仕入れの消費税を引く ── 仕入税額控除の基本
「給与も利息も払っているのに、なぜ仕入れの税に入らないの?」に、課税仕入れの考え方と仕入れの税額の計算で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 仕入税額控除 | 売上げの消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を引くこと。税が何重にもかからないようにする仕組み |
| 課税仕入れ | 事業として、他の者から資産を買う・借りる、サービスを受けること。相手が事業として行えば課税売上げになるもの |
| 課税仕入れ等の税額 | 課税仕入れ(と輸入した貨物など)に係る消費税額の合計。ここから控除する額を計算する(第10・11回) |
| 積上げ計算(仕入れ) | インボイスに書かれた税額などを積み上げる計算。仕入れではこちらが原則 |
| 割戻し計算(仕入れ) | 税込の支払額に7.8/110(軽減税率は6.24/108)を掛ける計算。売上げを積上げにしていなければ選べる |
| 法令と数字 | この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
仕入税額控除は売上げの税 − 仕入れの税の「仕入れの税」を計算すること。仕入れの税に入るのは課税仕入れだけで、給与・利息・保険料・税金は入らない――その理由を説明し、仕入れの税額を計算できるようになること。
※ 入門の範囲として、輸入した貨物の税、特定課税仕入れ(リバースチャージ)、仕入れの返品(第11回)は扱いません。
図で見る:仕入れの税を計算する順番(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 仕入税額控除とは
売上げ側の税 5,277,480円 − 課税仕入れ等の税額 3,453,840円(控除できる額は第10・11回)
STEP 2 課税仕入れとは
課税仕入れ = 事業として、資産を買う・借りる、サービスを受けること(相手が事業として行えば課税売上げになるもの)
STEP 3 入らない支払い
給与(課税仕入れから除外)・利息と保険料(非課税)・税金と寄附金(不課税)→ 仕入れの税に入れない
STEP 4 税額を計算する
A 2,939,040円 + B 124,800円 + C 390,000円 = 3,453,840円
STEP 5 控除の時期と次の回
厨房機器 3,300,000円 × 7.8/110 = 234,000円(2027年3月期に全額)
さくら食品の課税仕入れ等の税額
さくら食品の1年間の課税仕入れ(2026年4月1日〜2027年3月31日・税込)を、用途・税率・控除の割合ごとにまとめて計算すると次のとおりです(割戻し計算)。
用途A=課税売上げのためだけ、B=非課税売上げ(住宅の貸付け)のためだけ、C=共通(第11回)。控除の割合が100%でない行は、インボイスがない仕入れの経過措置(第9回)。給与・社会保険料・支払利息・損害保険料・固定資産税は課税仕入れではないので、この表に入りません。
やってみよう:課税仕入れカード(12枚)
さくら食品の支払いです。課税仕入れ(仕入れの税に入る)か、課税仕入れではないかを選んでください。(答えは典型的な場合の目安です)
よくある間違い
① 事業で払ったお金は、全部仕入れの税に入る
仕入れの税に入るのは課税仕入れだけです。給与は課税仕入れから除かれ、利息・保険料は非課税、税金・寄附金は不課税なので、払っても消費税は含まれていません。② 高い設備の税は、減価償却に合わせて少しずつ引く
仕入税額控除は、課税仕入れを行った日の属する課税期間に行います。さくら食品の厨房機器(2026年7月)の税も、2027年3月期に全額を計算に入れます(減価償却は法人税の話)。③ 免税事業者や消費者から買ったものは、課税仕入れにならない
免税事業者や消費者からの購入も、取引の内容によっては課税仕入れに当たります。ただし、仕入税額控除には原則として帳簿とインボイスの保存が必要です。インボイスがない場合は経過措置で一定割合を控除できることがあり、少額特例など帳簿だけで全額控除できる例外もあります(第9回)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 仕入税額控除は、売上げの税から課税仕入れ等の税額を引く仕組み。税が取引の段階ごとに重なる(累積する)のを防ぐ。
- 課税仕入れ=事業として、資産を買う・借りる、サービスを受けること(相手が事業として行えば課税売上げになるもの)。
- 給与(課税仕入れから除外)、利息・保険料(非課税)、税金・寄附金(不課税)は入らない。相手の側で消費税がかかっていないから。
- 仕入れの税額は、積上げ計算が原則。売上げを積上げにしていなければ割戻し計算(税込×7.8/110・6.24/108)を選べる。
- 控除は仕入れた日の課税期間にまとめて行う。ただし全額を引けるかは、課税売上割合(第10回)と方式(第11回)で決まる。
参照条文・出典
参照条文:消費税法30条1項(仕入れに係る消費税額の控除)・7項〜9項(帳簿・請求書等の保存)、2条1項12号(課税仕入れ)、消費税法施行令46条(課税仕入れに係る消費税額の計算)、消費税法基本通達11-1-1〜11-1-3、11-3-3、11-3-4
参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第1節「税額控除の概要」(p.41)・第2節「仕入税額控除」1〜3(pp.42〜44)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例(パン屋のDさん)の数字は、学習用に設定した仮定の数値です。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。