免税事業者が課税事業者になるとき ── 選択・新設法人・インボイス登録
「売上げが少ないのに、なぜ由紀さんは課税事業者になったの?」に、課税事業者になる5つの道で答えられるようになる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 課税事業者選択届出書 | 免税事業者が、自分から課税事業者になることを選ぶ届出。原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間から |
| 新設法人 | 基準期間がない事業年度の期首の資本金(出資金)が1,000万円以上の法人。納税義務は免除されない |
| 適格請求書発行事業者(インボイス登録) | 税務署長の登録を受けて、インボイス(適格請求書)を交付できる事業者。登録すると課税事業者になる |
| 登録の経過措置 | 免税事業者が課税期間の途中の登録希望日から登録を受けられる取扱い。希望日の15日前までに申請する |
| 2割特例・3割特例 | 登録しなければ免税事業者だった人が、売上げの税の2割(3割)を納付税額にできる特例(第13回) |
| 法令と数字 | この講座は令和8年度改正後の法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
免税事業者でも、①売上げ(第4回) ②課税事業者の選択 ③新設法人 ④相続 ⑤インボイス登録のどれかに当たれば課税事業者になる。それぞれの始まる時期と、インボイス登録を売る側・買う側の両方から考えられるようになること。
※ 入門の範囲として、合併・分割の特例、特定新規設立法人、高額特定資産を取得した場合などは扱いません。
図で見る:課税事業者になる5つの道(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 課税事業者になる道
由紀さんの道:インボイス登録(登録日から課税事業者)
STEP 2 課税事業者の選択
課税事業者選択届出書 → 提出した日の属する課税期間の翌課税期間から課税事業者。2年間はやめられない
STEP 3 新設法人と相続
基準期間がない法人で、期首の資本金が1,000万円以上 → 納税義務は免除されない
STEP 4 インボイス登録
由紀さん:2026年10月1日に登録 → 2026年分 27,100円(2割特例)、2027年分 163,500円(3割特例)
STEP 5 登録するか考える
さくら食品の控除 登録あり 46,800円/なし 32,760円 由紀さんの納付 2026年分 27,100円
由紀さんの2026年とさくら食品
| 日付 | 由紀さん | さくら食品(講師料を払う側) |
|---|---|---|
| 2026年1月〜9月 | 免税事業者(基準期間600万円・特定期間300万円) | 講師料の税は経過措置で80%(2026年9月30日まで)を控除 |
| 2026年9月15日 | 登録希望日を10月1日とする登録申請書を提出(希望日の15日前まで) | — |
| 2026年10月1日 | 登録。この日から課税事業者 | 10月の講師料からインボイスを受け取り、全額を控除 |
| 2026年分の申告 | 10〜12月の売上げ150万円に課税。2割特例で27,100円 | (さくら食品は3月決算。2027年3月までの1年分で申告) |
| 2027年分・2028年分 | 3割特例を使える(2027年分 163,500円)。この2年間は免税事業者に戻れない | 講師料の税を全額控除 |
やってみよう:由紀さんが登録したら、しなかったら
由紀さんが登録する・しないで、由紀さんとさくら食品の数字がどう変わるか比べてみましょう(講師料は税込110,000円/月で変えない設定)。
よくある間違い
① 選択届出を出した日から課税事業者
課税事業者選択届出書は、原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間から効力があります。一度選ぶと2年間はやめられません。② 新しい会社は2期目まで必ず免税
期首の資本金が1,000万円以上なら、基準期間がない1期目・2期目も課税事業者です。資本金が少なくても、2期目は特定期間で課税事業者になることがあります。③ 登録しても売上げが少なければ免税
インボイス登録をすると、基準期間の売上げに関係なく登録日から課税事業者です。年の途中で登録した場合は、翌年から2年間は免税事業者に戻れません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 免税事業者でも、選択・新設法人・相続・インボイス登録で課税事業者になる。
- 課税事業者の選択は、原則として届出を出した課税期間の翌課税期間から。2年間はやめられない。還付を受けたいときに選ぶ。
- 新設法人:基準期間がない事業年度でも、期首の資本金が1,000万円以上なら課税事業者。
- インボイス登録:登録日から課税事業者。免税事業者が年の途中で登録するときは、希望日の15日前までに申請。
- 登録するかどうかは、売る側(納税・手間)と買う側(仕入れの税の控除)の両方の数字で考える。
参照条文・出典
参照条文:消費税法9条1項かっこ書(登録を受けた事業者は免除されない)・4項〜6項(課税事業者の選択)、10条(相続があった場合の特例)、12条の2(新設法人の特例)、57条の2(適格請求書発行事業者の登録)、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則44条(登録の経過措置)・51条の2(2割特例)・51条の3(3割特例。令和8年度改正で追加)
参考資料:税務大学校『消費税法(基礎編)令和8年度版』第4章第2節2「課税事業者の選択」(p.29)・4「相続」(p.31)・5「新設法人」(p.32)、第6章第5節「2割特例」(pp.60〜61)、第9章「雑則」(pp.73〜76)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)/国税庁「適格請求書発行事業者の登録申請手続」・インボイス制度に関するQ&A・令和8年度税制改正(3割特例)資料
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(インボイス制度の経過措置の延長・3割特例など)は国税庁の資料で反映しています。登録申請の期限(希望日の15日前まで)と、年の途中で登録した場合に2年間は免税事業者に戻れない取扱いは、国税庁の資料で確認しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年度改正後の法令に基づく学習用の解説・試算であり、個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品・青山家の数字は学習用に設定した仮定の数値です。