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第14回 赤字は翌年に繰り越せる?|法人税入門講座

法人税 入門講座|第14回(v4)

赤字は翌年に繰り越せる? ── 欠損金の繰越控除と繰戻し還付

所得がマイナスになった年(欠損金額が出た年)は、法人税がかかりません。その赤字は、青色申告なら翌期以後10年にわたって所得から差し引けます(繰越控除)。中小法人等は前期に払った法人税を取り戻すこともできます(繰戻し還付)。控除の限度、使う順番、要件を整理し、さくら食品に「もしも欠損金があったら」を当てはめる回です。

所要 15分前提:第4回(別表四)・第2回(青色申告)条文:法人税法57条・80条、租税特別措置法66条の12令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
欠損金額損金の額が益金の額を超えた部分。所得金額がマイナスのときの、その金額
繰越控除前の事業年度の欠損金額を、当期の所得金額から差し引くこと(57条)
中小法人等資本金1億円以下の普通法人など(大法人の100%子会社などを除く)。欠損金は所得の全額まで控除できる
控除限度額中小法人等以外の法人が、1年に控除できる欠損金の上限。控除前の所得金額の50%
繰戻し還付当期の欠損金額を前期の所得に戻して、前期に払った法人税の還付を受けること(80条)。いまは原則として中小法人等だけ
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
青色申告の事業年度に生じた欠損金額は、翌期以後10年にわたって、古い年の分から順に所得金額から控除できる。中小法人等は所得の全額まで、それ以外は50%まで。中小法人等は、前期の法人税を取り戻す繰戻し還付も選べる――これを計算できるようになること。
シンプルな例:P社の控除前の所得550万円
→
繰越欠損金(2年分)700万円
→
当期の所得0円
さくら食品:もしも欠損金があったら300万円
→
所得金額10,270,773円
→
法人税額1,726,640円

※ さくら食品には、実際の欠損金はありません(別表四の行は増えません)。第4ステップで「もしも」の数字を当てはめます。災害損失金、欠損金の引継ぎ(合併)、更生会社などの特例は扱いません。

ハルカ先生、第13回で別表四の行がほとんどそろいました。今日は何を見るんですか?
先生今日は、赤字の年の欠損金を、翌年以後にどう使うかを見るんだ。
ハルカさくら食品は黒字ですよね?
先生そうだね。だから今日は、さくら食品に「もしも前々期の欠損金300万円があったら」を当てはめてみるよ。所得は10,270,773円に下がるんだ。
ハルカもしもの計算なんですね。
先生今日は、欠損金の繰越控除と繰戻し還付を、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:欠損金の繰越控除と繰戻し還付(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のP社で、5ステップを通してみよう。さくら食品のもしもや、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、会社の区分と欠損金の年を変えられるんですね。
先生中小法人等とそれ以外で、控除額がどう変わるかを確かめてみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 欠損金額 ── 損金が益金を超えた部分。その年の法人税はかからないある事業年度(赤字の年)益金の額 2,000万円損金の額 2,800万円← 損金が800万円多い所得金額はマイナス → この800万円が「欠損金額」その年の法人税・地方法人税はかからない(住民税の均等割はかかる)。使い道① 繰越控除(ステップ②③)翌期以後の黒字の年の所得から差し引く(青色申告。10年)使い道② 繰戻し還付(ステップ④)前期の所得に戻して、前期に払った法人税を取り戻す(中小法人等)
欠損金額 = 損金の額が益金の額を超えた部分(所得がマイナス)。その年の法人税はかからない
ハルカ会社が赤字になったら、法人税はどうなるんですか?
先生損金の額が益金の額を超えた部分を、欠損金額というんだ。所得がマイナスだから、その年の法人税はかからないよ。
🤔 迷いポイント赤字の年は、税金が何もかからない?
ハルカ赤字なら、税金はゼロだと思っていました。
先生法人税はかからないけど、住民税の均等割は、赤字でもかかるんだ。
ハルカ欠損金額は、その年で終わりですか?
先生翌期以後の黒字と相殺したり、前期の法人税を取り戻したりできるんだ。順に見ていこうか。
💡 そうだったのか!欠損金額は、損金の額が益金の額を超えた部分。その年の法人税はかからず、翌期以後に使える。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 欠損金額とは

