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第6回 ただであげた・もらったら?|法人税入門講座

法人税 入門講座|第6回(v3)

ただであげた・もらったら? ── 無償取引と受贈益

お金を受け取っていないのに、なぜ益金になるのか。資産を無償・低額で譲渡したとき、無償・低額で譲り受けたときの扱いを、「時価で売って、代金を渡した」という2段階の見方で整理する回です。

所要 15分前提:第3回(22条2項の無償取引)・第5回(収益の額は時価)条文:法人税法22条2項・22条の2第4項・37条令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
無償譲渡・低額譲渡資産をただで、または時価より安く譲り渡すこと
時価その資産を第三者どうしで取引したら通常つく価額
寄附金金銭その他の資産・経済的な利益の贈与または無償の供与。損金になる額には限度がある(第11回)
受贈益資産をただで、または安く譲り受けたときの、時価と支払った対価との差額。益金になる
債務免除益借りているお金などの返済を免除してもらったときの利益。益金になる
完全支配関係一方の法人が他方の法人の株式を100%持っている関係など。この関係がある法人どうしの寄附は扱いが違う(第17回)
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
資産を無償・低額で譲渡しても、時価で売って、その代金(または時価との差額)を相手に渡したと考え、時価が収益の額になる。差額は相手によって寄附金・役員給与・給与になる。譲り受けた側は時価との差額が受贈益(益金)。これを、仕訳の形で説明できるようになること。
シンプルな例:帳簿価額200万円の土地(時価1,000万円)無償で譲渡
→
税法の収益の額1,000万円
→
相手(法人)への寄附金1,000万円
同じ土地を400万円で譲渡(低額譲渡)差額600万円
→
譲り受けた法人受贈益600万円
→
さくら食品の当期この取引はない

※ 完全支配関係(100%の親子会社など)がある法人どうしの寄附金・受贈益の扱い(第17回)、広告宣伝・見本品などの販売促進の費用、個人に譲渡したときの所得税の扱いは、この回では扱いません。

ハルカ先生、第3回で「ただであげても益金」と聞いてから、ずっと気になっていました。
先生今日はその疑問を解決するんだ。カギは「時価で売って、代金を渡した」と2段階で考えることだよ。
ハルカさくら食品も、何かをただであげたんですか?
先生さくら食品の当期には、資産をただであげたり、もらったりした取引はないんだ。だから今日は、別表四に行を足さないよ。
ハルカそれでも、この考え方は第10回や第11回につながるんですよね。
先生そうだよ。役員給与と寄附金の土台になる考え方を、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:無償取引の考え方(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」の無償譲渡で、5ステップを通してみよう。低額で譲渡、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、相手を役員に変えられるんですね。
先生相手を変えると、差額の名前が変わるのを確かめてみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 会計は「渡した帳簿価額」、税法は「時価で取引」土地 帳簿価額 2,000,000円・時価 10,000,000円 → 取引先の法人へ 無償で譲渡会計の仕訳(お金の動きどおり)借方貸方寄附金2,000,000土地2,000,000税法で考えた仕訳(時価で取引)借方貸方土地譲渡原価2,000,000土地2,000,000土地譲渡収益10,000,000寄附金10,000,000無償・低額で譲渡しても、収益の額は原則として時価を基礎に計算する(22条の2④)→ 代金をもらっていなくても、時価 10,000,000円が収益の額になる。会計の帳簿には出てこない「時価との差」を、税法では収益と寄附金の両方に入れて考える。
会計:渡した帳簿価額だけ / 税法:時価 10,000,000円 が収益の額
ハルカ第3回で、ただで商品をあげても益金になると聞いて、まだ不思議なんです。
先生会計では、帳簿価額の土地がなくなるだけだね。税法では、無償や低額で譲渡しても、収益の額は原則として時価を基礎に計算するんだ。
🤔 迷いポイントお金をもらっていないのだから、収益はゼロでいい?
ハルカ代金が入っていないので、収益は何もないと思っていました。
先生時価 10,000,000円が収益の額になるんだ。法人税法22条の2第4項に、引渡しの時の時価とすると書いてあるよ。
ハルカでは、その時価のお金はどこへ行ったことになるんですか?
先生そこがポイントなんだ。次のステップで、2段階に分けて考えてみようか。
💡 そうだったのか!無償・低額の譲渡でも、収益の額は原則として時価を基礎に計算する。無償で譲渡しても、時価が収益の額になる。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 会計と税法のちがい

