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経理財務部の物語 第18話(10月26日)|書庫には、まだ行かない

経理財務部の物語 第18話(10月26日)|書庫には、まだ行かない
経理財務部の物語第18話2026年10月26日(月)・本社 経理財務部次:第19話(近日)
この話の中心ハルカ登場ハルカ・大野部長(子会社と人事部は、メールで)前の話第17話(10月25日)|見るのは、二人分
舞台の会社について(開く)
架空の製造小売。グロース上場・3月決算・子会社3社。店舗68・賃貸借契約80件・経理財務部8人。来期(2028年3月期)から新リース会計基準が強制適用になる。年表・会社のいま・話数一覧は 経理財務部の記録 に。会計の知識は各話の末尾「この話に出てきた知識」からラボと学習ノートへ。
PART 1物語
1

朝九時の一時間

更新一年→二年10月26日(月)9:00〜10:00ハルカ+2年目 今日 3件24件のうち 残り21件毎日午前の一時間。初日だけ部長も座り、一件目で止められる。

2026年10月26日、月曜。
土曜出勤から二日。
午前9時、小さな会議室の机に、契約書の束が三つ置いてあった。

先週の金曜に決めた、毎日午前の一時間。
リース期間とリース料に重い判断が要る24件を、ハルカと2年目の部員の二人で読む時間だ。

その初日の今日だけ、部長が三人目として席に着いていた。

大野部長
おはよう。
土曜はありがとう。
大野部長
初日だから、今日だけ私も座らせてもらうよ。
三件は、更新の時期が近い店からにしよう。
ハルカ
はい。
……更新まで一年を切っている店が、二つありますね。
大野部長
一件目は、私が読むよ。
二人は、私が読み落としたところで止めてくれるかな。

三人は、同じ契約書を囲んで読んだ。部長が読み上げ、ハルカと2年目の部員が台帳の下書きの欄と照らしていく。

ハルカ
部長、ここです。
「双方から申出がない限り、同一条件で二年間更新する」。
台帳の下書きは「一年」になっています。
大野部長
……本当だ。
前に読んだ店の書き方に、引っぱられたね。
直しておこう。
ハルカ
心の声
部長も、読み落とす。
だから二人で読む。
先週、部長が自分で決めたことだ。
ハルカ
心の声
……それを、初日に自分で確かめに来たのかもしれない。
ハルカ
更新の期間が違うと、リース期間の見方も変わりますよね。
大野部長
そう。
何年いるつもりかを考える、その前提の数字だからね。
大野部長
止めてくれてありがとう。
二件目からは、二人に任せるよ。

10時ちょうど、三件目を閉じた。二人で読む24件のうち、残りは21件。

大野部長
一時間で三件か。
木曜の事前相談までに、全部は終わらないね。
ハルカ
事前相談では、「終わった数」と「残りの数」を、
そのまま言うんですよね。
大野部長
そう。
終わったふりはしない。
……さて、今日は中間を閉じる日だ。
ハルカ
それと、土曜に約束した数字があります。
620の、前期の金額です。
大野部長
そうだったね。
午前は中間、午後は前期。
それでいこう。
2

午前中間を閉じる

10月26日 午前 中間連結を閉じる(単位:万円・千円 架空)EC・物流子会社の再送(2,000万円)① 記入違い1,250万円② 検品前の返品430万円③ 廃棄済み・未処理140万円④ 原因不明 → 減耗180万円④は「理由が分かった」ではない海外販売子会社の返事(860千円)中間:親会社側の補正のまま理由「暫定」→「子会社確認済み」620 三つで一組営業利益 △620当期純利益は動かない入れたら、二つとも見る ── 営業利益が下がったか/当期純利益が動いていないか二通のメールと三行の仕訳で、中間の数字が閉じていく。

