MENU

私は施策の一つだった。少し悔しくて、かなり嬉しい|経理財務部の物語 第30話(2026年11月7日)

私は施策の一つだった。少し悔しくて、かなり嬉しい|経理財務部の物語 第30話(2026年11月7日)
経理財務部の物語第30話2026年11月7日(土)・ハルカの部屋・近所のパン屋次:第31話(2026年11月8日)|手帳に書いたのは、名前ではなく「1→2」
この話の中心ハルカ登場ハルカ・ハルカの母(電話で。実家の猫こむぎ)前の話第29話(2026年11月6日)|【為替換算】伝票二箱を数えたら、返品が1枚あった
舞台の会社について(開く)
架空の製造小売。グロース上場・3月決算・子会社3社。店舗68・賃貸借契約80件・経理財務部8人。来期(2028年3月期)から新リース会計基準が強制適用になる。年表・会社のいま・話数一覧は 経理財務部の記録 に。会計の知識は各話の末尾「この話に出てきた知識」からラボと学習ノートへ。

🎬 動画で見る第30話「私は施策の一つだった。少し悔しくて、かなり嬉しい」

この話を、声と絵で見られる動画です。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)

PART 1物語
1

土曜の朝最初のページの日付

学習室のノート2025年10月最初のページ(白い)木曜から、何回思い出したんだろう。

2026年11月7日、土曜。
朝8時。
ハルカは、モンステラに水をやってから、机の前に座った。

木曜の夜に開いた学習室のノートが、まだ机の上にあった。
最初のページの日付は、2025年10月。

11/7(土):パン屋(午前)。言い換え表は、月曜まで開かない
ハルカ
心の声
対象、経理担当1名。
開始、2025年10月。
……木曜から、何回思い出したんだろう。
ハルカ
心の声
学習室は、会社の研修制度だと思っていた。
だれでも申し込めて、私はたまたま申し込んだんだと。
ハルカ
心の声
本当は、部長が書いた一行だった。
私が扉を開ける前から、私の席が用意されていた。
ハルカ
心の声
聞けば、たぶん部長は答えてくれる。
でも、聞いたら、何かが終わってしまう気がする。

ハルカは、学習室のノートを閉じて、本棚に戻した。代わりに、いつものノートを開いた。

最後のページだけは、仕事のことを書かないと決めている。けれど今日は、そこに何を書けばいいのかが、まだ分からなかった。

2

パン屋15分は、少しだけ短かった

クロワッサンメロンパン15分選べるのは、焼いてくれていたから。
午前10時。いつものパン屋の前で、ハルカはいつものように迷っていた。
ハルカ
心の声
クロワッサンか、メロンパンか。
……毎週、ここで15分迷う。
ハルカ
心の声
どっちを選んでも、私が選んだことには変わりない。
お店がクロワッサンを焼いてくれていたから、選べるだけで。
ハルカ
心の声
……学習室も、同じかもしれない。
席を用意したのは部長で、毎週通ったのは私だ。

ハルカは、クロワッサンを一つ買った。15分は、少しだけ短かった。

ハルカ
心の声
一年分のノートは、私が書いた。
そこは、施策の欄には書いていない。
3

午後の電話「数字が二つあるのよ」

はがき「保険の分も、終わったわよ」
午後2時。部屋に戻ると、母から電話が来た。
母
もしもし。
保険の分も、入力は終わったわよ。
証明書のはがきがやっと全部そろったから、
あとはお店に持っていくだけ。
ハルカ
よかった。
迷わなかった?
母
一か所だけ。
はがきに「証明額」と「申告額」、数字が二つあるのよ。
どっちを入れるのかしらって。
ハルカ
12月まで予定どおり保険料を払うなら、
「申告額」のほうだよ。
一年分の見込みの金額だから。
証明額は、はがきを作った時点までの金額。
母
そうそう、それ。
画面の下の補足の欄に「証明書の、
申告額の欄を見てください」って一行あってね。
それで分かったの。
ハルカ
心の声
補足の欄。
……何を書くかじゃなくて、どこを見ればいいかが、
一行で書いてある。
生命保険料控除証明書(見本・架空)一般の生命保険料証明額9月末までの金額申告額12月までの見込み12月まで払うなら、こちら補足の欄:「証明書の、申告額の欄を見てください」何を書くかではなく、どこを見ればいいか。
母
こむぎがね、またはがきの上で寝ようとするのよ。
どいてって言っても、どかないの。
ハルカ
紙の上が好きなんだよ、こむぎは。
母
あなたは? 勉強会、まだ続けてるの? 先生のところの。
ハルカ
……うん。
来年も、たぶん続ける。
母
そう。
続けられる場所があるのは、いいことよ。
ハルカ
心の声
続けられる場所。
……用意したのは部長で、続けたのは私。
お母さんは、何も知らずに、ちょうどいい言葉を言う。

