MENU

第8回 仕入れの消費税を引く|消費税入門講座

消費税 入門講座|第8回(v3)

仕入れの消費税を引く ── 仕入税額控除の基本

「給与も利息も払っているのに、なぜ仕入れの税に入らないの?」に、課税仕入れの考え方と仕入れの税額の計算で答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第3回(4つの区分)・第7回(売上げの消費税)条文:消費税法30条1項・2条1項12号令和8年度改正後の法令で解説
第1章 全体像123
第2章 誰が納める45
第3章 売上げの税67
第4章 仕入れの税8910111213
第5章 申告と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
仕入税額控除売上げの消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を引くこと。税が何重にもかからないようにする仕組み
課税仕入れ事業として、他の者から資産を買う・借りる、サービスを受けること。相手が事業として行えば課税売上げになるもの
課税仕入れ等の税額課税仕入れ(と輸入した貨物など)に係る消費税額の合計。ここから控除する額を計算する(第10・11回)
積上げ計算(仕入れ)インボイスに書かれた税額などを積み上げる計算。仕入れではこちらが原則
割戻し計算(仕入れ)税込の支払額に7.8/110(軽減税率は6.24/108)を掛ける計算。売上げを積上げにしていなければ選べる
法令と数字この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
仕入税額控除は売上げの税 − 仕入れの税の「仕入れの税」を計算すること。仕入れの税に入るのは課税仕入れだけで、給与・利息・保険料・税金は入らない――その理由を説明し、仕入れの税額を計算できるようになること。
パン屋のDさん:1年の支払い7種類
→
課税仕入れだけを選ぶ3種類
→
仕入れの税
さくら食品:1年の仕入れ(税込)用途・税率ごと
→
×7.8/110・×6.24/108割戻し計算
→
課税仕入れ等の税額3,453,840円

※ 入門の範囲として、輸入した貨物の税、特定課税仕入れ(リバースチャージ)、仕入れの返品(第11回)は扱いません。

ハルカ先生、売上げの税が出たので、あとは払った税を引くだけですよね?
先生そうなんだ。でも「払った税」に何が入るかが、今日の大事なところだよ。
ハルカ給与も利息も事業で払っていますけど、全部入るんですか?
先生それが入らないんだ。理由は、第3回の4つの区分を、買う側から見ると分かるよ。
ハルカさくら食品の仕入れの税も、計算できますか?
先生できるよ。さくら食品の課税仕入れ等の税額は3,453,840円になるんだ。

図で見る:仕入れの税を計算する順番(5ステップ)

先生最初はさくら食品で5ステップを通してみよう。左のボタンで、パン屋のDさんにも切り替えられるんだ。
ハルカDさんは支払いが7種類なので、どれが入るか当てながら見ます。
先生いいね。ステップ3で、入らない支払いが並ぶよ。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 仕入税額控除:売上げの税から、仕入れの税を引く税が重ならないように、前の段階で払った税を引く(前段階税額控除)生産者売上げの税 30納める 30卸売業者売上げの税 60 − 仕入れの税 30納める 30小売業者売上げの税 100 − 仕入れの税 60納める 40納めた税の合計 30+30+40 = 100 = 消費者が負担した税(第1回)。引かなければ 30+60+100 = 190 と重なってしまう。売上げ側の税(第7回)5,277,480円−課税仕入れ等の税額(今日)3,453,840円このうち控除できる額は課税売上割合と方式で決まる(第10・11回)今日は「仕入れの税」を正しく数える回。何が入って、何が入らないかが中心。
売上げ側の税 5,277,480円 − 課税仕入れ等の税額 3,453,840円(控除できる額は第10・11回)
ハルカ第7回で売上げの税が出ました。ここから仕入れの税を引くんですよね?
先生そうだよ。これを仕入税額控除というんだ。さくら食品の課税仕入れ等の税額は3,453,840円だよ。
🤔 迷いポイント仕入れの税を引くのは、事業者へのおまけ?
ハルカ事業者の負担を軽くするための、特別なサービスだと思っていました。
先生おまけではないんだ。左上の図のように、引かないと取引の段階ごとに税が重なってしまうよ。引くことで、納めた税の合計が消費者の負担と一致するんだ。
ハルカ基礎編 ↗で見た「預かった税−支払った税」の、支払った税のほうですね。
先生そのとおりだね。今日は、その「支払った税」を正しく数えようか。
💡 そうだったのか!仕入税額控除は、税が取引の段階ごとに重ならないようにする仕組み。売上げの税から、課税仕入れ等の税額を引く。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 仕入税額控除とは

