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棚卸資産ラボ【設例・特別な論点編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・応用1〜3・6・7 複数の売却市場・災害・トレーディング・原価差異・棚卸減耗

棚卸資産ラボ【設例・特別な論点編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・応用1〜3・6・7 複数の売却市場・災害・トレーディング・原価差異・棚卸減耗

無料の学習ツール「棚卸資産ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例・応用タブから、特別な論点の設例(設例・応用1〜3・6・7)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です(原典の設例の数値は使っていません)。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📘 設例・応用1 ラボの画面

前提条件(独自の数値・設定)

  • W社は同じ製品を、消費者への直販(@70)と代理店経由(@55)で売っている。販売比率は直販60%・代理店40%。
  • 期末の在庫 300個(取得原価 @62、計 18,600)。どちらの市場向けかは区分できない。
  • 見積販売直接経費は @4。
はじめに

設例・応用1〜3・6・7 ── 基礎の型に収まらない5つの場面

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用1 ステップ1
ハルカ
先生、設例編の最後は「特別な論点」ですね。売り先が2つある会社、倉庫が浸水した会社、金を売買する会社…。にぎやかです。
先生
どれも基礎の5段のどこかを少しずつ変えた場面なんだ。売価の決め方、表示の区分、評価の基準、取得原価、数量と、変わる段がそれぞれ違うよ。
ハルカ
最初のW社は、直販は@70、代理店経由は@55。同じ製品なのに売価が2つあります。
先生
どちらの売価で正味売却価額を出すかが、最初の論点なんだ。順に見ていこうか。
設例・応用タブの応用1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・応用1 ラボの画面
同じ製品を、直販 @70(販売比率60%)と代理店経由 @55(40%)で売る@70直販@55代理店@64加重平均取得原価 @62
🧾 期末
製品の簿価切下げ
借方金額貸方金額
製品評価損(売上原価)600製品600
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期

直販向けと区分できる在庫は、直販の売価で判定する。直販 @70−@4=@66 > @62 なので切下げ不要。

企業は売価の高い市場に参加すると想定されるが、その売価は自社が実際に販売できると見込む売価(第52項)。

設例・応用1

複数の売却市場 ── 加重平均@64 で 600 を切り下げる

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用1 ステップ2・3
ハルカ
販売比率で加重平均して@64。経費@4 を引いて@60、300個 で 18,000。取得原価 18,600 との差 600 を切り下げています。
先生
どちらの市場向けか区分できないから、販売比率で加重平均するんだ(第11項)。区分できる在庫なら、その市場の売価で判定するよ。直販向けなら@66 で原価@62 を上回るので、切下げは要らないんだ。
迷いポイント 売価が2つあるなら、高い方の@70 で判定してよい?
ハルカ
会社は高く売れる市場で売りたいはずなので、@70 で見積ればいい気がします。
先生
売価の高い市場に参加すると想定するのは自然だけど、使うのは実際に販売できると見込む売価なんだ(第52項)。代理店に流れる分があるなら、その分は@55 で見るよ。
ハルカ
全部を一番高い値段で売れる前提にすると、在庫が急にお金持ちになってしまうんですね。
先生
その「お金持ち」は見積りの中だけだからね。
💡 そうだったのか!
複数の売却市場は実際に販売できると見込む売価で判定。市場別に区分できなければ、販売比率による加重平均売価を使います。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 設例・応用タブで「応用1 複数の売却市場」を開く
  2. ステップ2「加重平均売価で判定」から、ステップ3「区分できる場合は」に進む

👀 加重平均では「切下げ 600」ですが、直販向けと区分できる在庫は@66 >@62 で切下げ不要に変わります。

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📘 設例・応用2 ラボの画面
売上高売上原価(簿価切下額を含む) うち製造原価(材料の品質低下など)売上総利益販売費及び一般管理費営業利益営業外費用✖ 計上しない経常利益特別損失(災害・重要な事業部門の廃止)注記(第18項)災害による簿価切下額(特別損失に計上)特別損失に計上した簿価切下額は 3,000(洗替え法でも戻し入れない)
🧾 期末
災害による簿価切下げ
借方金額貸方金額
災害による商品評価損(特別損失)3,000商品3,000
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期

