MENU

第11回 個別対応方式と一括比例配分方式|消費税入門講座

消費税 入門講座|第11回(v2)

個別対応方式と一括比例配分方式 ── 全額を引けないときの2つの計算

「95%に届かなかったら、仕入れの税はどう計算するの? どちらの方式を選べばいいの?」に、3つの箱と課税売上割合で答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第8回(課税仕入れ等の税額)・第10回(課税売上割合)条文:消費税法30条2項・5項、32条令和8年度改正後の法令で解説
第1章 全体像123
第2章 誰が納める45
第3章 売上げの税67
第4章 仕入れの税8910111213
第5章 申告と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
用途区分課税仕入れを「課税売上げのためだけ(A)」「非課税売上げのためだけ(B)」「両方に共通(C)」の3つに分けること
個別対応方式控除する額=A+C×課税売上割合。Bは控除しない。用途区分がされていることが前提
一括比例配分方式控除する額=課税仕入れ等の税額の全部×課税売上割合。用途区分がいらない。選ぶと2年間は続ける
仕入れに係る対価の返還等仕入れの返品・値引き・割戻しを受けること。返還を受けた課税期間の仕入れの税から、同じ方式で引く
法令と数字この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
課税売上割合が95%未満(または課税売上高が5億円超)なら、個別対応方式(A+C×割合)か一括比例配分方式(全部×割合)で控除する額を計算する。2つの方式の違いと、どちらを選ぶかの考え方を説明できるようになること。
さくら食品:課税仕入れ等の税額345万3,840円
→
3つの箱 A・B・C に分ける個別対応方式
→
控除する額3,302,275円
同じ税額を分けずに全部
→
× 課税売上割合一括比例配分方式
→
控除する額3,216,811円

※ 入門の範囲として、課税売上割合に準ずる割合(税務署長の承認)、調整対象固定資産の調整は名前だけ扱います。

ハルカ先生、第10回でさくら食品は95%に届きませんでした。仕入れの税は、どう計算するんですか?
先生今日は、そのための2つの方式を見るんだ。個別対応方式と一括比例配分方式だよ。
ハルカ名前がむずかしそうです。
先生中身はシンプルなんだ。3つの箱に分けてから計算するか、分けずにまとめて計算するかの違いだよ。
ハルカさくら食品だと、どれくらい違うんですか?
先生個別対応方式なら3,302,275円、一括比例配分方式なら3,216,811円なんだ。その差を見ていこうか。

図で見る:3つの箱と2つの方式(5ステップ)

先生最初はさくら食品で5ステップを通してみよう。左のボタンで、講本の計算例にも切り替えられるんだ。
ハルカ講本の例は、数字がきりがいいので計算を追いやすそうです。
先生そうだね。ステップ5の仕入れの返品は、講本の例で見ようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 課税仕入れ等の税額を、用途で3つの箱に分けるA課税売上げのためだけ2,939,040円C両方に共通390,000円B非課税売上げのためだけ124,800円さくら食品の課税仕入れを、何のための支出かで分けるA食材(インボイスあり)2,184,000円A農家の野菜(10〜3月)21,840円A農家の野菜(4〜9月)24,960円A光熱・広告・厨房機器・講師料(10〜3月)670,800円A由紀さんの講師料(4〜9月)37,440円B住宅部分の修繕・管理委託124,800円C建物共用部分・顧問料・全社の事務費390,000円食品を売るための広告はA、住宅部分の修繕はB、建物共用部分や全社の顧問料はC。
課税仕入れ等の税額 3,453,840円 = A 2,939,040円 + B 124,800円 + C 390,000円
ハルカさくら食品は95%に届かなかったので、仕入れの税はどう計算するんですか?
先生まず、課税仕入れ等の税額を、何のための支出かで3つの箱に分けるんだ。課税売上げのためだけのA、非課税売上げのためだけのB、両方に共通のCだよ。
🤔 迷いポイント広告費や顧問料は、全部「共通」の箱に入れればいい?
ハルカどれも会社全体のための支出なので、迷ったら共通だと思っていました。
先生何のための支出かで決めるんだ。さくら食品の広告は食品を売るためだからA、全社の顧問料はCだよ。迷うものを全部Cに入れると、控除が減ることがあるんだ。
ハルカ第8回の表の、A・B・Cの列はこのためだったんですね。
先生そのとおりだね。分けたあとに、2つの方式のどちらで計算するかを選ぶんだ。
💡 そうだったのか!課税仕入れ等の税額を、A(課税のためだけ)・B(非課税のためだけ)・C(共通)に分けるのが、個別対応方式の出発点。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 3つの箱に分ける

