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第8回 棚卸資産と売上原価|法人税入門講座

法人税 入門講座|第8回(v3)

棚卸資産と売上原価 ── 期末の評価で所得が変わる

売上原価は「期首+仕入−期末」。期末の棚卸資産をいくらと評価するかで、売上原価も所得も変わります。取得価額・評価方法(原価法・低価法)・届出と、届け出なかったときの法定評価方法を学ぶ回です。

所要 15分前提:第3回(損金の売上原価)条文:法人税法2条20号・22条3項・29条、施行令28条〜32条令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
棚卸資産商品・製品・半製品・仕掛品・原材料など、棚卸しをすべき資産。有価証券は含まない
売上原価期首の棚卸高+当期の仕入高−期末の棚卸高。その事業年度の収益に対応する原価
取得価額購入の代価+引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など、購入のために要した費用など
原価法取得価額で評価する方法。個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法の6つ
低価法原価法で出した額と、期末の時価の、低い方で評価する方法
法定評価方法評価方法を届け出なかったときなどに使う方法。最終仕入原価法による原価法
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
売上原価=期首+仕入−期末なので、期末の棚卸資産の評価額が売上原価と所得を決める。取得価額には付随費用を含め、評価は原価法(6つ)か低価法から選んで届け出る。届け出なければ最終仕入原価法――これを説明できるようになること。
シンプルな例:W社の期末在庫120個評価方法で
→
先入先出法・総平均法・最終仕入原価法3つの金額
→
売上原価と所得変わる
さくら食品:期首150万円+仕入3,602万円−期末180万円
→
売上原価3,572万円
→
評価方法の届出なし最終仕入原価法

※ 特別な評価方法(税務署長の承認を受けるもの)、売価還元法・移動平均法のくわしい計算、製造業の原価計算、評価損(第13回で紹介)は扱いません。

ハルカ先生、第3回で損金には「原価」があると習いました。今日はその原価ですか?
先生そうだよ。今日は売上原価と、それを決める期末の在庫の評価を見るんだ。
ハルカさくら食品の売上原価は、いくらなんですか?
先生期首150万円に仕入3,602万円を足して、期末の180万円を引いた3,572万円なんだ。
ハルカ期末の180万円が変われば、売上原価も変わるんですね。
先生そのとおりだよ。期末の評価のしかたを、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:棚卸資産と売上原価(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のW社で、5ステップを通してみよう。さくら食品や、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、評価方法を切り替えられるんですね。
先生方法や在庫の数で、売上原価がどう動くかを確かめてみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 売上原価 = 期首 + 仕入 − 期末期首 10,000仕入 58,000売上原価 38,600期末 29,400同じ合計売れるはずだった分売れた分と、残った分期首と仕入はもう決まっている→ 期末の評価で 売上原価が決まるW社:10,000 + 58,000 − 29,400 = 売上原価 38,600円
期首 10,000円 + 仕入 58,000円 − 期末 29,400円 = 売上原価 38,600円
ハルカ売上原価は、その年に仕入れた金額のことですか?
先生売上原価は、期首の在庫と当期の仕入を足して、期末に残った在庫を引いたものなんだ。W社なら38,600円だよ。
🤔 迷いポイント当期に仕入れた額を、全部当期の売上原価にしていい?
ハルカ仕入れた分は、全部当期の費用になると思っていました。
先生売れ残った期末の在庫は、まだ売れていないから当期の原価にしないんだ。翌期の期首として繰り越すよ。
ハルカ期首と仕入は決まっているから、期末で売上原価が決まるんですね。
先生そうだよ。だから、期末の在庫をいくらと評価するかが大事なんだ。
💡 そうだったのか!売上原価=期首+仕入−期末。期首と仕入は決まっているので、期末の評価で売上原価が決まる。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 売上原価の式

