簡易課税制度 ── 売上げの税から仕入れの税を計算する
「仕入れの税を1件ずつ集めなくても、申告できる方法はある?」に、みなし仕入率・事業区分・届出の3つで答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 簡易課税制度 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、届出によって選べる計算方法。仕入れの税を、売上げの税×みなし仕入率で計算する |
| みなし仕入率 | 事業区分ごとに決まった割合。第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40% |
| 事業区分 | 卸売業(第1種)・小売業等(第2種)・製造業等(第3種)・その他(第4種、飲食店業など)・サービス業等(第5種)・不動産業(第6種) |
| 簡易課税制度選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに出す。やめるときは不適用届出書。原則として2年間は続ける |
| 一般課税(本則課税) | 実際の課税仕入れ等の税額で控除する計算(第8〜11回) |
| 法令と数字 | この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
簡易課税制度は、売上げの税 × みなし仕入率を仕入れの税とみなして控除する方法。基準期間の課税売上高5,000万円以下で、前もって届出をした事業者だけが使える。事業区分とみなし仕入率を読み取り、一般課税と比べて選ぶかどうかを考えられるようになること。
※ 入門の範囲として、事業区分の細かな判定(加工賃・製造問屋など)と、調整対象固定資産・高額特定資産を取得した場合の制限は名前だけ扱います。
図で見る:簡易課税の仕組みと選び方(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 簡易課税の仕組み
425,412円 − 425,412円 × 50% → 差引 212,700円、地方を足して 272,600円
STEP 2 6つの事業区分
みなし仕入率:第1種 90%・第2種 80%・第3種 70%・第4種 60%・第5種 50%・第6種 40%
STEP 3 使える人と届出
要件:基準期間の課税売上高 5,000万円以下 + 課税期間の開始の日の前日までに届出(やめるのは原則2年間後から)
STEP 4 2つ以上の事業
原則 838,500円(加重平均)/特例 877,500円(卸売業が75%以上 → 全体に90%)
STEP 5 選ぶかどうか
簡易課税 272,600円 / 3割特例 163,500円(第13回で比べる)
由紀さんの2027年分:簡易課税で計算すると
由紀さんの2027年分は、第13回の3割特例も使えます。どちらで申告するかは第13回で比べます。
やってみよう:簡易課税の計算機(2つの事業)
事業区分と売上げ(税抜・標準税率)を入れて、みなし仕入率(原則・75%の特例)と納める額を確かめましょう。
よくある間違い
① 売上げが5,000万円以下なら、その年から簡易課税
判定は基準期間(2年前)の課税売上高で、さらに適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに届出が必要です(事業を始めた課税期間は、その課税期間中に出せば使えます)。2割特例・3割特例を受けた翌課税期間から簡易課税にするときは、その課税期間の確定申告期限まで出せます(令和8年度改正)。ただし、2割特例の翌課税期間が2026年9月30日以前に終わる場合は、その課税期間の末日までです。② 簡易課税なら、仕入れのインボイスはいらないので帳簿もいらない
簡易課税では、仕入れの税を実額で計算しないので、控除のための仕入れのインボイスの保存は要件ではありません。ただし、帳簿の記帳と保存の義務はあります。売上げのインボイスの交付も、登録していれば必要です。③ 簡易課税は、いつでも一般課税に戻れる
やめるときは不適用届出書を出しますが、事業を廃止した場合を除き、適用を始めた課税期間の初日から2年間を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません。また簡易課税では、実際の仕入れや設備投資に含まれる消費税額が多くても、それを理由とする還付は受けられません(中間納付額が確定税額を上回る場合の還付はあります)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 簡易課税制度は、売上げの税 × みなし仕入率を仕入れの税とみなす。仕入れの税を1件ずつ集める必要がない(中小事業者の事務負担への配慮)。
- みなし仕入率は事業区分ごと:第1種90%・第2種80%・第3種70%・第4種60%・第5種50%・第6種40%。
- 使えるのは基準期間の課税売上高5,000万円以下で、原則として課税期間の開始の日の前日までに届出をした事業者(2割・3割特例の翌課税期間からなら、その確定申告期限まで)。やめるのは原則2年間後から。
- 2つ以上の事業は、原則として加重平均。1つの事業で売上げの75%以上なら、その事業の率を全体に使える特例がある。
- 選ぶかどうかは、実際の仕入れの税(一般課税)と比べて考える。由紀さんの2027年分は272,600円。
参照条文・出典
参照条文:消費税法37条1項(簡易課税制度)・5項〜7項(不適用届出)、消費税法施行令57条(みなし仕入率・事業区分・2以上の事業)、消費税法基本通達13-1-3、13-2-1〜13-2-9、13-4-1・13-4-2、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2・51条の3(2割特例・3割特例を受けた事業者の簡易課税の届出の特例。令和8年度改正で、翌課税期間の確定申告期限までに)
参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第4節「簡易課税制度」(pp.54〜59。2以上の事業の計算例 pp.57〜59)、第9章1「届出書」(p.74)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)/国税庁「簡易課税制度」の事業区分の説明・令和8年度税制改正(インボイス制度関係)資料
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例の数字は講本の計算例をそのまま使っています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。