グループ通算制度ラボ【設例・開始・加入・離脱編】|先生と一緒に図で学ぶ設例 開始・加入・離脱1〜5 時価評価・欠損金・投資簿価修正
無料の学習ツール「グループ通算制度ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、開始・加入・離脱の設例(設例 開始・加入・離脱1〜5)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・開始・加入・離脱編で追う5つの設例(独自の数値)
| 開始・加入・離脱1 | 加入:支配関係5年以上の子会社 |
| 開始・加入・離脱2 | 加入:外部から買った子会社(時価評価法人) |
| 開始・加入・離脱3 | 加入:支配関係5年未満 ── 新たな事業の開始で分かれる |
| 開始・加入・離脱4 | 離脱:利益が積み上がった子会社を売る |
| 開始・加入・離脱5 | 離脱:のれん込みで買った子会社 |
はじめに
今日の題材 ── 買うとき・売るときの5つの設例
📍 ラボの場所:設例タブ 開始・加入・離脱1〜5
ハルカ
設例編も最後ですね。今日は、子会社を買うときと売るときの設例が5つです。
先生
開始・加入・離脱編で見た判定を、数字で確かめる回なんだ。加入の3つは欠損金の扱い、離脱の2つは株式の帳簿価額が中心だよ。
ハルカ
加入の3つは、どれも「時価評価除外法人か」から始まるんですね。
先生
そう、フローチャートを上から順にたどるんだ。設例タブを開いて、ステップを1つずつ読んでいこうか。
📘 開始・加入・離脱1 ラボの画面
時価評価除外法人 → 効力発生日の5年前の日から支配関係が続いている(6年前から70%)
→ 切捨てなし。欠損金 8,000,000 は全額 特定欠損金額
特定欠損金額は、他の通算法人に配賦せず、S4社の所得の範囲(特定損金算入限度額)で控除する(法人税法第64条の7第2項第1号・第1項第3号)。
損益通算の制限(法人税法第64条の6)もかからない。
開始・加入・離脱1
加入:支配関係5年以上の子会社 ── 欠損金を持ち込む
📍 ラボの場所:設例タブ 開始・加入・離脱1 ステップ①〜④
ハルカ
6年前から70%を持っていたS4社の残り30%を10月1日に買って、100%子会社にした例ですね。
先生
ステップ①で、9月30日でS4社の事業年度が終わるんだ。ステップ②は、支配関係があって従業者の約9割が残り、主要な事業も続く見込みだから類型③。含み益1,500万円は時価評価しないよ。
迷いポイント 支配関係事業年度前の欠損金も、加入で持ち込める?
ハルカ
欠損金は、支配関係事業年度前に生じた500万円と、それ以後の300万円。前の500万円は切り捨てられると思いました。
先生
ステップ③で、効力発生日の5年前の日から支配関係が続いているかを見るんだ。6年前から70%だから「はい」で、切捨てなし。800万円全額が特定欠損金額になるよ(法人税法第64条の7第2項第1号)。
ハルカ
6年前に70%を買っておいた判断が、今になって効いてくるんですね。
先生
支配関係の発生日は、それだけ大事な事実なんだ。株式の取得の契約書や株主名簿で、日付を確かめておこうか。
💡 そうだったのか!
