赤字は翌年に繰り越せる? ── 欠損金の繰越控除と繰戻し還付
所得がマイナスになった年(欠損金額が出た年)は、法人税がかかりません。その赤字は、青色申告なら翌期以後10年にわたって所得から差し引けます(繰越控除)。中小法人等は前期に払った法人税を取り戻すこともできます(繰戻し還付)。控除の限度、使う順番、要件を整理し、さくら食品に「もしも欠損金があったら」を当てはめる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 欠損金額 | 損金の額が益金の額を超えた部分。所得金額がマイナスのときの、その金額 |
| 繰越控除 | 前の事業年度の欠損金額を、当期の所得金額から差し引くこと(57条) |
| 中小法人等 | 資本金1億円以下の普通法人など(大法人の100%子会社などを除く)。欠損金は所得の全額まで控除できる |
| 控除限度額 | 中小法人等以外の法人が、1年に控除できる欠損金の上限。控除前の所得金額の50% |
| 繰戻し還付 | 当期の欠損金額を前期の所得に戻して、前期に払った法人税の還付を受けること(80条)。いまは原則として中小法人等だけ |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
青色申告の事業年度に生じた欠損金額は、翌期以後10年にわたって、古い年の分から順に所得金額から控除できる。中小法人等は所得の全額まで、それ以外は50%まで。中小法人等は、前期の法人税を取り戻す繰戻し還付も選べる――これを計算できるようになること。
※ さくら食品には、実際の欠損金はありません(別表四の行は増えません)。第4ステップで「もしも」の数字を当てはめます。災害損失金、欠損金の引継ぎ(合併)、更生会社などの特例は扱いません。
図で見る:欠損金の繰越控除と繰戻し還付(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 欠損金額とは
欠損金額 = 損金の額が益金の額を超えた部分(所得がマイナス)。その年の法人税はかからない
STEP 2 繰越控除の要件と期間
青色申告の年の欠損金を、翌期以後10年繰り越す。
STEP 3 控除の限度と順番
控除 5,500,000円(限度 5,500,000円)→ 当期の所得 0円 繰越 1,500,000円
STEP 4 繰戻し還付
還付 = 前期の法人税 1,664,000円 × 欠損金 4,000,000円 ÷ 前期の所得 10,000,000円 = 665,600円
STEP 5 比べてみる・別表四
当期の所得:中小法人等 0円/それ以外 2,750,000円
さくら食品の「育つ別表四」── 欠損金があったら、どこに書く?
※ 欠損金の控除は、別表四のいちばん下の方(加算・減算を終えた後の所得金額の計算)で差し引きます。さくら食品の実際の申告には、欠損金の控除はありません。
やってみよう:当期の所得から控除できる?(6問)
当期は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度です。特にことわりがなければ、中小法人等で、欠損金は青色申告の年に生じたものです。
よくある間違い
① 赤字の年が白色申告でも、欠損金は繰り越せる
欠損金の繰越控除は、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を出していて、その後も連続して確定申告書を出していることが要件です。② 欠損金は、どの年の分から使ってもよい
控除は古い年に生じた分から順に行います。新しい分を先に使うことはできません。10年を過ぎた分は控除できずに消えます。③ どの会社も、欠損金は所得の全額まで控除できる
所得の全額まで控除できるのは中小法人等です。それ以外の法人は、控除前の所得金額の50%が限度です。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 欠損金額=損金の額が益金の額を超えた部分。その年の法人税はかからない(住民税の均等割は別)。
- 青色申告の年に生じた欠損金は、翌期以後10年にわたって繰越控除(57条)。連続して確定申告書を出し、帳簿書類を保存していることが要件(10年は平成30年4月1日以後に開始した事業年度の欠損金。それより前に開始した事業年度の欠損金は9年)。
- 控除は古い年の分から順に。限度は、中小法人等は所得の全額、それ以外は控除前の所得金額の50%。
- 中小法人等は繰戻し還付も選べる:前期の法人税額×当期の欠損金額(前期の所得金額が上限)÷前期の所得金額(80条)。欠損の年の青色申告書を期限内に出し、還付請求書を同時に出すことなどが要件。
- 別表四では、加算・減算を終えた所得金額から、いちばん下の方で欠損金の当期控除額を差し引く。
参照条文・出典
参照条文:法人税法2条19号(欠損金額)、57条(欠損金の繰越し)、58条(災害損失金)、80条(欠損金の繰戻しによる還付)、租税特別措置法66条の12(繰戻し還付の不適用)、法人税法施行令112条
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第6章第9節(pp.111〜115)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。