ハルカ第3回で、ただで商品をあげても益金になると聞いて、まだ不思議なんです。
先生会計では、帳簿価額の土地がなくなるだけだね。税法では、無償や低額で譲渡しても、収益の額は原則として時価を基礎に計算するんだ。
🤔 迷いポイントお金をもらっていないのだから、収益はゼロでいい?
ハルカ代金が入っていないので、収益は何もないと思っていました。
先生時価 10,000,000円が収益の額になるんだ。法人税法22条の2第4項に、引渡しの時の時価とすると書いてあるよ。
ハルカでは、その時価のお金はどこへ行ったことになるんですか?
先生そこがポイントなんだ。次のステップで、2段階に分けて考えてみようか。
💡 そうだったのか!無償・低額の譲渡でも、収益の額は原則として時価を基礎に計算する。無償で譲渡しても、時価が収益の額になる。

会計:渡した帳簿価額だけ / 税法:時価 10,000,000円 が収益の額

STEP 2 時価で売って、代金を渡す

ハルカ2段階、というのはどういうことですか?
先生まず時価で売ったと考えて、収益 10,000,000円と譲渡益 8,000,000円を立てるんだ。次に、その代金を相手に渡したと考えて、寄附金にするよ。
🤔 迷いポイント収益と寄附金を両方立てたら、所得が大きく変わる?
ハルカ収益が急に10,000,000円も増えるので、税金が大きく増えると思いました。
先生譲渡益から寄附金を引くと△2,000,000円で、会計の損益と同じなんだ。違いが出るのは、寄附金に損金の限度があるからだよ。
ハルカ時価で取引したことを、帳簿の外で示しているんですね。
先生そうだよ。寄附金の限度の計算は、第11回で見ようか。
💡 そうだったのか!「時価で売って、代金を相手に渡した」と2段階で考える。所得の差は、渡した分が損金にならない部分だけ。

時価で売った(収益 10,000,000円・譲渡益 8,000,000円)+ 代金を渡した(寄附金 10,000,000円)

STEP 3 低額で譲渡したら

ハルカただではなく、安く売ったときはどうなるんですか?
先生時価を、受け取った対価と、相手に渡した差額に分けるんだ。この例は対価が0円だから、全部が差額だよ。
🤔 迷いポイント安く売ったなら、受け取った代金だけが収益?
ハルカ実際に受け取った0円が収益になると思っていました。
先生収益の額は、やっぱり時価の10,000,000円なんだ。時価より安くした分を、相手にあげたと考えるよ。
ハルカ値引きをしたら、全部が寄附金になるんですか?
先生値引きに合理的な理由があれば、寄附金にならないこともあるんだ。ここでは、理由のない値引きを考えているよ。
💡 そうだったのか!低額譲渡でも、収益の額は時価。時価と対価の差額を、相手に渡したと考える。

時価 10,000,000円 = 受け取った対価 0円 + 寄附金 10,000,000円

STEP 4 相手で変わる

ハルカ差額は、いつも寄附金になるんですか?
先生相手によって名前が変わるんだ。取引先の法人なら寄附金、自社の役員なら役員給与、従業員なら給与だよ。
🤔 迷いポイント社長に会社の土地を安く売っても、寄附金として扱えばいい?
ハルカ相手が誰でも、あげたものは寄附金だと思っていました。
先生役員に渡した利益は、役員給与なんだ。役員給与は要件を満たさないと損金にならないから、第10回でくわしく見るよ。
ハルカいまの例は、相手が取引先の法人だから寄附金なんですね。
先生そのとおりだね。100%の親子会社どうしは、また別の扱いになるんだ。それは第17回で見ようか。
💡 そうだったのか!渡した差額は、相手が法人なら寄附金、役員なら役員給与、従業員なら給与になる。

相手が取引先の法人 → 差額 10,000,000円 は 寄附金

STEP 5 もらった側は受贈益

ハルカ反対に、ただで土地をもらった側はどうなるんですか?
先生もらった側は、時価から支払った対価を引いた額が受贈益になるんだ。財産が増えるから、益金だよ。
🤔 迷いポイントお金を払っていないのだから、もらった側には何も起きない?
ハルカもらっただけなので、税金はかからないと思っていました。
先生時価10,000,000円の土地が手に入って、財産が増えているんだ。時価の全額の10,000,000円が受贈益だよ。
ハルカ借金を免除してもらったときも、同じ考え方ですか?
先生そうだよ。債務免除益として益金になるんだ。土地の取得価額は時価の10,000,000円にするよ。
💡 そうだったのか!譲り受けた側は、時価−支払った対価が受贈益(益金)。債務の免除を受けたときも益金になる。