ハルカさくら食品は95%に届かなかったので、仕入れの税はどう計算するんですか?
先生まず、課税仕入れ等の税額を、何のための支出かで3つの箱に分けるんだ。課税売上げのためだけのA、非課税売上げのためだけのB、両方に共通のCだよ。
🤔 迷いポイント広告費や顧問料は、全部「共通」の箱に入れればいい?
ハルカどれも会社全体のための支出なので、迷ったら共通だと思っていました。
先生何のための支出かで決めるんだ。さくら食品の広告は食品を売るためだからA、全社の顧問料はCだよ。迷うものを全部Cに入れると、控除が減ることがあるんだ。
ハルカ第8回の表の、A・B・Cの列はこのためだったんですね。
先生そのとおりだね。分けたあとに、2つの方式のどちらで計算するかを選ぶんだ。
💡 そうだったのか!課税仕入れ等の税額を、A(課税のためだけ)・B(非課税のためだけ)・C(共通)に分けるのが、個別対応方式の出発点。

課税仕入れ等の税額 3,453,840円 = A 2,939,040円 + B 124,800円 + C 390,000円

STEP 2 個別対応方式

ハルカ個別対応方式では、どう計算するんですか?
先生Aは全額、Cには課税売上割合を掛けて足すんだ。さくら食品は2,939,040円に363,235円を足して3,302,275円だよ。
🤔 迷いポイントBの税にも、課税売上割合の分だけは引ける?
ハルカCと同じように、割合を掛けて少しは引けると思っていました。
先生Bは0円なんだ。非課税売上げのためだけの仕入れは、税を預からない売上げにしか使わないからね。割合を掛けるのは、両方に使ったCだけだよ。
ハルカ住宅部分の修繕の税124,800円は、まるごと引けないんですね。
先生そうだよ。第10回で見た「非課税売上げのための仕入れの税は引かない」を、そのまま形にしたのが個別対応方式なんだ。
💡 そうだったのか!個別対応方式=A+C×課税売上割合。Bは控除しない(0円)。

個別対応方式 = A + C × 課税売上割合 = 2,939,040円 + 363,235円 = 3,302,275円

STEP 3 一括比例配分方式

ハルカ一括比例配分方式は、どこが違うんですか?
先生A・B・Cに分けずに、全部に課税売上割合を掛けるんだ。さくら食品は3,453,840円×割合で3,216,811円だよ。
🤔 迷いポイント一括比例配分方式は、分けなくていいぶん、いつでも自由に使える?
ハルカ楽な方式だから、手間をかけたくない年だけ使えばいいと思いました。
先生一括比例配分方式を選んだら、2年間は続けて適用した後でなければ個別対応方式に変えられないんだ。
ハルカ楽をした分、しばらくは続けないといけないんですね。
先生そうだね。それに、Aにも割合が掛かるから、Aが多い会社では控除が少なくなりやすいんだ。
💡 そうだったのか!一括比例配分方式=全部×課税売上割合。用途区分はいらないが、選ぶと2年間は続けて適用する。

一括比例配分方式 = 全部 × 課税売上割合 = 3,453,840円 × 81,700,000円/87,720,000円 = 3,216,811円

STEP 4 どちらを選ぶ?

ハルカ結局、どちらを選べばいいんですか?
先生さくら食品なら、個別対応方式のほうが85,464円多く控除できるんだ。Aが多くてBが少ないからだよ。
🤔 迷いポイント控除が多いほうを、毎年選び直せばいい?
ハルカその年に得なほうを選ぶのが正解だと思っていました。
先生一括比例配分方式には2年間の継続があるから、毎年の損得だけでは選べないんだ。用途区分を記録できるか、その手間と控除額の差を比べて決めるよ。
ハルカさくら食品は、仕入れごとに用途を記録しているから個別対応方式なんですね。
先生そのとおりだね。日ごろの記録が、方式を選ぶ力になるんだ。
💡 そうだったのか!Aが多くBが少ないなら個別対応方式が有利になりやすい。一括比例配分方式は手間が少ないが、選ぶと2年間続ける。

個別対応方式 3,302,275円 − 一括比例配分方式 3,216,811円 = 85,464円(一括比例配分方式は2年間継続)

STEP 5 仕入れの返品

ハルカ仕入れた商品を返品したときは、どうするんですか?
先生返品・値引きを受けた課税期間に、その分の税を仕入れの税から引くんだ。計算は、仕入れの税と同じ方式で行うよ。講本の例では1,907,500円になるね。
🤔 迷いポイント仕入れの返品も、売上げの返品と同じように税額控除にする?
ハルカ第7回の売上げの返品と同じで、税額から控除すると思っていました。
先生仕入れの返品は、仕入れの税のほうから引くんだ。一括比例配分方式なら、返品の税にも課税売上割合を掛けてから引くよ。
ハルカ売上げの返品は売上げの税から、仕入れの返品は仕入れの税から、と分けて覚えます。
先生それで大丈夫だよ。さくら食品の共通事例には仕入れの返品はないから、講本の例で確かめようか。
💡 そうだったのか!仕入れの返品・値引きを受けたら、受けた課税期間の仕入れの税から、同じ方式で計算した額を引く。