ハルカ第7回で売上げの税が出ました。ここから仕入れの税を引くんですよね?
先生そうだよ。これを仕入税額控除というんだ。さくら食品の課税仕入れ等の税額は3,453,840円だよ。
🤔 迷いポイント仕入れの税を引くのは、事業者へのおまけ?
ハルカ事業者の負担を軽くするための、特別なサービスだと思っていました。
先生おまけではないんだ。左上の図のように、引かないと取引の段階ごとに税が重なってしまうよ。引くことで、納めた税の合計が消費者の負担と一致するんだ。
ハルカ基礎編 ↗で見た「預かった税−支払った税」の、支払った税のほうですね。
先生そのとおりだね。今日は、その「支払った税」を正しく数えようか。
💡 そうだったのか!仕入税額控除は、税が取引の段階ごとに重ならないようにする仕組み。売上げの税から、課税仕入れ等の税額を引く。

売上げ側の税 5,277,480円 − 課税仕入れ等の税額 3,453,840円(控除できる額は第10・11回)

STEP 2 課税仕入れとは

ハルカ仕入れの税に入るのは、商品の仕入れだけですか?
先生商品だけではないんだ。左の図のように、物を買う・借りる・サービスを受けることが、事業としてなら全部「課税仕入れ」だよ。さくら食品の厨房機器や顧問料も入るんだ。
🤔 迷いポイント免税事業者や消費者から買ったものは、課税仕入れにならない?
ハルカ相手が消費税を納めていないなら、課税仕入れにはならないと思いました。
先生課税仕入れかどうかは、相手が事業として行えば課税売上げになるかで判断するんだ。だから取引の内容によっては課税仕入れに当たるよ。控除には原則としてインボイスが必要で、その例外も含めて第9回で見るんだ。
ハルカ「当たるか」と「控除できるか」は、別々に考えるんですね。
先生そうだよ。まずは当たるかどうかを、第3回の4つの区分で考えようか。
💡 そうだったのか!課税仕入れは、事業として資産を買う・借りる、サービスを受けること。相手の側で課税売上げになるものが当たる。

課税仕入れ = 事業として、資産を買う・借りる、サービスを受けること(相手が事業として行えば課税売上げになるもの)

STEP 3 入らない支払い

ハルカ給与もたくさん払っているのに、仕入れの税に入らないんですか?
先生左の図の赤い支払いは、どれも入らないんだ。給与は課税仕入れから除かれていて、利息と保険料は非課税、税金は不課税だよ。
🤔 迷いポイント事業のために払ったお金なら、全部仕入れの税に入る?
ハルカ経費になるものは、全部入ると思っていました。
先生経費になるかどうかと、消費税が入っているかどうかは別なんだ。相手の側で消費税がかかっていない支払いには、引く税が入っていないよ。
ハルカ第3回で、利息は非課税、保険金は不課税と仕分けました。買う側から見ても同じなんですね。
先生そのとおりだね。応用編 ↗の勘定科目ごとの表でも、確かめられるんだ。
💡 そうだったのか!給与・利息・保険料・税金は、相手の側で消費税がかかっていないので、仕入れの税に入らない。経費になるかどうかとは別。

