個別対応方式と一括比例配分方式 ── 全額を引けないときの2つの計算
「95%に届かなかったら、仕入れの税はどう計算するの? どちらの方式を選べばいいの?」に、3つの箱と課税売上割合で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 用途区分 | 課税仕入れを「課税売上げのためだけ(A)」「非課税売上げのためだけ(B)」「両方に共通(C)」の3つに分けること |
| 個別対応方式 | 控除する額=A+C×課税売上割合。Bは控除しない。用途区分がされていることが前提 |
| 一括比例配分方式 | 控除する額=課税仕入れ等の税額の全部×課税売上割合。用途区分がいらない。選ぶと2年間は続ける |
| 仕入れに係る対価の返還等 | 仕入れの返品・値引き・割戻しを受けること。返還を受けた課税期間の仕入れの税から、同じ方式で引く |
| 法令と数字 | この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
課税売上割合が95%未満(または課税売上高が5億円超)なら、個別対応方式(A+C×割合)か一括比例配分方式(全部×割合)で控除する額を計算する。2つの方式の違いと、どちらを選ぶかの考え方を説明できるようになること。
※ 入門の範囲として、課税売上割合に準ずる割合(税務署長の承認)、調整対象固定資産の調整は名前だけ扱います。
図で見る:3つの箱と2つの方式(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 3つの箱に分ける
課税仕入れ等の税額 3,453,840円 = A 2,939,040円 + B 124,800円 + C 390,000円
STEP 2 個別対応方式
個別対応方式 = A + C × 課税売上割合 = 2,939,040円 + 363,235円 = 3,302,275円
STEP 3 一括比例配分方式
一括比例配分方式 = 全部 × 課税売上割合 = 3,453,840円 × 81,700,000円/87,720,000円 = 3,216,811円
STEP 4 どちらを選ぶ?
個別対応方式 3,302,275円 − 一括比例配分方式 3,216,811円 = 85,464円(一括比例配分方式は2年間継続)
STEP 5 仕入れの返品
講本の例:2,012,500円 − 返品の税 120,000円×35/40(105,000円)= 1,907,500円
さくら食品の控除する額と差引税額
さくら食品の課税期間(2026年4月1日〜2027年3月31日)の、2つの方式の計算と、そこから出る差引税額(国)です。
さくら食品は個別対応方式を選んでいます(共通事例の設定)。地方消費税と申告・納付は第14回・第15回で計算します。
やってみよう:方式の比較シミュレーター
さくら食品の住宅の家賃や、B(非課税売上げのためだけ)・C(共通)の仕入れの税を変えて、2つの方式の控除額を比べましょう。課税売上割合が95%以上になると、方式によらず全額控除に切り替わります。
よくある間違い
① 非課税売上げのためだけの仕入れの税も、課税売上割合の分は引ける
個別対応方式では、B(非課税売上げのためだけ)の税は控除しません(0円)。割合を掛けるのはC(共通)だけです。さくら食品の住宅部分の修繕・管理委託の税は控除できません。② 一括比例配分方式と個別対応方式は、毎年得なほうを選べる
一括比例配分方式を選んだら、2年間は続けて適用した後でなければ個別対応方式に変えられません。個別対応方式から一括比例配分方式へは変えられますが、その年から2年間は続けることになります。③ 広告や顧問料は、全部「共通」に入れればよい
用途区分は、仕入れごとに何のための支出かで決めます。食品を売るための広告はA、建物共用部分や全社の顧問料のように両方に使うものがCです。迷うものを全部Cに入れると、控除が減ることがあります。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 全額控除できないときは、個別対応方式か一括比例配分方式のどちらかで控除する額を計算する。
- 個別対応方式:課税仕入れを A(課税のため)・B(非課税のため)・C(共通)に分け、A+C×課税売上割合。Bは控除しない。
- 一括比例配分方式:分けずに全部×課税売上割合。事務は楽だが、選ぶと2年間は続ける。
- どちらを選ぶか:Aが多くBが少ないなら個別対応方式が有利になりやすい。用途区分の手間と、控除額の差を比べて決める。
- 仕入れの返品を受けたら、返還を受けた課税期間に、同じ方式で仕入れの税から引く。さくら食品の差引税額は1,975,200円。
参照条文・出典
参照条文:消費税法30条2項(個別対応方式・一括比例配分方式)・5項(一括比例配分方式の継続適用)、32条(仕入れに係る対価の返還等を受けた場合)、消費税法基本通達11-2-10〜11-2-21
参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第3節5「課税仕入れ等の税額の全額を控除できない場合」(pp.50〜52。計算例 pp.51〜52)・6「仕入返品等がある場合」(pp.52〜53)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例の数字は講本の計算例をそのまま使っています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。