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第13回 引当金|法人税入門講座

法人税 入門講座|第13回(v3)

引当金 ── 会計と税務がずれる論点

会計では、将来の支出に備えて引当金を計上します。しかし税法では、まだ債務が確定していない見積りの費用は、原則として損金になりません。賞与引当金の「当期は加算、翌期は減算」の往復と、要件を満たす未払使用人賞与との違いを整理し、評価損と圧縮記帳も紹介します。さくら食品の別表四に2行を書く回です。

所要 15分前提:第4回(留保)・第12回(貸倒引当金)条文:法人税法22条3項2号・33条・42条、施行令72条の3令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
債務確定基準償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金になる、という考え方(22条3項2号)
賞与引当金翌期に払う賞与の見込額を、当期の費用として計上する引当金。税法では損金にならない
認容前期以前に加算した額が、当期に損金になること。別表四で減算する
未払使用人賞与同時期に支給を受けるすべての使用人に、期末までに各人別の支給額を通知し、期末の翌日から1か月以内に払った使用人賞与。当期に損金経理すれば当期の損金(ほかに、就業規則などで決めた支給予定日が来た賞与の扱いもある)
評価損資産の帳簿価額を時価まで下げたときの損失。災害による著しい損傷など特別な事実があるときだけ損金
圧縮記帳国庫補助金などで取得した資産の帳簿価額を減らし、その分を損金にする方法。課税を将来に繰り延べる
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
税法では、償却費以外の費用は期末までに債務が確定したものだけが損金。賞与引当金のような見積りは損金にならず、当期に加算(留保)、実際に払った翌期に減算(認容)する。支給額の通知などの要件を満たす未払使用人賞与は当期の損金。評価損と圧縮記帳の位置づけも言えるようになること。
シンプルな例:U社の賞与引当金当期130万円
→
前期分は当期に払った前期100万円
→
別表四加算と減算
さくら食品:賞与引当金の繰入80万円
→
前期の繰入額(当期に支給)70万円
→
別表四に書く2行

※ 退職給付引当金も同じく損金になりません。評価損と圧縮記帳は、この回では小さな設例1つずつにとどめ、さくら食品の計算には入れません。

ハルカ先生、第12回で貸倒引当金を見ました。今日も引当金ですか?
先生今日は、損金にならない引当金を見るんだ。さくら食品の賞与引当金だよ。
ハルカ賞与引当金は、損金にならないんですか?
先生さくら食品は、翌期の賞与の見込額80万円を計上したけど、まだ債務が確定していないから損金にならないんだ。前期分の70万円は、当期に払ったから損金になるよ。
ハルカ加算と減算の両方があるんですね。
先生今日は、引当金の往復と、評価損・圧縮記帳を、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:引当金と、会計・税務のずれ(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のU社で、5ステップを通してみよう。さくら食品や、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、計上の仕方を変えられるんですね。
先生未払賞与の要件を満たすと、加算がなくなるのを確かめてみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけ(22条3項2号)債務が確定している(3つすべてを満たす)期末までにその費用の債務が成立している期末までに支払の原因となる事実が発生している期末までに金額を合理的に計算できる損金になる・期末までに請求を受けた水道光熱費・期末までに働いた分の未払給与・要件を満たす未払使用人賞与(③)・貸倒引当金(中小法人等など。第12回)損金にならない(見積り)・賞与引当金(翌期に払う賞与の見込み)・退職給付引当金・修繕引当金・製品保証引当金など→ 計上したら別表四で加算(留保)会計は「将来の支出に備える」ために見積りでも費用にする。税法は「確定したものだけ」を損金にして、利益の調整を防ぐ。だから引当金で、会計と税務がずれる。
償却費以外の費用は債務が確定したものだけ損金。見積りの引当金は損金不算入(貸倒引当金を除く)
ハルカ会計で計上した費用は、損金になるんですよね?
先生償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金なんだ。債務確定基準というよ。
🤔 迷いポイント将来払うことが確実なら、見積りでも費用にしていい?
ハルカ会計では、引当金を計上するように習いました。
先生会計は将来に備えて見積りを費用にするけど、税法は確定したものだけを損金にするんだ。見積りで利益を調整できないようにするためだよ。
ハルカだから、引当金で会計と税務がずれるんですね。
先生そうだよ。税法で損金になる引当金は、第12回の貸倒引当金くらいなんだ。
💡 そうだったのか!償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金。見積りの引当金は、原則として損金にならない。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 費用は債務確定まで

