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🎬 動画で見る第25話「人事の担当が辞める。年内は経理部長が人事も見る」
この話を、声と絵で見られる動画です。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)
朝分からないことの形
2026年11月2日、月曜。
午前8時40分。
部長は席に着くと、まず日曜のメールを開いた。
週末のうちに記録の保存を確かめた、結果は月曜の朝に報告する、と書いてあった。
開き終わる前に、もう一通届いた。
それより前の記録は残っていないため、確認できません。今週、社長へのご説明の日程をご相談させてください。
分かったことが一つ増えて、分からないことが一つ残った。
今回確かめた記録では、90日より前のことは分からない。
ほかに確かめる方法があるか、情報システムに聞いておこう。
部長は、二通に一つの返事を書いた。日曜に送ってくれたことへの礼と、月曜に読んだこと。ほかの記録で確かめられるかと、社長への説明は水曜の午後でどうか、と添えた。
9時。ハルカが、前期の精算表の写しを持って来た。今日から二人で、「調」の列を一行ずつ見直す約束だった。
情報システムからのメール、私にも届きました。
保存されていた90日分には、
あの2つのアカウントのログインの記録はなかった。
それより前は、今回の記録では分からない。
社長への紙にも、確かめた範囲と一緒にそう書く。
分からないことが一つ減ったんじゃなくて、
分からないことの形がはっきりしたんだと思う。
二人は、前期の精算表の「調」の列を、上から順に指でなぞり始めた。
午前二人が、一人になる
午前10時40分。
人事部から、部長あてにメールが届いた。
引継ぎに使えるのは、有給休暇の消化を考えると2週間ほどです。社長には、昼に報告します。
日曜に来た問いの、二つ目だ。
辞めると聞いてから見えてくる仕事が、
うちの部にもまだあるのではないか。
……うちの部ではなかった。
隣の部だった。
でも、その仕事の出口は、うちの部にある。
年末調整のクラウドを入れようとしていた人だ。
二人が、一人になる。
11月30日付で、引継ぎに使えるのは2週間ほどだそうだ。
年末調整のクラウドは、まだ動いていない。
情報システムが「入れていい情報の区分を先に決めたい」と言って、
止まったままだ。
クラウドはどうなるんでしょう。
……決めないけれど、決める日は決めよう。
昼、部長は社長室に呼ばれた。
午後何を延ばす?
人事部の担当が一人になるから、と。
社長も「年内は」と言った。
年が明けたらどうするかは、また相談する。
部長は、また一人で抱えようとしている。
連結も、850も、扉も。
……そう思いかけて、やめた。
部長は、ファイルから一枚の紙を出した。10月16日の部会でハルカがまとめた、「担当不在で止まる仕事の一覧」だった。
でも、人事部の行は一つもない。
経理財務部の中だけで数えたからね。
11月の人材戦略の材料にする」と書きました。
その11月が、今日来た。
でも、聞いた日に数え始めれば、まだ間に合う。
一つは、辞める担当の仕事のうち、
経理財務部と受け渡しのあるものを、
今日のうちに一枚にすること。
12月給与の精算、源泉税の納付、源泉徴収票、法定調書。
出口の側から、何が要るかを書いてほしい。
850の見直しは始まったばかり。
表示区分の経緯もある。
読み合わせは、残り9件。
連結の二人目も。
ハルカさんなら、今週の何を延ばす?