講本の例:2,012,500円 − 返品の税 120,000円×35/40(105,000円)= 1,907,500円

さくら食品の控除する額と差引税額

さくら食品の課税期間(2026年4月1日〜2027年3月31日)の、2つの方式の計算と、そこから出る差引税額(国)です。

さくら食品は個別対応方式を選んでいます(共通事例の設定)。地方消費税と申告・納付は第14回・第15回で計算します。

先生さくら食品の2つの方式の計算を、並べたのが左の表だよ。
ハルカ個別対応方式のほうが、控除する額が多いですね。
先生差は85,464円だね。差引税額も、その分だけ少なくなるんだ。
ハルカ差引税額の1,975,200円は、どこかで見た数字です。
先生第1回で見た年税額のもとになる、国の消費税なんだ。地方消費税を足すのは第15回だよ。

やってみよう:方式の比較シミュレーター

さくら食品の住宅の家賃や、B(非課税売上げのためだけ)・C(共通)の仕入れの税を変えて、2つの方式の控除額を比べましょう。課税売上割合が95%以上になると、方式によらず全額控除に切り替わります。

ハルカBの仕入れの税を大きくしてみます。
先生個別対応方式の控除は変わらず、一括比例配分方式の控除だけ増えるはずだよ。
ハルカ本当です。Bが多い会社なら、一括比例配分方式のほうが多くなることもあるんですね。
先生そうなんだ。ただし、選ぶと2年間は続けることを忘れないようにしようか。

よくある間違い

① 非課税売上げのためだけの仕入れの税も、課税売上割合の分は引ける

個別対応方式では、B(非課税売上げのためだけ)の税は控除しません(0円)。割合を掛けるのはC(共通)だけです。さくら食品の住宅部分の修繕・管理委託の税は控除できません。

② 一括比例配分方式と個別対応方式は、毎年得なほうを選べる

一括比例配分方式を選んだら、2年間は続けて適用した後でなければ個別対応方式に変えられません。個別対応方式から一括比例配分方式へは変えられますが、その年から2年間は続けることになります。

③ 広告や顧問料は、全部「共通」に入れればよい

用途区分は、仕入れごとに何のための支出かで決めます。食品を売るための広告はA、建物共用部分や全社の顧問料のように両方に使うものがCです。迷うものを全部Cに入れると、控除が減ることがあります。
ハルカ①は、ステップ2で私が思っていたことです。
先生Bは0円で、割合を掛けるのはCだけだったね。
ハルカ③の用途区分は、仕入れのたびに決めるんですね。
先生そうだよ。課税期間の末日までに区分が分かれば、その区分で計算できるんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 個別対応方式で、非課税売上げのためだけに要する仕入れ(B)の税は?
Q2. 一括比例配分方式を選んだ事業者が、個別対応方式に変えられるのは?
Q3. 一括比例配分方式で控除する額の計算は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 全額控除できないときは、個別対応方式か一括比例配分方式のどちらかで控除する額を計算する。
  2. 個別対応方式:課税仕入れを A(課税のため)・B(非課税のため)・C(共通)に分け、A+C×課税売上割合。Bは控除しない。
  3. 一括比例配分方式:分けずに全部×課税売上割合。事務は楽だが、選ぶと2年間は続ける。
  4. どちらを選ぶか:Aが多くBが少ないなら個別対応方式が有利になりやすい。用途区分の手間と、控除額の差を比べて決める。
  5. 仕入れの返品を受けたら、返還を受けた課税期間に、同じ方式で仕入れの税から引く。さくら食品の差引税額は1,975,200円。
先生今日のまとめだよ。全額控除できないときは、個別対応方式か一括比例配分方式で計算するんだ。
ハルカ個別対応方式はA+C×割合でBは0円、一括比例配分方式は全部×割合ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、一括比例配分方式を選ぶと2年間は続けるんだ。
ハルカさくら食品の差引税額は1,975,200円。いよいよ申告が近づいてきました。
先生そうだね。次の第12回では、仕入れの税を売上げから計算する「簡易課税制度」を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:消費税法30条2項(個別対応方式・一括比例配分方式)・5項(一括比例配分方式の継続適用)、32条(仕入れに係る対価の返還等を受けた場合)、消費税法基本通達11-2-10〜11-2-21

参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第3節5「課税仕入れ等の税額の全額を控除できない場合」(pp.50〜52。計算例 pp.51〜52)・6「仕入返品等がある場合」(pp.52〜53)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例の数字は講本の計算例をそのまま使っています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ2つの方式は、条文のどこにありますか?
先生消費税法30条2項だよ。一括比例配分方式の継続は30条5項、仕入れの返品は32条なんだ。
ハルカ用途区分の例は、どこで確かめられますか?
先生消費税法基本通達11-2-10から11-2-20と、講本のpp.50〜51にまとまっているよ。
消費税 入門講座 第11回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる
このテーマで、まだ知りたいことはありませんか?
他社事例、自社の場合の迷い、追加で見たいデータなどを教えてください。多くの実務家に共通する課題は、データ・記事・ツールの形で調査し公開します。