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【為替換算】伝票二箱を数えたら、返品が1枚あった|経理財務部の物語 第29話(2026年11月6日)

【為替換算】伝票二箱を数えたら、返品が1枚あった|経理財務部の物語 第29話(2026年11月6日)
経理財務部の物語第29話2026年11月6日(金)・本社 経理財務部次:第30話(2026年11月7日)|私は施策の一つだった。少し悔しくて、かなり嬉しい
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舞台の会社について(開く)
架空の製造小売。グロース上場・3月決算・子会社3社。店舗68・賃貸借契約80件・経理財務部8人。来期(2028年3月期)から新リース会計基準が強制適用になる。年表・会社のいま・話数一覧は 経理財務部の記録 に。会計の知識は各話の末尾「この話に出てきた知識」からラボと学習ノートへ。

🎬 動画で見る第29話「伝票二箱を数えたら、返品が1枚あった」

この話を、声と絵で見られる動画です。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)

PART 1物語
1

朝最後の一束

前々期3期前7:50最後の一束が、残っていた。

2026年11月6日、金曜。
朝7時50分。
経理財務部には、まだ部長しかいなかった。
机の横の二つの箱のうち、前々期の箱は昨日のうちに閉じてある。
3期前の箱に、最後の一束が残っていた。

前々期・3期前の620 ── 伝票で算定(部長・二箱・11月6日まで)
大野部長
心の声
3期前の3月。
あと三十枚ほどだ。
ドルの金額と出荷の月を、
ハルカさんの作った表に一枚ずつ入れていく。

束の真ん中あたりで、部長の手が止まった。伝票の右上に、赤い印が押してある。「返品」。金額の前に、マイナスの記号があった。

大野部長
心の声
マイナス12千ドル。
……返品だ。
大野部長
心の声
十日前、上限の出し方を書いたとき、
各月のドルは正の数だと置いた。
返品のようなマイナスはない、と。
パッケージの合計を見て、そう書いた。
出荷伝票 3期前 3月返品取引先海外販売子会社通貨USD金額△12,000 ドル上限の前提:返品はない(第0版)合計だけを見ても、返品は見えない。
大野部長
心の声
合計は、返品を差し引いたあとの数字だった。
だから合計だけを見ても、返品は見えない。

部長は、その一枚を表の一番下に入れ、黄色の付箋を貼った。残りの伝票を最後まで入れ終えたのは、8時40分だった。

2

午前一番下の一行

午前9時。ハルカが席に着くと、部長が表を差し出した。
大野部長
おはよう。
二箱、数え終わった。
この表の、とくに一番下の一行を、
ハルカさんの目でもう一度確かめてほしい。
ハルカ
おはようございます。
……前々期が196枚で、差がプラス1,610。
3期前が142枚で、プラス520。
ハルカ
一番下は、返品ですか。
3期前の3月、マイナス12千ドル。
大野部長
そう。
十日前のメモで、私は返品はないと置いた。
3期前については、その前提が違っていた。
伝票で数えた差(千円)前々期196枚上限 23,940+1,6103期前142枚・返品1上限 15,340 → 15,623+520差は伝票から直接。変わるのは、上限のほう小さな違いで、結論にも関係しない。
ハルカ
でも、差は伝票から直接出しているので、
プラス520は変わらないですよね。
上限より、ずっと小さいです。
大野部長
差は変わらない。
変わるのは、上限のほうだ。
返品のぶんだけ、上限は小さく見積もられていた。
ハルカ
……どれくらい、ですか。
大野部長
計算し直すと、15,340が15,623になる。
小さな違いだ。
結論にも関係しない。
ハルカ
心の声
小さな違いで、結論にも関係しない。
それなら、書かなくてもいいのかもしれない。
部長は、そう言わなかった。