給与(課税仕入れから除外)・利息と保険料(非課税)・税金と寄附金(不課税)→ 仕入れの税に入れない

STEP 4 税額を計算する

ハルカ課税仕入れが分かったら、税額はどう計算するんですか?
先生左の表のように、用途・税率・控除の割合が同じ仕入れをまとめて、税込×7.8/110(軽減は6.24/108)を掛けるんだ。合計で3,453,840円だよ。
🤔 迷いポイント仕入れも売上げと同じで、割戻し計算が原則?
ハルカ第7回で、売上げは割戻しが原則だったので、仕入れも同じだと思いました。
先生仕入れは逆で、インボイスの税額を積み上げる積上げ計算が原則なんだ。売上げを積上げにしていなければ、割戻し計算も選べるよ。さくら食品は、売上げも仕入れも割戻し計算なんだ。
ハルカ請求書の税額を1枚ずつ足すより、税込の合計から計算するほうが楽そうです。
先生そうだね。手間と端数の差を比べて選ぶんだ。
💡 そうだったのか!仕入れの税額は積上げ計算が原則で、売上げを積上げにしていなければ割戻し計算(税込×7.8/110・6.24/108)も選べる。

A 2,939,040円 + B 124,800円 + C 390,000円 = 3,453,840円

STEP 5 控除の時期と次の回

ハルカ厨房機器のような高い設備の税は、いつ引くんですか?
先生課税仕入れを行った日の属する課税期間に、まとめて計算に入れるんだ。厨房機器の税234,000円は、2027年3月期に全額だよ。
🤔 迷いポイント設備の税は、減価償却に合わせて少しずつ引く?
ハルカ法人税では何年かに分けて経費にするので、消費税も同じだと思いました。
先生消費税は、使った年数ではなく、仕入れた日で考えるんだ。減価償却とは別の仕組みだよ。
ハルカじゃあ、さくら食品は3,453,840円を全部引けるんですか?
先生それがまだ決まらないんだ。住宅の家賃という非課税売上げがあるから、第10回の課税売上割合で確かめようか。
💡 そうだったのか!仕入税額控除は、仕入れた日の課税期間にまとめて行う。全額を引けるかは、課税売上割合(第10回)と方式(第11回)で決まる。

厨房機器 3,300,000円 × 7.8/110 = 234,000円(2027年3月期に全額)

さくら食品の課税仕入れ等の税額

さくら食品の1年間の課税仕入れ(2026年4月1日〜2027年3月31日・税込)を、用途・税率・控除の割合ごとにまとめて計算すると次のとおりです(割戻し計算)。

用途A=課税売上げのためだけ、B=非課税売上げ(住宅の貸付け)のためだけ、C=共通(第11回)。控除の割合が100%でない行は、インボイスがない仕入れの経過措置(第9回)。給与・社会保険料・支払利息・損害保険料・固定資産税は課税仕入れではないので、この表に入りません。

先生さくら食品の仕入れを、用途・税率・控除の割合ごとにまとめたのが左の表だよ。
ハルカ控除の割合が80%や70%の行があるのは、なぜですか?
先生インボイスがない仕入れの経過措置なんだ。近所の農家と、登録前の由紀さんの講師料だよ。くわしくは第9回だね。
ハルカ用途のA・B・Cは、何のための区分ですか?
先生課税売上げのため、非課税売上げのため、共通の3つなんだ。第11回の個別対応方式で使うよ。

やってみよう:課税仕入れカード(12枚)

さくら食品の支払いです。課税仕入れ(仕入れの税に入る)か、課税仕入れではないかを選んでください。(答えは典型的な場合の目安です)

ハルカ12枚のカードで、課税仕入れかどうかを当ててみます。
先生迷ったら「相手の側で課税売上げになるか」を考えてみようか。
ハルカ通勤手当は給与なのに、課税仕入れになるんですね。
先生通勤に通常必要な範囲は、交通機関に払う運賃と同じに扱うんだ。例外として覚えておこうか。

