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第5回 売上はいつ益金になる?|法人税入門講座

法人税 入門講座|第5回(v3)

売上はいつ益金になる? ── 収益の計上時期と金額

商品を売ったとき、その収益は「いつ」「いくらで」益金になるのか。法人税法22条の2の「引渡しの日」を、出荷・検収などの基準で判定し、さくら食品の別表四に2行目を書く回です。

所要 15分前提:第3回(益金)・第4回(税務調整)条文:法人税法22条の2・63条令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
引渡しの日商品などの販売の収益を計上する日。出荷基準・検収基準など、取引の実態に合う基準を選んで毎期続ける
出荷基準・検収基準出荷した日に計上するのが出荷基準、相手が検収(検品して引き取る)した日に計上するのが検収基準
完成引渡基準・役務完了基準請負は、物の引渡しが要るものは全部を引き渡した日、要らないものは役務の提供を全部終えた日に計上する
工事進行基準工事の進み具合に応じて収益・費用を計上する方法。長期大規模工事は強制、それ以外の工事は選択できる
収益の額販売・譲渡した資産の引渡しの時の価額(通常得べき対価の額=時価)。貸倒れや買戻しの可能性は考えない
売上計上もれ当期に計上すべき売上を翌期に計上していた誤り。別表四で加算(留保)し、翌期に減算する
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
商品の販売の収益は、引渡しがあった日に計上する(22条の2)。引渡しの日は出荷基準・検収基準などから合理的なものを選んで毎期続ける。請負は完成・完了した日、金額は引渡しの時の時価。期末に出荷したのに翌期に計上していれば売上計上もれとして加算する――これを説明できるようになること。
シンプルな例:Z社が3月28日に出荷900万円
→
検収は4月6日、請求は4月10日基準で変わる
→
出荷基準なら当期の益金
さくら食品:3月31日に出荷50万円
→
会計では4月10日(請求日)に計上翌期
→
別表四加算・留保

※ 収益認識に関する会計基準のくわしい内容(履行義務の識別など)や、割賦販売・リース譲渡などの特例は扱いません。

ハルカ先生、第4回で別表四の1行目を書きました。今日から2行目ですか?
先生そうだよ。今日は、売上をいつ益金にするかを見て、さくら食品の別表四に2行目を書くんだ。
ハルカ売上の時期なんて、会計と税法で違うんですか?
先生考え方はほぼ同じだけど、期末の前後でずれることがあるんだ。さくら食品も、3月31日に出荷した50万円の売上を、翌期に計上していたよ。
ハルカ1日ずれただけで、税金が変わるんですね。
先生今日は、引渡しの日の決め方と金額を、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:収益の計上時期と金額(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のZ社で、5ステップを通してみよう。さくら食品や、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、出荷基準と検収基準を切り替えられるんですね。
先生同じ取引でも、基準で当期か翌期かが変わるのを確かめてみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 商品の販売は「引渡しがあった日」に計上(22条の2①)当期(〜3月31日)翌期(4月1日〜)期末契約 3/10出荷 3/28着荷 3/30検収 4/6請求 4/10入金 4/30緑の点:引渡しを判定する候補の日出荷した日・相手に着いた日・相手が検収した日など→ 商品が買主に渡ったという事実で 収益が実現したと考える(販売基準)灰色の点:計上日にならない契約の日:まだ商品を渡していない請求の日・入金の日:引渡しが終わった 後の、代金を決済する手続→ 入金した時に計上する現金主義はとらない
収益の計上日 = 引渡しがあった日(原則として、契約・請求・入金の日ではない)
ハルカ売上は、いつ益金になるんですか? 代金が入ったときですか?
先生商品の販売は、引渡しがあった日の益金なんだ。法人税法22条の2にそう書いてあるよ。
🤔 迷いポイント請求書を出した日や、代金が入金された日に売上にすればいい?
ハルカお金が入ってきた日が、いちばんはっきりしていると思っていました。
先生請求や入金は、引渡しが終わった後の代金を決済する手続なんだ。商品が買主に渡った事実で収益が実現したと考えるよ。
ハルカZ社の機械20台なら、出荷・着荷・検収のどれかが候補なんですね。
先生そうだよ。契約の日も、まだ商品を渡していないから計上日にならないんだ。
💡 そうだったのか!商品の販売の収益は、引渡しがあった日の益金(22条の2①)。原則として、契約・請求・入金の日ではない。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 引渡しがあった日

