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経理財務部の物語 第13話(10月21日)|数えなかった棚

経理財務部の物語 第13話(10月21日)|数えなかった棚
経理財務部の物語第13話2026年10月21日(水)・EC・物流子会社の倉庫・本社 経理財務部次:第14話(近日)
この話の中心大野部長登場大野部長・ハルカ・固定資産担当(EC・物流子会社の経理担当と倉庫の責任者は地の文とメール)前の話第12話(10月20日)|誰の帳簿を、直すのか
舞台の会社について(開く)
架空の製造小売。グロース上場・3月決算・子会社3社。店舗68・賃貸借契約80件・経理財務部8人。来期(2028年3月期)から新リース会計基準が強制適用になる。年表・会社のいま・話数一覧は 経理財務部の記録 に。会計の知識は各話の末尾「この話に出てきた知識」からラボと学習ノートへ。
PART 1物語
1

水曜の朝1,250万円は、棚にあった

1,250万円2,000万円のうち、1,250万円は棚にあった。

2026年10月21日、水曜。
中間連結の締めの三日目。
朝8時、部長とハルカは、郊外にあるEC・物流子会社の倉庫へ向かう電車に乗っていた。

ハルカのスマートフォンには、昨夜遅くに届いたメールが開いてあった。

✉EC・物流子会社 経理担当
昨日の夕方から、倉庫で数え直しました。
12品番で、棚札の「個」の欄に、ケース(箱)の数が書かれていました。9月30日の棚卸票と照らし、10月に入った分と出た分を戻して9月末の数にすると、1,250万円分は棚にありました。
残りの750万円は、まだ分かりません。明日、倉庫でお待ちしています。
ハルカ
心の声
2,000万円のうち、
1,250万円は9月末にも棚にあった。
モノは、なくなっていなかった。
ハルカ
ケースと個数の書き違いで、1,250万円です。
半分以上は、数え方だったんですね。
大野部長
うん。
棚札に「個」と書いてあっても、箱が積んであると、
箱の数を書きたくなる。
数えた人が悪いというより、紙の作りの問題だね。
ハルカ
最初から、
全部「個」で数えることにすればよかったんでしょうか。
大野部長
箱のまま積んである品を一つずつ開けて数えるのは、
倉庫の人には大変なんだ。
だから箱で数えるのは悪くない。
大野部長
問題は、箱で数えた数を、個の欄に書けてしまう紙の方だね。
ハルカ
残りの750万円は、返品の方でしょうか。
大野部長
そこを、今日は棚の前で確かめよう。
返品がどこに届いて、いつ帳簿に入って、いつ棚に戻るのか。
ハルカ
部長は、あの倉庫に行ったことがあるんですか。
大野部長
物流を子会社に分けた年に、何度か通ったよ。
グループの棚卸のやり方を決めるときにね。
それからは、ほとんど行っていない。
ハルカ
心の声
棚卸のやり方を決めたのは、部長。
だったら今日は、
部長にとっても答え合わせの日なのかもしれない。
ハルカ
締めは、今日も遅れますね。
大野部長
遅れるね。
でも、精算表の前に座っていても、
この750万円は分からない。
昨日、待つだけではないと言ったからね。

電車は川を渡った。窓の外の建物が、少しずつ低くなっていった。

2

倉庫の二階数えなかった一角

返品置き場(検品待ち)実地棚卸の実施要領(第1版)3 数えない品(2)検品前の品は、数えない。帳簿には、受領した時に入っている「……これを書いたのは、私だ。」
午前10時。物流子会社の経理担当と倉庫の責任者が、二人を倉庫の二階へ案内した。奥の一角に段ボールが積まれ、「返品置き場(検品待ち)」と書いた札が下がっていた。