午前10時10分。
席に戻ると、子会社からメールが二通届いていた。

✉EC・物流子会社 経理担当
中間のパッケージを再送します。棚卸差異2,000万円の内訳(記入違い1,250万円・検品前の返品430万円・廃棄済みで帳簿未処理140万円・原因不明180万円)を、すべて9月に反映しました。
180万円は棚卸減耗として処理しています。根拠として、過去3期の減耗の実績を添付します。
✉海外販売子会社 経理担当
9月の船便の未着品(860千円)は、当社の9月末の在庫に入れるべきものでした。中間は、そちらでの補正のままでお願いします。
第3四半期のパッケージから、未着品の欄を設けて当社で計上します。
ハルカ
物流の再送、来ました。
四つとも、9月に入っています。
EC・物流子会社 中間パッケージ(再送)── 棚卸差異の内訳9月分・10月26日受領(2,000万円の四つ)
確認済み減耗として処理
①記入違い(棚番の書き間違い)確認済み1,250万円9月に訂正
②検品前の返品確認済み430万円受払で確定
③廃棄済み・帳簿未処理確認済み140万円廃棄の記録あり
④原因不明減耗として処理180万円過去3期の減耗の実績の幅の中。原因は不明のまま

合計 2,000万円。再送後の帳簿の在庫と実地棚卸の差は 0

④は「理由が分かった」ではなく「減耗として処理した」。メモにそのまま書く
架空の会社の社内文書(抜粋)
大野部長
180万円の根拠は、どうなっているかな。
金曜に「根拠は親会社が確かめる」と言ったところだ。
ハルカ
過去3期の減耗の実績が付いています。
今回の180万円は、9月末の在庫に対して、
その実績の幅の中に入っています。
大野部長
幅の中に入っている、というのは、理由が分かった、
という意味ではないね。
ハルカ
はい。
「原因は分からないまま、減耗として処理した」です。
メモにそう書いて、実地棚卸の記録も一緒に残します。
大野部長
それでいい。
分からないものを、分かったことにしない。
ハルカ
海外販売の860も、返事が来ました。
子会社の在庫に入れるべきものだった、と。
大野部長
中間は、こちらの補正のままにしよう。
理由の欄は「暫定」から「子会社確認済み」に変えておいてくれるかな。
ハルカ
第3四半期からは、子会社が自分で計上する。
……「会社の修正」は、子会社が直したら消す、ですね。
大野部長
金曜に決めたとおりだね。
消す日も、写しのメモに書いておこう。
ハルカ
620も入れます。
①「調」の2行目の取消し、②消去の売上原価の変更、
③換算の修正。
三つで一組です。
大野部長
入れたら、二つとも見てね。
営業利益が620下がっているか。
当期純利益が動いていないか。

ハルカは三行を入れ、連結の損益計算書の欄を上から順に見た。

ハルカ
……営業利益、620下がりました。
当期純利益は、そのままです。
ハルカ
心の声
土曜に紙の上で決めたことが、表の上で動いた。
数字は小さいのに、指先が少し冷たい。
大野部長
ありがとう。
午後は、前期の金額だね。
3

午後出せる年と、出せない年

620と同じ差を、年ごとに出す(単位:千円・架空)当中間2026年4〜9月+620出荷台帳(ドルあり)前中間2025年4〜9月+480出荷台帳(ドルあり)前期2025年4月〜2026年3月+1,140出荷台帳(ドルあり)前々期以前立ち上げの年から?円だけ。ドルは紙の伝票地下の書庫・年ごとの箱仮の数字では、埋めない。分からない欄は「未算定」前期までは出せた。その前の年は、ドルの欄が残っていなかった。
午後1時。ハルカは、前期の出荷台帳を開いた。土曜と同じ並べ方で、月ごとに社内レートと期中平均を並べていく。
ハルカ
部長、出ました。
前の中間期、昨年の4月から9月が、プラス480。
前期の一年で、プラス1,140です。
大野部長
前期も、全部の月がプラスかな。
ハルカ
年の合計はプラスですが、マイナスの月が四つあります。
月によって向きが変わるのは、今期と同じです。
大野部長
前期は、営業利益が1,140多く出ていた、
ということだね。
ハルカ
はい。
……それで、前々期より前も出そうとしたんですけど。
ハルカ
前々期の出荷台帳は、
販売システムを入れ替える前のデータで、
円の金額しか残っていません。
ドルの欄がないんです。
大野部長
ドルは、紙の出荷伝票にあるはずだ。
地下の書庫に、年ごとの箱で置いてある。
ハルカ
心の声
地下の書庫。
箱を開けて、伝票を一枚ずつ。
何年分になるんだろう。

