交際費・寄附金・租税公課 ── 損金にならない支出
会計では費用なのに、税法では損金にならない(または一部しかならない)支出があります。交際費等の損金不算入、寄附金の区分と限度額、損金にならない税金を整理します。第4回で「税引後の当期純利益から始めた」理由も、ここで回収します。さくら食品の別表四に5行を書く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 交際費等 | 得意先などに対する接待・供応・慰安・贈答などの費用。中小法人は一定額まで損金 |
| 接待飲食費 | 交際費等のうち、得意先などとの飲食の費用。その50%は損金にできる |
| 定額控除限度額 | 中小法人が損金にできる交際費等の上限。年800万円 |
| 寄附金 | 金銭や資産の贈与、経済的な利益の無償の供与(広告宣伝費・交際費等などを除く) |
| 一般寄附金 | 国等・指定寄附金・特定公益増進法人などに当たらない寄附金。損金算入限度額まで損金 |
| 租税公課 | 税金や公的な負担金。法人税・住民税・延滞税などは損金にならず、事業税・固定資産税などは損金 |
| 納税充当金 | 当期の法人税・住民税・事業税の未払額の見積り(会計の未払法人税等)。繰り入れた額は損金にならない |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
交際費等は、中小法人なら800万円の定額控除か接待飲食費の50%まで損金。寄附金は4つの区分で扱いが違い、一般寄附金は損金算入限度額まで。法人税・住民税・延滞税などの税金は損金にならないので、損益計算書で差し引いた法人税等を別表四で加算して戻す――これを説明できるようになること。
※ 交際費等の範囲のくわしい判定、資本金100億円超の法人の扱い、特定公益増進法人等への寄附金の特別限度額の計算、外国税額、使途秘匿金は、名前の紹介にとどめます。
図で見る:交際費・寄附金・租税公課(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 交際費等とは
S社:交際費等 9,000,000円(うち接待飲食費 4,000,000円)。1人1万円以下の飲食費などは除く
STEP 2 交際費等の損金不算入額
交際費等の損金不算入額 = 1,000,000円(定額控除を使う)
STEP 3 寄附金の4つの区分
国等・指定寄附金は全額損金、一般寄附金は限度額まで、法人による100%グループの法人への一定の寄附金は全額損金不算入
STEP 4 一般寄附金の限度額
一般寄附金 1,000,000円 − 限度額 137,500円 = 損金不算入 862,500円(加算・社外流出)
STEP 5 税金(租税公課)と別表四
損金にならない税金は加算。事業税・固定資産税・印紙税などは損金
さくら食品の「育つ別表四」── 5行を書く
※ 交際費等は定額控除限度額以内なので、別表四の行はありません。事業税の中間納付額は損金なので、加算しません。源泉所得税(法人税額から控除するもの)の加算は第15回で書きます。
やってみよう:交際費? 損金になる税金?(6問)
資本金1,000万円の中小法人です。支出の内容から判定しましょう。
よくある間違い
① 得意先との飲食代は、すべて交際費等
1人当たり1万円以下の飲食費(社内の人だけの飲食を除き、参加者などを書いた書類を保存したもの)は、交際費等から除きます。会議に伴う茶菓・弁当、社員全員の忘年会なども交際費等ではありません。② 寄附金は、すべて損金にならない
国・地方公共団体への寄附金と指定寄附金は全額が損金です。一般寄附金も損金算入限度額までは損金です。また、寄附金は実際に払った事業年度で判定します(未払の寄附金は損金にならない)。③ 会社が払った税金は、すべて損金
法人税・地方法人税・住民税、延滞税・加算税などは損金になりません。事業税や固定資産税・印紙税などは損金です。事業税は、申告した事業年度の損金になります。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 交際費等は原則として損金不算入。中小法人は年800万円の定額控除か接待飲食費の50%の多い方まで損金(措法61条の4)。1人1万円以下の飲食費などは交際費等から除く。
- 寄附金は4区分:国等・指定寄附金は全額損金、特定公益増進法人等は特別限度額まで、一般寄附金は損金算入限度額まで、法人による完全支配関係がある他の内国法人への一定の寄附金は全額損金不算入(第17回)。
- 一般寄附金の限度額=((期末の資本金+資本準備金)×月数/12×1,000分の2.5+所得の金額×100分の2.5)×4分の1。所得の金額は、寄附金を損金にしない場合の所得(マイナスなら0円)。
- 法人税・地方法人税・住民税・延滞税・加算税・罰金などは損金不算入。事業税・固定資産税・印紙税などは損金。
- 損金経理した法人税等の中間納付額と納税充当金は加算(留保)、納税充当金から払った前期の事業税は減算(留保)。これで「税引後から始めた」分が戻る。
参照条文・出典
参照条文:租税特別措置法61条の4(交際費等の損金不算入)、同施行令37条の5、法人税法37条(寄附金の損金不算入)、同施行令73条(一般寄附金の損金算入限度額)・77条の2(特定公益増進法人等)、法人税法38条(法人税額等の損金不算入)・55条(不正行為等に係る費用等)、法人税基本通達9-5-1(事業税等の損金算入の時期)・9-4-2の3(寄附金の支出の時期)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第6章第2節〜第4節(pp.84〜104)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。