会計の利益と税法の所得 ── 法人税法22条
「所得の金額=益金の額−損金の額」。益金と損金に何が入り、何が入らないのかを、法人税法22条の5つの項で読み解く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 益金の額 | 資産の販売・譲渡、役務の提供、無償による資産の譲受けなど、資本等取引以外の取引に係る収益の額(22条2項) |
| 損金の額 | 売上原価などの原価、販売費・一般管理費などの費用、災害などの損失の額(22条3項) |
| 債務の確定 | 期末までに①債務が成立し、②給付の原因となる事実が発生し、③金額を合理的に計算できること(法人税基本通達2-2-12) |
| 資本等取引 | 資本金等の額を増減させる取引(増資・減資など)と、利益・剰余金の分配(22条5項) |
| 公正処理基準 | 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」。収益・費用はこれに従って計算する(22条4項) |
| 別段の定め | 22条の原則に対する例外の規定。受取配当の益金不算入、役員給与・寄附金の損金不算入など |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
所得の金額=益金の額−損金の額(22条1項)。益金には無償の取引も入り、損金の費用には債務の確定が必要で、資本等取引はどちらにも入らない。会計の利益と税法の所得がずれる理由を、22条で説明できるようになること。
※ 収益をいつ・いくらで益金にするか(22条の2)は第5回、無償取引のくわしい計算は第6回、引当金は第12回・第13回で扱います。
図で見る:法人税法22条を読む(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 所得=益金−損金
益金の額 30,000,000円 − 損金の額 24,000,000円 = 所得の金額 6,000,000円(当期純利益は 4,007,300円)
STEP 2 益金(2項)
益金:販売・譲渡・役務の提供に加えて、無償による資産の譲渡・役務の提供・資産の譲受けも入る
STEP 3 損金(3項)
損金:原価・費用・損失。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定していること
STEP 4 資本等取引(5項)
資本等取引(資本金等の額の増減・利益や剰余金の分配)は、益金にも損金にもしない
STEP 5 公正処理基準と別段の定め
収益・費用は公正処理基準で計算し、別段の定めの部分だけ税法の扱いに直す → 税務調整
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※ 益金・損金の金額は、共通事例の決算と、これから各回で学ぶ税務調整から求めた値です。中身は第4回から1行ずつ積み上げます。
やってみよう:益金?損金?どちらにもならない?(8問)
22条の考え方で、取引を3つに分けてみましょう(「別段の定め」は考えません)。
よくある間違い
① ただで商品をあげただけなら、益金は出ない
税法では、時価で売って、その代金を相手に渡したのと同じと考えます。無償による資産の譲渡も、時価で益金になります(22条2項)。② 会社が見積りで費用に計上すれば、損金になる
償却費以外の費用は、事業年度末までに債務が確定していることが必要です(22条3項2号)。見積りで計上しただけの費用は、原則として損金になりません。③ 増資で入ったお金や、配当で払ったお金も所得に影響する
資本等取引(増資・減資など資本金等の額の増減、利益・剰余金の分配)は、益金にも損金にもなりません(22条5項)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 所得の金額=益金の額−損金の額(22条1項)。益金・損金は収益・費用とほとんど重なるが、同じではない。
- 益金には、販売・譲渡・役務の提供のほか、無償による資産の譲渡・役務の提供・資産の譲受けも入る(22条2項)。
- 損金は原価・費用・損失。償却費以外の費用は、期末までに債務が確定していることが必要(22条3項)。
- 資本等取引(資本金等の額の増減、利益・剰余金の分配)は、益金にも損金にもならない(22条5項)。
- 収益・費用は公正処理基準で計算する(22条4項)。会計と違う扱いは別段の定めで決まり、その差を税務調整で直す。
参照条文・出典
参照条文:法人税法21条(課税標準)、22条1項〜5項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)、22条の2(収益の額)、2条16号(資本金等の額)、法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第2章第1節・第2節(pp.21〜25)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。