グループ通算制度 会計・税効果ラボ【設例・投資簿価修正と加入編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・応用1〜4 投資簿価修正・評価損・加入・未実現利益
無料の学習ツール「グループ通算制度 会計・税効果ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、投資簿価修正と加入・未実現利益の設例(設例・応用1〜4)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・投資簿価修正と加入編で追う4つの設例(独自の数値・単位:万円)
| 設例・応用1 | 投資簿価修正の税効果(増額・減額) |
| 設例・応用2 | 評価損を計上した子会社株式の投資簿価修正 |
| 設例・応用3 | 連結外の会社を買って加入(欠損金の引継制限) |
| 設例・応用4 | 未実現利益の消去と税効果の上限 |
| 共通の前提 | P社が通算親法人。S1・S2・S3社は通算子会社。応用3のT社も3月決算 |
はじめに
今日の題材 ── 子会社株式と加入・未実現利益の4つの設例
📍 ラボの場所:設例タブ 応用1〜4
ハルカ
シリーズ最後の設例編ですね。応用編で見た投資簿価修正と加入を、数字で追うんですか。
先生
そうなんだ。応用1・2で子会社株式の税効果、応用3で加入の時点、応用4で連結の未実現利益を見るよ。
ハルカ
応用1の4つのケースは、応用編の鏡の話ですね。増額と減額で向きが逆。
先生
よく覚えていたね。今日はケースごとに、結論が分かれる理由を確かめるんだ。設例タブを開いて読んでいこうか。
📘 設例・応用1 ラボの画面
① 対象の税金② 当期の税金③ 個別の回収可能性④ 連結で見直す⑤ 投資簿価・表示
P社がS3社株式の売却等を自社で決めることができ、予測可能な将来に売却等の意思がない。両方を満たすので、繰延税金負債は計上しない(第42号第19項(2)①②)。
💡 増額と減額で、原則と例外の向きが逆になる(増額は「条件を満たせば計上」、減額は「条件を満たせば計上しない」)。
設例・応用1
投資簿価修正の税効果(増額・減額)
📍 ラボの場所:設例タブ 応用1 ケース1〜4
ハルカ
S3社株式の帳簿価額は300。簿価純資産価額が380ならケース1・2、220ならケース3・4ですね。
先生
ケース1は、売却の実施計画があって回収可能性もあるので、増額80に係る繰延税金資産を計上するんだ(第42号第19項(1))。ケース2は売る予定がないので計上しないよ。
迷いポイント ケース4は、売る意思がないだけで繰延税金負債を計上しなくてよい?
ハルカ
ケース4は保有を続けるので、売る意思がない。それだけで負債は要らないと思いました。
先生
条件は2つなんだ。保有する会社自身が売却等を決められることと、予測可能な将来に売る意思がないこと。両方を満たすときだけ、負債を計上しないよ(第19項(2))。
ハルカ
「売る気はありません」と言うだけでは足りないんですね。決める権限まで要る。
先生
そういうことなんだ。ケース3のように売却の意思があれば、減額80に係る繰延税金負債を計上するよ。
ハルカ
4つのケースを並べると、まるで四コマ漫画ですね。オチは毎回「売るかどうか」です。
先生
オチが同じだと分かれば、覚えるのは楽だよ。ただ増額は回収可能性、減額は決める権限も、あわせて確かめるんだ。
💡 そうだったのか!