倉庫の責任者は、9月30日の棚卸では、この一角は数えていないと言った。

ハルカ
数えていない、んですか。

倉庫の責任者は、柱に貼られた紙を指さした。「実地棚卸の実施要領(グループ共通)」。その中の一行に、赤い線が引いてあった。

実地棚卸の実施要領(グループ共通)第1版「3 数えない品」の抜粋

3 数えない品

(1)外部から預かっている品(当社の在庫でないもの)は、数えない。

(2)検品前の品(店舗・ECからの返品を含む)は、数えない。

(3)廃棄が決まった品は、数えない。廃棄の記録と照らす。

書かれていないこと:数えない品を、別にどう記録するか。帳簿にはいつ入っているか
架空の会社の社内文書(抜粋)
大野部長
……これを書いたのは、私だ。
ハルカ
部長が、ですか。
大野部長
物流を子会社に分けたときにね。
検品前の返品は、売れるかどうかまだ分からない。
だから数えない、と書いた。
大野部長
でも帳簿の方は、店から届いた時点で在庫に入れている。
帳簿には入れたまま、数えない。
その穴を、私は書かなかった。
ハルカ
返品は、ここに来るまでに、どこを通るんですか。

倉庫の責任者が、指で順に示した。店とECから届いた返品は、一階で受け取る。受け取った時点で、システムの在庫に入る。そのあと二階に上げて、検品を待つ。

検品が済んだ品は売場用の棚へ、傷んだ品は廃棄の置き場へ。9月の終わりは返品が多く、検品待ちは二週間近くたまっていた。

店・EC返品を送る一階で受け取るここで帳簿の在庫に入る二階の返品置き場検品待ち(最大2週間近く)検品売場用の棚廃棄の置き場帳簿の在庫:受け取った時から入っている数えない(第1版)数える帳簿9月末の実地棚卸帳簿にはあるのに数えない ── その分だけ、実地棚卸が帳簿より少なく出る返品の流れ(EC・物流子会社の倉庫)
ハルカ
心の声
受け取った時に、帳簿に入る。
検品を待つ二週間は、帳簿にはあって、棚卸では数えない。
ハルカ
この置き場の分は、いくらになりそうですか。

経理担当が、受領の記録を開いた。記録の上では、9月30日の時点でこの一角にあったはずの返品は450万円。ただ、それはまだ記録から見た金額だった。

ハルカ
でも部長、今日数えても、
9月30日の数にはなりませんよね。
10月に入ってからも、返品は届いているはずです。
大野部長
そのとおりだね。
今日数えた数から、10月に届いた分を引いて、
検品して棚に戻した分を足し戻す。
それで9月末の数にする。
大野部長
受払の記録があればできる。
戻した計算も、一緒に残してもらおう。
450万円と言えるのは、それが済んでからだね。
返品置き場の数を、9月30日に戻す(受払の記録で)10月21日に数えた数380万円10月に届いた返品210万円−検品して棚へ移した分280万円+9月30日の数450万円=今日、棚の前で数える9月末にはまだ無かった9月末には置き場にあった帳簿と比べる数数字は受領の記録から見た見込み。受払の記録で一行ずつ確かめ、戻した計算を残してから「450万円」と言える(9月30日の帳簿にある返品置き場の分と比べて、差がなければ「数え漏れ」と確定する)今日の数は、9月末の数ではない。
ハルカ
心の声
数字の前に、モノがある。
そしてモノの前に、モノを数える決まりがある。
3

昼の休憩室300万円は、誰が決めるのか

原因不明 300万円① 破損・廃棄の記録 ② 出荷の記録金曜まで ── 処理の案は子会社、連結は親が確認確かめるのは帳簿を持つ人。決まりを直すのは、決まりを書いた人。

正午。
倉庫の休憩室で、弁当を食べ終えたころ、物流子会社の経理担当がノートを開いた。

残りの300万円は、破損や廃棄の記録を探しているが、まだ見つからない。
中間の締めに間に合わせたいので、扱いは親会社で決めてほしい。
経理担当は、そう言った。

ハルカ
心の声
決めてほしい。
部長が一言言えば、今日のうちに終わる。

部長は、すぐには答えなかった。湯のみを置いて、しばらく窓の外のトラックを見ていた。

ハルカ
心の声
部長は、決めたいんだと思う。
自分の一行のせいで、今日ここまで来てもらったのだから。

それから部長は、経理担当の方を向いた。

大野部長
300万円をどう扱うかは、まずそちらで調べて、
処理の案を出してください。
うちが先に決めてしまうと、次の棚卸でも、
うちが決めることになります。
大野部長
うちは、連結に入れる前に、その案と根拠を確かめます。
連結の数字に責任を持つのは、うちですから。
大野部長
その代わり、確かめる順番と期限は一緒に決めましょう。
まず破損と廃棄の記録、次に9月末の前後の出荷の記録です。
大野部長
金曜までに原因が分からなくても、
数えた結果が正しいと確かめられて、
なお300万円足りないなら、
そちらの決算で棚卸減耗として処理しましょう。
大野部長
ただ、今回は数え方そのものに穴がありました。
数量の確かさは、最後まで確かめてください。

