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第10回 課税売上割合と「95%ルール」|消費税入門講座

消費税 入門講座|第10回(v4)

課税売上割合と「95%ルール」 ── 仕入れの税を全部引けるのはいつ?

「非課税の家賃があると、なぜ仕入れの税を全部は引けないの?」に、課税売上割合の分子・分母と95%ルールで答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第3回(4つの区分)・第8回(課税仕入れ等の税額)条文:消費税法30条1項・2項・6項令和8年度改正後の法令で解説
第1章 全体像123
第2章 誰が納める45
第3章 売上げの税67
第4章 仕入れの税8910111213
第5章 申告と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
課税売上割合国内の売上げ(資産の譲渡等の対価の額)の合計のうち、課税売上げ(免税を含む)が占める割合。税抜・返品等を引いた後の額で計算する
課税売上高課税売上げ(税抜)+免税売上げから、返品・値引きなどを引いた額。課税期間が1年未満なら1年分に換算
95%ルール課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れ等の税額を全額控除できる
個別対応方式・一括比例配分方式全額控除できないときの2つの計算方法(第11回)
不課税課税の対象外の取引(保険金・配当など)。課税売上割合の分子にも分母にも入れない
法令と数字この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
非課税売上げがあると、仕入れの税を全部は引けないことがある。課税売上割合=課税売上高 ÷(課税売上高+非課税売上げ)を、何を入れて何を入れないかを確かめながら計算し、95%以上(課税売上高5億円以下)なら全額控除と判定できるようになること。
講本の設例分子 3,500万円
→
分母 4,000万円割合
→
95%未満87.5%
さくら食品:課税売上高8,170万円
→
+住宅の家賃・利息(非課税)602万円
→
課税売上割合

※ 入門の範囲として、有価証券・金銭債権の譲渡(分母に5%だけ入れる)、課税売上割合に準ずる割合、免税事業者だった期間の返品は扱いません。

ハルカ先生、第8回で、さくら食品の仕入れの税は全部引けるかまだ分からないと聞きました。
先生今日はそれを決める回なんだ。手がかりは、住宅の家賃という非課税売上げだよ。
ハルカ家賃と仕入れの税に、どんな関係があるんですか?
先生非課税売上げのための仕入れの税は、引かないのが原則なんだ。だから売上げのうち課税の部分の割合を測るよ。
ハルカその割合が、課税売上割合ですね。
先生そうだよ。さくら食品は93.137%…で、95%にわずかに届かないんだ。

図で見る:課税売上割合と95%ルール(5ステップ)

先生最初はさくら食品で5ステップを通してみよう。家賃を300万円にした場合と、講本の設例にも切り替えられるんだ。
ハルカ家賃が変わると、ステップ5の結果が変わるんですね。
先生そうだよ。95%をまたぐと、計算方法そのものが変わるんだ。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① なぜ課税売上割合が必要? ── 非課税売上げのための仕入れの税課税売上げのための仕入れ売上げで税を預かる→ 仕入れの税を引く(例:食材・厨房機器)非課税売上げのための仕入れ売上げで税を預からない→ 仕入れの税は引かない(例:住宅部分の修繕)なぜ引かない?非課税の売上げでは、事業者が消費者と同じ立場で税を負担する。預かっていない税は戻さないでも、どの仕入れがどちらのためか、きれいに分けられないものもある(建物共用部分・顧問料など)。→ 売上げのうち「課税」の部分がどれだけかを測る物差しが必要 = 課税売上割合非課税売上げがわずか(95%以上)なら、細かい計算を省いて全額控除できる(⑤)。さくら食品には住宅の家賃・受取利息(非課税)がある。仕入れの税 3,453,840円 を全部引けるか?
非課税売上げのための仕入れの税は控除しない → 売上げのうち課税の部分を測る物差し = 課税売上割合
ハルカさくら食品は、仕入れの税3,453,840円を全部引けないんですか?
先生非課税売上げがあるからなんだ。非課税の売上げでは税を預からないから、そのための仕入れの税は引かないのが原則だよ。
🤔 迷いポイント非課税売上げのための仕入れの税も、引けるだけ引けばいい?
ハルカ同じ会社の仕入れなら、全部引いてもいいと思っていました。
先生非課税の売上げでは、事業者が消費者と同じ立場で仕入れの税を負担するんだ。預かっていない税まで戻してしまうと、つじつまが合わないよ。
ハルカでも、どの仕入れが家賃のためか、全部は分けられない気がします。
先生そこで、売上げのうち課税の部分がどれだけかを測る物差しを使うんだ。それが課税売上割合だよ。
💡 そうだったのか!非課税売上げのための仕入れの税は控除しないのが原則。売上げのうち課税の部分を測る物差しが課税売上割合。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 なぜ割合が必要?

