売上はいつ益金になる? ── 収益の計上時期と金額
商品を売ったとき、その収益は「いつ」「いくらで」益金になるのか。法人税法22条の2の「引渡しの日」を、出荷・検収などの基準で判定し、さくら食品の別表四に2行目を書く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 引渡しの日 | 商品などの販売の収益を計上する日。出荷基準・検収基準など、取引の実態に合う基準を選んで毎期続ける |
| 出荷基準・検収基準 | 出荷した日に計上するのが出荷基準、相手が検収(検品して引き取る)した日に計上するのが検収基準 |
| 完成引渡基準・役務完了基準 | 請負は、物の引渡しが要るものは全部を引き渡した日、要らないものは役務の提供を全部終えた日に計上する |
| 工事進行基準 | 工事の進み具合に応じて収益・費用を計上する方法。長期大規模工事は強制、それ以外の工事は選択できる |
| 収益の額 | 販売・譲渡した資産の引渡しの時の価額(通常得べき対価の額=時価)。貸倒れや買戻しの可能性は考えない |
| 売上計上もれ | 当期に計上すべき売上を翌期に計上していた誤り。別表四で加算(留保)し、翌期に減算する |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
商品の販売の収益は、引渡しがあった日に計上する(22条の2)。引渡しの日は出荷基準・検収基準などから合理的なものを選んで毎期続ける。請負は完成・完了した日、金額は引渡しの時の時価。期末に出荷したのに翌期に計上していれば売上計上もれとして加算する――これを説明できるようになること。
※ 収益認識に関する会計基準のくわしい内容(履行義務の識別など)や、割賦販売・リース譲渡などの特例は扱いません。
図で見る:収益の計上時期と金額(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 引渡しがあった日
収益の計上日 = 引渡しがあった日(原則として、契約・請求・入金の日ではない)
STEP 2 どの日を引渡しとみる?
Z社は出荷基準 → 引渡しの日 3/28 → 当期の益金
STEP 3 請負・役務の提供
請負:物の引渡しが要る → 全部を引き渡した日、要らない → 役務の提供を全部終えた日
STEP 4 収益の額は時価
収益の額 = 引渡しの時の時価。貸倒れ・買戻しの可能性は考えない
STEP 5 計上もれと別表四
当期 加算 9,000,000円(留保)、翌期 減算 9,000,000円 → 2年の合計は同じ
さくら食品の「育つ別表四」── 2行目を書く
※ さくら食品は、店頭販売・ネット販売・ケータリングのいずれも出荷(引渡し)した日に売上を計上する出荷基準を、毎期続けています。この1件だけ、請求書を出した日に計上していました。
やってみよう:この売上は当期?翌期?(6問)
3月31日が期末の会社です。選んでいる基準で、どちらの事業年度の益金になるかを判定しましょう。
よくある間違い
① 請求書を出した日や、代金が入金された日に売上にする
請求や入金は、引渡しが終わった後の代金を決済する手続です。商品の販売は引渡しがあった日(出荷・着荷・検収など、選んだ基準の日)に計上します。② 毎年、都合のよい基準に切り替える
出荷基準・検収基準などは、取引の実態に合う合理的なものを選び、毎期継続して適用したときに認められます。③ 回収できそうにない売上は、金額を減らして計上する
収益の額は引渡しの時の時価(通常得べき対価の額)で、貸倒れや買戻しの可能性があっても減らしません(22条の2⑤)。回収できなくなったときは、貸倒れとして扱います(第12回)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 商品などの販売の収益は、引渡しがあった日の事業年度の益金(22条の2①)。原則として、契約・請求・入金の日ではない。
- 引渡しの日は、出荷・船積・着荷・検収・使用収益開始などから合理的な基準を選び、毎期続ける。
- 請負は、物の引渡しが要るものは全部を引き渡した日、要らないものは役務の提供を全部終えた日。長期大規模工事は工事進行基準。
- 収益の額は、引渡しの時の時価(通常得べき対価の額)。貸倒れ・買戻しの可能性は考えない。
- 期末までに引き渡したのに翌期に計上していれば売上計上もれ。別表四で加算(留保)し、翌期に会計で売上にした分を減算する。
参照条文・出典
参照条文:法人税法22条2項、22条の2(収益の額)1項・2項・4項・5項、63条(長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)、法人税法施行令129条、法人税基本通達2-1-1の4、2-1-2〜2-1-4、2-1-21の7〜2-1-21の11
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第3章第1節(pp.29〜32)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。