9時半。ハルカと2年目の部員は、読み合わせを続けた。今日は2件。二人で読む残りは、2件になった。

3

昼方法の穴を、方法を作った人が書く

新リース No.2書き終えた新リース No.9書き終えた620(換算差)書いている方法の穴を、方法を作った人が書く。
昼12時。部長は、事前相談で書面に回した三つの項目の書面を、画面に並べていた。新リースのNo.2とNo.9は、昨日のうちに書き終えている。残りは620だった。
ハルカ
部長、620の書面、返品のことも書くんですか。
大野部長
書くつもりだ。
ハルカさんは、どう思う?
ハルカ
……正直に言うと、書かないほうがいいかもしれない、
と少し思いました。
上限の考え方そのものが、疑われるかもしれないので。
大野部長
うん。
私もそれを考えた。
前々期も同じように間違っているんじゃないか、
と聞かれるかもしれない。
大野部長
でも、前々期の箱は一枚ずつ見て、返品も値引きもなかった。
4期前は伝票を見ていないけれど、
パッケージの返品・値引き・取消の欄がどれもゼロで、
月別の金額にもマイナスがないことを確かめた。
大野部長
疑われたときに答えられることを、先に書いておく。
それが、上限で範囲を決めた人の仕事だと思う。
ハルカ
心の声
十日前の部長は、上限が小さく出てほしいと願っていた。
今日の部長は、自分の方法の穴を、自分で書いている。
当社の暫定評価(ご意見を伺ってから当社が判断)営業利益に対する割合算定した年は、どれも0.2%未満当期純利益・利益剰余金変わらない(段の違いだけ)続いていたか立ち上げから同じ方法。今期中間から為替差損益過去の財務諸表は直さない(暫定)私の方法を、私以外の目で見てもらう。
大野部長
当社の考えは、こう書く。
数えた年の差は、どれも営業利益の0.2%に届かない。
当期純利益と利益剰余金は変わらない。
大野部長
だから、過去の財務諸表は直さない。
ただし、それは当社の暫定の評価だ。
ご意見を伺ってから、会社として決める。
ハルカ
「伺いたいこと」の欄、一つ足してもいいですか。
上限の前提が崩れたこと以外に、見ておくべき前提がないか、
聞いてみたいです。
大野部長
いいね。
それを足そう。
私の方法を、私以外の目で見てもらう。
4

夕方部の中の6つ、部の外の5つ

窓の外が暮れていく。

午後4時半。
部長は、三つの項目の書面を主査に送った。
予定より、四時間遅れていた。

✉経理財務部長(監査法人 主査あて)
事前相談で書面に回した3項目をお送りします(新リース No.2・No.9、620)。
620は、前々期・3期前を紙の伝票で算定しました。あわせて、10月27日のメモで置いた前提(返品がないこと)が3期前に当てはまらなかったため、上限を訂正しています。ご意見をいただけましたら、当社として判断いたします。

午後5時。
主査からは、短い受信の連絡だけが届いた。
「拝受しました。
来週中にご連絡します」。

ハルカ
部長、止まる仕事の数、今の数に直しました。
部の中が6つ、部の外が5つです。
担当が休むと止まる仕事(11月6日)部の中 6部の外 5(人事部の仕事)並べると 11。でも、同じ数え方で足さない採るか育てるかの材料 ── 来週水曜まで分けて書いておいてくれたのが、いちばん助かる。
大野部長
部の外の5つは、人事担当の退職で増えた分だね。
並べると、11になる。
ハルカ
はい。
でも、部の外の5つは、二人目が「未定」なだけで、
人事部の仕事です。
経理財務部の数に入れていいのか、迷いました。
大野部長
分けて書いておいてくれたのが、いちばん助かる。
採るか育てるかの材料は、来週の水曜までに私がそろえる。
今日は、手が回らなかった。
ハルカ
言い換え表は、37行のうち12行まで案を書きました。
月曜の区分の決裁のあとで、続きを書きます。
大野部長
ありがとう。
……二箱、書庫に返してくるよ。
結び