ハルカさくら食品は、仕入れの税3,453,840円を全部引けないんですか?
先生非課税売上げがあるからなんだ。非課税の売上げでは税を預からないから、そのための仕入れの税は引かないのが原則だよ。
🤔 迷いポイント非課税売上げのための仕入れの税も、引けるだけ引けばいい?
ハルカ同じ会社の仕入れなら、全部引いてもいいと思っていました。
先生非課税の売上げでは、事業者が消費者と同じ立場で仕入れの税を負担するんだ。預かっていない税まで戻してしまうと、つじつまが合わないよ。
ハルカでも、どの仕入れが家賃のためか、全部は分けられない気がします。
先生そこで、売上げのうち課税の部分がどれだけかを測る物差しを使うんだ。それが課税売上割合だよ。
💡 そうだったのか!非課税売上げのための仕入れの税は控除しないのが原則。売上げのうち課税の部分を測る物差しが課税売上割合。

非課税売上げのための仕入れの税は控除しない → 売上げのうち課税の部分を測る物差し = 課税売上割合

STEP 2 分子:課税売上高

ハルカ分子には、何を入れるんですか?
先生課税売上げの税抜の額に免税売上げを足して、返品・値引きを引くんだ。さくら食品は81,700,000円だよ。
🤔 迷いポイント貸倒れも、返品と同じように分子から引く?
ハルカ第7回で、返品も貸倒れも税額から引いたので、同じだと思いました。
先生貸倒れは引かないんだ。返品は売上げそのものを取り消すことだけど、貸倒れは売上げが成立したあとに代金を回収できなかっただけだからね。
ハルカ免税の輸出も分子に入るのは、仕入れの税を引ける売上げだからですね。
先生そのとおりだね。第3回で見た「免税は控除できる」が、ここに出てくるんだ。
💡 そうだったのか!分子(課税売上高)=課税売上げ(税抜)+免税売上げ−返品等。貸倒れは引かない。

分子 = 課税売上げ(税抜)+ 免税売上げ − 返品等 = 81,700,000円(貸倒れは引かない)

STEP 3 分母:非課税を足す

ハルカ分母は、売上げを全部足せばいいんですか?
先生分子に非課税売上げを足すんだ。さくら食品は家賃と利息を足して87,720,000円だよ。
🤔 迷いポイント保険金のような受取りも、分母に入れる?
ハルカお金を受け取ったのだから、分母に入れると思いました。
先生保険金は不課税だから、分子にも分母にも入れないんだ。分母に入れるのは、課税・免税・非課税の売上げだけだよ。
ハルカ第3回の「非課税は分母に入り、不課税は入らない」は、このことだったんですね。
先生そうだよ。基礎編 ↗の「4区分の違いは仕入税額控除に出る」も、ここでつながるんだ。
💡 そうだったのか!分母=分子+非課税売上げ。不課税(保険金・配当など)は、分子にも分母にも入れない。

分母 = 分子 + 非課税売上げ = 87,720,000円(不課税は入れない)

STEP 4 割合を計算する

ハルカ分子と分母がそろいました。割り算すればいいんですね。
先生そうだよ。さくら食品は81,700,000円÷87,720,000円で93.137%…だよ。
🤔 迷いポイント割合は四捨五入して、きりのいい数字にする?
ハルカ94.9%なら、四捨五入で95%にしてもいいと思いました。
先生課税売上割合は、原則として端数処理をしないんだ。任意の位で切り捨てるのは認められるけど、四捨五入で95%に届かせることはできないよ。
ハルカあと少しで届かないときが、いちばん悔しそうです。
先生そうだね。だから家賃のような非課税売上げが増える年は、早めに割合を見ておくんだ。
💡 そうだったのか!課税売上割合=分子÷分母。原則として端数処理はしない(四捨五入で95%に届かせることはできない)。

課税売上割合 = 81,700,000円 ÷ 87,720,000円 = 93.137%…

STEP 5 95%ルール

ハルカさくら食品は93.137%です。全額は引けないんですか?
先生95%に届かないから全額控除はできないんだ。個別対応方式なら3,302,275円、一括比例配分方式なら3,216,811円を控除するよ。
🤔 迷いポイント95%以上なら、どんな会社でも全額控除できる?
ハルカ割合さえ95%を超えれば、大丈夫だと思っていました。
先生もう1つ、課税売上高が5億円以下という条件があるんだ。大きな会社は、わずかな割合でも金額が大きいから、方式で正しく計算するよ。
ハルカ95%以上で全額にするのは、非課税売上げがわずかなら、細かく分ける手間を省けるようにするためなんですね。
先生そのとおりだね。さくら食品は届かないから、第11回でどちらの方式を選ぶかを考えようか。
💡 そうだったのか!課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら全額控除。届かなければ、個別対応方式か一括比例配分方式(第11回)。