支配関係が
5年前の日から続く除外法人は、欠損金を切り捨てずに
特定欠損金額として持ち込めます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションの「加入・開始の判定」で「加入:支配関係5年以上」を読み込む
👀 時価評価「しない」、欠損金の切捨て 0、特定欠損金額 8,000,000、その後の制限「なし」と出ます。
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📘 開始・加入・離脱2 ラボの画面
評価益 = 時価 35,000,000 − 帳簿価額 20,000,000 = 15,000,000(加入直前の事業年度の益金)
単体の最後の事業年度の所得に入る。損益通算の対象にはならない(まだ通算法人ではない)。
時価評価資産から、帳簿価額1,000万円未満のものなどは除く(法人税法施行令第131条の16第1項)。
加入直前事業年度で控除しきれずに残った欠損金 8,000,000 → 加入後はないものとされる(法人税法第57条第6項)
加入直前事業年度では、評価益を含む所得から通常の要件・限度額で繰越欠損金を控除できる。控除しきれずに残った欠損金が、加入後の事業年度ではないものとされる(この設例の 8,000,000 は控除後の残高)。
時価評価で含み損益を精算するので、加入前の欠損金はグループに持ち込めない。
*実務では、買収の検討で「時価評価の課税」と「欠損金の切捨て」を株価・取引の形(株式交換など)とあわせて試算する。
開始・加入・離脱2
加入:外部から買った子会社(時価評価法人)
📍 ラボの場所:設例タブ 開始・加入・離脱2 ステップ①〜③
ハルカ
資本関係のなかったX社から、S5社の株式100%を一度に買った例。共同事業の要件にも当たらず、含み益1,500万円、欠損金800万円です。
先生
支配関係がなくても、共同事業の要件を満たせば除外法人になり得るんだ。この設例はステップ①のとおり4類型のどれにも当たらないから、時価評価法人だよ(第64条の12第1項)。
迷いポイント 時価評価の評価益は、損益通算で他社の欠損と相殺できる?
ハルカ
評価益1,500万円が出ても、グループのほかの会社の欠損と通算すれば、税金は抑えられると思いました。
先生
ステップ②の評価益は、加入直前の事業年度、つまり単体の最後の事業年度の益金なんだ。まだ通算法人ではないから、損益通算の対象にはならないよ。
ハルカ
しかもステップ③で、残っていた欠損金800万円は加入後に持ち込めない。白状すると、「欠損金付きの会社を買えば、グループの税金が減る」と考えたことがありました。
先生
その発想を止めるのが、時価評価と切捨てなんだ(第57条第6項)。800万円は、加入直前事業年度で評価益を含む所得から控除した後の残高という前提だよ。
💡 そうだったのか!
外から一度に買い、共同事業の要件も満たさない子会社は
時価評価法人。評価益は単体の最後の事業年度に計上し、そこで控除しきれずに残った欠損金は
加入後に持ち込めません。
📘 開始・加入・離脱3 ラボの画面
| 項目 | 新事業なし | 新事業あり |
|---|
| 欠損金の切捨て | 0 | 6,000,000 |
| 特定欠損金額として持込み | 8,000,000 | 2,000,000 |
| その後の制限 | 損益通算の制限(第64条の6) | 損金不算入(第64条の14) |
5年以上の支配関係か共同事業性があれば、どちらの制限もかからない(設例 開始・加入・離脱1)。
開始・加入・離脱3
加入:支配関係5年未満 ── 新たな事業の開始で分かれる
📍 ラボの場所:設例タブ 開始・加入・離脱3 ステップ①〜③
ハルカ
3年前に60%を取得したS6社が、今期に100%になった例。類型③で時価評価除外法人ですが、支配関係は5年未満です。
先生
共同で事業を行う場合にも当たらないから、最後の問い「支配関係の発生後に新たな事業を開始したか」で分かれるんだ。
迷いポイント 新たな事業を開始していなければ、何の制限もない?
ハルカ
ステップ①は「切捨て0、特定欠損金額800万円」。新たな事業を始めていないなら、5年以上の場合と同じだと思いました。
先生
切捨てはないけれど、損益通算の制限がかかるんだ(法人税法第64条の6第1項)。適用期間に生じる特定資産の譲渡等損失額から成る欠損は、損益通算に使えないよ。
ハルカ
ステップ②の新たな事業を開始した場合は、支配関係事業年度前に生じた500万円と特定資産の譲渡等損失相当額100万円を切り捨てて、残りは200万円。新しいことを始めた方が損をするのは、少し寂しいです。
先生
新しい事業を罰するのではなく、新しい事業で欠損金を使う租税回避を防ぐための切捨てなんだ。この場合は第64条の14の損金不算入がかかって、第64条の6の制限はかからないよ。
💡 そうだったのか!