経理担当は少し考えてから、うなずいた。パッケージの出し直しは、来週の月曜になる。

ハルカ
部長。
決めてしまった方が、今日は早かったですよね。
大野部長
早かったね。
でも私が決めたら、私の書いた要領の穴まで、
私の中で片づけてしまいそうだった。
大野部長
原因を確かめるのは、帳簿を持っている人。
決まりを直すのは、決まりを書いた人。
今日は、それを分けたかったんだ。
ハルカ
1,250万円と450万円は、どうなるんですか。
大野部長
9月末に棚にあったと確かめられたモノなら、
減耗ではないよ。
子会社が棚卸表を訂正する。
1,250万円はもう確かめが済んだ。
大野部長
450万円は、9月末の数に戻す計算が済んでからだね。
根拠の記録も、全部残してもらおう。
EC・物流子会社 9月末の在庫(10月21日夕方の時点)実地棚卸(9月30日)4億9,000万円① ケースと個数の記入違い1,250万円+ 棚にあった(確認済み)→ 棚卸表を訂正② 返品置き場の数え漏れ450万円+ 棚にあった見込み(確認中)→ 確かめて訂正訂正後の実地(見込み)5億700万円= ①②を足し戻した数帳簿 5億1,000万円 − 訂正後の実地(見込み) 5億700万円 =③ 300万円(暫定の残り)①②は減耗ではなく数え方の問題。③だけが、数量を確かめたうえでも足りなければ棚卸減耗の候補(金曜まで)棚にあった分を足し戻すと、残るのは300万円。
4

夕方の本社決まりを書いた人の宿題

実施要領 第2版(案)1数える範囲は、配置図で決める2ケース数・入数・バラ・合計を分ける3検品前の品も、別の欄に数える4数え直したら、決算日に戻す5差は原因ごとの内訳で報告1 と 4 はハルカの提案部長の書いた決まりに、ハルカの二行。
夕方5時、本社に戻った部長は、新しいファイルを開いた。題は「実地棚卸の実施要領(グループ共通)第2版(案)」。
ハルカ
直すのは、どこですか。
大野部長
三か所だね。
一つは、数えない品も別に数えて、記録すること。
二つ目は、数える単位を、ケースと個数で分けて書くこと。
ハルカ
三つ目は、報告ですか。
大野部長
うん。
差が出たら、原因ごとの内訳を付けて報告すること。
今回、内訳があったから話が早かった。
ハルカ
数える範囲も、要りませんか。
今日の返品置き場は、倉庫の配置図に載っていませんでした。

部長は、キーボードから手を離した。

大野部長
……そうだね。
範囲を、言葉だけで決めていた。
大野部長
配置図に置き場を全部載せて、図で決めよう。
ハルカ
それと、今日みたいに後で数え直したときの、
9月末への戻し方もです。
窓の外が暮れていく。
大野部長
そうだね。
戻した計算を残す、まで書こう。
直すのは、五か所だ。
ハルカ
心の声
部長の書いた決まりに、私が二行。
大野部長
ただ、案ができても、すぐには使えないよ。
倉庫と店の事情は、会社ごとに違う。
部会と各社で確かめて、3月の期末の棚卸から使いたい。
ハルカ
今回の中間には、間に合わないんですね。
大野部長
今回は、今日みたいに一つずつ確かめるしかない。
正式な改訂は3月に間に合わせよう。
大野部長
ただ、数え漏れと単位、それに廃棄予定品の扱いは、
次に数えるときから暫定の取扱いとして、
私から各社に通知しよう。
3月まで待つ理由はないからね。