ハルカ会計で計上した費用は、損金になるんですよね?
先生償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金なんだ。債務確定基準というよ。
🤔 迷いポイント将来払うことが確実なら、見積りでも費用にしていい?
ハルカ会計では、引当金を計上するように習いました。
先生会計は将来に備えて見積りを費用にするけど、税法は確定したものだけを損金にするんだ。見積りで利益を調整できないようにするためだよ。
ハルカだから、引当金で会計と税務がずれるんですね。
先生そうだよ。税法で損金になる引当金は、第12回の貸倒引当金くらいなんだ。
💡 そうだったのか!償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金。見積りの引当金は、原則として損金にならない。

償却費以外の費用は債務が確定したものだけ損金。見積りの引当金は損金不算入(貸倒引当金を除く)

STEP 2 賞与引当金の往復

ハルカ賞与引当金は、どう調整するんですか?
先生計上した年は損金にならないから、別表四で加算するんだ。翌期に実際に払ったら、そこで損金になって減算するよ。
🤔 迷いポイント引当金を加算したら、その分はずっと損金にならない?
ハルカ加算した分は、損をしたままだと思っていました。
先生翌期に払えば債務が確定するから、そこで損金になるんだ。2年を通すと同じで、損金になる年がずれるだけだよ。
ハルカU社は、当期分の130万円を加算して、前期分の100万円を減算するんですね。
先生そうだよ。引当金は会社の負債に残っているから、どちらも「留保」なんだ。
💡 そうだったのか!賞与引当金は、当期に加算(留保)、実際に払った翌期に減算(認容・留保)。

当期:加算 1,300,000円(留保) 前期分:減算 1,000,000円(認容・留保)→ 差し引き +300,000円

STEP 3 未払使用人賞与との違い

ハルカ期末にまだ払っていない賞与は、全部損金にならないんですか?
先生3つの要件を満たす未払使用人賞与なら、当期の損金なんだ。期末までに各人に支給額を通知して、期末の翌日から1か月以内に払い、当期に損金経理することだよ。
🤔 迷いポイント「未払賞与」という科目にすれば、期末に計上するだけで損金?
ハルカ科目の名前を変えれば、損金になると思っていました。
先生名前ではなく、要件で判定するんだ。1つでも欠けたら、実際に払った事業年度の損金になるよ。
ハルカU社は、支給額を通知していないから、当期の損金にならないんですね。
先生そのとおりだね。通知の時期と支払の時期を、必ず確かめるんだ。
💡 そうだったのか!未払使用人賞与は、各人別の通知・期末から1か月以内の支払・損金経理の3つを満たせば、当期の損金。

U社:賞与引当金(見込額) → 当期は損金不算入

STEP 4 評価損

ハルカ商品の価値が下がったら、評価損は損金になりますか?
先生資産の評価損は、原則として損金にならないんだ。税法は取得したときの価額を基本にしているよ。
🤔 迷いポイント時価が下がったなら、評価損はいつでも損金にしていい?
ハルカ会計で評価を下げたら、そのまま費用になると思っていました。
先生評価損を自由に計上できると、利益を調整できてしまうんだ。災害で著しく損傷したなど、特別な事実があるときだけ損金になるよ。
ハルカ水害で傷んだ商品なら損金で、単に値下がりしただけなら加算するんですね。
先生そうだよ。損金にならなかった評価損は、売ったときに損金になるんだ。
💡 そうだったのか!評価損は原則として損金にならない。災害による著しい損傷など特別な事実があって、損金経理したときだけ損金。

評価損は原則損金不算入。災害による著しい損傷など特別な事実+損金経理なら損金

STEP 5 圧縮記帳と別表四

ハルカ圧縮記帳は、どんな制度なんですか?
先生国の補助金で機械を買うと、補助金は益金になるんだ。そのままだと、補助金に税金がかかって、機械を買うお金が減ってしまうよ。
🤔 迷いポイント圧縮記帳をすれば、補助金に税金がかからない?
ハルカ補助金は、ずっと非課税になると思っていました。
先生圧縮損を計上して当期の課税をなくす代わりに、機械の帳簿価額が減るんだ。その後の減価償却費が少なくなるから、税金を後で払う「課税の繰延べ」なんだよ。
ハルカU社の賞与は、差し引き300,000円の調整ですね。
先生そのとおりだね。加算と減算は、別の行に書くんだ。
💡 そうだったのか!圧縮記帳は非課税ではなく、課税の繰延べ。帳簿価額が減って、後の減価償却費が少なくなる。

