MENU

第3回 会計の利益と税法の所得|法人税入門講座

法人税 入門講座|第3回(v3)

会計の利益と税法の所得 ── 法人税法22条

「所得の金額=益金の額−損金の額」。益金と損金に何が入り、何が入らないのかを、法人税法22条の5つの項で読み解く回です。

所要 15分前提:第1回(計算の地図)条文:法人税法22条1項〜5項・22条の2令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
益金の額資産の販売・譲渡、役務の提供、無償による資産の譲受けなど、資本等取引以外の取引に係る収益の額(22条2項)
損金の額売上原価などの原価、販売費・一般管理費などの費用、災害などの損失の額(22条3項)
債務の確定期末までに①債務が成立し、②給付の原因となる事実が発生し、③金額を合理的に計算できること(法人税基本通達2-2-12)
資本等取引資本金等の額を増減させる取引(増資・減資など)と、利益・剰余金の分配(22条5項)
公正処理基準「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」。収益・費用はこれに従って計算する(22条4項)
別段の定め22条の原則に対する例外の規定。受取配当の益金不算入、役員給与・寄附金の損金不算入など
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
所得の金額=益金の額−損金の額(22条1項)。益金には無償の取引も入り、損金の費用には債務の確定が必要で、資本等取引はどちらにも入らない。会計の利益と税法の所得がずれる理由を、22条で説明できるようになること。
シンプルな例:X社の収益3,000万円
→
益金 − 損金3,000万円 − 2,400万円
→
所得の金額600万円
さくら食品の収益8,797万円
→
益金の額8,841万円
→
所得の金額1,327万773円

※ 収益をいつ・いくらで益金にするか(22条の2)は第5回、無償取引のくわしい計算は第6回、引当金は第12回・第13回で扱います。

ハルカ先生、第1回で当期純利益と所得金額の差が気になりました。どこから差が出るんですか?
先生その答えの土台が、法人税法22条なんだ。所得の金額は「益金の額−損金の額」と決めているよ。
ハルカ益金と損金は、会計の収益と費用とは違うんですか?
先生ほとんど同じだけど、税法らしい違いがあるんだ。ただでもらった資産が益金になったり、増資で入ったお金が益金にならなかったりするよ。
ハルカ会計とは違う考え方もあるんですね。
先生今日は22条の5つの項を、順に読んでいこうか。

図で見る:法人税法22条を読む(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のX社で、5ステップを通してみよう。さくら食品にも切り替えられるんだ。
ハルカX社は、第1回と同じ会社ですね。
先生同じ数字だから、利益と所得の差を比べやすいね。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 所得の金額 = 益金の額 − 損金の額(22条1項)会計(損益計算書)収益30,000,000費用(法人税等を含む)25,992,700当期純利益4,007,300−=税法(法人税法22条1項)益金の額30,000,000損金の額24,000,000所得の金額6,000,000−=差 +0差 △1,992,700差 +1,992,700益金・損金は、収益・費用とほとんど重なる。でも同じではない。例:届出のない役員賞与1,000,000円と法人税等992,700円は、費用だが損金にならない→ 何が入り、何が入らないかを、22条の2項〜5項で見ていく
益金の額 30,000,000円 − 損金の額 24,000,000円 = 所得の金額 6,000,000円(当期純利益は 4,007,300円)
ハルカ第1回で、当期純利益と所得金額は別物だと聞きました。どう違うんですか?
先生会計の利益は「収益−費用」、税法の所得は「益金の額−損金の額」なんだ。法人税法22条1項にそう書いてあるよ。
🤔 迷いポイント益金は収益、損金は費用の言いかえで、中身は同じ?
ハルカ名前が違うだけで、同じものだと思っていました。
先生ほとんど重なるけど、少しずつ違うんだ。X社は、収益30,000,000円に対して益金は30,000,000円、費用25,992,700円に対して損金は24,000,000円だよ。
ハルカその小さな違いが、利益と所得の差になるんですね。
先生そうだよ。22条の残りの項で、益金と損金に何が入るかを順に見ていこうか。
💡 そうだったのか!所得の金額=益金の額−損金の額(法人税法22条1項)。益金・損金は、収益・費用とほとんど重なるが、同じではない。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 所得=益金−損金