固定資産担当が、印刷した案を横からのぞいた。

固定資産担当
倉庫の配置図ですか。
うちの固定資産の現物確認も、どこを見て回るかは、
担当の頭の中にしかないんですよね。
大野部長
同じ穴かもしれないね。
数えない場所、見て回らない場所は、
決めた人にしか見えない。
固定資産担当
来月から2年目の部員に一緒に担当してもらう予定ですけど、
現物確認の回り方までは書き出していないんですよね。
年内に、書き出してみます。
EC・物流子会社 棚卸差異 2,000万円の内訳10月21日・夕方
棚にあった確認中未解決
①ケースと個数の記入違い(12品番)棚にあった1,250万円9月30日の棚卸票で記入違いを確認。再カウントの数を受払で9月末に戻して確認済み。子会社が棚卸表を訂正
②返品置き場の検品前の品(数え漏れ)確認中450万円要領で数えない範囲。帳簿は受領時に計上済み。金額は受領の記録から見たもの。受払の記録で9月末の数に戻して確かめる
③原因不明未解決300万円金額は、②の450万円が確かめられた場合の残り(暫定)。破損・廃棄 → 出荷の記録の順に、金曜まで。数えた結果の確かさを確かめたうえで、なお足りなければ子会社の決算で棚卸減耗(処理の案は子会社、連結への反映は親会社が確認)
原因が分かるまで、親会社の連結では仮の数字を入れない。パッケージの出し直しは10月26日(月)
架空の会社の社内文書(抜粋)
大野部長
明日は、製造子会社のパッケージの再送だね。
今日の分は、ハルカさんの整理表に書いておいてくれるかな。
ハルカ
はい。
300万円は、「分からなかったこと」の欄に書きます。
結び

整理表物流の行を、三つに分ける

物流の棚卸差異 2,000万円(10月21日の夜)① ケースと個数の記入違い1,250万円棚にあった② 返品置き場の数え漏れ450万円確認中③ 原因不明(暫定の残り)300万円金曜まで分からなかったこと:300万円(子会社が確かめる)数えなかった棚の答えは、決まりを書いた人の机の上にあった。

夜7時。
ハルカは、整理表の物流の行を三つに分けた。

1,250万円は、9月末にも棚にあった。
450万円は、9月末の数に戻す確かめが残っている。
残りの300万円は、その確かめ次第で動く暫定の金額で、原因はまだどこにも見つかっていない。

部長の机には、第2版(案)の表紙が置いてあった。
作成の欄には部長の名前。
確認の欄は、まだ空いていた。

数えなかった棚の答えは、決まりを書いた人の机の上にあった。

次の話へ持ち越したこと
  • EC・物流子会社の棚卸差異2,000万円 ── 1,250万円(ケースと個数の記入違い)は9月末にも棚にあったと確認済み。450万円(返品置き場の検品前の品の数え漏れ)は受払の記録で9月末の数に戻して確認中。確かめられた分は子会社が棚卸表を訂正する
  • 原因不明の300万円(450万円が確かめられた場合の残り・暫定) ── 破損・廃棄の記録、出荷の記録の順に、子会社が10月23日(金)までに確かめる。数えた結果が正しいと確かめられ、なお足りなければ子会社の決算で棚卸減耗(処理の案は子会社が出し、連結に入れる前に親会社が根拠を確認)。パッケージの出し直しは10月26日(月)
  • 実地棚卸の実施要領(グループ共通)── 部長が第2版(案)を作成。部会と各社の確認の前。正式な適用は3月の期末の棚卸から。数え漏れ・単位・廃棄予定品の扱いは、次に数えるときから暫定の取扱いとして部長が各社に通知
  • 製造子会社のパッケージの再送 ── 10月22日(木)の午前
  • 読み取りの残り件数 ── 10月23日(金)に確認
第13話 おわり次の話:第14話(近日)
学び

この話の、二人の反省と学び

ハルカの反省と学び
1今日の数は、9月末の数ではない
倉庫で今日数えた数は、10月の入りと出を含んでいる。受払の記録で決算日の数に戻してから、帳簿と比べる。
2数える範囲を、場所で見る
返品置き場は、要領の文には出てくるのに、配置図には載っていなかった。範囲は言葉だけでなく、場所でも決める。
3モノの前に、決まりがある
差の大部分は、モノがなくなったのではなく、数え方と数える範囲の決まりから出ていた。差を見たら、まず数え方を疑う。
大野部長の反省と学び
1自分の書いた決まりを、疑う
検品前の返品を数えないことにしたのは、自分が書いた一行だった。穴は書いたことの中ではなく、書かなかったことの中にあった。
2確かめるのは帳簿を持つ人、直すのは決まりを書いた人
300万円の処理の案は子会社に出してもらい、親会社は順番と期限を一緒に決めて、連結に入れる前に根拠を確かめる。要領の穴は、自分の宿題にした。
3正式な改訂と、すぐに塞ぐ穴を分ける
改訂案は部会と各社の確認を経て3月から使う。ただ、見つかった数え漏れと単位の穴は、暫定の手順で次に数えるときから塞ぐ。今回の数字は、一つずつ確かめる。
PART 2物語に登場した社内資料(実地棚卸の実施要領 第2版(案))
付録