部長は、壁の時計を見た。午後1時40分だった。

大野部長
今日の夕方、私が書庫に行って数えてこようかな。
子会社を立ち上げた年から、全部。
ハルカ
……全部、ですか。
大野部長
私が始めた直し方だからね。
何年分、いくら違っていたか、自分で数えておきたいんだ。
ハルカ
心の声
部長の声は、静かだった。
土曜に「つらいよ」と言ったときと、同じ声だった。
ハルカ
少しだけ、考えさせてください。

ハルカは、事前相談の追補の下書きを開いた。620の欄の「前々期以前」だけが、空いていた。

ハルカ
心の声
本当は、前期の数字で前々期を見積もって、
この欄を埋めてしまいたい。
空欄のある表を主査に出すのが、こわい。
ハルカ
部長、前々期は、
前期の1,140くらいだと仮に置いて……。
ハルカ
……いえ、やめます。
仮に置いた数字は、確かめた数字と同じ欄に並ぶと、
区別がつかなくなります。
大野部長
先週、写しに「未分類」の列を作った人の言葉だね。
ハルカ
そのときと同じです。
分からないものは、分からない欄に置きます。
4

夕方行かないでください

精算表(確定前)照合メモ今日の夕方:地下の書庫へ?中間の最後の確認は、誰がする?「書庫のこと、今日は行かないでほしいんです」
午後4時。中間の精算表は、最後の確認を残すだけになった。ハルカは、追補の下書きと、今期の財務諸表のひな形を並べて、部長の席へ行った。
ハルカ
部長。
書庫のこと、今日は行かないでほしいんです。
大野部長
……理由を、聞かせてくれるかな。
ハルカ
620の直し方で変わるのは、
営業利益と営業外の分け方だけです。
当期純利益は変わりません。
ハルカ
だから、利益剰余金にも積み上がっていません。
今年の財務諸表で、前の年の数字が出てくるのはどこか、
考えてみたんです。
ハルカ
半期報告書なら、前の中間期の損益。
年度の決算なら、前期の損益。
並ぶのは、その二つです。
ハルカ
その二つは、今日出せました。
前の中間期が480、前期が1,140です。
大野部長
前々期より前は、今年のどの表にも並ばない、
ということだね。
ハルカ
はい。
そこが、850と違うところです。
850は利益の額そのものが違ったので、
期首の利益剰余金に残っています。
同じ「昔の直し方」でも、影響の届く先が違う(単位:千円・架空)850 未払の補正の二重計上利益の額そのものが違った→ 当期純利益が違う→ 利益剰余金に積み上がる期首の利益剰余金・比較情報に影響重要性と扱いを主査に相談620 換算差の表示区分営業利益と営業外の段が違った→ 当期純利益は同じ→ 利益剰余金には積み上がらない今年の表に並ぶのは 前中間・前期前々期以前は「未算定」。調査の要否を検討表に並ばない年も、隠さずに書く。追加で調べるかは、重要性を整理して考える850は積み上がる。620は、段が違っただけで積み上がらない。
大野部長
……そうだね。
850は積み上がる。
620は、段が違っただけで、積み上がらない。
大野部長
でも、表に並ばないからといって、
昔の数字が違っていたことは変わらないよ。
前々期より前を調べなくていい、と決まったわけでもない。
ハルカ
はい、決まっていません。
今すぐ全部の伝票を数える必要があるかを、
まだ判断できていないだけです。
ハルカ
まず、分かっている金額と、分からない範囲を並べます。
そのうえで、重要性と、追加で調べる必要があるかを、
私たちで考えませんか。
ハルカ
追補には、「前々期以前も同じ処理。
台帳にドルの金額が残っておらず、未算定」と書きます。
隠さずに、です。
ハルカ
その整理は、明日でもできます。
でも、中間をいったん締めるのは今日です。
今日、部長が書庫に入ったら、
中間の最後の確認は誰がするんですか。
ハルカ
心の声
言ってしまった。
部長に、行かないでください、と。