書庫二つの箱を返す

前々期3期前前提が外れていたことも、数えて分かったことの一つだ。

午後6時。
部長は二つの箱を抱えて、地下の書庫に下りた。
3期前の箱の一番上には、黄色の付箋を貼った返品伝票が、そのまま入っていた。

十日前に作った方法は、間違ってはいなかった。
前提が一つ、当てはまらない年があっただけだ。
そのことを、方法を作った本人が書いて送った。

前提が外れていたことも、
数えて分かったことの一つだ。

次の話へ持ち越したこと
  • 前々期以前の620 ── 伝票で算定を終えた(前々期+1,610・3期前+520千円)。当社の暫定評価:算定した年はどれも営業利益の0.2%に届かず、当期純利益・利益剰余金は変わらない → 過去の財務諸表は直さない(ご意見を伺ってから当社が判断)
  • 上限の前提 ── 3期前に返品伝票1枚(3月・△12千ドル)。上限を15,340から15,623に訂正。前々期の伝票に返品・値引きなし。4期前は子会社のパッケージ(返品・値引き・取消の欄がゼロ・月別の金額にマイナスなし)で確認。メモを第1版に
  • 書面で続ける3項目(新リース No.2・No.9、620)── 11月6日 16:30 に主査へ送付。返事は来週中
  • 採用か育成か ── 材料は来週水曜(11月11日)までに部長。止まる仕事は、部の中6つ・部の外5つ(人事担当の退職による。人事部の仕事として分けて記載)
  • 年末調整 ── 11月9日(月)に、入れてよい情報の区分と見られる人を決める。ハルカの言い換え表は37行のうち12行の案
  • 読み合わせ ── 今日2件、二人で読む残り2件(期限11月中旬)
学び

この話の、二人の反省と学び

ハルカの反省と学び
1数え直すときは、一番下の一行から見る
部長が「とくに一番下の一行」と言った。数えた人がいちばん気にしているところに、いちばん大事なことがある。
2書かないほうがいい、と思ったことを口に出す
返品のことは、書かないほうがいいかもしれないと少し思った。言ってみたら、部長も同じことを考えていた。
3前提が他にもないか、を聞く
崩れた前提を一つ書くなら、ほかに見落とした前提がないかも聞きたい。「伺いたいこと」に一行足した。
大野部長の反省と学び
1合計は、引いたあとの数字
パッケージの合計だけを見て、返品はないと置いた。合計は、マイナスを差し引いたあとの数字だった。
2自分の方法の穴は、自分で書く
結論は変わらない。書かなくても気づかれないかもしれない。それでも、方法を作った本人が書いて送った。
3疑われたときの答えを、先に書いておく
前々期の伝票に返品も値引きもなかったこと、4期前はパッケージの返品・値引き・取消の欄と月別の金額で確かめたこと。聞かれる前に書いた。
PART 2物語に登場した社内資料(前々期以前の換算差 ── 算定の結果と当社の暫定評価)
付録

前々期以前の換算差 ── 算定の結果と当社の暫定評価 全文金曜の夕方、部長が書面に添えて主査へ送った第1版

この物語の会社(架空)で、親会社と海外販売子会社のあいだの換算差(毎期「端数」として売上原価で調整してきた差)について、紙の出荷伝票で前々期と3期前を数え終え、結果と当社の暫定評価をまとめたメモです。第0版(10月27日)で置いた前提が一つ当てはまらなかったことも、そのまま書いています。実在の会社の文書ではありません。金額・レート・営業利益は架空です。ひな形として使うときは、自社に残っている記録と、置いた前提に合わせてください。

前々期以前の換算差 ── 算定の結果と当社の暫定評価 第1版

作成経理財務部長 大野(2026年11月6日)確認経理財務部 ハルカ(同日。伝票の集計表の照合)状態第1版・当社の暫定評価。事前相談で書面に回した項目として、11月6日 16:30 に監査法人へ送付。ご意見を伺ったうえで当社が判断する取扱い部内(全文を監査法人へ)
⚠ このメモの評価は当社の暫定の評価で、決定ではありません。監査法人のご意見を伺ったうえで、当社が判断します。差はいずれも「営業利益の段」の違い(売上原価で調整するか、為替差損益とするか)で、当期純利益と利益剰余金の額は変わりません。

1 算定の結果

期間ドルの合計(千ドル)算定の方法差(千円)連結営業利益(百万円)割合
前中間(2025年4〜9月)──出荷台帳(10月26日)+480450約0.11%
前期2,380出荷台帳(10月26日)+1,1401,050約0.11%
前々期2,100紙の出荷伝票・月別(196枚)+1,610980約0.16%
3期前1,300紙の出荷伝票・月別(142枚。うち返品1枚)+520760約0.07%
4期前(立ち上げ・1〜3月)180算定しない(上限792)──310上限でも約0.26%