実地棚卸の実施要領(グループ共通)第2版(案)全文三日目の夕方、部長が書いた改訂案

この物語の会社(架空)で、9月末の棚卸差異を倉庫で追った日の夕方に、大野部長が書いた実施要領の改訂案です。第1版にあった「検品前の品は数えない」という一行が、帳簿に入っている返品を棚卸の範囲から外していたことから、数える範囲・数える単位・数えない品の記録・差の報告を書き直しました。実在の会社の文書ではありません。倉庫や店舗の事情は会社ごとに違うので、ひな形として使うときは自社の業務に合わせてください。

実地棚卸の実施要領(グループ共通) 第2版(案)

作成経理財務部長 大野(第1版:物流を子会社に分けたとき。第2版(案):2026年10月21日。2(2)の配置図と5(1)の決算日への戻しはハルカの提案)対象当社および子会社3社(製造、EC・物流、海外販売)の倉庫・店舗・外部の預け先状態第2版(案)・作成済み(部会・各社の確認の前)。正式な適用は2027年3月の期末の実地棚卸からを予定。それまでは第1版を使い、8の取扱いだけは親会社経理財務部からの暫定の通知によって変更する確認未了(部会・各社の確認待ち)取扱いグループ内
⚠ この要領は、実地棚卸の「数え方」と「差の調べ方・報告」の手順を決める文書です。棚卸差異をどう会計処理するか(棚卸減耗の計上区分など)は、会計基準と各社の会計方針に従い、各社が自社の決算で判断します。グループ会社の数字を、親会社の連結の作業で仮に合わせることはしません。

1 目的

  • 決算日の在庫の数量を実際に確かめ、帳簿の在庫と照らし合わせる。差があれば原因を調べ、各社の帳簿を正しい数字にする。

2 数える範囲

  • (1)各社の倉庫・店舗・外部の預け先にある、自社の在庫をすべて数える。
  • (2)倉庫ごとに配置図を作り、数える場所を図で決める。返品置き場・検品待ち・保留品・出荷待ちの置き場も、必ず図に載せる。改訂
  • (3)配置図は、実地棚卸の1週間前までに、各社の経理が倉庫の責任者と確かめる。新設

3 数える単位

  • (1)原則として「個」で数える。
  • (2)ケース(箱)で数えるときは、記入欄を「ケース数」「1ケースの入数」「バラ個数」「合計個数」の四つに分ける。合計個数=ケース数×入数+バラ個数(例:10ケース×24個+5個=245個)。入数は棚札と集計表にあらかじめ印字し、帳簿と照らすのは合計個数で行う。改訂
  • (3)入数の違う品が同じ棚にあるときは、品番ごとに棚札を分ける。
  • (4)開封済みのケースは、ケース数に含めず、中の品を「バラ個数」の欄に書く。新設

4 数えない品と、別に数える品

  • (1)外部から預かっている品(自社の在庫でないもの)は、自社の在庫とは区分して「預かり品」の欄に数量を記録し、預かり品の一覧と照らす。改訂
  • (2)検品前の品(店舗・ECからの返品を含む)も数える。通常の在庫の欄ではなく「検品前」の欄に、別に記録する。返品がどの会社の在庫かは、受領の記録で確かめる。評価の要否は、検品の結果や返品の理由などをもとに、決算日時点で各社の経理が確かめる。検品が終わっていない場合も、入手できる情報に基づいて評価を検討する。数えることと評価することは分ける。改訂
  • (3)廃棄予定品・不良品は、通常の在庫とは区分して数量を記録する。廃棄済みの品は、廃棄の記録と照らす。廃棄前の品については、帳簿への計上の状況と評価の要否を、各社の経理が確かめる。改訂
  • (4)(1)〜(3)の品が、帳簿のどの時点で在庫に入り、いつ出るのかを、各社の経理が一覧にして棚卸の前に倉庫と共有する。新設

