グループ通算制度ラボ【設例・欠損金と税率編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・基礎4〜6/応用1・6 特定欠損金額・中小通算法人・通しの計算
無料の学習ツール「グループ通算制度ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、欠損金の通算と税率の設例(設例・基礎4〜6、設例・応用1・6)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。登場する会社と設例の数値はすべて架空の例です。解説は公認会計士・税理士が監修しています。各行の図はラボの図そのものです(記事内の図は表示用で、ボタンやクリックの操作はできません。操作は各節の「ラボで開く」「ラボを開く」からラボ本体で試せます)。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
今日の事例
設例・欠損金と税率編で追う5つの設例(独自の数値)
| 設例・基礎4 | 特定欠損金額と非特定欠損金額 |
| 設例・応用1 | 2つの年度の欠損金:古い年度から順に |
| 設例・基礎5 | 中小通算法人の税率:800万円を分け合う |
| 設例・基礎6 | 1社だけ資本金1億円超:全社が大通算法人 |
| 設例・応用6 | 1年の計算を通しで:損益通算から税額まで |
はじめに
今日の題材 ── 欠損金と税率の5つの設例
📍 ラボの場所:設例タブ 基礎4〜6・応用1・6
ハルカ
前回の損益通算編は「今年の所得と欠損」でした。今日は過去の欠損金と税率ですね。
先生
そうなんだ。基本の5段でいえば③と④の段だよ。最後の応用6では、①から⑤までを通しで追うんだ。
ハルカ
割合0.44を、今日こそ自分の電卓で出してみます。
先生
いい心がけだね。ラボの表と一致するかを確かめながら、順に読んでいこうか。
📘 設例・基礎4 ラボの画面
🧾 欠損金の通算の結果
| 項目 | P社 | S1社 | S2社 | S3社 | 合計 |
|---|
| 控除の合計 | 13,200,000 | 8,000,000 | 8,800,000 | 0 | 30,000,000 |
| 翌期繰越(特定) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 翌期繰越(非特定) | 5,600,000 | 3,360,000 | 19,040,000 | 0 | 28,000,000 |
翌期繰越(非特定)= もとの欠損金額 −(もとの欠損金額 × 割合)。
設例・基礎4
欠損金の通算:特定欠損金額と非特定欠損金額
📍 ラボの場所:設例タブ 基礎4 ステップ①〜④
ハルカ
損益通算後の所得は、P社3,000万円、S1社1,000万円、S2社2,000万円。S1社には、加入前に生じて持ち込んだ特定欠損金額800万円があります。
先生
ステップ①で損金算入限度額を出すんだ。大通算法人だから所得の50%で、P社1,500万円、S1社500万円、S2社1,000万円、合計3,000万円だよ。
迷いポイント S1社の特定欠損金額は、S1社の限度額500万円まで?
ハルカ
基礎編で「比べるのはグループの限度額の合計」と習いましたが、念のため。S1社の限度額は500万円なのに、本当に800万円全部引けるんですか。
先生
引けるんだ。ステップ②の特定損金算入割合は、3,000万円÷800万円で1を超えるから1。S1社の所得1,000万円の範囲で、800万円を控除するよ(法人税法第64条の7第1項第3号イ)。
ハルカ
ステップ③では、S1社の非特定欠損金額600万円が、全部ほかの会社に回っています。
先生
S1社は限度額を使い切ったから、配賦の基準が0なんだ。ステップ④で割合0.44を掛けて、P社1,320万円・S2社880万円を控除するよ。
ハルカ
白状すると、S1社の欠損金はS1社の金庫に入っていると思っていました。グループの共有の金庫だったんですね。
先生
共有なのは、非特定欠損金額の方だけだよ。特定欠損金額は、S1社の金庫から出ないんだ。
💡 そうだったのか!
