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第13回 2割特例・3割特例|消費税入門講座

消費税 入門講座|第13回(v5)

2割特例・3割特例 ── インボイス登録をした小規模事業者の特例

「登録して課税事業者になった由紀さんは、どの方法で申告すると、いくら納めるの?」に、2割特例・3割特例・簡易課税を比べて答えられるようになる回です。

所要 15分前提:第5回(インボイス登録)・第12回(簡易課税)根拠:平成28年改正法附則51条の2・51条の3令和8年度改正後の法令で解説
第1章 全体像123
第2章 誰が納める45
第3章 売上げの税67
第4章 仕入れの税8910111213
第5章 申告と総合演習1415
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
2割特例登録しなければ免税事業者だった人が、売上げの税の8割を控除して、売上げの税の2割を納める特例。2023年10月1日〜2026年9月30日の日を含む課税期間が対象
3割特例令和8年度改正で加わった特例。個人事業者の2027年分・2028年分は、売上げの税の7割を控除して、3割を納める
対象にならない人基準期間の課税売上高が1,000万円超、資本金1,000万円以上の新設法人、課税期間の特例を受ける人など、登録しなくても課税事業者になる人や、決まった場合に当たる人
簡易課税との違い(2割特例)事前の届出がいらず、申告書に書いて選ぶ。事業区分も2年間の継続もいらない
法令と数字この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
インボイス登録で課税事業者になった小規模事業者は、2割特例(売上げの税の2割を納める)・3割特例(個人の2027・2028年分は3割)を使える。だれが・いつまで使えるかを判定し、簡易課税・一般課税と比べて選べるようになること。
由紀さん 2026年分(10〜12月)2割特例
→
売上げの税の2割106,314円×2割
→
納める額27,100円
由紀さん 2027年分3割特例
→
簡易課税なら 272,600円比べる
→
納める額163,500円

※ 3割特例は令和8年度税制改正で加わった特例です(講本の基準日より後の改正)。手続きの細部は、国税庁の改正資料で確かめてください。

ハルカ先生、第5回で由紀さんは2割特例で27,100円を納めると習いました。どうやって計算したんですか?
先生今日はその中身を見るんだ。売上げの税の2割を納める特例だよ。
ハルカ2027年分からは、また別の計算になるんですか?
先生個人事業者には3割特例があるんだ。由紀さんの2027年分は163,500円になるよ。
ハルカ第12回の簡易課税だと272,600円でした。ずいぶん違いますね。
先生そうなんだ。だれが、いつまで使えて、どれを選ぶか、5つのステップで確かめようか。

図で見る:2割特例・3割特例の判定と比べ方(5ステップ)

先生最初は由紀さんで5ステップを通してみよう。講本の例と、3月決算のEさんの会社にも切り替えられるんだ。
ハルカ講本の例は、使える年と使えない年が並んでいるんですね。
先生そうだよ。ステップ2と3で、判定のしかたを見ていこうか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 2割特例:売上げの税の8割を控除して、2割を納める納める税 = 売上げの税 − 売上げの税 × 8割(= 売上げの税の2割)仕入れの税を集めない・事業区分もいらない。売上げの税(課税標準額に対する消費税額)さえ分かればよい。簡易課税の第2種(80%)と同じ率を、どの事業にも使えるイメージ。10〜12月の売上げ(税込)1,500,000円課税標準額1,363,000円売上げの税(国)106,314円控除(× 8割)85,051円差引税額(百円未満切捨て)21,200円地方消費税5,900円納める額(国+地方)27,100円なぜこの特例がある?インボイス登録で、免税事業者が急に課税事業者になる。納税の負担と事務の手間が急に増えないよう、しばらく売上げの税の2割にしている。(簡易課税なら 68,000円)
106,314円 − 85,051円(8割)→ 差引 21,200円 + 地方 5,900円 = 27,100円
ハルカ由紀さんの2026年分は、どうやって計算するんですか?
先生売上げの税の8割を控除して、残りの2割を納める特例なんだ。由紀さんは10〜12月の売上げの税106,314円の2割で、地方消費税を足すと27,100円だよ。
🤔 迷いポイント2割特例は、売上げの2割を納める?
ハルカ売上げの2割も納めたら、ずいぶん多いと思っていました。
先生2割なのは売上げではなく、売上げの税のほうなんだ。売上げの税は売上げの約1割だから、納めるのは売上げの約2%になるよ。
ハルカそれなら、由紀さんの負担も急に重くはならないですね。
先生そうだね。インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった人の、負担が急に増えないようにする特例なんだ。
💡 そうだったのか!2割特例=売上げの税の8割を控除して、売上げの税の2割を納める。仕入れの税も事業区分もいらない。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 2割特例とは

