棚卸資産ラボ【税務調整編】|先生と一緒に図で学ぶ原価法と低価法・評価損の事実・別表四と別表五(一)
無料の学習ツール「棚卸資産ラボ」の読み方ガイドです。ラボの「🧾 税務調整」タブを上から順に、会計と法人税の違いと、別表四・別表五(一)の書き方を先生と生徒の会話形式で見ていきます。会計処理そのものは基礎編「応用編」「設例編」で扱っています。設例の会社と数値はすべて架空の例です。別表はラボと同じ簡略版で、解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の設例
設例の条件(税務調整タブの初期値)
| 商品の取得原価(1年目に仕入れ) | 8,000 |
| 1年目末の正味売却価額(期末時価) | 6,400 |
| 2年目末の正味売却価額(まだ在庫) | 7,200 |
| 3年目の販売額(全部販売) | 8,200 |
| 会計:前期の切下額 | 洗替え法 |
| 税務の評価方法 | 原価法(低価法の届出なし)・評価損の事実なし |
はじめに
今日の題材 ── 下落 → 回復 → 販売を、法人税の目で見る
📍 ラボの場所:税務調整タブ ④「設例の条件」
ハルカ
先生、棚卸資産の会計は設例編まで読みました。でも申告書になると、会計の評価損がそのまま損金になるのか、自信がありません。
先生
今日はそこを、税務調整タブで見ていこうか。題材は基礎編のQ社と同じ形で、8,000 の商品が 6,400 に下がり、7,200 に戻って、3年目に 8,200 で売れる設例なんだ。
ハルカ
会計は洗替え法で、税務は低価法の届出をしていない会社ですね。
先生
そう。この「届出をしているかどうか」で、別表の書き方が大きく変わるんだ。税務調整タブの6つの節を、上から順に読んでいこうか。
🧾 税務 1 ラボの図
📒 会計企業会計基準第9号
差
🧾 税務(法人税)法人税法第29・33条
評価方法:個別法・先入先出法・平均原価法・売価還元法から選ぶ(後入先出法・最終仕入原価法は原則不可)
≠
原価法(個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法)か低価法を選んで届け出る。届出がなければ最終仕入原価法による原価法
期末に正味売却価額が下がれば必ず切り下げる(第7項)
≠
低価法を選んでいれば期末時価で評価(損金)。原価法なら評価損は原則として損金にならない
滞留品の規則的な切下げも可(第9項)
≠
時価による評価ではないので、原則として損金にならない(廃棄・売却の年に損金)
前期の切下額:洗替え法か切放し法を選ぶ(第14項)
≠
低価法は毎期、原価法の価額と期末時価を比べ直す(切放し低価法は平成23年度改正で廃止)
3年間の費用の合計
=
損金の合計は会計と同じ(時期だけがずれる)
税務 1
会計と税務の違い ── 会計は切下げを強制、税務は選んだ評価方法と「事実」で決まる
📍 ラボの場所:税務調整タブ 1
ハルカ
会計と税務の列が並んで、ほとんどの行に「≠」があります。最後の「3年間の合計」だけが「=」ですね。
先生
法人税は、届け出た評価方法で期末の金額を計算するんだ(法人税法第29条、施行令第28条)。原価法と低価法のどちらかを選んで届け出て、届出がなければ最終仕入原価法による原価法になるよ。
ハルカ
減損会計ラボの税務調整編で「減損損失は、評価損としては原則として損金にならない」と習いました。棚卸資産も同じですか。
先生
よく覚えていたね。原価法なら考え方は近いんだ。ただ棚卸資産には、低価法を選べば期末時価で評価できるという道があるよ。そこが減損との違いなんだ。
迷いポイント 会計で切り下げたなら、税務でも当然に損金?
ハルカ
会計基準で強制されている切下げなので、税務もついてきてくれると思っていました。
先生
原価法の会社では、災害による著しい損傷や著しい陳腐化などの事実がなければ、評価損は損金にならないんだ(法人税法第33条第2項)。単なる値下がりは、その事実に当たらないよ(基本通達9-1-6)。
ハルカ
商品がどれだけ落ち込んでいても、気持ちだけでは損金にならないんですね。
先生
見るのは気持ちではなく、災害や陳腐化のような事実の方なんだよ。
💡 そうだったのか!