ハルカ会社が赤字になったら、法人税はどうなるんですか?
先生損金の額が益金の額を超えた部分を、欠損金額というんだ。所得がマイナスだから、その年の法人税はかからないよ。
🤔 迷いポイント赤字の年は、税金が何もかからない?
ハルカ赤字なら、税金はゼロだと思っていました。
先生法人税はかからないけど、住民税の均等割は、赤字でもかかるんだ。
ハルカ欠損金額は、その年で終わりですか?
先生翌期以後の黒字と相殺したり、前期の法人税を取り戻したりできるんだ。順に見ていこうか。
💡 そうだったのか!欠損金額は、損金の額が益金の額を超えた部分。その年の法人税はかからず、翌期以後に使える。

欠損金額 = 損金の額が益金の額を超えた部分(所得がマイナス)。その年の法人税はかからない

STEP 2 繰越控除の要件と期間

ハルカ赤字は、何年先まで繰り越せるんですか?
先生青色申告の年に生じた欠損金は、翌期以後10年にわたって、所得から差し引けるんだ。繰越控除というよ。
🤔 迷いポイント白色申告の年の赤字も、同じように繰り越せる?
ハルカ赤字なら、どれでも繰り越せると思っていました。
先生欠損金が生じた年に青色申告書を出していて、その後も連続して確定申告書を出していることが要件なんだ。
ハルカP社の欠損金は、どれも期限内ですね。
先生そうだね。あとは、どれだけ控除できるかだよ。
💡 そうだったのか!青色申告の年の欠損金は、翌期以後10年繰り越せる。連続して確定申告書を出していることが要件。

青色申告の年の欠損金を、翌期以後10年繰り越す。

STEP 3 控除の限度と順番

ハルカ繰り越した欠損金は、全部いっぺんに使えますか?
先生中小法人等は、所得の全額まで控除できるんだ。それ以外の法人は、控除前の所得の50%までだよ。
🤔 迷いポイント欠損金は、新しい年の分から使ってもいい?
ハルカどの年の分から使っても同じだと思っていました。
先生古い年の分から順に使うんだ。古い分ほど期限が近いから、先に使うよ。
ハルカP社は550万円を控除して、所得は0円ですね。
先生そうだよ。残りの150万円は、翌期以後に繰り越すんだ。
💡 そうだったのか!欠損金は古い年の分から順に控除。中小法人等は所得の全額まで、それ以外は50%まで。

控除 5,500,000円(限度 5,500,000円)→ 当期の所得 0円 繰越 1,500,000円

STEP 4 繰戻し還付

ハルカ繰戻し還付は、どういう制度ですか?
先生当期の赤字を前期の黒字に戻して、前期に払った法人税を取り戻すんだ。前期の法人税に、当期の欠損金と前期の所得の割合を掛けるよ。
🤔 迷いポイントどの会社でも、前の年に払った税金を取り戻せる?
ハルカ赤字になったら、誰でも戻ってくると思っていました。
先生いまは原則として、中小法人等だけなんだ。前期も当期も青色申告で、期限内に申告することも要件だよ。
ハルカQ社は、665,600円が戻ってくるんですね。
先生そうだよ。繰越控除と違って、すぐにお金が戻るから、資金繰りに役立つんだ。
💡 そうだったのか!繰戻し還付は、前期の法人税×当期の欠損金(前期の所得が上限)÷前期の所得。いまは原則として中小法人等だけ。

還付 = 前期の法人税 1,664,000円 × 欠損金 4,000,000円 ÷ 前期の所得 10,000,000円 = 665,600円

STEP 5 比べてみる・別表四

ハルカ中小法人等とそれ以外では、どれくらい違うんですか?
先生同じ欠損金でも、中小法人等は所得の全額まで、それ以外は50%までしか控除できないんだ。
🤔 迷いポイント大きな会社も、黒字になった年は税金がゼロにできる?
ハルカ欠損金があれば、どの会社も税金がかからないと思っていました。
先生中小法人等以外は、所得の半分にしか欠損金を使えないから、黒字の年は必ず税金がかかるんだ。
ハルカP社の当期の所得は、0円ですね。
先生そうだよ。控除しきれなかった分は、翌期以後に繰り越すんだ。
💡 そうだったのか!中小法人等は所得の全額まで、それ以外は50%まで。欠損金は別表四のいちばん下の方で差し引く。

当期の所得:中小法人等 0円/それ以外 2,750,000円

さくら食品の「育つ別表四」── 欠損金があったら、どこに書く?