5年未満・共同事業なしなら
新たな事業の開始で分かれる。開始なら切捨て+第64条の14、開始していなければ切捨てなし+
第64条の6です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションで「加入:5年未満・新たな事業なし」を読み込む
- 続けて「加入:5年未満・新たな事業あり」を読み込む
👀 欠損金の切捨てが 0 → 6,000,000、特定欠損金額が 8,000,000 → 2,000,000、その後の制限が「損益通算の制限(第64条の6)」→「損金不算入(第64条の14)」に変わります。
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📘 開始・加入・離脱4 ラボの画面
修正後の帳簿価額 = 簿価純資産価額 50,000,000 × 100% = 50,000,000
修正額 +20,000,000(利益積立金額を増やす)
離脱直前に、株式の帳簿価額を子法人の簿価純資産価額に置き換える(法人税法施行令第119条の3第5項)。
開始・加入・離脱4
離脱:利益が積み上がった子会社を売る(投資簿価修正)
📍 ラボの場所:設例タブ 開始・加入・離脱4 ステップ①〜③
ハルカ
3,000万円で設立したS7社が通算中に利益を積み上げて、税務上の簿価純資産価額が5,000万円。株式を全部5,000万円で外部に売ります。
先生
ステップ①で、修正しなかったら譲渡益は2,000万円。でもS7社の利益は、通算中にS7社の所得として課税済みなんだ。もう一度課税すると二重課税になるよ。
迷いポイント 利益積立金額が増えるなら、P社の所得も増える?
ハルカ
ステップ②に「修正額+2,000万円(利益積立金額を増やす)」とあります。利益積立金額が増えるなら、P社の所得にも2,000万円足されるのかと思いました。
先生
所得には足さないんだ。株式の帳簿価額を5,000万円に置き換えて、差額は利益積立金額の増減として扱うよ(法人税法施行令第119条の3第5項)。
ハルカ
別表四・別表五(一)ラボで、損益を通らない調整は別表四を通さずに別表五(一)に書く、と習いました。投資簿価修正も同じ形ですか。
先生
そう、よく覚えていたね。修正額は別表五(一)に出てくるんだ。そしてステップ③で、譲渡損益は5,000万円−5,000万円=0になるよ。
💡 そうだったのか!
投資簿価修正で帳簿価額を
税務上の簿価純資産価額に。課税済みの利益への二重課税を防ぎ、修正額は
利益積立金額で扱います。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションの「離脱と投資簿価修正」で「利益が積み上がった子会社」を読み込む
- 続けて「30%だけ売って離脱」を読み込む
👀 修正後の譲渡損益 0、修正しなかったら 20,000,000。30%だけ売る例では、残りの株式も含めて修正後の帳簿価額 50,000,000 になり、売った30%分の譲渡損益 3,000,000 と出ます。
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📘 開始・加入・離脱5 ラボの画面
修正後の帳簿価額 = 簿価純資産価額 50,000,000 + 資産調整勘定対応金額 30,000,000 = 80,000,000
譲渡損益 = 80,000,000 − 80,000,000 = 0
株式の取得を非適格合併とみなして計算した資産調整勘定に当たる額を加算できる(法人税法施行令第119条の3第6項)。
計算明細の添付と書類の保存が要件(同項)。取得時の時価純資産価額の資料を残しておく。
開始・加入・離脱5
離脱:のれん込みで買った子会社(資産調整勘定対応金額)
📍 ラボの場所:設例タブ 開始・加入・離脱5 ステップ①〜②
ハルカ
時価純資産価額5,000万円のS8社を、8,000万円で買った例。のれんに当たる部分が3,000万円です。
先生
この設例は、離脱時の税務上の簿価純資産価額も、取得時の時価純資産価額と同じ5,000万円という前提なんだ。両者は通常、当然には一致しないよ。
ハルカ
その前提で、加算措置を使わないとどうなりますか。
先生
ステップ①で、加算措置を使わないと、修正後の帳簿価額は5,000万円に下がるんだ。買った値段の8,000万円で売っても、3,000万円の売却益が出るよ。
迷いポイント のれん分の売却益は、どうしても避けられない?