部長は、しばらく答えなかった。机の端にある土曜の照合メモの写しに、手を置いた。

大野部長
数えたかったのは、主査のためじゃなくて、
私のためだったのかもしれないね。
大野部長
分かった。
今日は行かない。
大野部長
ただ、調べなくていいと決まったわけじゃない。
必要かどうかは、こちらで整理して、
事前相談で私たちの考えを話そう。
必要になったら、私が責任を持って数える。
ハルカ
はい。
そのときは、伝票の並べ方を手伝わせてください。
大野部長
じゃあ、追補を見せてもらおうかな。
事前相談メモ(第1版)への追補(案)── 追加のご報告・ご相談事項下書き:ハルカ/確認:部長(10月26日)
ご報告ご相談
A契約の読み取り ── 進捗と仕分け(手順の例外)ご報告二人で読んだ累計34件二人で読む残り21件/一人読み+抜き取り25件。期限11月中旬は変えない
B前々期の未払の補正の二重計上(850千円)ご相談今期中間は取消し利益の額の違い。期首の利益剰余金・比較情報への影響と重要性
C親会社との取引の換算差の表示(620千円)ご相談今期中間から為替差損益段の違い。前中間+480・前期+1,140。前々期以前は未算定

説明の順番:未定

前々期以前は「未算定」。仮の数字で埋めない
架空の会社の社内文書(抜粋)
大野部長
三つとも、
「事実・影響・当社の対応・伺いたいこと」に分けてある。
第1版と同じ形だね。
ハルカ
第1版に合わせました。
ただ、どの順番で話すかが、決められなくて。
ハルカ
新リースの相談の場なので、読み取りの仕分けを先に。
850と620は、
最後に「その他」で……と思ったんですが。
大野部長
最後に置くと、時間が足りなくなったとき、
そこが削られるね。
ハルカ
……はい。
それも、少し考えました。
ハルカ
心の声
部長の古い直し方を、最後にしたかった。
部長のためだと思っていた。
でも、それは、隠すのと半分同じだ。
大野部長
順番は、私が考えるよ。
水曜に、先生に連絡してみようと思う。
聞く順番を、一度見てもらいたい。
ハルカ
水曜は、私の代休ですね。
大野部長
ちゃんと休んでね。
今夜は、中間を閉じよう。
それが今日の一番だ。
結び

締め中間を閉じて、順番を残す

追補(案)── 10月27日(火)午前に主査へA 読み取りの進捗と仕分け(二人で読む残り21件)B 850 ── 利益の額の違い(利益剰余金に影響)C 620 ── 段の違い(前中間480・前期1,140)  前々期以前:未算定説明の順番:(空欄)── 水曜、部長が先生に連絡中間連結 10月26日 18:20 社内確認用にいったん締め分からない欄は、分からないまま出す。

午後6時20分。
部長は、中間連結の精算表を、社内の確認用としていったん締めた。
850の過年度の扱いは、事前相談の結果を踏まえて、必要な修正を行う。
「調」の列の取消しは三行になり、860の理由の欄には「子会社確認済み」と入った。

追補(案)は、部長の名前で、明日の午前に主査へ送ることになった。
説明の順番だけが、まだ決まっていない。

✉人事部
年末調整のクラウドの件です。稼働を11月2日に予定していましたが、設定が遅れていて、少しずれそうです。経理財務部に確認していただく項目は、日程が決まり次第ご連絡します。

部長はメールを読み、手帳に一行だけ書いた。
ハルカは、代休の前に、読み合わせの続きの順番をメモに残した。

火曜:追補を主査へ(午前)/読み合わせ 4件/換算シートの依頼(海外販売子会社) 水曜:ハルカ代休・部長は先生へ連絡 木曜:事前相談(午後)