条件:課税売上高 5億円以下 かつ 割合 95%以上 / この例:8,170万円(5億円以下 ○)・93.137%…(95%未満 ×) → 全額控除できない(第11回の2つの方式)

さくら食品の課税売上割合

さくら食品の課税期間(2026年4月1日〜2027年3月31日)の売上げ・受取りを、課税売上割合の分子・分母に振り分けると次のとおりです(すべて税抜)。

先生さくら食品の売上げと受取りを、分子と分母に振り分けたのが左の表だよ。
ハルカ保険金と貸倒れは、どちらにも入らないんですね。
先生保険金は不課税、貸倒れは対価の返還等ではないからね。
ハルカ家賃を少し減らせば95%に届きそうです。
先生家賃を減らすのは、本末転倒だね。下の体験で、どこが分かれ目かを確かめてみようか。

やってみよう:家賃を動かして95%をまたぐ

さくら食品の住宅の家賃などを変えて、課税売上割合と控除できる仕入れの税を確かめましょう。95%以上になると、方式を選ぶ必要がなくなり全額控除に切り替わります。

ハルカ家賃を300万円にしたら、全額控除に切り替わりました。
先生そうだね。95%以上になると、2つの方式を比べる必要がなくなるんだ。
ハルカ保険金をいくら増やしても、割合が動きません。
先生不課税は分子にも分母にも入らないからなんだ。

よくある間違い

① 保険金や配当も、分母に入れる

分母に入れるのは資産の譲渡等の対価(課税・免税・非課税の売上げ)だけです。保険金・配当・寄附金のような不課税の受取りは、分子にも分母にも入れません(第3回の関門1)。

② 貸倒れも、返品と同じように分子から引く

分子・分母から引くのは売上げに係る対価の返還等(返品・値引き・割戻し)です。貸倒れは引きません。売上げは成立していて、代金を回収できなかっただけだからです(税額控除は第7回)。

③ 95%以上なら、どの会社も全額控除

全額控除には、課税売上高が5億円以下(1年に換算)という条件もあります。課税売上高が5億円を超える会社は、割合が95%以上でも、個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。
ハルカ①の保険金は、さっきの体験で確かめました。
先生不課税は割合に入らないんだったね。
ハルカ③の5億円の条件は、忘れそうです。
先生2つの条件をセットで覚えようか。課税売上高5億円以下、かつ割合95%以上なんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 課税売上割合の分母に「入れない」ものは?
Q2. 課税売上高3億円、課税売上割合が95%以上の会社。仕入れの税は?
Q3. さくら食品のケータリング代の貸倒れ(税込110,000円)は、課税売上割合の計算でどう扱う?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 非課税売上げのための仕入れの税は、控除しないのが原則。そのため課税売上割合で、売上げのうち課税の部分を測る。
  2. 分子=課税売上げ(税抜)+免税売上げ − 返品・値引き。分母=分子+非課税売上げ − その返品等。
  3. 不課税(保険金など)は分子にも分母にも入れない。貸倒れは引かない。割合は原則として端数処理しない。
  4. 課税売上高5億円以下かつ95%以上なら全額控除。非課税売上げがわずかなら、細かい計算を省ける。
  5. さくら食品は95%未満なので、全額は引けない。個別対応方式と一括比例配分方式のどちらで計算するかは第11回。
先生今日のまとめだよ。非課税売上げのための仕入れの税は引かないから、課税売上割合で課税の部分を測るんだ。
ハルカ分子は課税売上げ(税抜)と免税から返品を引いたもの、分母はそれに非課税を足したもの。不課税は入れないんですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、貸倒れは分子からも分母からも引かないんだ。
ハルカさくら食品は93.137%…で、95%に届きませんでした。
先生そうだね。次の第11回では、個別対応方式と一括比例配分方式のどちらで計算するかを見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:消費税法30条1項(全額控除)・2項(個別対応方式・一括比例配分方式)・6項(課税売上高・課税売上割合)、消費税法施行令48条(課税売上割合の計算)、消費税法基本通達11-5-1〜11-5-6、11-5-10

参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第3節1〜4(pp.47〜50。課税売上割合の設例 p.49)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例の数字は講本の設例をそのまま使っています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ課税売上割合の計算は、条文のどこにありますか?
先生消費税法30条6項と、施行令48条だよ。全額控除の条件は30条1項・2項なんだ。
ハルカ端数処理をしないというのは、どこに書いてありますか?
先生消費税法基本通達11-5-6なんだ。講本のp.49にも書いてあるよ。
消費税 入門講座 第10回|taxjudge.com
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