税務は
届け出た評価方法で評価します。原価法なら、評価損は災害・著しい陳腐化などの事実がない限り損金になりません。
📝 減損会計ラボ【税務調整編】(評価損としては損金にならない)記事を読む ▶
🧾 税務 2 ラボの図
加算所得が増える減算所得が減る赤字=税務では損金にならない・計上しない緑字=税務の損金(小さい文字)=根拠
| 論点 | 📒 会計 | 🧾 税務(法人税) | 📝 調整と別表 |
|---|
| 評価方法の選定 | 区分ごとに選び継続適用(第6-2・6-3項) | - 事業の種類・棚卸資産の区分ごとに選定し届け出る
- 設立事業年度などの確定申告書の提出期限まで(法人税法施行令第29条)
- 届出がなければ最終仕入原価法による原価法(法人税法施行令第31条)
| 別表四方法が会計と違えば、税務の方法で計算した差を加算・減算(留保) |
| 評価方法の変更 | 会計方針の変更(正当な理由・遡及適用) | - 変更しようとする事業年度開始の日の前日までに承認申請(法人税法施行令第30条)
- 今の方法を採用して3年を経過していなければ、原則として承認されない(法人税基本通達5-2-13)
| - 別表なし(手続の問題)
- 会計だけ変えると申告調整が必要
|
| 取得原価・付随費用 | 購入代価+引取費用等の付随費用(第6-2項) | - 購入代価+引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など+販売の用に供するために直接要した費用(法人税法施行令第32条)
- 買入事務・検収・保管などの少額の付随費用は、購入代価のおおむね3%以内なら算入しないことができる(法人税基本通達5-1-1)
| 会計で費用処理した付随費用が取得価額に入る場合は、期末に残る分を加算(留保) |
| 製造原価・原価差額 | 原価差異は原則売上原価、多額なら期末にも配賦(原価計算基準47) | - 原価差額のうち期末の棚卸資産に対応する分を調整(法人税基本通達5-3-1)
- 総製造費用のおおむね1%以内なら、計算を明らかにした明細書を確定申告書に添付することを条件に、調整しないことができる(法人税基本通達5-3-3)
| 期末に配賦すべき原価差額を加算(留保)、翌期に減算 |
| 収益性の低下(低価法を選定) | 正味売却価額まで切下げ(第7項) | 期末時価(通常は正味売却価額)で評価し損金(法人税法施行令第28条、法人税基本通達5-2-11) | 原則として調整なし(会計が洗替え法の場合) |
| 収益性の低下(原価法) | 正味売却価額まで切下げ(第7項) | 評価損の事実がなければ損金不算入 | 別表四加算・留保(商品評価損否認) 販売・廃棄の年に減算(認容) |
| 評価損を損金にできる事実 | (会計は事実の種類を問わず切下げ) | 災害による著しい損傷・著しい陳腐化(季節商品の売れ残り、性能が著しく異なる新製品の発売など)・破損・型崩れ・たなざらし・品質変化等で通常の方法で販売できない場合に、損金経理を要件に損金算入(法人税法第33条第2項、法人税法施行令第68条第1項第1号、法人税基本通達9-1-4・9-1-5) | 調整なし(損金経理した評価損が損金に) |
| 単なる値下がり | (収益性の低下なら切下げ) | 物価変動・過剰生産・建値の変更による下落は評価損の事実に当たらない(法人税基本通達9-1-6) | 原価法なら加算・留保 |
| 切放し法 | 切り下げた後の金額が新しい帳簿価額(第14項) | 低価法は毎期、原価法の価額と期末時価を比べ直す(切放し低価法は平成23年度改正で廃止) | 時価が回復した年に、税務の方が帳簿価額が高くなる分を加算・留保 |
