役員給与は損金になる? ── 3つの型と、改定の時期
会社が役員に払う給与は、決まった型に当てはまるものだけが損金になります。定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3つの型と、改定できる時期、使用人兼務役員、過大な役員給与を整理し、さくら食品の別表四に5行目を書く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 役員 | 取締役・執行役・会計参与・監査役・理事など。会社の経営に従事する一定の人(みなし役員)も含む |
| 定期同額給与 | 1か月以下の一定の期間ごとに、同じ額を払う給与(毎月の役員報酬など) |
| 通常改定 | 事業年度開始の日から3か月以内にする、定期給与の額の改定。改定の前と後、それぞれが同額なら定期同額給与 |
| 事前確定届出給与 | 決まった時期に決まった額を払うと、前もって税務署長に届け出た給与(役員の賞与など) |
| 業績連動給与 | 利益などの指標をもとに算定する給与。同族会社は原則として使えない |
| 使用人兼務役員 | 部長・課長など使用人としての職制上の地位を持ち、常に使用人として働く役員。社長や、同族会社で一定の株式を持つ役員はなれない |
| 過大な役員給与 | 職務の内容などに照らして不相当に高額な部分や、定款・株主総会で決めた限度を超える部分。損金にならない |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
役員給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のどれかに当たるものだけが損金。定期給与の増額は事業年度開始の日から3か月以内に行い、賞与は前もって届け出た額を払う。外れた部分と不相当に高額な部分は損金不算入(加算・社外流出)。使用人兼務役員の使用人分は損金――これを説明できるようになること。
※ 業績連動給与の要件の細部、役員退職給与、ストック・オプション、隠蔽・仮装による給与、臨時改定事由・業績悪化改定事由のくわしい判定は、名前の紹介にとどめます。
図で見る:役員給与が損金になる型(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 損金になる3つの型
損金になる役員給与 = 定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与 T社の損金不算入 900,000円
STEP 2 改定は期首から3か月以内
増額部分 100,000円 × 9か月 = 900,000円 が損金不算入
STEP 3 賞与は事前確定届出
賞与 1,000,000円:届け出て、届出どおりに支給 → 損金
STEP 4 使用人兼務役員
使用人兼務役員の使用人分は損金。社長や、同族会社で一定の株式を持つ役員はなれない
STEP 5 過大な給与と別表四
別表四:加算 役員給与の損金不算入額 900,000円(社外流出)
さくら食品の「育つ別表四」── 5行目を書く
※ 取締役の桜井佳代さん(社長の妻)の毎月の報酬は定期同額給与で損金です。取締役営業部長の佐藤真理さんは使用人兼務役員で、使用人分の給与と賞与(ほかの使用人と同じ時期に支給)は損金です。
やってみよう:この役員給与は損金?(6問)
4月1日から3月31日までの事業年度の会社です。臨時改定事由・業績悪化改定事由はなく、不相当に高額な部分もないものとします。
よくある間違い
① 業績が良かったので、期の途中で社長の報酬を上げても全額が損金
定期給与の増額は、事業年度開始の日から3か月以内の通常改定でなければ、増額した部分が損金になりません。改定前の額の部分は、定期同額給与として損金です。② 役員の賞与も、従業員の賞与と同じように損金
役員の賞与は、事前確定届出給与として前もって税務署長に届け出て、届け出たとおりに払ったときだけ損金です。届け出ていない賞与や、届出と違う額で払った賞与は損金になりません。③ 社長の妻が経理部長として働いていれば、使用人兼務役員
同族会社の役員で、一定の株式を持つ人(本人と配偶者などで一定の割合を超える人)は、使用人兼務役員になれません。社長・副社長・専務・常務・監査役などもなれません。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 役員給与で損金になるのは、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与(同族会社は原則として使えない)の3つの型だけ(34条1項)。
- 定期給与の改定は事業年度開始の日から3か月以内(通常改定)。期の途中で増額したら、増額した部分が損金不算入。
- 役員の賞与は、前もって届け出た額を、届け出た時期に払えば損金。届出なし・届出と違う支給は損金不算入。
- 使用人兼務役員の使用人分の給与・賞与は損金(賞与はほかの使用人と同じ時期に支給)。同族会社で一定の株式を持つ役員はなれない。
- 型に当てはまっても、不相当に高額な部分は損金不算入(実質基準・形式基準)。別表四では加算・社外流出。
参照条文・出典
参照条文:法人税法2条15号(役員)、34条(役員給与の損金不算入)、法人税法施行令7条(みなし役員)、69条(定期同額給与・事前確定届出給与)、70条(過大な役員給与)、71条(使用人兼務役員とされない役員)、法人税基本通達9-2-12の3(業績悪化改定事由)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第6章第1節(pp.74〜83)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。