減額修正の負債を計上しないのは、
自社で売却を決められ、かつ
売る意思がないときだけです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 設例・応用1を開き、「次へ ▶」でケース3まで進む
- もう一度「次へ ▶」を押してケース4に進む
👀 ケース3の「80に係る繰延税金負債を計上する(第42号第19項(2))」が、ケース4では「両方を満たすので、繰延税金負債は計上しない(第42号第19項(2)①②)」に変わります。
ラボを開く ▶
📘 設例・応用2 ラボの画面
① 対象の税金② 当期の税金③ 個別の回収可能性④ 連結で見直す⑤ 投資簿価・表示
一時差異 = 簿価純資産価額 150 − 会計上の帳簿価額 80 = 70
= a 評価損の否認 120 + b 投資簿価修正相当 ▲50(150 − 200)
a は通常の評価損と同じ将来減算一時差異。b は投資簿価修正によって一時差異と同様に扱う部分で、減額修正の向き(繰延税金負債の側)。
実務対応報告第42号 設例6
設例・応用2
評価損を計上した子会社株式の投資簿価修正
📍 ラボの場所:設例タブ 応用2 ステップ①〜③
ハルカ
S2社株式は評価損計上前200、評価損120で帳簿価額80。簿価純資産価額は150。一時差異は150−80の70です。
先生
ステップ①で、70をaの評価損の否認120と、bの投資簿価修正相当▲50に分けるんだ。aは通常の評価損と同じ将来減算一時差異だよ。
迷いポイント 一時差異70は、全部が将来減算一時差異?
ハルカ
差額が70のプラスなので、70全部が将来減算一時差異で、繰延税金資産の側だと思いました。
先生
中身は向きの違う2つなんだ。bの▲50は減額修正の向き、つまり繰延税金負債の側だよ。評価損の資産を計上するなら、bの税効果もあわせて認識して、差し引き70が対象になるんだ(第19項(3))。
ハルカ
70という1つの数字に、プラス120とマイナス50が隠れていたんですね。
先生
その見方で合っているよ。評価損の資産を計上しないなら、評価損の範囲内のbの負債も認識しないんだ(ステップ③)。
💡 そうだったのか!
評価損を計上した株式の一時差異は
評価損の否認+投資簿価修正相当。向きの違う2つを分けて判断します。
📘 設例・応用3 ラボの画面
① 対象の税金② 当期の税金③ 個別の回収可能性④ 連結で見直す⑤ 投資簿価・表示
連結外の会社でも、欠損金の引継制限がかかり、通算子会社となる可能性が高く、T社でも事実が明らかなら、その時点を含む事業年度(期中会計期間を含む)の個別財務諸表から、損金算入が見込まれない繰越欠損金の回収可能性はないものとする(第42号第22項(2)ただし書き)。
T社は、X2年9月期の中間財務諸表で、繰越欠損金 400 に係る繰延税金資産を取り崩す(計上していた場合)。
実務対応報告第42号第22項(2)
設例・応用3
連結外の会社を買って加入(欠損金の引継制限)
📍 ラボの場所:設例タブ 応用3 ステップ①・②
ハルカ
P社グループが連結外のT社をX2年10月1日に買う。8月に取締役会で決めています。T社には繰越欠損金400。
先生
T社の繰越欠損金は、加入で切り捨てられる見込みなんだ(法人税法第57条第6項)。どの欠損金が切り捨てられるかは、税務のラボの開始・加入・離脱タブで判定するよ。
ハルカ
税務のラボで、外部から買った子会社の欠損金が切り捨てられる設例をやりました。
先生
その税務の結論を、会計ではいつ反映するかが今日の論点なんだ。
迷いポイント 加入は10月1日だから、9月までのT社の決算は今までどおり?
ハルカ
連結外の会社は加入の時から影響を考える、と応用編で習いました。だから9月期の中間決算はそのままだと思いました。
先生
欠損金の引継制限がかかる会社は例外なんだ。可能性が高く、T社でも事実が明らかなら、その時点を含むX2年9月期の中間財務諸表で、400の回収可能性はないものとするよ(第42号第22項(2)ただし書き)。
ハルカ
加入式の前に、もう荷物の一部を降ろしておく、ということですね。
先生
降ろすのは、切り捨てられる欠損金の分だけなんだ。将来減算一時差異100は切捨ての対象外で、加入後は基礎5の手順で判断するよ(ステップ②)。
ハルカ
一時差異の方は、加入しても何も影響を受けないんですね。
先生
この設例では、100が特定資産の損金算入制限の対象外という前提なんだ。実務では、特定資産に係る将来減算一時差異も、制限の有無を確かめるよ(第42号第22項(2)ただし書き)。
💡 そうだったのか!