| 滞留品の規則的な切下げ | 回転期間で規則的に切下げ(第9項(2)) | 時価による評価ではないので、原則として損金にならない | |
| 判定の単位 | 原則個別品目、適切なら一括り(第12項) | 低価の判定は種類等の同じものごと(法人税基本通達5-2-9) | 単位が違えば差額を加算・減算 |
| 臨時・多額(特別損失) | | - 損益の区分は問わない
- 災害による著しい損傷なら評価損の事実
| 調整なし(事実があり損金経理していれば) |
| トレーディング目的 | 時価評価・差額は当期の損益(第15項) | 短期売買商品等は時価評価し、評価損益を益金・損金に(法人税法第61条) | 原則として調整なし |
| 事務用消耗品等 | 棚卸資産に含める(第3項) | 毎期おおむね一定数量を取得し経常的に消費するものは、継続適用を条件に取得時の損金にできる(法人税基本通達2-2-15) | 会計で資産計上していれば調整なし(費用処理なら税務も可) |
| 実地棚卸 | (数量の確定は実務) | - 実地棚卸が原則
- 継続適用を条件に部分計画棚卸など合理的な方法も可(法人税基本通達5-4-1)
| 申告調整なし |
| 消費税 | (会計処理とは別) | - 仕入の時の課税仕入れとして仕入税額控除
- 評価損・切下げは消費税の対象外
| 申告調整なし |
評価方法の届出期限・変更の手続は国税庁の手続案内(棚卸資産の評価方法の届出・変更承認申請)でも確認できます。条文番号は確認日時点のものです。
税務 2
差異の一覧表 ── どの処理が、どの別表に出るか
📍 ラボの場所:税務調整タブ 2
ハルカ
評価方法の選定、変更、取得原価、原価差額、収益性の低下…。論点ごとに、会計・税務・別表の順に並んでいます。
先生
右端の「調整と別表」を見れば、別表に出る論点と手続の問題だけの論点が分かるんだ。評価方法の変更は承認申請の話で、別表には出ないよ。
迷いポイント 評価方法を変えるのは、会計方針を変えれば足りる?
ハルカ
会計で先入先出法から総平均法に変えたら、税務も自動的に変わるのだと思っていました。
先生
税務は、変更しようとする事業年度の開始の日の前日までに承認申請が要るんだ(施行令第30条)。今の方法を採用して3年を経過していなければ、原則として承認されないよ(基本通達5-2-13)。
ハルカ
会計の世界で引っ越しても、税務の住民票は自分で移さないといけないんですね。
先生
移し忘れると、毎年の申告で調整が必要になるんだよ。
💡 そうだったのか!
評価方法の変更は
事前の承認申請が必要。会計だけ変えて届け出ないと、税務の方法で計算し直して申告調整することになります。
🧾 税務 3 ラボの図
税務 3
別表の書き方 ── 別表四で1年分を調整し、別表五(一)で残高を繰り越す
📍 ラボの場所:税務調整タブ 3
ハルカ
当期純利益から別表四、別表四の「留保」から別表五(一)、その残高から税効果へ。矢印が一本の道になっています。
先生
別表四は1年分の調整、別表五(一)は残高を繰り越す表なんだ。棚卸資産の評価損の調整は、売ったり捨てたりすれば必ず戻るので、処分はすべて留保だよ。
ハルカ
収益認識ラボ⑤で習った「差の行き先」と同じ道ですね。会計と法人税の差は別表四へ、翌期以降に戻る留保は別表五(一)に残る、という話でした。
先生
よく覚えていたね。同じ道だよ。棚卸資産では、別表五(一)の残高が「税務の帳簿価額 − 会計の帳簿価額」になるんだ。
迷いポイント 別表五(一)の残高は、マイナスになることもある?
ハルカ
評価損を否認して加算するなら、残高はいつもプラスだと思っていました。
先生
原価法で第33条の評価損を損金にした後に、会計の洗替え法で戻入益が出ると、税務の帳簿価額の方が低くなるんだ。そのときは△の残高になるよ。④で数字を確かめようか。
💡 そうだったのか!