ハルカ売上原価は、その年に仕入れた金額のことですか?
先生売上原価は、期首の在庫と当期の仕入を足して、期末に残った在庫を引いたものなんだ。W社なら38,600円だよ。
🤔 迷いポイント当期に仕入れた額を、全部当期の売上原価にしていい?
ハルカ仕入れた分は、全部当期の費用になると思っていました。
先生売れ残った期末の在庫は、まだ売れていないから当期の原価にしないんだ。翌期の期首として繰り越すよ。
ハルカ期首と仕入は決まっているから、期末で売上原価が決まるんですね。
先生そうだよ。だから、期末の在庫をいくらと評価するかが大事なんだ。
💡 そうだったのか!売上原価=期首+仕入−期末。期首と仕入は決まっているので、期末の評価で売上原価が決まる。

期首 10,000円 + 仕入 58,000円 − 期末 29,400円 = 売上原価 38,600円

STEP 2 棚卸資産と取得価額

ハルカ棚卸資産には、どんなものが入るんですか?
先生商品や製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品などなんだ。有価証券は別の規定があって、棚卸資産に入らないよ。
🤔 迷いポイント取得価額は、仕入先に払った代金だけでいい?
ハルカ請求書の金額が、そのまま取得価額だと思っていました。
先生引取運賃や荷役費、購入手数料、関税など、購入のために要した費用も含めるんだ。それが期末の評価の土台になるよ。
ハルカ同じ自動車でも、使うなら固定資産、売るなら棚卸資産なんですね。
先生そのとおりだね。何のために持っているかで決まるんだ。
💡 そうだったのか!取得価額=購入の代価+購入のために要した費用(引取運賃・荷役費・手数料・関税など)。

取得価額 = 購入の代価 + 購入のために要した費用(引取運賃・荷役費・手数料・関税など)

STEP 3 評価方法

ハルカ期末の在庫は、どうやって評価するんですか?
先生原価法と低価法があるんだ。原価法には、先入先出法・総平均法・最終仕入原価法など6つの方法があるよ。
🤔 迷いポイント同じ在庫なら、どの方法でも評価額は同じ?
ハルカ数が同じなら、金額も同じになると思っていました。
先生仕入の単価が違うから、方法で変わるんだ。W社の期末120個は、先入先出法で29,400円、総平均法で27,200円、最終仕入原価法で30,000円だよ。
ハルカ低価法は、どういうときに使うんですか?
先生時価が下がったときに、原価と時価の低い方で評価する方法なんだ。選んでいれば使えるよ。
💡 そうだったのか!評価方法は原価法(6つ)と低価法。同じ在庫でも、方法によって評価額が変わる。

先入先出法(期末120個)→ 期末の評価額 29,400円

STEP 4 期末の評価と所得

ハルカ期末の評価額が変わると、何が変わるんですか?
先生期末を高く評価すると売上原価が小さくなって、所得が大きくなるんだ。低く評価すると、その逆だよ。
🤔 迷いポイント期末の在庫を少なめに数えれば、税金を減らせる?
ハルカ在庫を少なく評価すれば、得をする気がしました。
先生在庫の数え間違いや評価の誤りは、そのまま所得の誤りになるんだ。だから税法は、評価方法を決めて続けることを求めているよ。
ハルカ翌期は、当期の期末が期首になるんですよね。
先生そうだよ。評価の差は、その在庫を売ったり使ったりした時期などに、翌期以降の所得に影響するんだ。どの年の所得になるかがずれるんだよ。
💡 そうだったのか!期末を高く評価 → 売上原価が小さく → 所得が大きい。評価の誤りは、そのまま所得の誤りになる。

期末 ↑ → 売上原価 ↓ → 所得 ↑

STEP 5 選定・届出・法定評価方法

ハルカ評価方法は、会社が自由に決めていいんですか?
先生事業の種類や資産の区分ごとに選んで、税務署長に届け出るんだ。新しく設立した会社は、最初の事業年度の確定申告書の提出期限までだよ。
🤔 迷いポイント届け出なかったら、会社が会計で使っている方法でいい?
ハルカ会計の方法が、そのまま税法でも使えると思っていました。
先生届け出なかったときは、法定評価方法の最終仕入原価法で評価するんだ。
ハルカ会計と税法の方法がずれたら、どうなるんですか?
先生税法の方法で評価し直して、差を別表四で調整するんだ。期末が増えれば加算・留保だよ。
💡 そうだったのか!評価方法は選んで届け出て続ける。届け出なければ最終仕入原価法(法定評価方法)。変更は開始の日の前日までに承認申請。