※ 欠損金の控除は、別表四のいちばん下の方(加算・減算を終えた後の所得金額の計算)で差し引きます。さくら食品の実際の申告には、欠損金の控除はありません。

先生これが、さくら食品にもしも欠損金があったときの比較だよ。
ハルカ欠損金は、加算・減算を終えた後に差し引くんですね。
先生そうだよ。だから、ほかの調整の計算には影響しないんだ。
ハルカ実際のさくら食品は、欠損金の控除はないんですね。
先生そのとおりだね。次の第15回は、実際の所得で税額を計算するよ。

やってみよう:当期の所得から控除できる?(6問)

当期は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度です。特にことわりがなければ、中小法人等で、欠損金は青色申告の年に生じたものです。

ハルカ控除できるかどうか、練習してみたいです。
先生左の6問で、青色申告・期間・限度を見ながら判定してみようか。
ハルカ会社の区分も、忘れずに見るようにします。
先生限度が全額か50%かが、大きな違いだね。

よくある間違い

① 赤字の年が白色申告でも、欠損金は繰り越せる

欠損金の繰越控除は、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を出していて、その後も連続して確定申告書を出していることが要件です。

② 欠損金は、どの年の分から使ってもよい

控除は古い年に生じた分から順に行います。新しい分を先に使うことはできません。10年を過ぎた分は控除できずに消えます。

③ どの会社も、欠損金は所得の全額まで控除できる

所得の全額まで控除できるのは中小法人等です。それ以外の法人は、控除前の所得金額の50%が限度です。
ハルカ①は、赤字の年の申告の種類が大事なんですね。
先生そうだね。欠損金が生じた年に青色申告であることが要件なんだ。
ハルカ③は、会社の大きさで限度が変わるんですね。
先生そのとおりだよ。

ミニテスト(3問)

Q1. 中小法人等の欠損金の繰越控除で、1年に控除できる限度は?
Q2. 繰越欠損金が2年分あるとき、控除する順番は?
Q3. 欠損金の繰戻し還付を、いま原則として使えるのは?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 欠損金額=損金の額が益金の額を超えた部分。その年の法人税はかからない(住民税の均等割は別)。
  2. 青色申告の年に生じた欠損金は、翌期以後10年にわたって繰越控除(57条)。連続して確定申告書を出し、帳簿書類を保存していることが要件(10年は平成30年4月1日以後に開始した事業年度の欠損金。それより前に開始した事業年度の欠損金は9年)。
  3. 控除は古い年の分から順に。限度は、中小法人等は所得の全額、それ以外は控除前の所得金額の50%。
  4. 中小法人等は繰戻し還付も選べる:前期の法人税額×当期の欠損金額(前期の所得金額が上限)÷前期の所得金額(80条)。欠損の年の青色申告書を期限内に出し、還付請求書を同時に出すことなどが要件。
  5. 別表四では、加算・減算を終えた所得金額から、いちばん下の方で欠損金の当期控除額を差し引く。
先生今日のまとめだよ。青色申告の年の欠損金は、翌期以後10年繰り越して所得から差し引けるんだ。
ハルカ古い年の分から順に、中小法人等は所得の全額まで、それ以外は50%まで。中小法人等は繰戻し還付も選べる……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、欠損金は別表四のいちばん下の方で差し引くんだ。
ハルカ赤字の年も、青色申告と期限内の申告を続けます。
先生大事なことだね。次の第15回では、法人税額がいくらになるかを計算していこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法2条19号(欠損金額)、57条(欠損金の繰越し)、58条(災害損失金)、80条(欠損金の繰戻しによる還付)、租税特別措置法66条の12(繰戻し還付の不適用)、法人税法施行令112条

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第6章第9節(pp.111〜115)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生繰越控除は法人税法57条、繰戻し還付は80条なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ繰戻し還付が中小法人等だけなのは、どこに書いてありますか?
先生租税特別措置法66条の12だよ。講本の第6章にも説明があって、この教材の図はそれを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第14回|taxjudge.com
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