別表四は1年分、別表五(一)は残高。棚卸資産の残高は
税務の帳簿価額 − 会計の帳簿価額で、△になることもあります。
🧾 税務 4 ラボの図(1年目)
各年度末の帳簿価額(会計と税務)を比べています。2本の差が別表五(一)の残高です。3年目は販売したのでどちらもゼロ。この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。
1年目:会計は正味売却価額 6,400 まで 1,600 を切り下げた。税務は原価法で評価損の事実がないので取得価額のまま(期末 8,000)。期末の差(税務−会計)1,600 は前期末がゼロなので、そのまま当期の加算額(留保)になる。
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 1年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | 商品評価損否認 | 1,600 | 1,600 | |
| 減算 | なし |
| 所得への影響(加算 − 減算) | +1,600 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 1年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 商品(評価損否認) | 0 | 0 | 1,600 | 1,600 |
| 合計(この論点の分) | 0 | 0 | 1,600 | 1,600 |
税務 4(1年目)
設例で書いてみる ── 下落 → 回復 → 販売を、年度ごとに別表へ
📍 ラボの場所:税務調整タブ ④ 年度ボタン「1年目」
ハルカ
1年目は、会計の帳簿価額が 6,400、税務が 8,000。別表四で「商品評価損否認 1,600」を加算・留保しています。
先生
会計は正味売却価額まで 1,600 を切り下げた。税務は原価法で評価損の事実がないので、取得価額のままなんだ。差の 1,600 がそのまま加算で、別表五(一)の残高も 1,600 になるよ。
迷いポイント 低価法を届け出ていれば、この 1,600 は加算しなくてよい?
ハルカ
低価法なら期末時価で評価できるので、会計とそろうはずですよね。
先生
この設例ではそうなんだ。低価法の時価は通常は正味売却価額で、会計が洗替え法で、原価計算の方法・評価の単位・評価に用いる価額が会計と一致していれば調整なしになるよ(令第28条、基通5-2-11)。どれか一つでも違えば、その差は別表に出るんだ。
ハルカ
届出1枚で、毎年の別表の行が1つ減るなんて。届出書が急にまぶしく見えてきました。
先生
まぶしく見えたら、自社の申告書の控えで届出の有無を確かめておこうか。
💡 そうだったのか!
原価法の会社は、会計の簿価切下額 1,600 を
加算・留保。低価法を届け出ていれば、会計が洗替え法で、原価計算の方法・評価の単位・評価に用いる価額が一致する限り調整はありません。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 税務調整タブ ④ の「設例の条件」で、税務の評価方法を「低価法(届出あり)」にする
👀 1年目の別表四は +1,600 から +0 に変わり、3年間とも調整がなくなります(この設例は評価単位・価額が会計と一致する前提です)。
ラボを開く ▶
🧾 税務 4 ラボの図(2年目)
各年度末の帳簿価額(会計と税務)を比べています。2本の差が別表五(一)の残高です。3年目は販売したのでどちらもゼロ。この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。
2年目:会計の期末 7,200(洗替え法)、税務の期末 8,000(原価法)。期末の差(税務−会計)は 800(前期末 1,600)。差が当期に 800 減ったので、その分を減算。
📒 会計の費用(2年目)- 前期の切下額の戻入れ▲1,600
- 商品評価損(簿価切下額)800
計 ▲800
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 2年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | なし |
| 減算 | 商品評価損否認の認容(時価の回復) | 800 | 800 | |
| 所得への影響(加算 − 減算) | ▲800 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 2年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 商品(評価損否認) | 1,600 | 800 | 0 | 800 |
| 合計(この論点の分) | 1,600 | 800 | 0 | 800 |
税務 4(2年目)
2年目 ── 会計は戻入れで 7,200、税務は 8,000 のまま
📍 ラボの場所:税務調整タブ ④ 年度ボタン「2年目」
ハルカ
2年目は、会計の帳簿価額が 7,200 に戻って、税務は 8,000 のまま。別表四で 800 を減算しています。
先生
会計は洗替え法で 1,600 を戻して、7,200 まで 800 を切り下げ直したね。差し引き 800 の利益が出ているけれど、税務では最初から評価損を認めていないから、その利益も所得にしないんだ。
迷いポイント 2年目は、会計の評価損 800 をまた加算する?
