。ただ、2割特例・3割特例を受けた翌年から簡易課税にするときは、その年分の確定申告期限まで出せる特例があるんだ。由紀さんなら2028年3月31日までだね。
ハルカやめるときも、すぐにはやめられないんですか?
先生原則として、適用を始めてから2年間はやめられないんだ。前もって、何年か先まで見て決めようか。
💡 そうだったのか!簡易課税は、基準期間の課税売上高5,000万円以下+原則として課税期間の開始の日の前日までの届出が要件(2割・3割特例の翌年は申告期限まで)。やめるのは原則2年間後から。

要件:基準期間の課税売上高 5,000万円以下 + 課税期間の開始の日の前日までに届出(やめるのは原則2年間後から)

STEP 4 2つ以上の事業

ハルカ2つ以上の事業をしているときは、どの率を使うんですか?
先生原則は、事業ごとの売上げの税に、それぞれの率を掛けて足すんだ。講本の例では838,500円、率にすると86%だよ。
🤔 迷いポイント2つの事業なら、いちばん高い率を全部に使える?
ハルカ有利な率をまとめて使えれば、計算も楽だと思いました。
先生どれでも使えるわけではないんだ。1つの事業の売上げが75%以上なら、その事業の率を全体に使える特例があるよ。講本の例は卸売業が8割だから、90%を全体に使えるんだ。
ハルカ特例のほうが控除が多いなら、特例を選べばいいんですね。
先生そうだよ。だから事業ごとに売上げを区分して記録しておくことが大事なんだ。区分していないと、いちばん低い率になるよ。
💡 そうだったのか!2つ以上の事業は原則として加重平均。1つの事業が売上げの75%以上なら、その率を全体に使える特例もある。

原則 838,500円(加重平均)/特例 877,500円(卸売業が75%以上 → 全体に90%)

STEP 5 選ぶかどうか

ハルカ由紀さんは、簡易課税を選んだほうがいいんですか?
先生由紀さんの2027年分は、簡易課税なら272,600円だね。でも3割特例なら163,500円で、もっと少ないんだ。
🤔 迷いポイント簡易課税は、いつも一般課税より有利?
ハルカ手間も少なくて税も少ないなら、みんな簡易課税にすればいいと思いました。
先生仕入れが多い事業や、大きな設備投資をする年は、一般課税のほうが有利なことがあるんだ。簡易課税では、仕入れの税が多くても、それを理由とする還付は受けられないよ。
ハルカ来年の投資の予定まで考えて、届出を出すかどうか決めるんですね。
先生そのとおりだね。由紀さんの場合は、まず第13回の3割特例と比べようか。
💡 そうだったのか!簡易課税を選ぶかどうかは、実際の仕入れの税と比べて考える。設備投資の予定や2年間の継続も見通して、前もって決める。

簡易課税 272,600円 / 3割特例 163,500円(第13回で比べる)

由紀さんの2027年分:簡易課税で計算すると

由紀さんの2027年分は、第13回の3割特例も使えます。どちらで申告するかは第13回で比べます。

先生由紀さんの2027年分を、簡易課税で計算した表だよ。
ハルカ仕入れの税を1件も集めずに、売上げだけで計算できていますね。
先生そこが簡易課税のいちばんの特徴なんだ。
ハルカでも、3割特例ならもっと少ないと聞きました。
先生そうなんだ。どちらで申告するかは、第13回で比べようか。

やってみよう:簡易課税の計算機(2つの事業)

事業区分と売上げ(税抜・標準税率)を入れて、みなし仕入率(原則・75%の特例)と納める額を確かめましょう。

ハルカ事業2を足して、75%の特例を試してみます。
先生事業1の売上げが全体の75%以上になると、特例の欄が出るよ。
ハルカ卸売業を多くすると、控除がぐっと増えました。
先生率の高い事業が大部分なら、その率を全体に使えるからなんだ。