受け取った側:受贈益 10,000,000円(時価 10,000,000円 − 対価 0円)

さくら食品で確かめる

※ さくら食品の当期には、資産の無償・低額の譲渡や譲受けはありません(別表四に足す行はなし)。地域のお祭りへの寄附金40万円(現金)は、第11回で損金にできる限度を計算します。

先生さくら食品の当期の取引を、今日の考え方で並べたのが左の表だよ。
ハルカ無償の譲渡や譲受けは、どちらもないんですね。
先生そうだよ。寄附はあるけど、現金を渡しているから、時価との差を考える必要はないんだ。
ハルカ寄附金の限度は、第11回で計算するんですね。
先生そのとおりだね。別表四の合計は、第5回のときのままだよ。

やってみよう:税務上の仕訳を組み立てよう(5問)

取引を読んで、税法で考えたときの金額や科目を選びましょう。

ハルカ時価と対価の差額を、自分で計算してみたいです。
先生左の5問で、税法で考えた金額と科目を選んでみようか。
ハルカ渡した側と、もらった側を取り違えないようにします。
先生どちらの立場の問題かを、最初に確かめるといいよ。

よくある間違い

① 代金をもらっていないので、収益はゼロ

法人が資産を無償・低額で譲渡した場合、収益の額は原則として時価を基礎に計算します。無償で譲渡しても、時価が収益の額になります(22条の2④)。

② 低額譲渡なら、受け取った代金だけが収益

収益の額は時価です。受け取った代金との差額は、相手に贈与したものとして寄附金など(相手が役員なら役員給与)になります。

③ もらった側は、お金を払っていないので何も起きない

資産を無償で譲り受けると、その時価だけ財産が増えるので、受贈益として益金になります(22条2項)。借金を免除してもらったときの債務免除益も同じです。
ハルカ①は、まさに私が最初に思っていたことです。
先生代金がなくても、収益の額は時価を基礎に計算するんだったね。
ハルカ③のもらった側も、益金になるのは意外でした。
先生財産が増えれば益金、と考えると自然だね。

ミニテスト(3問)

Q1. 資産を無償で譲渡したとき、税法の収益の額は?
Q2. 取引先の法人に、時価より安く資産を譲渡した。時価と対価の差額は?
Q3. 資産を無償で譲り受けた側は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 資産を無償・低額で譲渡しても、収益の額は原則として時価を基礎に計算する。時価が収益の額(22条の2④)。
  2. 「時価で売って、代金(または差額)を相手に渡した」と2段階で考える。譲渡益=時価−帳簿価額。
  3. 渡した差額は、相手が法人なら寄附金、役員なら役員給与、従業員なら給与。寄附金の損金算入限度は第11回。
  4. 譲り受けた側は、時価−支払った対価が受贈益(益金)。債務の免除を受けたときも益金。
  5. 完全支配関係がある法人どうしの寄附金・受贈益は、別の扱い(第17回)。
先生今日のまとめだよ。資産を無償・低額で譲渡しても、収益の額は原則として時価を基礎に計算するんだ。
ハルカただや安く譲っても時価が収益で、差額は相手に渡したと考える。相手が法人なら寄附金、役員なら役員給与。もらった側は受贈益……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、所得に差が出るのは、渡した分が損金にならない部分だけなんだ。
ハルカ「時価で売って、代金を渡した」を合言葉にします。
先生いい合言葉だね。次の第7回では、受取配当を見て、別表四に3行目を書いていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法22条2項(益金の額)、22条の2第4項(収益の額)、34条(役員給与の損金不算入)、36条(過大な使用人給与の損金不算入)、37条1項・7項・8項(寄附金の損金不算入)、25条の2(受贈益)、法人税基本通達9-2-9・9-2-10

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第3章第2節・第3節(pp.33〜35)、第4章第3節(pp.43〜44)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生収益の額を時価で計算するのは法人税法22条の2第4項、寄附金は37条なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ講本にも、無償譲渡の仕訳の例がありますか?
先生講本の第3章に、土地を無償・低額で譲渡したときの例が載っているよ。この教材の図は、それを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第6回|taxjudge.com
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