この会社は洗替え法を採用しているが、特別損失に計上した簿価切下額は戻し入れてはならない(第17項なお書き)。

税務では、災害による著しい損傷は評価損を損金にできる事実(法人税法第33条第2項、施行令第68条第1項第1号)。損金経理が要件。

設例・応用2

臨時の事象 ── 水濡れ品 3,000 は特別損失、翌期も戻さない

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用2 ステップ2・3
ハルカ
400個 のうち 150個 が水濡れで、処分見込み@5。150個 ×(@25 − @5)で 3,000 を、特別損失にしています。
先生
臨時の事象(災害)が原因で、かつ多額だからね(第17項)。残りの 250個 は、正味売却価額@32 が原価@25 を上回るので切り下げないんだ。
迷いポイント 洗替え法の会社なら、翌期に 3,000 を戻し入れる?
ハルカ
X社は洗替え法なので、翌期の期首にいったん戻すのがルールどおりですよね。
先生
特別損失にした簿価切下額は、戻し入れてはいけないんだ(第17項なお書き)。税務では、災害による著しい損傷は評価損を損金にできる事実だよ。ただし損金経理が要件なんだ。
💡 そうだったのか!
災害などの臨時の事象で多額なら特別損失で、洗替え法でも戻さない。税務では損金経理を要件に評価損を損金にできます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. 設例・応用タブで「応用2 臨時の事象」を開く
  2. ステップ3「翌期 ── 洗替え法でも戻さない」まで進む

👀 洗替え法を採用していても、特別損失の 3,000 は翌期に戻し入れないことが確認できます。

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📘 設例・応用3 ラボの画面
取得原価 5,000期末の時価 5,400評価差額 400金 10単位 @500@540売上高(純額)+400売買損益も純額
🧾 1年目末
時価評価
借方金額貸方金額
商品(トレーディング)400売上高(トレーディング損益)400
🧾 2年目末
時価評価
借方金額貸方金額
売上高(トレーディング損益)200商品(トレーディング)200
設例・応用3

トレーディング ── 1年目は +400、2年目は ▲200

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用3 ステップ2・3
ハルカ
金 10単位を@500 で買って、1年目末は@540 で +400、2年目末は@520 で ▲200。どちらも相手は売上高です。
先生
トレーディング目的は、上がっても下がっても時価に合わせるんだ(第15項)。損益は純額で売上高に表示するよ(第19項)。時価のレベルごとの内訳なども注記するんだ(第19-2項)。
迷いポイント 評価益なのに、売上高に入れてよい?
ハルカ
売っていないのに売上高が増えるのは、なんだか落ち着きません。
先生
トレーディングでは、価格の変動そのものが事業の成果なんだ。売買目的有価証券と同じ考え方で、加工や販売の努力で回収する通常の商品とは違うんだよ。
ハルカ
金は、棚の上でじっとしているだけで仕事をしているんですね。少しうらやましいです。
先生
そのかわり、値下がりした年は損も黙って計上するんだよ。
💡 そうだったのか!
トレーディング目的は毎期末に時価で評価し、差額は純額で売上高。上がっても下がっても、時価に合わせます。
📘 設例・応用6 ラボの画面
売上原価標準 18,000+差異 1,350期末の製品標準 2,000+差異 150原価差異 1,500(不利差異)の行き先
🧾 期末
原価差異の配賦
借方金額貸方金額
売上原価1,350原価差異1,500
製品150
① 取得原価② 払出計算③ 期末の評価④ 表示・注記⑤ 翌期

税務でも、原価差額のうち期末の棚卸資産に対応する部分を調整する(法人税基本通達5-3-1)。

総製造費用のおおむね1%以内なら、計算の明細書を添付して調整しないことができる(法人税基本通達5-3-3)。会計で少額として全額売上原価にした場合に、ずれが出ることがある。

