税務調整のしくみ ── 育つ別表四のスタート
会計の利益を税法の所得に直す「税務調整」。4つのずれ、損金経理、申告調整、留保と社外流出をつかみ、さくら食品の別表四の1行目を書く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 税務調整 | 会計の利益を基礎に、税法の規定による加算・減算をして所得金額を出すこと |
| 加算・減算 | 所得を増やす調整(益金算入・損金不算入)が加算、減らす調整(益金不算入・損金算入)が減算 |
| 損金経理 | 確定した決算で、費用または損失として経理すること(法人税法2条25号) |
| 決算調整事項 | 損金経理などをしないと損金にできないもの。減価償却費や、税法が認める引当金(貸倒引当金など)の繰入額など。引当金なら何でも損金になるわけではない(賞与引当金は第13回) |
| 申告調整事項 | 申告書の上で調整するもの。任意のもの(受取配当の益金不算入など)と必須のもの(役員給与の損金不算入など)がある |
| 別表四 | 「所得の金額の計算に関する明細書」。当期純利益から加算・減算をして所得金額を出す |
| 留保・社外流出 | 調整した金額が会社に財産として残るか(留保)、外に出たか(社外流出)の区分。税務上の区分なので、現金が実際に外へ出たかどうかだけでは決まらない(受取配当の益金不算入は社外流出) |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
税務調整は4つのずれ(益金算入・損金不算入=加算/益金不算入・損金算入=減算)。別表四は当期純利益(税引後)から始め、損金経理が必要なものと申告書で調整するものがあり、調整は留保・社外流出に分ける。これを説明でき、さくら食品の別表四の1行目を書けるようになること。
※ 各行の金額の計算(売上計上もれ・受取配当・減価償却・役員給与など)は、第5回以降で1行ずつ学びます。
図で見る:税務調整と別表四(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 4つのずれ
益金算入・損金不算入 → 加算 / 益金不算入・損金算入 → 減算
STEP 2 当期純利益から
別表四の1行目:当期利益 4,007,300円(+損金にならない法人税等 992,700円)
STEP 3 損金経理と決算調整
減価償却費:損金経理した 1,000,000円 のうち限度額 749,250円 まで損金 → 超える 250,750円 を加算
STEP 4 申告調整
任意の申告調整は書いたときだけ適用、必須の申告調整は当然に調整
STEP 5 別表四と留保・社外流出
当期利益 4,007,300円 + 加算 1,992,700円 − 減算 0円 = 所得金額 6,000,000円(留保 5,000,000円・社外流出 1,000,000円)
さくら食品の「育つ別表四」
※ 今日書くのは1行目(当期利益)だけです。2行目からは、各回でその行の「加算・減算の理由/留保・社外流出の区分/所得金額への影響」を同じ形で確かめながら書き足します。最後は第16回で完成し、第18回の通し計算で使います。
やってみよう:加算?減算? 留保?社外流出?(8問)
別表四に書く調整を、加算・減算と、留保・社外流出に分けてみましょう。
よくある間違い
① 別表四を、税引前当期純利益から書き始める
別表四は損益計算書の当期純利益(税引後)から始めます。損金にならない法人税等は、加算して足し戻します(第11回)。② 決算で計上し忘れた減価償却費を、申告書で減算する
減価償却費や、税法が損金算入を認める貸倒引当金などの繰入額は、損金経理が必要な決算調整事項です。決算で計上していない分を、申告書の減算で損金にすることはできません。なお、引当金なら何でも損金になるわけではなく、賞与引当金の繰入額は原則として損金になりません(第13回)。③ 受取配当の益金不算入は、申告書に書かなくても適用される
受取配当の益金不算入は任意の申告調整事項で、申告書で計算を示したときに適用されます。役員給与の損金不算入などの必須のものとは違います。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 益金算入・損金不算入は加算、益金不算入・損金算入は減算。所得が増えるか減るかで考える。
- 別表四は当期純利益(税引後)から始める。損金にならない法人税等は加算で足し戻す。
- 減価償却費や、税法が認める引当金(貸倒引当金など)の繰入額は損金経理が必要な決算調整事項。申告書の減算だけでは損金にできない。引当金なら何でも損金になるわけではない。
- 申告調整には任意(受取配当の益金不算入など。書かないと使えない)と必須(役員給与・寄附金など)がある。
- 調整は留保(会社に財産として残る)と社外流出(外に出る)に分ける。税務上の区分なので、現金が外に出たかどうかだけでは決まらない(受取配当の益金不算入は社外流出)。留保は翌期以後につながる(第16回)。
参照条文・出典
参照条文:法人税法2条25号(損金経理)、22条(各事業年度の所得の金額の計算の通則)、23条(受取配当等の益金不算入)、31条(減価償却資産の償却費の計算)、34条(役員給与の損金不算入)、37条(寄附金の損金不算入)、38条(法人税額等の損金不算入)、40条(法人税額から控除する所得税額の損金不算入)、74条(確定申告)、法人税法施行規則別表四(所得の金額の計算に関する明細書)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第2章第2節・第3節(pp.25〜28)、第10章第3節(pp.138〜140)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)/国税庁「法人税申告書別表四の記載要領」(令和8年4月以降提供分)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。