ハルカ
2年目にも評価損 800 の仕訳があるので、それを加算するのかと思いました。
先生
見るのは仕訳の1本ずつではなく、期末の差(税務−会計)なんだ。1年目末 1,600 から 2年目末 800 に縮んだので、縮んだ 800 を減算するよ。別表五(一)は期首 1,600、減 800、期末 800 なんだ。
💡 そうだったのか!
別表四の調整額は、
期末の差(税務−会計)の増減で決まります。2年目は差が 1,600 → 800 に縮んだので、800 を減算します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 税務調整タブ ④ の「設例の条件」で、会計の前期の切下額を「切放し法」にする
- 年度ボタンで 2年目 を選ぶ
👀 会計の帳簿価額は 6,400 のままなので、2年目の別表四は調整なし。別表五(一)の残高 1,600 が、そのまま3年目まで残ります。
ラボを開く ▶
🧾 税務 4 ラボの図(3年目)
各年度末の帳簿価額(会計と税務)を比べています。2本の差が別表五(一)の残高です。3年目は販売したのでどちらもゼロ。この記事の図は固定表示です。年度の切替・条件変更は、リンク先のラボで操作してください。
3年目(販売):会計は帳簿価額 7,200、税務は 8,000 を売上原価にする。残っていた差 800 を減算(認容)して、別表五(一)はゼロに戻る。
別表四(所得の金額の計算に関する明細書)── 3年目簡略版
| 区分 | 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|
| 加算 | なし |
| 減算 | 商品評価損否認の認容(販売) | 800 | 800 | |
| 所得への影響(加算 − 減算) | ▲800 | | |
別表五(一)(利益積立金額の計算に関する明細書)── 3年目簡略版
| 区分(項目) | 期首現在① | 当期の減② | 当期の増③ | 差引翌期首現在④①−②+③ |
|---|
| 商品(評価損否認) | 800 | 800 | 0 | 0 |
| 合計(この論点の分) | 800 | 800 | 0 | 0 |
✔ 3年間の会計の費用(評価損+売上原価)と税務の損金の合計はどちらも取得原価 8,000。違うのは損金になる年度だけ。
税務 4(3年目)
3年目 ── 販売して、残高 800 を減算(認容)
📍 ラボの場所:税務調整タブ ④ 年度ボタン「3年目」
ハルカ
3年目に全部売ったので、会計も税務も帳簿価額はゼロ。別表四で「商品評価損否認の認容(販売)800」を減算しています。
先生
売った年に、税務の売上原価が会計より 800 多くなるからね。別表五(一)の残高 800 を減算して、ゼロに戻すんだ。3年間の加算 1,600 と減算 1,600 が一致するよ。
迷いポイント 販売した年は、特に何もしなくてよい?
ハルカ
評価損否認は1年目に済ませたので、売った年は会計どおりでいいと思っていました。
先生
そこが実務でいちばん漏れやすいところなんだ。販売・廃棄した年に減算しないと、評価損が永久に損金にならないよ。別表五(一)の残高を見て、売れた在庫の行を毎年確かめるんだ。
ハルカ
1年目に預けた 1,600 を、受け取りに行くのを忘れるところでした。
先生
預かり証が別表五(一)だからね。毎年ちゃんと見ていこうか。
💡 そうだったのか!