2 表の見方

  • 差の+は、売上原価で調整していたために、営業利益が多く出ていた額
  • 前中間・前期は当期の財務諸表の比較情報に表示される期間。前々期以前は表示されないが、過去に開示した営業利益に同じ違いがあったため算定した

3 第0版の前提が当てはまらなかったこと

  • 3期前の3月に、返品の出荷伝票が1枚あった(△12千ドル)
  • 第0版では、上限の前提を「各月のドル建ての金額が正(返品・値引き等のマイナスがない)」と置いていた。各年のパッケージの合計を見て置いた前提だったが、合計は返品を差し引いたあとの数字で、合計からは返品は見えなかった
  • 3期前の上限を訂正する:(正の取引 1,312千ドル + 返品 12千ドル)× いちばん大きな開き 11.80円 = 15,623千円(第0版 15,340千円)
  • 差は伝票から月別に直接算定しているため、3期前の差(+520千円)は上限の訂正の影響を受けない
  • 訂正の差 283千円の内訳:パッケージの合計 1,300千ドルは、正の取引 1,312千ドルから返品 12千ドルを引いた純額。上限は「取引の大きさの合計」で出すため、正の取引に戻した 12千ドルと、返品の絶対額 12千ドルの計 24千ドルぶん大きくなる(24 × 11.80 ≒ 283千円)
  • 前々期:196枚すべてを見て、返品・値引きの伝票はなかった。4期前:伝票は見ていないが、子会社のパッケージで返品・値引き・取消の欄がいずれもゼロで、月別の金額にもマイナスがないことを確かめた(上限 792千円の前提は当てはまる)

4 当社の暫定評価

  • 算定した年は、いずれも差が連結営業利益の0.2%に届かない。算定しない4期前は、上限で見ても約0.26%(出荷は三か月のみ)
  • 差は営業利益の段の違いで、当期純利益と利益剰余金の額は変わらない
  • 同じ方法(売上原価での調整)が、子会社の立ち上げから続いていた。今期の中間からは、為替差損益(営業外)で処理している
  • 以上から、当社としては、過去の財務諸表(比較情報を含む)は修正しない(重要性が乏しい)と考えている。最終的な判断は、ご意見を伺ったうえで当社が行う

5 伺いたいこと

  • 上の評価で、当社が見ている観点(営業利益に対する割合・当期純利益と利益剰余金に影響しないこと・同じ方法が続いていたこと)に、不足している観点がないか
  • 第0版の前提のうち、返品以外に当社が見落としている前提がないか(ハルカの提案で追加)
  • 営業利益に対する割合だけでなく、売上総利益・セグメント情報への影響、ほかの未修正の誤りとの合計、定性的な事情などについて、追加で確かめるべき事項がないか

6 これからのこと

  • 海外販売子会社の換算シートに「親会社との取引」の行を設ける(第3四半期のパッケージから。依頼済み)
  • 親会社の社内レートの表(月ごと)を、毎月の出荷台帳と一緒に子会社へ送る
  • 上限を出す方法を今後使うときは、合計だけでなく、返品・値引きの欄があるかを先に確かめる
変更履歴
第0版(2026年10月27日):年ごとの上限を出し、前期で方法を試した。4期前は算定しない、前々期・3期前は伝票で算定すると決めた
第1版(2026年11月6日):前々期・3期前を伝票で算定(+1,610・+520千円)。3期前に返品1枚があり、上限の前提が当てはまらなかったため上限を訂正。当社の暫定評価を追加
PART 3学ぶ世界へ・前後の話
→

この話に出てきた知識・前後の話

この話に出てきた知識(学ぶ世界へ)
経理財務部の物語|第29話|2026年11月6日(金)
前の話:第28話(2026年11月5日)|【人的資本】連結を回せる人は1人。去年の施策一覧にあった一行 / 次の話:第30話(2026年11月7日)|私は施策の一つだった。少し悔しくて、かなり嬉しい / 記録ページ(年表・会社のいま・話数一覧) / ハルカの学習ノート

この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。数字・日程はすべて架空です。

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。