電話を切ると、ハルカは月曜まで開かないと決めていた言い換え表のファイルを、一度だけ開いた。

一行だけ足した。「補足の欄には、何を書くかではなく、どこを見ればいいかを書く」。それから、閉じた。

4

夕方のノート最後のページ

いつものノート最後のページだけは、仕事のことを書かない。
夕方5時。ハルカは、いつものノートの最後のページを開いた。
11月7日(土)私は、施策の一つだった。それが、少し悔しい。それが、かなり嬉しい。三行だけ書いて、閉じた。
ハルカ
心の声
私は、施策の一つだった。
ハルカ
心の声
それが、少し悔しい。
自分で見つけて、自分で選んだと思っていたから。
ハルカ
心の声
それが、かなり嬉しい。
私が扉を開ける前から、
誰かが私の一年を数えてくれていたから。
ハルカ
心の声
部長には聞かない。
木曜に写した一行は、開始の月も、手書きの言葉も、
そのままにしておく。

ハルカは、三行だけ書いて、ノートを閉じた。窓の外は、もう暗くなり始めていた。

結び

土曜の終わり三行

ノートパン書いてあるのは、開始の月だけだ。

土曜が終わる。
言い換え表には、一行が増えた。
ノートの最後のページには、三行が増えた。

木曜に写した一行の続きは、どこにも書いていない。
書いてあるのは、開始の月だけだ。

ハルカのノートの最後のページ(11月7日・土):私は施策の一つだった

私は施策の一つだった。
それが少し悔しくて、かなり嬉しい。

次の話へ持ち越したこと
  • 人材戦略(案)第0版 ── 採用か育成かの材料は、来週水曜(11月11日)までに部長。ハルカは部長に何も聞かない
  • 年末調整 ── 11月9日(月)に、入れてよい情報の区分と見られる人を決める。言い換え表は37行のうち12行の案+書き方の約束を一つ(補足の欄には、どこを見ればいいかを書く)
  • 母の申告書 ── 保険料の控除もスマホで入力済み(証明書の「申告額」の欄)。紙の控除証明書は、これから勤め先へ提出する
  • 前々期以前の620 ── 主査の返事は来週中。読み合わせ ── 二人で読む残り2件
学び

この話の学びと、母の言葉

ハルカの反省と学び
1選べるのは、用意されていたから
クロワッサンもメロンパンも、お店が焼いてくれていたから選べる。それでも、選んだのは私だ。
2年末調整は「申告額」の欄
保険料控除の証明書には、証明額と申告額がある。12月まで予定どおり払うなら、年末調整には見込みの申告額を書く。
3補足の欄には、どこを見ればいいかを書く
母が迷わなかったのは、補足の欄の一行が「証明書のどこを見るか」だけを言っていたから。
母の言葉(電話から)
1数字が二つあるのよ
証明額と申告額。どっちを入れるのか、迷うのは一か所だけだった。
2どいてって言っても、どかないの
こむぎは、紙の上が好き。証明書のはがきでも。
3続けられる場所があるのは、いいことよ
何も知らずに言った言葉が、いちばんちょうどよかった。
PART 2学ぶ世界へ・前後の話
→

この話に出てきた知識・前後の話

この話に出てきた知識(学ぶ世界へ)
経理財務部の物語|第30話|2026年11月7日(土)
前の話:第29話(2026年11月6日)|【為替換算】伝票二箱を数えたら、返品が1枚あった / 次の話:第31話(2026年11月8日)|手帳に書いたのは、名前ではなく「1→2」 / 記録ページ(年表・会社のいま・話数一覧) / ハルカの学習ノート ── 年末調整ラボ 基礎編

この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。年末調整の個別の取扱いは、勤務先や税務署の案内で確かめてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。