よくある間違い

① 売上げが5,000万円以下なら、その年から簡易課税

判定は基準期間(2年前)の課税売上高で、さらに適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに届出が必要です(事業を始めた課税期間は、その課税期間中に出せば使えます)。2割特例・3割特例を受けた翌課税期間から簡易課税にするときは、その課税期間の確定申告期限まで出せます(令和8年度改正)。ただし、2割特例の翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、その課税期間の末日までです。

② 簡易課税なら、仕入れのインボイスはいらないので帳簿もいらない

簡易課税では、仕入れの税を実額で計算しないので、控除のための仕入れのインボイスの保存は要件ではありません。ただし、帳簿の記帳と保存の義務はあります。売上げのインボイスの交付も、登録していれば必要です。

③ 簡易課税は、いつでも一般課税に戻れる

やめるときは不適用届出書を出しますが、事業を廃止した場合を除き、適用を始めた課税期間の初日から2年間を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません。また簡易課税では、実際の仕入れや設備投資に含まれる消費税額が多くても、それを理由とする還付は受けられません(中間納付額が確定税額を上回る場合の還付はあります)。
ハルカ①の届出の時期は、うっかりしそうです。
先生あとからは選べないから、前の年のうちに決めるんだったね。
ハルカ②の帳簿も、簡易課税でも必要なんですね。
先生そうだよ。売上げを事業区分ごとに記録することも大事なんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 料理教室(教えるサービス)のみなし仕入率は?
Q2. 簡易課税制度選択届出書は、原則としていつまでに出す?
Q3. 基準期間の課税売上高が6,000万円の課税期間。簡易課税制度選択届出書は前から出している。正しいものは?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 簡易課税制度は、売上げの税 × みなし仕入率を仕入れの税とみなす。仕入れの税を1件ずつ集める必要がない(中小事業者の事務負担への配慮)。
  2. みなし仕入率は事業区分ごと:第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%。
  3. 使えるのは基準期間の課税売上高5,000万円以下で、原則として課税期間の開始の日の前日までに届出をした事業者(2割・3割特例の翌課税期間からなら、その確定申告期限まで)。やめるのは原則2年間後から。
  4. 2つ以上の事業は、原則として加重平均。1つの事業で売上げの75%以上なら、その事業の率を全体に使える特例がある。
  5. 選ぶかどうかは、実際の仕入れの税(一般課税)と比べて考える。由紀さんの2027年分は272,600円。
先生今日のまとめだよ。簡易課税は、売上げの税×みなし仕入率を仕入れの税とみなす方法なんだ。
ハルカ基準期間の課税売上高5,000万円以下で、前もって届出。率は事業区分ごとに90%から40%ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、選ぶかどうかは一般課税と比べて、何年か先まで見て決めるんだ。
ハルカ由紀さんは、3割特例と比べてから決めるんですね。
先生そうだね。次の第13回では、2割特例・3割特例を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:消費税法37条1項(簡易課税制度)・5項〜7項(不適用届出)、消費税法施行令57条(みなし仕入率・事業区分・2以上の事業)、消費税法基本通達13-1-3、13-2-1〜13-2-9、13-4-1・13-4-2、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2・51条の3(2割特例・3割特例を受けた事業者の簡易課税の届出の特例。令和8年度改正で、翌課税期間の確定申告期限までに)

参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第4節「簡易課税制度」(pp.54〜59。2以上の事業の計算例 pp.57〜59)、第9章1「届出書」(p.74)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)/国税庁「簡易課税制度」の事業区分の説明・令和8年度税制改正(インボイス制度関係)資料

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例の数字は講本の計算例をそのまま使っています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ簡易課税の決まりは、条文のどこにありますか?
先生消費税法37条で、みなし仕入率と事業区分は施行令57条なんだ。
ハルカ事業区分の細かい判定は、どこで確かめられますか?
先生消費税法基本通達13-2-1から13-2-9と、国税庁の事業区分の説明にまとまっているよ。
消費税 入門講座 第12回|taxjudge.com
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