欠損金の引継制限がかかる会社は、
加入の日を待たずに、事実が明らかになった時点の個別財務諸表で見直します。
📘 設例・応用4 ラボの画面
① 対象の税金② 当期の税金③ 個別の回収可能性④ 連結で見直す⑤ 投資簿価・表示
上限 = 通算グループ全体の課税所得の合計 500 → 対象 300(全額)
通算の対象の税金に係る分は、上限を通算グループ全体の課税所得の合計と読み替える(第42号第18項)。P社の売却益は損益通算でグループの所得と一体で課税されるため。
住民税・事業税に係る分は、売却元P社の課税所得 100 が上限のまま。
実務対応報告第42号第18項
設例・応用4
未実現利益の消去と税効果の上限
📍 ラボの場所:設例タブ 応用4 ステップ①・②
ハルカ
P社がS1社に土地を売って、売却益300を連結で消去。P社の課税所得は100、グループの合計は500です。
先生
通常の上限は、売却元の売却年度の課税所得なんだ(税効果適用指針第35項)。ステップ①では、上限100で対象も100だよ。
ハルカ
ステップ②では、上限がグループの合計500に読み替わって、300全部が対象になります。
先生
P社の売却益は、損益通算でグループの所得と一体で課税されるからなんだ(第42号第18項)。
迷いポイント 住民税・事業税の分も、上限は500?
ハルカ
上限が500に読み替わったなら、住民税と事業税の分も300全部が対象だと思いました。
先生
読み替えるのは通算の対象の税金に係る分だけなんだ。住民税・事業税に係る分は、売却元P社の課税所得100が上限のままだよ。
ハルカ
法人税たちだけ通算の制服に着替えて、住民税と事業税は私服のまま、という感じですね。
先生
制服のたとえは分かりやすいよ。住民税・事業税は、各社の課税所得で考えるんだ。
💡 そうだったのか!
未実現利益の上限の読み替えは
通算の対象の税金だけ。住民税・事業税は売却元の課税所得のままです。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべてグループ通算制度 会計・税効果ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
グループ通算制度 会計・税効果ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。子会社株式の税効果は売却の予定と決める権限で分かれ、加入・離脱はいつから反映するかが場面で分かれる。読み替えは通算の対象の税金だけなんだ。
ハルカ
シリーズを通して、税務のラボで計算した数字が、決算書では「いつ」「どの税金で」「個別か連結か」の3つで形を変えるんだと分かりました。
先生
3つにまとめられたのは見事だよ。1点だけ足すと、どれも売却や加入の予定という事実が判断の出発点だから、資料を集めるところから始まるんだ。
ハルカ
今日は頭をたくさん使ったので、週末のパン屋さんでは迷わずに選びます。…と言いながら、また15分迷う気がします。
先生
迷う時間も、週末の楽しみのうちだね。基礎編から読み返すと、図の見え方がきっと変わるよ。
参考資料
企業会計基準委員会 実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(2021年8月12日公表、2026年7月7日改正)、実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(2026年2月27日公表)、補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」(2026年7月7日)、企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」(2026年7月7日改正)、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(2026年7月7日改正)、法人税法(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版)。確認日:2026年10月25日。改正後の第42号・法人税等会計基準は2028年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用(2026年7月7日以後に開始する事業年度の期首から早期適用可)。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、基準の設例の数値は計算の確認にだけ使っています。将来減算一時差異は翌年にすべて解消し、損金算入限度額は課税所得の100%とする簡便化をしています。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:グループ通算制度 会計・税効果ラボ【基礎編】/グループ通算制度 会計・税効果ラボ【応用編】/グループ通算制度 会計・税効果ラボ【設例・回収可能性編】/グループ通算制度 会計・税効果ラボ【設例・通算税効果額と税率編】
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。