5 棚卸の日と決算日

  • (1)当社グループでは、実地棚卸は原則として決算日に行う。決算日以外に行うとき、または差の調査のため後日数え直したときは、受払の記録で決算日の数に戻し、戻した計算を残す。新設

6 差の調べ方と報告

  • (1)帳簿との差は、原因ごとの内訳(数え違い/数える範囲の漏れ/帳簿に入る時点の違い/破損・廃棄の記録漏れ/原因不明)を付けて、親会社の経理財務部に報告する。新設
  • (2)原因の調査と処理の案づくりは、帳簿を持つ会社が行う。親会社の経理財務部は、確かめる順番と期限を一緒に決め、連結に入れる前に処理の案と根拠を確かめる。新設
  • (3)原因が分かるまで、親会社の連結の作業で仮の数字を入れない。
  • (4)期限までに原因が分からない差は、数えた結果の確かさ(数える範囲・単位・決算日への戻し)を確かめたうえで、なお残る不足を各社が自社の決算で処理する。処理の方法は、グループで統一した会計方針に従う。新設

7 役割

  • 各倉庫・店舗の責任者:数える。配置図と棚札を整える。
  • 各社の経理:帳簿と照らす。差の原因を調べ、自社の決算で処理する。
  • 親会社の経理財務部:この要領の改訂。差の報告の取りまとめ。確かめる順番と期限の相談。連結に入れる前の処理の案と根拠の確認。

8 暫定の確認手順(第2版の正式な適用まで)

  • 第2版の正式な適用までの間、第1版の「検品前の品は数えない」「廃棄が決まった品は数えない」という規定は、暫定的に取扱いを変更する(検品前の品・廃棄予定品も区分して数量を記録する)。あわせて、ケースで数えるときの記入欄(3(2))と、置き場の確認(2(2))を求める。新設
  • この暫定の取扱いは、この案の8を根拠にするのではなく、親会社経理財務部が各社に通知し、次回の実地棚卸から適用する。新設

第1版との違い(9月末の棚卸で分かったこと)

項目第1版第2版(案)改訂の理由
数える範囲「各社の倉庫・店舗の在庫を数える」(場所の決め方は書いていない)倉庫ごとの配置図で決める。返品置き場・検品待ちも図に載せる返品置き場が配置図に載っておらず、範囲から外れていた
数える単位書いていない個が原則。ケースで数えるときは「ケース数・入数・バラ個数・合計個数」の四欄(合計=ケース数×入数+バラ)12品番で、個の欄にケースの数が書かれていた(1,250万円)
検品前の品数えない数えて「検品前」の欄に別に記録する。どの会社の在庫か・評価の要否も確かめる帳簿には受領時に入っている返品を数えず、受領の記録の上では450万円の数え漏れ(9月末に戻して確認中)
廃棄予定品・預かり品廃棄が決まった品・預かり品は数えない区分して数量を記録する。廃棄前の品は計上の状況と評価の要否を確かめる「数えない品」を広げすぎると、残っている現物が見えなくなる
数え直したとき書いていない受払の記録で決算日の数に戻し、計算を残す10月21日に数え直した数を、9月末の数に戻す必要があった
差の報告「差があれば経理に報告する」原因ごとの内訳を付ける。調査と処理の案は帳簿を持つ会社、連結に入れる前に親会社が確認。数量の確かさを確かめたうえで、なお残る不足を各社の決算で処理原因不明の300万円の扱いを、親会社で決めてほしいと頼まれた
変更履歴
第1版(物流を子会社に分けたとき):経理財務部長 大野が作成。グループ共通の実地棚卸の手順として各社に配布
第2版(案)(2026年10月21日):2026年9月末の棚卸差異(EC・物流子会社・2,000万円)の調査をもとに、数える範囲(配置図)・数える単位・検品前の品の記録・数え直したときの日付の戻し方・差の報告、預かり品・廃棄予定品の区分、暫定の確認手順を改訂(大野。配置図と決算日への戻しはハルカの提案)。部会と各社の確認の前
PART 3学ぶ世界へ・前後の話
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この話に出てきた知識・前後の話

この話に出てきた知識(学ぶ世界へ)
経理財務部の物語|第13話|2026年10月21日(水)
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この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。数字はすべて架空です。

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。