分からない欄は、分からないまま出す。
数えるかどうかは、まず自分たちで考える。

次の話へ持ち越したこと
  • 中間連結 ── 10月26日に社内確認用としていったん締めた(850の過年度の扱いは事前相談の結果を踏まえて必要な修正)。物流の再送(1,250・430・140・180〈原因不明のまま減耗として処理〉)を反映。620は三つで一組で反映(営業利益△620・当期純利益は不変)。860は親会社側の補正のまま(子会社確認済み・第3四半期から子会社が計上)
  • 事前相談(10月29日 木 午後)── 追補(案)を10月27日(火)午前に主査へ。①読み取りの進捗と仕分け(二人で読んだ累計34件・二人で読む残り21件・一人読み+抜き取り25件)②850(利益の額の違い・期首の利益剰余金に影響)③620(段の違い・前中間+480・前期+1,140・前々期以前は未算定)
  • 前々期以前の620 ── 紙の出荷伝票(地下の書庫)でなら算定できる。分かっている金額と未算定の範囲を整理し、重要性と追加の調査の要否を会社として検討(10月27日)。事前相談では当社の評価を示して見解を伺う。調査が必要になれば部長が数える
  • 抜き取り10件(一人読み25件の分・第15話)── 部長。まだ始めていない
  • 説明の順番 ── 未定。水曜(10月28日)に部長が先生に連絡する。ハルカは代休
  • 年末調整のクラウド ── 人事部から「11月2日の稼働が遅れそう」。経理財務部の確認項目は後日
  • 換算シートに「親会社との取引」の行を足す依頼 ── 10月27日(火)、部長から海外販売子会社へ(第3四半期から)
第18話 おわり次の話:第19話(近日)
学び

この話の、二人の反省と学び

ハルカの反省と学び
1仮に置いた数字は、確かめた数字と見分けがつかない
前々期の欄を、前期の数字で仮に埋めかけた。同じ欄に並ぶと、あとで読む人は確かめた数字と区別できない。分からない欄は「未算定」と書いて、理由を添えて出す。
2その数字は、今年のどの表に並ぶか
620は段の違いで、今年の財務諸表に並ぶのは前の中間期と前期だけ。850は利益の額の違いなので、期首の利益剰余金に残る。ただ、表に並ばないから調べなくていい、ではない。分かっている金額と分からない範囲を並べて、重要性と追加の調査の要否を考える。
3止めるときは、代わりの段取りを添える
部長に「行かないでください」と言えたのは、理由(今年の表に並ばない)と、代わりの段取り(分かっている金額と未算定の範囲を整理して、調べる必要を一緒に考える・中間を締めるのは今日)を一緒に出せたから。
大野部長の反省と学び
1自分のために数えたい数字と、決算に要る数字
立ち上げの年から全部を数えたかったのは、主査のためより自分のためだった。償いの作業と、決算に要る作業を分ける。調べる必要があるかは会社として整理し、必要なら自分が責任を持って数える。
2幅の中に入っていても、理由が分かったわけではない
物流の180万円は、過去の減耗の実績の幅の中にあった。それでも「理由が分かった」ではなく「減耗として処理した」と書く。
3二人で読む理由は、自分にも当てはまる
読み合わせで、更新の期間を「一年」と読み落としたのは自分だった。手順を決めた人も、その手順の中で止めてもらう側にいる。
PART 2物語に登場した社内資料(事前相談メモへの追補(案)── 追加のご報告・ご相談事項)
付録

事前相談メモへの追補(案)── 追加のご報告・ご相談事項 全文月曜の夕方、ハルカが下書きし、部長が確認した追補

この物語の会社(架空)で、監査法人との事前相談の三日前に、ハルカが下書きし、大野部長が確認した追補です。第1版(10月上旬に送付)は新リースの論点だけでしたが、中間連結の作業の中で、契約の読み取りの手順の例外と、部長が過去に連結で行ってきた二つの処理について説明すべきことが出てきました。第1版と同じく「事実・影響・当社の対応・伺いたいこと」に分けています。実在の会社・監査法人の文書ではありません。金額・件数は架空です。