部長は、答えを言わなかった。
私の前に、問いを一つだけ置いた。
今週だけ固定資産担当の方に代わってもらうのは、
どうでしょう。
二人目は、もともと私と固定資産担当の方でした。
ただ、今週は10月の月次の締めだよ。
固定資産担当は締めで手がいっぱいだし、
2年目の部員も締めを習い始めたところだ。
締めの週でした。
ハルカは、手帳の一週間の欄を指で押さえて、少し考えた。
水曜から再開させてください。
明日は祝日です。
残りは9件なので、11月中旬の期限には、
まだ間に合います。
半期報告書の前に、主査に考え方を伝える約束なので。
表示区分も、同じ推移表の話なので一緒に進めます。
それで行こう。
2年目の部員には、私から言っておく。
水曜に、残りの件数で一度確かめよう。
夕方一人しか知らない仕事
残る担当は、聞かれたことに一つずつ答えた。給与のデータを会計システムに渡すのは誰か。源泉税の納付のデータは、いつ経理に来るのか。源泉徴収票は誰が作るのか。
答えのうち、いくつかは「辞める担当がやっていた」だった。
二人でやっている、と思っていた仕事の中に、
一人しか知らない仕事が混ざっている。
午後5時半。ハルカは、一枚の表を部長の机に置いた。
そのうち、二人目が「未定」なのは5つです。
残る担当の方が一人でできるのは、申告書の回収だけでした。
未定、育成中、代行可能の三つです。
手順書があるだけでは、代行可能とは書いていません。
部会で決めた書き方を、部の外にも使えたんだね。
導入の設定もテストも、
辞める担当の方しか触っていませんでした。
水曜までに決めるよ。
決める日だけは、今日決めた。
……他の会社で、導入が年末調整に間に合わなかったとき、
何が起きたのか。
それを、一人だけ聞いてみたい人がいる。
先生のことだ、と思った。
部長は、名前を言わなかった。
人事部の仕事の表を、経理が書いたと思われないように、
「経理財務部との受け渡し分」と題に入れておいて。
もう入れてあります。
手帳次のページ
午後6時半。
部長は手帳を開いた。
昨日の白いページの、次のページだった。
昨日は、問いが三つ来た。
そのうち二つが、月曜の朝までに、もう一度やって来た。
一人で抱えている人と、辞めると聞いてから見えてくる仕事。
辞めると聞いてから数えるのは、少し遅い。
でも、聞いた日に数え始めれば、まだ間に合う。
三つ目の問い ── 後ろで黙って見ている人は、いつ問いを一つだけ聞くのか ── は、部長自身が、午後に一度だけ答えていた。
- 人事担当の退職(11月30日付・引継ぎ2週間)── 確認表 第0版(7行・二人目「未定」5つ)を人事部と共有。年内は部長が人事も見る(社長の指示・一時的)
- 年末調整のクラウド ── 紙に戻すか、遅れた導入を続けるか。部長が水曜までに決める。他社で導入が間に合わなかったときに何が起きたかを、一人に聞く
- 年末調整の経理側の要件(12月給与の精算・源泉税の納付・源泉徴収票・法定調書)── ハルカ
- ログの確認 ── 保存されていた90日分には、停止した2アカウントのログインの記録なし。それより前は今回の記録では分からない(ほかの記録で確かめられるかを情報システムに確認中)。社長への説明は水曜の午後を提案中(情報システム担当と)
- 読み合わせ ── 今日(月)は休み、明日(11月3日)は祝日、水曜から再開(残り9件・期限11月中旬は変えない)。水曜に残りの件数で確認
- 850が残った原因・「調」の列の全件見直し ── 今日から(部長とハルカ)。未払の表示区分の経緯(ハルカ)── 止めない
この話の、二人の反省と学び
人事担当の退職に伴う引継ぎ確認表(経理財務部との受け渡し分) 全文月曜の夕方、ハルカが人事部の残る担当に聞いて作った第0版
この物語の会社(架空)で、人事部の担当2人のうち1人が退職を申し出た日に、経理財務部のハルカが作った確認表です。人事部の仕事のうち、経理財務部と受け渡しのあるものだけを並べ、第8話の「担当不在で止まる仕事の一覧」と同じ三段階で二人目を書いています。実在の会社の文書ではありません。製品名・サービス名は書いていません。ひな形として使うときは、自社の年末調整・給与の流れと期限に合わせてください。
人事担当の退職に伴う引継ぎ確認表(経理財務部との受け渡し分) 第0版
1 確認表