評価方法を届け出なければ 最終仕入原価法(法定評価方法)

さくら食品で確かめる

※ さくら食品は評価方法を届け出ていないので、法定評価方法の最終仕入原価法で評価しています。会計も同じ方法で計算しているので、別表四に足す行はありません。

先生さくら食品の売上原価をまとめたのが、左の表だよ。
ハルカ仕入には、控除できなかった消費税も入っているんですね。
先生消費税入門講座で見た、農家の野菜の経過措置の分なんだ。原価に含めているよ。
ハルカ評価方法を届け出ていないから、最終仕入原価法なんですね。
先生そうだよ。会計も同じ方法だから、今日は別表四に行を足さないんだ。

やってみよう:期末評価と売上原価(5問)

期首・仕入・期末から、売上原価や評価額を判断しましょう。

ハルカ売上原価と期末の評価を、計算してみたいです。
先生左の5問で、式と評価方法を確かめてみようか。
ハルカ期末が増えると、所得はどちらに動くか気をつけます。
先生式の「−期末」を思い出せば、迷わないよ。

よくある間違い

① 当期に仕入れた額が、そのまま当期の売上原価

売上原価は期首+当期の仕入−期末です。売れ残った期末の在庫の分は、当期の原価ではなく、翌期に繰り越します。

② 取得価額は、仕入先に払った代金だけ

引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など、購入のために要した費用も取得価額に含めます。

③ 評価方法は、毎年好きな方法を選べる

評価方法は選んで届け出て、続けて使います。変えるときは、変えたい事業年度が始まる日の前日までに変更の承認申請が要ります。届け出なければ最終仕入原価法です。
ハルカ①の「仕入れた額が全部原価」は、ついやってしまいそうです。
先生売れ残りの分を引くのを忘れないようにね。
ハルカ③の届出は、会社を作ったときに忘れそうです。
先生届け出なければ最終仕入原価法になる、と覚えておくといいよ。

ミニテスト(3問)

Q1. 売上原価の計算式は?
Q2. 期末の棚卸資産を高く評価すると、所得は?
Q3. 評価方法を届け出なかったときの評価方法は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 売上原価=期首の棚卸高+当期の仕入高−期末の棚卸高。期末の評価額が売上原価と所得を決める。
  2. 期末を高く評価すると売上原価は小さくなり、所得は大きくなる(逆も同じ)。
  3. 取得価額は、購入の代価に引取運賃・荷役費・購入手数料・関税など、購入のために要した費用を加える。
  4. 評価方法は原価法(個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法)と低価法。事業の種類・資産の区分ごとに選んで届け出る。
  5. 届け出なかったときは最終仕入原価法(法定評価方法)。変更は、変えたい事業年度の開始の日の前日までに承認申請。
先生今日のまとめだよ。売上原価は、期首+仕入−期末なんだ。
ハルカ期末を高く評価すると所得が大きくなる。取得価額には付随費用を含め、評価方法は選んで届け出る。届け出なければ最終仕入原価法……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、評価方法を変えるときは、事業年度が始まる前日までに承認申請をするんだ。
ハルカ期末の棚卸の日は、数え間違いがないよう二人で数えます。
先生いい心がけだね。次の第9回では、減価償却を見て、別表四に償却超過額の行を書いていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法2条20号(棚卸資産)、22条3項1号(売上原価)、29条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)、法人税法施行令10条(棚卸資産の範囲)、28条(評価の方法)、28条の2(特別な評価の方法)、29条(評価の方法の選定)、30条(評価の方法の変更)、31条(法定評価方法)、32条(取得価額)、法人税基本通達5-2-9〜5-2-13、5-4-1

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第5章第1節(pp.45〜51)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生評価の方法は法人税法29条と施行令28条、法定評価方法は施行令31条なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ講本には、先入先出法の計算例もありますか?
先生講本の第5章に、先入先出法と最終仕入原価法の例が載っているよ。この教材の図は、それを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第8回|taxjudge.com
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