ハルカ
簿価純資産価額にのれんが入らないなら、のれん込みで買った会社を売るときは、必ず損をするのかと思いました。
先生
ステップ②で資産調整勘定対応金額3,000万円を加算すれば、修正後の帳簿価額は8,000万円、譲渡損益は0になるんだ(法人税法施行令第119条の3第6項)。
ハルカ
8,000万円で買って8,000万円で売っただけなのに、資料がないと3,000万円の利益…。レシートを捨てたせいで返品できない気分です。
先生
レシートのたとえは近いよ。計算明細の添付と書類の保存が要件だから、取得したときの時価純資産価額の資料を、売るときまで残しておくんだ。
💡 そうだったのか!
のれん分は
資産調整勘定対応金額の加算で帳簿価額に残せる。要件は
計算明細の添付と書類の保存です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションで「のれん込みで買った子会社(加算なし)」を読み込む
- 続けて「同・資産調整勘定対応金額を加算」を読み込む
👀 修正後の譲渡損益が 30,000,000 から 0 に、修正後の帳簿価額が 50,000,000 から 80,000,000 に変わります。
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今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべてグループ通算制度ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
グループ通算制度ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。加入では時価評価除外法人かを見てから、5年・共同事業・新たな事業の順に欠損金を判定する。離脱では投資簿価修正で株式の帳簿価額を直し、のれん分は加算措置で残せるんだ。
ハルカ
5つの設例で税金を決めていたのは、6年前の株式の取得や、買ったときの値段でした。毎年の計算の制度だと思っていましたが、何年も前の判断と今の申告がつながっている制度なんですね。
先生
時間でつながっている、という見方はとてもいいね。だから実務では、支配関係の発生日や取得時の資料を、グループ全体で台帳にしておくんだ。
ハルカ
開始・加入・離脱編で、ファイルの背表紙に「売るときまで捨てない」と書くと言いましたが、今日の数字を見て、横に「捨てたら売却益3,000万円」と書き足すことにしました。
先生
金額が入ると、説得力がぐっと増すね。これでシリーズはひと回りしたよ。基礎編から読み返すと、5段の図の見え方がきっと変わるはずだよ。
参考資料
法人税法第14条・第57条・第61条の11・第64条の5〜第64条の14・第66条・第74条・第152条、法人税法施行令第119条の3・第131条の11〜第131条の17、租税特別措置法第42条の3の2、法人税基本通達12の7-1-2(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版ほか)。国税庁「グループ通算制度の概要」(令和2年4月)、「グループ通算制度に関するQ&A」(令和4年7月改訂)、「申告書別表の記載例(グループ通算制度適用法人用)」(令和5年3月改訂)、タックスアンサーNo.5900(令和8年4月1日現在)。確認日:2026年10月21日。記載例・Q&Aの15%の税率は改正前の取扱いで、ラボと記事は現行の条文(通算法人は措置法の15%の対象外)で計算しています。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、税額例は法人税本税の簡易計算で、端数処理・税額控除を省き、地方法人税・防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)・地方税は省略しています。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:グループ通算制度ラボ【基礎編】/グループ通算制度ラボ【開始・加入・離脱編】/グループ通算制度ラボ【応用編】/グループ通算制度ラボ【設例・損益通算編】/グループ通算制度ラボ【設例・欠損金と税率編】/グループ通算制度ラボ【設例・修正申告編】
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。