特定欠損金額は
自社の所得の範囲、非特定は
限度額の残りの比で配賦。控除の合計3,000万円は、限度額の合計と一致します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションで「特定欠損金額と非特定欠損金額」を読み込む
- S1社の「X-1期 特定欠損金額」を 8,000,000 から 0 にする
👀 非特定損金算入割合が 0.44 から 0.6 に変わり、S1社も配賦(8,333,333)を受けて、S1社の控除は 8,000,000 から 5,000,000 に減ります。特定欠損金額なら、自社の限度額を超えて控除できていたことが分かります。
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📘 設例・応用1 ラボの画面
① 承認・対象② 損益通算③ 欠損金の通算④ 税率・税額⑤ 申告・遮断
限度額の残り:P 6,785,714・S1 1,214,285(X-2期の控除額を引いた後)
非特定の合計 5,000,000 を配賦:P 4,241,072・S1 758,928
割合 1 → 控除 P 4,241,072・S1 758,928
限度額の残りは、前の年度の控除額を引いて計算する(法人税法第64条の7第1項第2号ハ(2)(i))。
🧾 欠損金の控除と翌期の繰越し
| 項目 | P社 | S1社 | S2社 | S3社 | 合計 |
|---|
| X-2期の控除 | 6,785,714 | 4,214,286 | 0 | 0 | 11,000,000 |
| X-1期の控除 | 4,241,072 | 758,928 | 0 | 0 | 5,000,000 |
| 控除の合計 | 11,026,786 | 4,973,214 | 0 | 0 | 16,000,000 |
| X-2期 翌期繰越(非特定) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| X-1期 翌期繰越(非特定) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 所得金額 | 16,116,071 | 5,883,929 | 0 | 0 | 22,000,000 |
翌期繰越は、年度ごとに「もとの欠損金額×割合」を引いて計算する。
設例・応用1
2つの年度の欠損金:古い年度から順に
📍 ラボの場所:設例タブ 応用1 ステップ①〜④
ハルカ
応用1は、欠損金が2つの年度にある例ですね。X-2期とX-1期。
先生
2つ以上の年度にあるときは、古い年度から順に「特定 → 配賦 → 控除」を繰り返すんだ(Q&A問54)。ステップ①の限度額は、P社13,571,428円、S1社5,428,571円だよ。
迷いポイント 2つ目の年度も、最初と同じ限度額の比で配賦する?
ハルカ
限度額は年に1回決まるので、X-1期の欠損金も、X-2期と同じ比で配るのかと思いました。
先生
2つ目の年度は、前の年度の控除額を引いた「限度額の残り」で配るんだ(第64条の7第1項第2号ハ(2)(i))。ステップ③の残りは、P社6,785,714円、S1社1,214,285円だよ。
ハルカ
その比でX-1期の500万円を配って、P社4,241,072円、S1社758,928円。S2社はX-2期に欠損金を生んだのに、控除は0ですね。
先生
S2社は今期の所得がないから、S2社の非特定欠損金額はP社とS1社に配賦されるんだ。同じ法人でも、年度によって配賦を受けたり配賦したりするよ。
💡 そうだったのか!
欠損金は
古い年度から。次の年度は、
前の年度の控除額を引いた限度額の残りで配賦します。
📘 設例・基礎5 ラボの画面
① 承認・対象② 損益通算③ 欠損金の通算④ 税率・税額⑤ 申告・遮断
所得の合計 = 6,000,000 + 4,000,000 = 10,000,000
P:8,000,000 × 6,000,000 ÷ 10,000,000 = 4,800,000
S2:8,000,000 × 4,000,000 ÷ 10,000,000 = 3,200,000
年800万円を、中小通算法人の所得の比で分け合う(法人税法第66条第7項)。所得のないS1は0。
🧾 税額(別表一付表・別表一に相当)
| 項目 | P社 | S1社 | S2社 | S3社 | 合計 |
|---|
| 所得金額(▲は欠損) | 6,000,000 | 0 | 4,000,000 | 0 | 10,000,000 |
| 軽減対象所得金額 | 4,800,000 | 0 | 3,200,000 | 0 | 8,000,000 |
| 法人税額(簡易) | 1,190,400 | 0 | 793,600 | 0 | 1,984,000 |
軽減対象所得金額以下は19%、超える部分は23.2%。
設例・基礎5
中小通算法人の税率:800万円を分け合う
📍 ラボの場所:設例タブ 基礎5 ステップ①〜③
ハルカ
基礎5は、全社が資本金1億円以下で、大法人の100%子会社でもないグループ。全社が中小通算法人です。
先生
ステップ①で、損益通算後の所得はP社720万円、S2社480万円。限度額は所得の100%だから、S1社の欠損金200万円をP社120万円・S2社80万円に配賦して、全額控除するんだ。
迷いポイント 軽減対象所得金額は、各社800万円ずつ?