| No | 仕事 | いまの担当 | 経理財務部との受け渡し | 次の期限(目安) | 二人目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 年末調整のクラウドの導入(設定・テスト・従業員への案内) | 退職する担当 | 給与から会計への仕訳の連携、源泉税の計算結果の受け取り(テストに経理も入る) | 稼働:11月中旬(当初11月2日) | 未定(年内は部長が預かる) |
| 2 | 扶養控除等申告書・保険料控除申告書などの回収と確認 | 二人で分担 | なし(人事部の中) | 回収の締切:12月上旬 | 代行可能:残る担当 |
| 3 | 12月給与での年末調整(過不足の精算) | 退職する担当 | 精算額を12月の給与の仕訳に反映 | 12月の給与日 | 未定 |
| 4 | 毎月の給与データの受け渡し(給与→会計システム) | 退職する担当 | 仕訳の取込み・預り金(源泉税・住民税)の残高の確認 | 毎月の締め | 育成中:残る担当(11月の給与から一緒に) |
| 5 | 源泉所得税の納付データの作成 | 退職する担当 | 納付は財務担当(支払データ) | 毎月:原則として翌月10日(土日祝日は翌営業日) | 未定 |
| 6 | 源泉徴収票の作成・交付 | 退職する担当 | なし(金額は12月の仕訳と一致を確認) | 在職者:2027年2月1日まで(1月31日が日曜のため。社内目標は1月末)/年の途中で退職した人:退職後1か月以内(退職する担当本人の分を含む) | 未定 |
| 7 | 法定調書合計表(税務署)・給与支払報告書(市区町村)の提出 | 退職する担当(給与の分) | 報酬・不動産の使用料などの支払調書は経理財務部が作り、税務署に提出する法定調書について合計表を作る(みなし提出の特例で税務署に出さない給与の源泉徴収票は、合計表にも載せない)。給与支払報告書は市区町村へ出す。2027年1月からの源泉徴収票のみなし提出の特例と、電子提出の要否(基準年の枚数30枚以上)を確認 | 2027年2月1日まで(社内目標は1月末) | 未定 |
2 分かったこと
- 7つのうち、二人目が「未定」は5つ(1・3・5・6・7)。育成中は1つ(4)。代行可能は1つ(2)
- 「二人で分担している」と思われていたのは2だけ。ほかは退職する担当しか触っていなかった
- 1の導入方針が決まらないと、3・5・6・7を新旧どちらの方法で進めるかが確定しない
- 第8話の一覧(経理財務部の中の7行)には、人事部の行がなかった。部の外の行として、この表の「未定」の5つを足す
3 決めること(期限)
- 年末調整を、今年は従来の書面の回収と既存の給与の仕組みで進めるか(作中の「紙に戻す」)、遅れたクラウドの導入を続けるか ── 経理財務部長が水曜(11月4日)までに決める。法定調書等の提出方法(電子提出の要否)は、これとは別に確認する
- 年末調整の経理側の要件(12月給与の精算・源泉税の納付・源泉徴収票・法定調書)── ハルカが書く
- 退職する担当への確認(手順・使っている表・社外とのやりとり)── 人事部と経理財務部で、11月中旬までに
- 年明け以降、人事を誰が見るか ── 社長と相談(年内は一時的な兼務)
この話に出てきた知識・前後の話
- 担当がいないと止まる仕事を数える ── 二人目は未定/育成中/代行可能 ── 第8話|【経理の属人化】担当が休むと止まる仕事を数えたら、6つあった
- 連結を回せる人を1人から2人へ ── 二人目を育てる計画と、育成中の業務の守り方 ── 人的資本可視化指針ラボ【部長編①】
- 年末調整の流れ(申告書の回収・12月給与での精算・源泉徴収票) ── ハルカの学習ノート ── 年末調整ラボ 基礎編
- 社外から入れるシステムとアカウントを数える ── 先週金曜の話 ── 第22話|【情報セキュリティ】経理部に、社外から入れるシステムはいくつあるか
前の話:第24話(2026年11月1日)|手帳に何も書かないと決めた日曜日 / 次の話:第26話(2026年11月3日)|【年末調整】スマホ入力の画面の前で、母の指が止まった / 記録ページ(年表・会社のいま・話数一覧) / ハルカの学習ノート
この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。数字はすべて架空です。