ハルカ由紀さんの2026年分は、どうやって計算するんですか?
先生売上げの税の8割を控除して、残りの2割を納める特例なんだ。由紀さんは10〜12月の売上げの税106,314円の2割で、地方消費税を足すと27,100円だよ。
🤔 迷いポイント2割特例は、売上げの2割を納める?
ハルカ売上げの2割も納めたら、ずいぶん多いと思っていました。
先生2割なのは売上げではなく、売上げの税のほうなんだ。売上げの税は売上げの約1割だから、納めるのは売上げの約2%になるよ。
ハルカそれなら、由紀さんの負担も急に重くはならないですね。
先生そうだね。インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった人の、負担が急に増えないようにする特例なんだ。
💡 そうだったのか!2割特例=売上げの税の8割を控除して、売上げの税の2割を納める。仕入れの税も事業区分もいらない。

106,314円 − 85,051円(8割)→ 差引 21,200円 + 地方 5,900円 = 27,100円

STEP 2 使える人

ハルカインボイス登録をした人なら、だれでも使えるんですか?
先生使えるのは、登録しなければ免税事業者だった人なんだ。由紀さんは基準期間も特定期間も1,000万円以下だから使えるよ。
🤔 迷いポイント一度2割特例を使えたら、その後もずっと使える?
ハルカ登録した人の特例だから、毎年同じように使えると思っていました。
先生判定は年ごとなんだ。その年の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、登録しなくても課税事業者だから、その年は使えないよ。
ハルカ講本の例で、使える年と使えない年が交互になっているのは、そのためなんですね。
先生そのとおりだね。もともと消費税を納めていた人には、急な負担の増加がないからなんだ。
💡 そうだったのか!2割特例は「登録しなければ免税事業者だった人」の特例。基準期間の課税売上高1,000万円超の年や新設法人などは使えない。判定は年ごと。

使える人 = 登録しなければ免税事業者だった人(基準期間の課税売上高1,000万円超の年・新設法人などは使えない)

STEP 3 使える期間

ハルカ2割特例は、いつまで使えるんですか?
先生2023年10月1日〜2026年9月30日の日を含む課税期間が対象なんだ。由紀さんは2026年分が最後だよ。
🤔 迷いポイント2026年9月30日を過ぎたら、その日から使えなくなる?
ハルカ9月30日までの売上げだけが2割特例で、10月からは別の計算になると思っていました。
先生判定は課税期間ごとなんだ。課税期間がその期間の日を1日でも含めば、その課税期間全体で使えるよ。だから3月決算の法人は、2027年3月期まで使えるんだ。
ハルカ日付ではなく課税期間で考える点は、第9回の相手先ごとの上限と似ていますね。
先生いい気づきだね。仕入れの日で決まる経過措置の割合とは、使う日付が違うんだ。
💡 そうだったのか!2割特例は、2023年10月1日〜2026年9月30日の日を含む課税期間が対象。判定は課税期間ごと(3月決算の法人は2027年3月期まで)。

2割特例の対象:2023年10月1日〜2026年9月30日の日を含む課税期間

STEP 4 3割特例

ハルカ2割特例が終わったら、急に一般課税になるんですか?
先生個人事業者には、令和8年度改正で3割特例ができたんだ。個人事業者の2027年分・2028年分は、売上げの税の3割を納めるよ。由紀さんの2027年分は163,500円だね。
🤔 迷いポイント3割特例は、会社(法人)も使える?
ハルカ2割特例の続きなら、法人も使えると思っていました。
先生3割特例は個人事業者だけなんだ。法人は、2割特例が終わったら一般課税か簡易課税だよ。
ハルカ2割から3割へ、少しずつ負担が増えていくんですね。
先生そうだね。手続きの細部は、国税庁の改正資料で確かめておこうか。
💡 そうだったのか!3割特例は個人事業者の2027年分・2028年分が対象(令和8年度改正)。売上げの税の3割を納める。法人は対象外。

2027年分:425,412円 − 297,788円(7割)→ 163,500円(国+地方)

STEP 5 比べて選ぶ

ハルカ由紀さんは、特例と簡易課税のどちらにすればいいんですか?
先生2026年分は2割特例で27,100円、簡易課税なら68,000円だね。2027年分も3割特例のほうが109,100円少ないんだ。
🤔 迷いポイント2割特例を使うには、簡易課税と同じように前もって届出がいる?
ハルカ有利な計算なら、前の年に届出を出しておかないといけないと思っていました。
先生2割特例は事前の届出がいらないんだ。確定申告書に書いて選べるし、簡易課税の届出を出していても選べるよ。2年間の継続もいらないんだ。
ハルカ毎年、いちばん少ない方法を比べて選べるんですね。
先生そうだよ。それに、特例を受けた翌年から簡易課税に移るときは、その年分の確定申告期限まで届出を出せるんだ(令和8年度改正)。由紀さんが2029年分から簡易課税にするなら、2030年4月1日までだよ。
💡 そうだったのか!2割特例は届出不要で、申告のときに選べる。一般課税・簡易課税と毎年比べ、特例がなくなる年に向けて簡易課税の届出も考えておく。