ハルカ第1回で、当期純利益と所得金額は別物だと聞きました。どう違うんですか?
先生会計の利益は「収益−費用」、税法の所得は「益金の額−損金の額」なんだ。法人税法22条1項にそう書いてあるよ。
🤔 迷いポイント益金は収益、損金は費用の言いかえで、中身は同じ?
ハルカ名前が違うだけで、同じものだと思っていました。
先生ほとんど重なるけど、少しずつ違うんだ。X社は、収益30,000,000円に対して益金は30,000,000円、費用25,992,700円に対して損金は24,000,000円だよ。
ハルカその小さな違いが、利益と所得の差になるんですね。
先生そうだよ。22条の残りの項で、益金と損金に何が入るかを順に見ていこうか。
💡 そうだったのか!所得の金額=益金の額−損金の額(法人税法22条1項)。益金・損金は、収益・費用とほとんど重なるが、同じではない。

益金の額 30,000,000円 − 損金の額 24,000,000円 = 所得の金額 6,000,000円(当期純利益は 4,007,300円)

STEP 2 益金(2項)

ハルカ益金には、どんなものが入るんですか?
先生22条2項に例が並んでいるんだ。商品の販売や資産の譲渡、役務の提供に加えて、無償による資産の譲渡や譲受けも入るよ。
🤔 迷いポイントただで商品をあげただけなら、お金が入っていないので益金はゼロ?
ハルカ代金をもらっていないので、収益はないと思っていました。
先生税法では、時価で売って、その代金をすぐ相手に渡したのと同じと考えるんだ。だから時価の分だけ益金になるよ。
ハルカただでもらった側も、益金になるんですか?
先生もらった資産の時価だけ財産が増えるから、益金になるんだ。くわしくは第6回で見ようか。
💡 そうだったのか!益金には、無償による資産の譲渡・役務の提供・資産の譲受けも入る。ただであげても、時価で益金になる。

益金:販売・譲渡・役務の提供に加えて、無償による資産の譲渡・役務の提供・資産の譲受けも入る

STEP 3 損金(3項)

ハルカ損金には、何が入るんですか?
先生22条3項は、損金を3つに分けているんだ。売上原価などの原価、販売費・一般管理費などの費用、災害などの損失だよ。
🤔 迷いポイント来期に予定している修繕の見積額を費用にすれば、損金になる?
ハルカ会社が費用に計上すれば、それで損金になると思っていました。
先生償却費以外の費用は、事業年度末までに債務が確定していないと損金にならないんだ。見積りで計上しただけでは足りないよ。
ハルカ債務が確定する、というのはどういうことですか?
先生債務が成立していて、給付の原因となる事実が起き、金額を合理的に計算できることなんだ。税法で認める引当金は、第12回と第13回で見ようか。
💡 そうだったのか!損金=原価・費用・損失。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定していることが必要。

損金:原価・費用・損失。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定していること

STEP 4 資本等取引(5項)

ハルカ会社にお金が入れば、益金になるんですか?
先生資本等取引は別なんだ。増資や減資のように資本金等の額が増減する取引と、利益や剰余金の分配は、益金にも損金にもしないよ。
🤔 迷いポイント増資で入ってきたお金も、会社の財産が増えたから益金?
ハルカ財産が増えたら、益金になると思っていました。
先生増資は株主がお金を出しただけで、事業でもうけたわけではないんだ。だから益金にしないよ。
ハルカ株主への配当も、損金にならないんですか?
先生配当はもうけの使い道だから、損金にならないんだ。もうけを減らす費用とは性質が違うよ。
💡 そうだったのか!資本等取引(資本金等の額の増減、利益・剰余金の分配)は、益金にも損金にもならない。

資本等取引(資本金等の額の増減・利益や剰余金の分配)は、益金にも損金にもしない

STEP 5 公正処理基準と別段の定め

ハルカ益金と損金の中身は、全部法人税法に書いてあるんですか?
先生22条4項で、収益や費用は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算する、としているんだ。会計のルールを土台にしているよ。
🤔 迷いポイント会計のルールどおりに処理すれば、税法でもそのまま認められる?
ハルカ会計で正しく処理すれば、税務調整はいらないと思っていました。
先生税法には「別段の定め」という例外があるんだ。受取配当の益金不算入や役員給与の損金不算入などで、会計と違う扱いをするよ。
ハルカ例外の分だけ、利益と所得がずれるんですね。
先生そうだよ。そのずれを直すのが、第4回の税務調整なんだ。
💡 そうだったのか!収益・費用は公正処理基準(22条4項)で計算する。会計と違うのは「別段の定め」の部分で、その差を税務調整で直す。