ハルカ売上は、いつ益金になるんですか? 代金が入ったときですか?
先生商品の販売は、引渡しがあった日の益金なんだ。法人税法22条の2にそう書いてあるよ。
🤔 迷いポイント請求書を出した日や、代金が入金された日に売上にすればいい?
ハルカお金が入ってきた日が、いちばんはっきりしていると思っていました。
先生請求や入金は、引渡しが終わった後の代金を決済する手続なんだ。商品が買主に渡った事実で収益が実現したと考えるよ。
ハルカZ社の機械20台なら、出荷・着荷・検収のどれかが候補なんですね。
先生そうだよ。契約の日も、まだ商品を渡していないから計上日にならないんだ。
💡 そうだったのか!商品の販売の収益は、引渡しがあった日の益金(22条の2①)。原則として、契約・請求・入金の日ではない。

収益の計上日 = 引渡しがあった日(原則として、契約・請求・入金の日ではない)

STEP 2 どの日を引渡しとみる?

ハルカ出荷・着荷・検収のうち、どれを「引渡し」にすればいいんですか?
先生出荷基準・着荷基準・検収基準などから、商品や売り方に合う合理的な基準を選ぶんだ。それを毎期続ければ、税法でも認められるよ。
🤔 迷いポイント今年は利益が多いから、今年だけ検収基準に変えてもいい?
ハルカ期末の売上を翌期に回せば、今年の税金が少なくなると思いました。
先生基準は毎期続けることが条件なんだ。都合に合わせて年ごとに変えることはできないよ。
ハルカZ社は出荷基準だから、引渡しの日は3/28ですね。
先生そのとおりだね。期末までに引き渡しているから、当期の益金なんだ。
💡 そうだったのか!引渡しの日は、出荷・着荷・検収などから合理的な基準を選び、毎期続けて使う。

Z社は出荷基準 → 引渡しの日 3/28 → 当期の益金

STEP 3 請負・役務の提供

ハルカ品物ではなく、工事や運送のような仕事の代金はどうなるんですか?
先生請負は、物の引渡しが要るものは全部を引き渡した日、要らないものは役務の提供を全部終えた日に計上するんだ。
🤔 迷いポイント長い工事は、全部終わるまで収益を計上しなくていい?
ハルカ完成するまで何年かかっても、最後にまとめて計上すると思っていました。
先生長期大規模工事は、工事の進み具合に応じて計上する工事進行基準を使うんだ。それ以外の工事も、選んで使えるよ。
ハルカ部分ごとに引き渡す約束があるときは、どうなりますか?
先生完成した部分を引き渡すたびに、その部分の収益を計上する部分完成基準になるんだ。
💡 そうだったのか!請負は完成引渡基準・役務完了基準が原則。長期大規模工事は工事進行基準を使う。

請負:物の引渡しが要る → 全部を引き渡した日、要らない → 役務の提供を全部終えた日

STEP 4 収益の額は時価

ハルカ益金にする金額は、契約した代金そのままですか?
先生収益の額は、引渡しの時の時価、つまり第三者に売ったら通常得られる対価なんだ。ふつうの取引なら、契約した代金がそのまま時価だよ。
🤔 迷いポイント相手の業績が悪くて回収できそうにないなら、売上を減らして計上してもいい?
ハルカ回収できない分まで益金にするのは、おかしい気がしました。
先生貸倒れや買戻しの可能性は、収益の額では考えないんだ。本当に回収できなくなったときに、貸倒れとして扱うよ。
ハルカ回収のことは、第12回で見るんですね。
先生そうだよ。代金をもらわずに渡したときの時価の話は、次の第6回で見ようか。
💡 そうだったのか!収益の額は、引渡しの時の時価(通常得べき対価の額)。貸倒れ・買戻しの可能性は考えない。

収益の額 = 引渡しの時の時価。貸倒れ・買戻しの可能性は考えない

STEP 5 計上もれと別表四

ハルカZ社の売上は、会計と税法でずれていますか?
先生引渡しは3/28で当期なのに、会計では翌期に売上にしているんだ。計上もれだね。
🤔 迷いポイント計上もれは、翌期に売上にしているから、そのままでいい?
ハルカどうせ翌期に売上になるなら、直さなくてもいいと思っていました。
先生当期の所得は当期で正しく計算するんだ。別表四で加算して、売掛金として会社に残るから「留保」にするよ。翌期は、会計で売上にした分を減算するんだ。
ハルカ2年を通すと同じでも、どの年の所得かが大事なんですね。
先生そのとおりだね。期末の前後の出荷は、特に確かめておくといいよ。
💡 そうだったのか!期末までに引き渡したのに翌期に計上していれば、売上計上もれとして加算(留保)。翌期に会計で売上にした分を減算する。