新リース会計基準の適用に関する事前相談メモ(第1版)への追補(案)── 追加のご報告・ご相談事項

宛先監査法人 監査チーム 主査 殿作成経理財務部長 大野(下書き:経理財務部 ハルカ)状態案・部長確認済み(2026年10月26日)。10月27日(火)午前に送付予定。事前相談は10月29日(木)午後社内の扱い中間連結を社内確認用としていったん締めた数字(10月26日)にもとづく。B の過年度の扱いは、事前相談の結果を踏まえて必要な修正を行う。説明の順番は未定
⚠ これは案です。B(850)と C(620)は、重要性の判断とそれに応じた扱いを当社ではまだ決めていません(当社の暫定的な評価を事前相談でご説明し、ご意見を伺ったうえで、当社が判断します)。C の前々期以前の金額は未算定です。仮の金額は置いていません。会計基準の解説ではありません。

1 この追補について

  • 第1版の送付後、中間連結(2026年9月)の作業の中で、ご報告・ご相談すべき事項が三つ生じたため、事前相談で併せてご説明したい
  • A は新リースの準備(契約の読み取り)に関するもの、B・C は連結の過去の処理に関するもの。B・C は、いずれも経理財務部長が過去に行ってきた処理である
  • 金額の単位は千円。中間連結の数字は、10月26日に社内確認用としていったん締めたもの

2 追加の事項の一覧

No事項区分今期中間の対応伺いたいこと
A契約の読み取り ── 進捗と仕分け(手順第1版の例外)ご報告仕分けにもとづき読み取りを継続(期限11月中旬は変更しない)仕分けの考え方と抜き取りの件数に、不足している観点がないか
B前々期の未払の補正の二重計上(850)ご相談今期中間で連結上の補正を取消し重要性の判断と、それに応じた扱い(過去の財務諸表の修正再表示を要するか)について、当社の整理に不足がないか
C親会社との取引の換算差の表示区分(620)ご相談今期中間から為替差損益に表示(売上原価から振替)前中間・前期の表示の違いの重要性と、前々期以前の追加の調査の要否に関する当社の評価(当日ご説明)に、不足している観点がないか

3 A 契約の読み取り ── 進捗と仕分け

  • 事実:把握済みの賃貸借契約80件のうち、重要4項目(リース期間・リース料・更新等の条件・特約)を二人で読み合わせた契約は累計34件(10月26日現在)
  • 手順第1版は「重要4項目は二人で読む」としているが、中間連結の作業と重なり、期限(11月中旬)までに全件を二人で読む見込みが立たなかった
  • 当社の対応:残りの契約を、既読・未読とは別に契約の中身で仕分けた(10月23日)。リース期間・リース料に重要な判断が要る契約(更新の時期が近い・最低保証付きの売上連動賃料・閉店の検討対象・特約あり)は二人で読む。残り21件
  • それ以外の25件は一人で読み、経理財務部長が10件を抜き取って読み直す。誤りが出た種類の契約は、二人で読む側に戻す
  • 読み合わせで見つかった誤り:1件(更新の期間「二年」を台帳の下書きで「一年」と記載。10月26日に修正)
  • 期限(11月中旬)は変更しない。例外は運用の前にご報告する

4 B 前々期の未払の補正の二重計上(850)

  • 事実:前々期末に、貴法人のご指摘を受け、海外販売子会社の広告宣伝費の未払850を連結上で追加計上した(当社グループは、広告代理店への未払を買掛金に含めて表示している。前々期の指摘事項一覧と同じ)
  • 前期から、子会社が自社の月次で未払を計上するようになったが、連結上の追加計上を取り消していなかった。このため、前期・今期の連結で二重に計上されていた
  • 影響:利益の額そのものの違い(前期の連結で費用と買掛金が850過大)。期首の利益剰余金と比較情報に影響する
  • 今期中間の対応:子会社の9月の未払の明細で計上済みを確かめ、連結上の補正を取消し(10月23日)
  • 各期間の影響額は、前々期・前期・当中間の連結精算表の調整仕訳の推移と、子会社の未払の明細により確認した(下の表。推移表は当日お持ちする)
  • 前期分の扱い:重要性の判断と、それに応じた扱い(過去の財務諸表の修正再表示や訂正報告書の要否を含む)は当社でまだ決めていない。当社の暫定的な評価を当日ご説明し、ご意見を伺う
  • 再発防止:連結上で子会社の数字を補正した行は、子会社が自社の帳簿で直したら消す(精算表の写しのメモに、消す日を記載する。第3四半期から試行)