収益・費用は公正処理基準で計算し、別段の定めの部分だけ税法の扱いに直す → 税務調整

さくら食品で確かめる

※ 益金・損金の金額は、共通事例の決算と、これから各回で学ぶ税務調整から求めた値です。中身は第4回から1行ずつ積み上げます。

先生さくら食品の会計と税法の数字を並べたのが、左の表だよ。
ハルカ益金は収益より少し多くて、損金は費用よりかなり少ないですね。
先生損金にならない費用が多いからなんだ。法人税等や役員給与などだよ。
ハルカ損金が少ない分、所得が利益より大きくなるんですね。
先生そのとおりだね。どの費用がなぜ損金にならないのかは、第4回からひとつずつ見ていこうか。

やってみよう:益金?損金?どちらにもならない?(8問)

22条の考え方で、取引を3つに分けてみましょう(「別段の定め」は考えません)。

ハルカ取引を見て、益金か損金か判断できるか試してみたいです。
先生左の8問で、22条の考え方を使って分けてみようか。
ハルカ「ただで」と「増資・配当」が出てきたら注意ですね。
先生その2つが、会計とのいちばんの違いだね。

よくある間違い

① ただで商品をあげただけなら、益金は出ない

税法では、時価で売って、その代金を相手に渡したのと同じと考えます。無償による資産の譲渡も、時価で益金になります(22条2項)。

② 会社が見積りで費用に計上すれば、損金になる

償却費以外の費用は、事業年度末までに債務が確定していることが必要です(22条3項2号)。見積りで計上しただけの費用は、原則として損金になりません。

③ 増資で入ったお金や、配当で払ったお金も所得に影響する

資本等取引(増資・減資など資本金等の額の増減、利益・剰余金の分配)は、益金にも損金にもなりません(22条5項)。
ハルカ①の「ただであげても益金」は、まだ不思議な感じがします。
先生時価で売って代金を渡したのと同じ、と2段階で考えると納得しやすいよ。
ハルカ②の見積りの費用は、会計では正しい処理ですよね。
先生会計では正しくても、税法では債務の確定を求めるんだ。そこが会計と税法の違いだね。

ミニテスト(3問)

Q1. 法人税法22条1項で、所得の金額は?
Q2. 資本等取引に当たるのは?
Q3. 事業年度末までに債務が確定していない費用(償却費を除く)は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 所得の金額=益金の額−損金の額(22条1項)。益金・損金は収益・費用とほとんど重なるが、同じではない。
  2. 益金には、販売・譲渡・役務の提供のほか、無償による資産の譲渡・役務の提供・資産の譲受けも入る(22条2項)。
  3. 損金は原価・費用・損失。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定していることが必要(22条3項)。
  4. 資本等取引(資本金等の額の増減、利益・剰余金の分配)は、益金にも損金にもならない(22条5項)。
  5. 収益・費用は公正処理基準で計算する(22条4項)。会計と違う扱いは別段の定めで決まり、その差を税務調整で直す。
先生今日のまとめだよ。所得の金額は、益金の額から損金の額を引いた金額なんだ。
ハルカ益金には無償の取引も入って、損金の費用は債務の確定が必要。資本等取引はどちらにもならない……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、収益・費用は公正処理基準で計算して、例外は別段の定めで決まるんだ。
ハルカ「ただで」「見積り」「増資・配当」の3つを、付箋に書いておきます。
先生いい覚え方だね。次の第4回では、利益と所得のずれを直す税務調整のしくみを見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法21条(課税標準)、22条1項〜5項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)、22条の2(収益の額)、2条16号(資本金等の額)、法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第2章第1節・第2節(pp.21〜25)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ22条は、全部で何項あるんですか?
先生1項が所得の計算、2項が益金、3項が損金、4項が公正処理基準、5項が資本等取引なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ講本には、会計の利益と税法の所得の図もありますか?
先生講本の第2章に、損益計算書と所得金額を並べた図が載っているよ。この教材の図は、それを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第3回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる