受取配当と評価益・還付金 ── 益金にならない収益
会計では収益なのに、税法では益金にしないものがあります。受取配当等の益金不算入(4つの区分と割合)を中心に、資産の評価益・法人税等の還付金を整理し、さくら食品の別表四に3行目を書く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 受取配当等の益金不算入 | 内国法人から受けた配当等のうち、株式の保有割合に応じた一定額を益金にしない制度(23条) |
| 完全子法人株式等 | 保有割合100%の株式など。配当等の全額が益金不算入 |
| 関連法人株式等 | 保有割合1/3超の株式など。配当等から負債利子を引いた額が益金不算入 |
| その他の株式等 | 保有割合5%超1/3以下の株式など。配当等の50%が益金不算入 |
| 非支配目的株式等 | 保有割合5%以下の株式など。配当等の20%が益金不算入 |
| 評価益 | 資産の帳簿価額を時価に合わせて増やしたときの利益。原則として益金不算入(25条) |
| 還付金等 | 納め過ぎた法人税・住民税などが戻ってきたもの。益金不算入(26条) |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
内国法人から受けた配当は、二重課税を避けるために益金不算入。株式の保有割合で4つに区分し、全額・50%・20%などを益金にしない。申告書に計算を書いたときだけ使え、別表四では減算・社外流出。評価益・法人税等の還付金も益金にならない――これを説明できるようになること。
※ 関連法人株式等の負債利子の計算、外国子会社から受ける配当等の益金不算入(95%)、みなし配当、短期保有株式等の扱いは、名前の紹介にとどめます。
図で見る:受取配当等の益金不算入(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 なぜ益金にしない?
配当は課税済みの利益から → 法人株主では益金不算入(二重課税を避ける)
STEP 2 対象になる配当
Y社:配当の合計 420,000円 のうち、対象になるのは 360,000円
STEP 3 4つの区分と割合
A社株式(100%子会社)(100%)→ 完全子法人株式等 B社株式(保有10%)(10%)→ その他の株式等
STEP 4 計算と申告の条件
益金不算入額の合計 250,000円(申告書に明細を書いたときだけ)
STEP 5 評価益・還付金と別表四
別表四:減算 受取配当等の益金不算入額 250,000円(社外流出)
さくら食品の「育つ別表四」── 3行目を書く
※ この配当からは所得税等(20.42%)が源泉徴収されています。その額は法人税額から控除し、別表四では加算します(第15回)。益金不算入額は、源泉徴収される前の配当の額で計算します。
やってみよう:区分と益金不算入額(6問)
配当を受けた株式の区分と、益金にならない額を判定しましょう(負債利子はないものとします)。
よくある間違い
① 「配当」と名のつくものは、すべて益金不算入
対象は内国法人の株式・出資に係る配当等です。外国法人(外国子会社を除く)からの配当、協同組合等の事業分量配当、J-REIT(不動産投資法人)からの利益の分配などは対象外で、全額が益金です。証券投資信託の収益の分配も原則として対象外ですが、特定株式投資信託(外国株価指数連動型を除く一定のETF)の収益の分配は、非支配目的株式等として対象になります。② 保有割合に関係なく、配当の全額が益金にならない
全額が益金不算入なのは完全子法人株式等(と、負債利子を引いた関連法人株式等)です。その他の株式等は50%、非支配目的株式等は20%だけです。③ お金が会社に残っているので、別表四では「留保」
受取配当等の益金不算入は、課税しない収入として、便宜上社外流出に区分します(第4回)。また、申告書に計算の明細を書いたときだけ使えます。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 配当は、出した会社で法人税が課税済みの利益から支払われる。法人株主で再び課税しないよう、益金不算入にする(23条)。
- 保有割合で4区分:完全子法人株式等(100%)全額、関連法人株式等(1/3超)負債利子を引いた額、その他の株式等(5%超1/3以下)50%、非支配目的株式等(5%以下)20%。
- 外国法人(外国子会社を除く)の配当、協同組合等の事業分量配当、J-REIT(不動産投資法人)からの利益の分配などは対象外。証券投資信託の収益の分配も原則対象外(特定株式投資信託〈外国株価指数連動型を除く〉は対象)。
- 申告書に計算の明細を書いたときだけ使える(任意の申告調整)。別表四では減算・社外流出。
- 資産の評価益(原則)と、法人税・住民税などの還付金も益金不算入(25条・26条)。
参照条文・出典
参照条文:法人税法23条(受取配当等の益金不算入)1項・4項〜7項、23条の2(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)、25条(資産の評価益)、25条の2(受贈益)、26条(還付金等の益金不算入)、38条(法人税額等の損金不算入)、租税特別措置法67条の6、所得税法92条(配当控除)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第4章第1節〜第4節(pp.36〜44)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。