設例・応用6

原価差異 1,500 ── 期末へ 150、売上原価へ 1,350

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用6 ステップ2・3
ハルカ
期末の製品(標準)2,000 と売上原価(標準)18,000 の比で配って、期末に 150、売上原価に 1,350 です。
先生
予定価格が実態に合わず、比較的多額の差異が出たからね(原価計算基準47)。配賦した後の製品 2,150 が、期末に正味売却価額と比べる帳簿価額になるんだ。
迷いポイント 会計で全額を売上原価にしたら、税務も同じでよい?
ハルカ
会計で「少額なので全額売上原価」と決めたら、税務もそのままでいいですよね。
先生
税務では、期末の棚卸資産に対応する原価差額を原則として調整するんだ(法人税基本通達5-3-1)。総製造費用のおおむね1%以内なら、計算の明細書を確定申告書に添付することを条件に、調整しないことができるよ(5-3-3)。
💡 そうだったのか!
多額の原価差異は売上原価と期末の棚卸資産に配賦。税務は原則調整で、1%以内なら明細書の添付を条件に調整しないことができます。
📘 設例・応用7 ラボの画面
帳簿上 1000個 × @30 = 30,000実地 970個 × @30 = 29,100減耗 900
🧾 期末
棚卸減耗
借方金額貸方金額
棚卸減耗損(売上原価)900商品900
帳簿上 1000個 × @30 = 30,000実地 970個 × @30 = 29,100減耗 900実地 970個 × 正味売却価額 @27 = 26,190評価損 2,910
🧾 期末
簿価切下げ
借方金額貸方金額
商品評価損(売上原価)2,910商品2,910
設例・応用7

実地棚卸 ── 減耗 900、そのあと評価損 2,910

📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用7 ステップ2・3
ハルカ
帳簿の 1000個 と実地の 970個 の差 30個 を@30 で落として 900。残りの 970個 に(@30 − @27)を当てて 2,910 です。
先生
数量を確定してから単価を当てる、という順番なんだ。減耗は原価性があれば売上原価や販売費、なければ営業外費用や特別損失にする整理が一般的だよ。期末の商品は 26,190 になるんだ。
迷いポイント 棚卸減耗も、簿価切下額として注記する?
ハルカ
どちらも在庫が減った損なので、注記の簿価切下額にまとめて書けばいいのでしょうか。
先生
第18項の注記は、収益性の低下による簿価切下額なんだ。数量の不足である減耗とは別物だよ。仕訳も、棚卸減耗損と商品評価損に分けているんだ。
ハルカ
30個 がどこに行ったのか、私が倉庫で探してきます。
先生
見つかったら、ちゃんと帳簿に戻してあげようか。
💡 そうだったのか!
期末は数量(棚卸減耗)→単価(評価損)の順に処理します。注記する簿価切下額は収益性の低下の分で、減耗とは分けます。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて棚卸資産ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。

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📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る学習ノートへ ▶

今日のまとめ ── 設例ごとの結論

設例迷いポイント答え
応用1売価が2つあるなら高い方で判定してよい?実際に販売できると見込む売価。区分できなければ加重平均(第11・52項)
応用2洗替え法なら災害の切下額も翌期に戻す?戻さない。臨時・多額なら特別損失(第17項)
応用3評価益なのに売上高に入れてよい?トレーディングは価格変動が成果。純額で売上高(第15・19項)
応用6会計で全額売上原価なら税務も同じでよい?税務は原則調整。1%以内なら明細書の添付を条件に調整しない(基通5-3-1・5-3-3)
応用7棚卸減耗も簿価切下額として注記する?注記は収益性の低下の分。減耗とは分ける(第18項)
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。特別な論点は、どれも基礎の5段のどこが変わるかで整理できるんだ。売価の決め方、特別損失と戻入れ、時価評価、原価差異の配賦、数量と単価の順番、だったね。
ハルカ
前は、論点ごとに別の暗記が必要だと思っていました。今日は「5段のどこが変わったか」を探すと、初めての論点でも落ち着いて読めることが分かりました。
先生
新しい論点に出会ったときに、その探し方ができれば十分だよ。
ハルカ
これで設例編は全部ですね。あとは税務調整編だけ…と思ったら、また別表四が手招きしています。
先生
次の税務調整編では、原価法と低価法、評価損の事実、別表四と別表五(一)の書き方を見ていこうか。手招きの理由が、きっと分かるよ。

参考資料

企業会計基準第9号 第7・11・15・17・19・19-2・51・52・60項、原価計算基準47、法人税法第33条第2項、法人税基本通達5-3-1・5-3-3。企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(2006年7月5日公表、2008年・2019年改正、2025年修正。参考の計算例1・2を含む)、原価計算基準、中小企業の会計に関する指針(第25〜29項)、中小企業の会計に関する基本要領(Ⅱ各論6)。基準確認日:2026年10月14日。ラボの設例は、原典の考え方と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです(原典の計算例の数値は画面に出していません)。
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・評価方法編(基礎1・5、応用4・5)/設例・簿価切下げ編(基礎2〜4・6・7)/税務調整編

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。