販売・廃棄した年に
残高を減算(認容)します。3年間の会計の費用と税務の損金は、どちらも取得原価 8,000 で一致します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- 税務調整タブ ④ の「設例の条件」で、「原価法のとき:評価損の事実」を「1年目に著しい陳腐化・破損など」にする
- 年度ボタンで 2年目・3年目 を順に選ぶ
👀 1年目は調整なし。2年目は戻入益の益金不算入で ▲800、別表五(一)は ▲800 の残高になり、3年目に +800 を加算して解消します。
ラボを開く ▶
🧾 税務 5 ラボの図(1年目末)
1年目末の別表五(一)の残高から
| 別表五(一)の項目 | 期末残高 | 一時差異の種類 | 繰延税金の参考額×30%・回収可能性判定前 |
|---|
| 商品(評価損否認) | 1,600 | 将来減算一時差異 | 繰延税金資産(参考) 480 |
| 繰延税金資産は、回収可能性(将来の課税所得・スケジューリング)を判断してから計上します。上の金額は判定前の参考額です。 |
実効税率 30% は説明用の仮定です。表の金額は回収可能性判定前の参考額で、計上額そのものではありません。表示は同一納税主体で相殺します(税効果会計ラボ)。
税務 5
税効果へのつながり ── 評価損否認は将来減算一時差異
📍 ラボの場所:税務調整タブ ⑤(1年目末)
ハルカ
1年目末の別表五(一)の残高 1,600 から、繰延税金資産(参考)480 が出ています。
先生
評価損否認の残高は将来減算一時差異なんだ。売ったり捨てたりした年に減算されるので、その年の課税所得で回収できるかを判断するよ。実効税率 30% は説明用の仮定なんだ。
ハルカ
税効果会計ラボで「繰延税金資産は将来の所得で吸収できる分だけ」と習いました。棚卸資産でも、その判断が要るんですね。
先生
よく覚えていたね。棚卸資産は普通は1年以内に売れるので、解消の時期は見通しやすいんだ。注意がいるのは、長く滞留している在庫だよ。
迷いポイント 滞留在庫の評価損否認も、すぐ解消するとみてよい?
ハルカ
在庫なのだから、いつかは売れて解消しますよね。
先生
販売や廃棄の時期が見通せない在庫は、スケジューリングが難しいことがあるんだ。廃棄の計画などで、解消の時期を説明できるかを確かめるよ。△の残高なら、将来加算一時差異になるんだ。
💡 そうだったのか!
評価損否認の残高は
将来減算一時差異。解消の時期を説明できるかを確かめ、回収可能性を判断してから繰延税金資産を計上します。
📝 税効果会計ラボ【基礎編】(一時差異・繰延税金資産・回収可能性)記事を読む ▶
🧾 税務 6 ラボの図
- ✖ 会計で切り下げたので、税務でも当然に損金になる✔ 低価法を届け出ていなければ原価法。評価損の事実(災害・著しい陳腐化など)がなければ加算
- ✖ 値下がりしたのだから「著しい陳腐化」に当たる✔ 単なる物価変動・過剰生産・建値の変更は評価損の事実に当たらない(法人税基本通達9-1-6)
- ✖ 会計の切放し法の帳簿価額を、税務の低価法でもそのまま使う✔ 税務の低価法は毎期、取得価額(原価法の価額)と期末時価を比べ直す。時価が回復すれば税務の方が高くなる
- ✖ 評価損否認の金額は、販売した年に何もしなくてよい✔ 販売・廃棄した年に減算(認容)しないと、評価損が永久に損金にならない
- ✖ 評価方法の届出をしていないのに、会計の総平均法で申告している✔ 届出がなければ最終仕入原価法による原価法で計算する必要がある。届出(または変更承認申請)の状況を確認
- ✖ 回転期間の規則的な切下げも、低価法なら損金になる✔ 低価法の時価は期末に売却するとした場合の価額。一律の率による切下げは時価そのものではない
税務 6
よくある誤り ── 申告書を作る前のチェック
📍 ラボの場所:税務調整タブ 6
ハルカ
誤りと正しい扱いが6組並んでいます。今日の話がほとんど入っていますね。
先生
申告書を作る前のチェックリストとして使えるよ。特に届出の有無と販売した年の減算は、実務家でも間違いやすいところなんだ。
迷いポイント 回転期間の規則的な切下げも、低価法なら損金?
ハルカ
低価法を届け出ていれば、滞留品のルールで切り下げた額も、そのまま損金にできますよね。
先生
低価法の時価は、期末に売却するとした場合の価額なんだ。一律の率による切下げは、時価そのものではないよ。原価法なら、季節商品の売れ残りのような著しい陳腐化の事実があるかを見るんだ(基本通達9-1-4)。
💡 そうだったのか!
チェックの要は、
届出の有無、
評価損の事実、
販売・廃棄した年の減算。規則的な切下げは低価法でも時価ではありません。
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて棚卸資産ラボの画面そのものです。税務調整タブを開けば、同じ図を見ながら、数字を変えて別表の動きを確かめられます。
棚卸資産ラボを開く ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。