ただであげた・もらったら? ── 無償取引と受贈益
お金を受け取っていないのに、なぜ益金になるのか。資産を無償・低額で譲渡したとき、無償・低額で譲り受けたときの扱いを、「時価で売って、代金を渡した」という2段階の見方で整理する回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 無償譲渡・低額譲渡 | 資産をただで、または時価より安く譲り渡すこと |
| 時価 | その資産を第三者どうしで取引したら通常つく価額 |
| 寄附金 | 金銭その他の資産・経済的な利益の贈与または無償の供与。損金になる額には限度がある(第11回) |
| 受贈益 | 資産をただで、または安く譲り受けたときの、時価と支払った対価との差額。益金になる |
| 債務免除益 | 借りているお金などの返済を免除してもらったときの利益。益金になる |
| 完全支配関係 | 一方の法人が他方の法人の株式を100%持っている関係など。この関係がある法人どうしの寄附は扱いが違う(第17回) |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
資産を無償・低額で譲渡しても、時価で売って、その代金(または時価との差額)を相手に渡したと考え、時価が収益の額になる。差額は相手によって寄附金・役員給与・給与になる。譲り受けた側は時価との差額が受贈益(益金)。これを、仕訳の形で説明できるようになること。
※ 完全支配関係(100%の親子会社など)がある法人どうしの寄附金・受贈益の扱い(第17回)、広告宣伝・見本品などの販売促進の費用、個人に譲渡したときの所得税の扱いは、この回では扱いません。
図で見る:無償取引の考え方(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 会計と税法のちがい
会計:渡した帳簿価額だけ / 税法:時価 10,000,000円 が収益の額
STEP 2 時価で売って、代金を渡す
時価で売った(収益 10,000,000円・譲渡益 8,000,000円)+ 代金を渡した(寄附金 10,000,000円)
STEP 3 低額で譲渡したら
時価 10,000,000円 = 受け取った対価 0円 + 寄附金 10,000,000円
STEP 4 相手で変わる
相手が取引先の法人 → 差額 10,000,000円 は 寄附金
STEP 5 もらった側は受贈益
受け取った側:受贈益 10,000,000円(時価 10,000,000円 − 対価 0円)
さくら食品で確かめる
※ さくら食品の当期には、資産の無償・低額の譲渡や譲受けはありません(別表四に足す行はなし)。地域のお祭りへの寄附金40万円(現金)は、第11回で損金にできる限度を計算します。
やってみよう:税務上の仕訳を組み立てよう(5問)
取引を読んで、税法で考えたときの金額や科目を選びましょう。
よくある間違い
① 代金をもらっていないので、収益はゼロ
法人が資産を無償・低額で譲渡した場合、収益の額は原則として時価を基礎に計算します。無償で譲渡しても、時価が収益の額になります(22条の2④)。② 低額譲渡なら、受け取った代金だけが収益
収益の額は時価です。受け取った代金との差額は、相手に贈与したものとして寄附金など(相手が役員なら役員給与)になります。③ もらった側は、お金を払っていないので何も起きない
資産を無償で譲り受けると、その時価だけ財産が増えるので、受贈益として益金になります(22条2項)。借金を免除してもらったときの債務免除益も同じです。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 資産を無償・低額で譲渡しても、収益の額は原則として時価を基礎に計算する。時価が収益の額(22条の2④)。
- 「時価で売って、代金(または差額)を相手に渡した」と2段階で考える。譲渡益=時価−帳簿価額。
- 渡した差額は、相手が法人なら寄附金、役員なら役員給与、従業員なら給与。寄附金の損金算入限度は第11回。
- 譲り受けた側は、時価−支払った対価が受贈益(益金)。債務の免除を受けたときも益金。
- 完全支配関係がある法人どうしの寄附金・受贈益は、別の扱い(第17回)。
参照条文・出典
参照条文:法人税法22条2項(益金の額)、22条の2第4項(収益の額)、34条(役員給与の損金不算入)、36条(過大な使用人給与の損金不算入)、37条1項・7項・8項(寄附金の損金不算入)、25条の2(受贈益)、法人税基本通達9-2-9・9-2-10
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第3章第2節・第3節(pp.33〜35)、第4章第3節(pp.43〜44)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。