2026年分 2割 27,100円/簡易 68,000円 2027年分 3割 163,500円/簡易 272,600円

由紀さんの年分ごとの申告

由紀さんは基準期間・特定期間とも1,000万円以下なので、「登録しなければ免税事業者」です。2029年分からは特例がなくなるので、一般課税か簡易課税で申告します。2028年分に3割特例を受けていれば、2029年分から簡易課税にする届出は、2029年分の確定申告期限(2030年3月31日が日曜日のため2030年4月1日)まで出せます(令和8年度改正)。

先生由紀さんの年分ごとの申告をまとめたのが、左の表だよ。
ハルカ2割から3割へ、少しずつ増えていくんですね。
先生どの年も、簡易課税より特例のほうが少ないね。
ハルカ2029年分からは、どうすればいいんですか?
先生簡易課税にするなら届出がいるんだ。3割特例を受けた翌年からなら、その年分の申告期限の2030年4月1日まで出せるよ。第14回で、届出の期限をまとめて見ようか。

やってみよう:特例と簡易課税を比べる

年分・毎月の売上げ(税込・標準税率)・基準期間の課税売上高を変えて、使える特例と、簡易課税(事業区分を選ぶ)の納める額を比べましょう(2026年10月1日に登録した個人事業者)。

ハルカ基準期間の課税売上高を1,200万円にしてみます。
先生特例が「なし」に変わるはずだよ。登録しなくても課税事業者になるからね。
ハルカ簡易課税は使えるままなんですね。
先生簡易課税の基準は5,000万円だからなんだ。基準が違うことに気をつけようか。

よくある間違い

① 2割特例は、売上げの2割を納める

2割なのは売上げの税(課税標準額に対する消費税額)の2割です。売上げの2割ではありません。由紀さんの2026年分は、売上げの税106,314円の2割で、地方消費税を足して27,100円です。

② 登録した人なら、だれでも2割特例を使える

使えるのは、登録しなければ免税事業者だった人です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える年や、資本金1,000万円以上の新設法人などは使えません。課税期間の特例を受けている場合も使えません。

③ 3割特例は、法人も2027年度から使える

3割特例は個人事業者の2027年分・2028年分が対象で、法人は対象外です。法人も2割特例は使えますが、対象は2023年10月1日〜2026年9月30日の日を含む課税期間です(3月決算なら2027年3月期まで)。
ハルカ①は、ステップ1で私が思っていたことです。
先生2割なのは売上げの税のほうだったね。
ハルカ③の3割特例は、個人だけなんですね。
先生そうだよ。法人は2割特例の期間が終わったら、一般課税か簡易課税なんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 2割特例で納める消費税(国)は?
Q2. 3割特例を使えるのは?
Q3. 2023年10月に登録した個人。2026年分の基準期間(2024年)の課税売上高は1,200万円。2026年分は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 2割特例:売上げの税の8割を控除して、売上げの税の2割を納める。2023年10月1日〜2026年9月30日の日を含む課税期間が対象。
  2. 3割特例:個人事業者の2027年分・2028年分は、売上げの税の3割を納める(令和8年度改正)。法人は対象外。
  3. 使えるのは登録しなければ免税事業者だった人。基準期間の課税売上高1,000万円超の年や新設法人などは使えない。
  4. 2割特例は事前の届出がいらず、申告のときに選ぶ。簡易課税の届出を出していても選べ、2年間の継続もいらない。
  5. 由紀さん:2026年分 27,100円(2割)、2027年分 163,500円(3割。簡易課税なら272,600円)。特例がなくなる年に向けて、簡易課税の届出も考えておく。
先生今日のまとめだよ。2割特例は売上げの税の2割、3割特例は個人の2027・2028年分に売上げの税の3割を納めるんだ。
ハルカ使えるのは、登録しなければ免税事業者だった人。判定は年ごとで、2割特例は届出がいらないんですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、特例がなくなる年に向けて、簡易課税の届出も考えておくんだ。
ハルカ由紀さんに、2029年分の前に届出を考えましょうと伝えます。
先生いいね。次の第14回では、課税期間・申告・納付・届出の期限をまとめて見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2(2割特例)・51条の3(3割特例。令和8年度改正で追加)、消費税法9条1項・37条

参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第6章第5節「小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)」(pp.60〜61。適用関係の例 p.60)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)/国税庁 令和8年度税制改正(インボイス制度関係:3割特例)資料

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。3割特例は講本の基準日(令和8年1月1日)より後の改正のため、国税庁の資料で反映しています。手続き(申告書への記載など)の細部は、国税庁の改正資料で確かめてください。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ2割特例の根拠は、消費税法の本則にあるんですか?
先生本則ではなく、平成28年改正法の附則51条の2なんだ。3割特例は附則51条の3で、令和8年度改正で加わったよ。
ハルカ手続きの細部は、どこで確かめればいいですか?
先生国税庁の令和8年度改正の資料と、インボイス制度の特設ページで確かめようか。
消費税 入門講座 第13回|taxjudge.com
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