よくある間違い

① 事業で払ったお金は、全部仕入れの税に入る

仕入れの税に入るのは課税仕入れだけです。給与は課税仕入れから除かれ、利息・保険料は非課税、税金・寄附金は不課税なので、払っても消費税は含まれていません。

② 高い設備の税は、減価償却に合わせて少しずつ引く

仕入税額控除は、課税仕入れを行った日の属する課税期間に行います。さくら食品の厨房機器(2026年7月)の税も、2027年3月期に全額を計算に入れます(減価償却は法人税の話)。

③ 免税事業者や消費者から買ったものは、課税仕入れにならない

免税事業者や消費者からの購入も、取引の内容によっては課税仕入れに当たります。ただし、仕入税額控除には原則として帳簿とインボイスの保存が必要です。インボイスがない場合は経過措置で一定割合を控除できることがあり、少額特例など帳簿だけで全額控除できる例外もあります(第9回)。
ハルカ②の減価償却は、法人税と混ざりやすいです。
先生消費税は、仕入れた日の課税期間でまとめて考えるんだったね。
ハルカ③の「当たるか」と「控除できるか」も、分けて考えます。
先生そうだね。控除の要件のインボイスは、次の第9回で見ていくんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 次のうち、課税仕入れに当たるものは?
Q2. 2026年7月に厨房機器を買った(3月決算の会社)。この税はいつ控除の計算に入れる?
Q3. さくら食品の課税仕入れ等の税額は3,453,840円。正しいものは?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 仕入税額控除は、売上げの税から課税仕入れ等の税額を引く仕組み。税が取引の段階ごとに重なる(累積する)のを防ぐ。
  2. 課税仕入れ=事業として、資産を買う・借りる、サービスを受けること(相手が事業として行えば課税売上げになるもの)。
  3. 給与(課税仕入れから除外)、利息・保険料(非課税)、税金・寄附金(不課税)は入らない。相手の側で消費税がかかっていないから。
  4. 仕入れの税額は、積上げ計算が原則。売上げを積上げにしていなければ割戻し計算(税込×7.8/110・6.24/108)を選べる。
  5. 控除は仕入れた日の課税期間にまとめて行う。ただし全額を引けるかは、課税売上割合(第10回)と方式(第11回)で決まる。
先生今日のまとめだよ。仕入税額控除は、税が重ならないように、売上げの税から仕入れの税を引く仕組みなんだ。
ハルカ仕入れの税に入るのは課税仕入れだけで、給与・利息・保険料・税金は入らないんですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、仕入れの税額は積上げ計算が原則で、割戻し計算も選べるんだ。
ハルカさくら食品の3,453,840円が全部引けるかは、まだお預けですね。
先生そうだね。次の第9回では、控除の要件になるインボイスと帳簿の保存を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:消費税法30条1項(仕入れに係る消費税額の控除)・7項〜9項(帳簿・請求書等の保存)、2条1項12号(課税仕入れ)、消費税法施行令46条(課税仕入れに係る消費税額の計算)、消費税法基本通達11-1-1〜11-1-3、11-3-3、11-3-4

参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第1節「税額控除の概要」(p.41)・第2節「仕入税額控除」1〜3(pp.42〜44)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。シンプルな例(パン屋のDさん)の数字は、学習用に設定した仮定の数値です。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ課税仕入れの定義は、どこにありますか?
先生消費税法2条1項12号だよ。仕入税額控除そのものは30条1項に書いてあるんだ。
ハルカ割戻し計算と積上げ計算の決まりは、どこですか?
先生消費税法施行令46条なんだ。講本のp.43〜44にも図でまとまっているよ。
消費税 入門講座 第8回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる
このテーマで、まだ知りたいことはありませんか?
他社事例、自社の場合の迷い、追加で見たいデータなどを教えてください。多くの実務家に共通する課題は、データ・記事・ツールの形で調査し公開します。