4-2 B の期間別の影響(調整仕訳の推移で確認)

期間連結上の補正影響(連結)
前々期末海外販売子会社の広告宣伝費の未払850を追加計上(子会社は未計上)誤謬なし(当時は必要な連結上の追加計上)
前期子会社が月次で未払を計上するようになったが、連結上の補正も期末に残った費用850・買掛金850が過大(二重)
前期末(当期首)──買掛金850が過大・利益剰余金850が過小
当中間10月23日に連結上の補正を取消し当中間の二重は解消。期首の利益剰余金850の扱いは相談

5 C 親会社との取引の換算差の表示区分(620)

  • 事実:親会社から海外販売子会社へのドル建ての輸出について、親会社は出荷月の社内レートで、子会社は期中平均で円に換算していた。差を「為替換算の端数」として売上原価で調整してきた(子会社の立ち上げの年から)
  • 今期中間の対応:親会社との取引による収益・費用は親会社が換算に用いたレートで換算し、差額は為替差損益とする扱いに改めた(売上原価から振替。10月26日に反映)。今期中間の影響:営業利益△620、営業外収益+620
  • 影響の性質:営業利益と営業外の段の違いのみ。経常利益・当期純利益・利益剰余金には影響しない
  • 過年度の金額は下の表のとおり。前々期以前は、販売システムの入替え前の出荷台帳にドル建ての金額が残っておらず、未算定(紙の出荷伝票によれば算定は可能)
  • 前々期以前の金額は、当期の財務諸表(比較情報を含む)には表示されない。ただし、表示されないことをもって調査を不要とはしない(過去に開示した営業利益に同じ違いがあった事実は変わらない)
  • 当社の対応:判明している影響額と未算定の範囲を整理し、重要性と追加の調査(紙の出荷伝票による算定)の要否を当社で検討する。当日は当社の評価をご説明し、ご意見を伺う。調査が必要と判断した場合は、経理財務部長が算定する
  • 再発防止:子会社の換算シートに「親会社との取引」の行を設け、子会社の担当者が親会社の換算額で記入する(10月27日に依頼。第3四半期から)

6 C の期間別の金額

期間換算差(千円)これまでの処理当期の財務諸表での表示
当中間(2026年4〜9月)+620売上原価で調整為替差損益に表示(10月26日に反映)
前中間(2025年4〜9月)+480売上原価で調整半期報告書の比較情報(前中間連結会計期間)
前期(2025年4月〜2026年3月)+1,140売上原価で調整年度の財務諸表の比較情報(前連結会計年度)
前々期以前未算定売上原価で調整(立ち上げの年から)表示されない

7 当日お持ちする資料(追加分)

  • ① 契約の読み取り ── 進捗と残り件数の仕分け(第0版・10月23日)と、10月26日現在の件数
  • ② 前々期の精算表の該当行と、貴法人の指摘事項一覧(前々期)の写し。子会社の前期・今期の未払の明細。連結調整仕訳の推移表(前々期末〜当中間)
  • ③ 換算差の照合メモ(第0版・10月24日)と、前中間・前期の月別の照合表
変更履歴
案(2026年10月26日):中間連結をいったん締めたのにあわせ、A(読み取りの例外)・B(850)・C(620)を追加。C の前々期以前は仮の金額を置かず「未算定」とし、追加の調査の要否は当社で検討して評価を示すこととした。B に期間別の影響(調整仕訳の推移)を追加。説明の順番は未定
PART 3学ぶ世界へ・前後の話
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この話に出てきた知識・前後の話

この話に出てきた知識(学ぶ世界へ)
経理財務部の物語|第18話|2026年10月26日(月)
前の話:第17話(10月25日)|見るのは、二人分 / 次の話:第19話(近日) / 記録ページ(年表・会社のいま・話数一覧) / ハルカの学習ノート

この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。数字はすべて架空です。

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。