ハルカ
単体なら各社が年800万円まで19%なので、P社もS2社も800万円まで19%だと思いました。
先生
通算グループでは、800万円をグループで分け合うんだ。ステップ②で、P社は800万円×600万円÷1,000万円=480万円、S2社は320万円だよ(法人税法第66条第7項)。
ハルカ
大皿料理の取り分けみたいですね。たくさん食べる人のお皿に、多めに盛る。
先生
取り分けの基準は、所得の比なんだ。ステップ③のP社の税額は、4,800,000×19%+1,200,000×23.2%で1,190,400円。措置法の15%は通算法人を除くから、19%で計算しているよ。
💡 そうだったのか!
中小通算法人の軽減対象所得金額は、
800万円をグループで分け合う。所得の比で配り、税率は19%です。
📘 設例・基礎6 ラボの画面
① 承認・対象② 損益通算③ 欠損金の通算④ 税率・税額⑤ 申告・遮断
🧾 限度額の比較
| 項目 | 中小のとき(基礎5) | 大通算法人 |
|---|
| P社の限度額 | 7,200,000 | 3,600,000 |
| S2社の限度額 | 4,800,000 | 2,400,000 |
| 欠損金の控除合計 | 2,000,000 | 2,000,000 |
限度額は所得の50%になるが、この設例では欠損金が小さいので全額控除できる。
① 承認・対象② 損益通算③ 欠損金の通算④ 税率・税額⑤ 申告・遮断
| 項目 | 中小のとき(基礎5) | 大通算法人 |
|---|
| P社の法人税額 | 1,190,400 | 1,392,000 |
| S2社の法人税額 | 793,600 | 928,000 |
| 合計 | 1,984,000 | 2,320,000 |
大通算法人は全額23.2%。1社の増資でグループ全体の税額が変わるので、資本政策の検討で確認する。
設例・基礎6
1社だけ資本金1億円超:全社が大通算法人
📍 ラボの場所:設例タブ 基礎6 ステップ①〜③
ハルカ
基礎6は基礎5と同じ数字で、S2社の資本金だけが2億円。P社とS1社は1億円以下のままです。
先生
ステップ①で、S2社が資本金1億円超だから、P社・S1社を含む全社が大通算法人になるんだ(法人税法第66条第6項第1号)。
迷いポイント 1社だけ資本金1億円超なら、影響はその1社だけ?
ハルカ
資本金が大きいのはS2社なので、S2社だけ23.2%になって、P社は基礎5と同じ税額だと思いました。
先生
グループ全体に響くんだ。ステップ②で限度額が50%になり、ステップ③の法人税額は、P社が1,190,400円から1,392,000円、合計は1,984,000円から2,320,000円に増えるよ。
ハルカ
子会社1社の増資で、グループ全体の税金が33万6,000円も増えるなんて。増資の稟議書に、税務の欄を太字で足してほしいです。
先生
資本政策の検討で確かめる、というのがラボの結論そのものだよ。増資の前に、グループの区分が変わらないかを見ておくんだ。
💡 そうだったのか!
1社でも資本金1億円超なら
全社が大通算法人。限度額は50%、税率は全額23.2%になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションで「中小通算法人のグループ」を読み込む
- 「グループの区分」を「大通算法人」に切り替える
👀 法人税額(計・簡易)が 1,984,000 から 2,320,000 に、限度額の表示が「所得の100%」から「所得の50%」に変わります。
ラボを開く ▶
📘 設例・応用6 ラボの画面
① 承認・対象② 損益通算③ 欠損金の通算④ 税率・税額⑤ 申告・遮断
限度額(50%):P 20,000,000・S2 5,000,000、合計 25,000,000
S2の特定 8,000,000 を控除(S2の限度額 5,000,000 を超えるが、グループの合計の範囲)
非特定 25,000,000 をPに配賦、割合 0.68 → Pが 17,000,000 を控除
🧾 欠損金の通算
| 項目 | P社 | S1社 | S2社 | S3社 | 合計 |
|---|
| 控除の合計 | 17,000,000 | 0 | 8,000,000 | 0 | 25,000,000 |
| 翌期繰越(非特定) | 0 | 6,400,000 | 0 | 1,600,000 | 8,000,000 |
🧾 税額
| 項目 | P社 | S1社 | S2社 | S3社 | 合計 |
|---|
| 所得金額(▲は欠損) | 23,000,000 | 0 | 2,000,000 | 0 | 25,000,000 |
| 法人税額(簡易) | 5,336,000 | 0 | 464,000 | 0 | 5,800,000 |
大通算法人なので全額23.2%。
設例・応用6
1年の計算を通しで:損益通算から税額まで
📍 ラボの場所:設例タブ 応用6 ステップ①〜⑤
ハルカ
応用6は、1年の計算を通しで追う設例ですね。基本の4社に、前期の繰越欠損金を足したものです。
先生
ステップ①で、P社の資本金3億円だから全社が大通算法人。ステップ②の損益通算は基礎1と同じで、P社4,000万円、S2社1,000万円が残るんだ。
迷いポイント S2社の特定欠損金額800万円は、S2社の限度額500万円を超えて控除できる?