圧縮記帳:受贈益と同額の圧縮損で課税を繰り延べる。賞与:差し引き +300,000円

さくら食品の「育つ別表四」── 賞与引当金の2行を書く

※ 当期の加算と前期分の減算は、どちらも「留保」です。別表五(一)の賞与引当金の行は、期首の前期分が減り、期末の当期分が増えます(第16回)。

先生これが、賞与引当金の2行を書いたさくら食品の別表四だよ。
ハルカ黄色の行が2つ、加算と減算ですね。
先生それぞれの理由と区分を、下のカードにまとめておいたんだ。
ハルカこれで、別表四の行はほとんどそろいましたね。
先生そうだね。残りは第15回の1行だけなんだ。

やってみよう:当期の損金になる?(6問)

3月決算の会社です。使用人への賞与と、資産の評価についての処理です。

ハルカ当期の損金になるかどうか、練習したいです。
先生左の6問で、債務が確定しているかを考えながら判定してみようか。
ハルカ未払賞与は、3つの要件を順に確かめます。
先生特に、支払の時期を見落とさないようにね。

よくある間違い

① 会計で計上した引当金は、すべて損金

税法で損金になる引当金は、貸倒引当金(中小法人等など。第12回)に限られます。賞与引当金・退職給付引当金などの見積りは、債務が確定していないので損金になりません。

② 加算した賞与引当金は、二度と損金にならない

翌期に実際に賞与を払ったとき、その事業年度の損金になります。別表四で減算(認容)するので、2年を通すと、損金になる時期がずれるだけです。

③ 「未払賞与」という科目なら、期末に計上すれば損金

未払使用人賞与が損金になるのは、期末までに、同時期に支給を受けるすべての使用人に各人別の支給額を通知し、期末の翌日から1か月以内に払い、当期に損金経理したときなどです(就業規則などで決めた支給予定日が来た賞与の扱いもあります)。要件を満たさなければ、払った事業年度の損金です。
ハルカ①は、会計の引当金をそのまま損金にしてしまう間違いですね。
先生そうだね。損金になる引当金は、貸倒引当金くらいなんだ。
ハルカ③は、科目の名前ではなく要件で判定するんですね。
先生そのとおりだよ。

ミニテスト(3問)

Q1. 期末に計上した賞与引当金(翌期に払う見込額)は?
Q2. 未払使用人賞与が当期の損金になる要件に、含まれないものは?
Q3. 圧縮記帳の効果は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金(債務確定基準。22条3項2号)。
  2. 賞与引当金・退職給付引当金などの見積りは損金にならない。当期は加算(留保)、払った翌期に減算(認容)。
  3. 未払使用人賞与は、同時期に支給を受けるすべての使用人に各人別の支給額を通知・期末の翌日から1か月以内に支払・当期に損金経理、の3つを満たす場合などに当期の損金(施行令72条の3)。
  4. 評価損は原則として損金にならない。災害による著しい損傷など特別な事実があるときだけ損金(33条)。
  5. 圧縮記帳は、補助金などの益金と同じ額の圧縮損を計上して、課税を将来に繰り延べる制度(42条など)。
先生今日のまとめだよ。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定したものだけが損金なんだ。
ハルカ賞与引当金は当期に加算して、払った翌期に減算。要件を満たす未払使用人賞与は当期の損金……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、評価損は原則として損金にならず、圧縮記帳は課税の繰延べなんだ。
ハルカ引当金を見たら、債務が確定しているかを考えます。
先生いい心がけだね。次の第14回では、赤字を翌年に繰り越せるかを見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法22条3項2号(債務確定基準)、33条(資産の評価損)、42条〜50条(圧縮記帳)、52条(貸倒引当金)、法人税法施行令68条(評価損の特別な事実)、72条の3(使用人賞与の損金算入時期)、法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)、9-1-1〜9-1-19

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第3章第3節(債務確定基準)、第6章第1節7(未払使用人賞与)、第6章第7節・第8節(評価損・圧縮記帳)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生債務確定基準は法人税法22条3項2号、評価損は33条、圧縮記帳は42条からなんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ未払使用人賞与の要件は、どこに載っていますか?
先生施行令72条の3だよ。講本の第6章にも説明があって、この教材の図はそれを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第13回|taxjudge.com
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