当期 加算 9,000,000円(留保)、翌期 減算 9,000,000円 → 2年の合計は同じ

さくら食品の「育つ別表四」── 2行目を書く

※ さくら食品は、店頭販売・ネット販売・ケータリングのいずれも出荷(引渡し)した日に売上を計上する出荷基準を、毎期続けています。この1件だけ、請求書を出した日に計上していました。

先生これが、2行目を書いたさくら食品の別表四だよ。
ハルカ黄色の行が、今日書いた売上計上もれですね。
先生加算の理由、留保の区分、所得への影響を、下のカードにまとめておいたんだ。これからも同じ形で書き足していくよ。
ハルカ翌期は、この50万円を減算するんですよね。
先生そのとおりだね。会計で翌期に売上にした分が、税法では前期に済んでいるからなんだ。

やってみよう:この売上は当期?翌期?(6問)

3月31日が期末の会社です。選んでいる基準で、どちらの事業年度の益金になるかを判定しましょう。

ハルカ当期か翌期か、いろいろな場面で判定してみたいです。
先生左の6問で、会社が選んでいる基準を見ながら判定してみようか。
ハルカ請求と入金の日には、まどわされないようにします。
先生引渡しがいつかだけを考えれば、迷わないよ。

よくある間違い

① 請求書を出した日や、代金が入金された日に売上にする

請求や入金は、引渡しが終わった後の代金を決済する手続です。商品の販売は引渡しがあった日(出荷・着荷・検収など、選んだ基準の日)に計上します。

② 毎年、都合のよい基準に切り替える

出荷基準・検収基準などは、取引の実態に合う合理的なものを選び、毎期継続して適用したときに認められます。

③ 回収できそうにない売上は、金額を減らして計上する

収益の額は引渡しの時の時価(通常得べき対価の額)で、貸倒れや買戻しの可能性があっても減らしません(22条の2⑤)。回収できなくなったときは、貸倒れとして扱います(第12回)。
ハルカ①は、お金の動きで考えてしまう間違いですね。
先生そうだね。法人税は、代金をもらった日ではなく、引渡しの日で考えるんだ。
ハルカ③の貸倒れの心配は、売上を減らす理由にならないんですね。
先生回収の問題は、本当に回収できなくなったときに、貸倒れとして扱うんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 商品の販売の収益を計上するのは、原則としていつ?
Q2. 引渡しの日を判定する基準(出荷基準・検収基準など)の使い方は?
Q3. 3月31日に出荷(出荷基準)、会計では4月10日に売上にした。当期の別表四は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 商品などの販売の収益は、引渡しがあった日の事業年度の益金(22条の2①)。原則として、契約・請求・入金の日ではない。
  2. 引渡しの日は、出荷・船積・着荷・検収・使用収益開始などから合理的な基準を選び、毎期続ける。
  3. 請負は、物の引渡しが要るものは全部を引き渡した日、要らないものは役務の提供を全部終えた日。長期大規模工事は工事進行基準。
  4. 収益の額は、引渡しの時の時価(通常得べき対価の額)。貸倒れ・買戻しの可能性は考えない。
  5. 期末までに引き渡したのに翌期に計上していれば売上計上もれ。別表四で加算(留保)し、翌期に会計で売上にした分を減算する。
先生今日のまとめだよ。商品の販売の収益は、引渡しがあった日の益金なんだ。
ハルカ出荷基準や検収基準を選んで毎期続ける。請負は完成・完了した日。金額は時価で、計上もれは加算・留保……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、貸倒れや買戻しの可能性は、収益の額では考えないんだ。
ハルカ期末の前後の出荷は、伝票の日付を必ず見ることにします。
先生大事な習慣だね。次の第6回では、ただであげた・もらったときの益金を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法22条2項、22条の2(収益の額)1項・2項・4項・5項、63条(長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)、法人税法施行令129条、法人税基本通達2-1-1の4、2-1-2〜2-1-4、2-1-21の7〜2-1-21の11

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第3章第1節(pp.29〜32)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生計上時期と金額は法人税法22条の2、長期大規模工事は63条なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ講本には、出荷から入金までの例もありますか?
先生講本の第3章に、販売の流れと計上日の例が載っているよ。この教材の図は、それを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第5回|taxjudge.com
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