ハルカ
基礎4ではS1社が限度額を超えて引けました。でも今度は、S2社の限度額500万円に対して800万円。さすがに大きすぎませんか。
先生
引けるんだ。S2社の所得1,000万円の範囲で、グループの限度額の合計2,500万円と比べるからね。ステップ③では非特定2,500万円がP社に配賦され、割合0.68でP社が1,700万円を控除するよ。
ハルカ
ステップ④で、所得金額はP社2,300万円、S2社200万円、法人税は合計580万円。最初の6,000万円が、ずいぶん小さくなりました。
先生
損益通算と欠損金の通算を順に通すと、こうなるんだ。ステップ⑤では各社がe-Taxで申告して、通算税効果額の授受まで確かめるんだよ。
💡 そうだったのか!
1年の計算は
承認・対象 → 損益通算 → 欠損金の通算 → 税率の順。特定欠損金額は、自社の所得の範囲なら自社の限度額を超えて控除できます。
⏱ 30秒だけラボで試す
- シミュレーションで「基本の4社+繰越欠損金」を読み込む
👀 繰越欠損金の控除(計)25,000,000、所得金額(計)25,000,000、法人税額(計・簡易)5,800,000 と出ます。③の表で、非特定損金算入割合 0.68、翌期繰越(非特定)S1 6,400,000・S3 1,600,000 も確かめられます。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべてグループ通算制度ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
グループ通算制度ラボを開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。欠損金は古い年度から、特定 → 配賦 → 控除。特定欠損金額は自社の所得の範囲で、限度額はグループの合計と比べる。税率はグループ単位で、1社の資本金がグループ全体の税額を変えるんだ。
ハルカ
基礎編のときは図を見て「なるほど」と思っただけでしたが、今日は割合0.44や0.68を自分で計算して、ラボの表と一致したとき、少しうれしくなりました。
先生
自分で計算して一致を確かめるのが、いちばん確かな理解だよ。ただ実務では年度も会社も多いから、手計算は検算に使って、表は道具に任せるといいんだ。
ハルカ
電卓の「%」キーが、今日だけで1年分働いた気がします。
先生
いい練習になったね。次の設例・修正申告編では、申告の後に誤りが見つかったときの遮断措置と全体再計算を追っていこうか。
参考資料
法人税法第14条・第57条・第61条の11・第64条の5〜第64条の14・第66条・第74条・第152条、法人税法施行令第119条の3・第131条の11〜第131条の17、租税特別措置法第42条の3の2、法人税基本通達12の7-1-2(e-Gov法令検索 令和8年10月1日施行版ほか)。国税庁「グループ通算制度の概要」(令和2年4月)、「グループ通算制度に関するQ&A」(令和4年7月改訂)、「申告書別表の記載例(グループ通算制度適用法人用)」(令和5年3月改訂)、タックスアンサーNo.5900(令和8年4月1日現在)。確認日:2026年10月21日。記載例・Q&Aの15%の税率は改正前の取扱いで、ラボと記事は現行の条文(通算法人は措置法の15%の対象外)で計算しています。ラボと記事の数値は学習用の独自の設例で、税額例は法人税本税の簡易計算で、端数処理・税額控除を省き、地方法人税・防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)・地方税は省略しています。公認会計士が監修しています。
このシリーズの記事:グループ通算制度ラボ【基礎編】/グループ通算制度ラボ【開始・加入・離脱編】/グループ通算制度ラボ【応用編】/グループ通算制度ラボ【設例・損益通算編】/グループ通算制度ラボ【設例・修正申告編】/グループ通算制度ラボ【設例・開始・加入・離脱編】
📓 ハルカの学習ノートで、この章を見る ▶
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。