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経理財務部の物語 第2話(9月28日)|調査票の空欄

経理財務部の物語 第2話|調査票の空欄
経理財務部の物語第2話2026年9月末・本社 経理財務部/店舗開発部次:第3話|決めたことと、聞くこと
この話の中心ハルカ登場ハルカ・大野部長前の話第1話|80件の契約書は、誰が読むのか
舞台の会社について(開く)
架空の製造小売。グロース上場・3月決算・子会社3社。店舗68・賃貸借契約80件・経理財務部8人。来期(2028年3月期)から新リース会計基準が強制適用になる。年表・会社のいま・話数一覧は 経理財務部の記録 に。会計の知識は各話の末尾「この話に出てきた知識」からラボと学習ノートへ。
PART 1物語
1

封筒監査法人から届いた調査票

契約一覧 41/80新リース会計基準適用準備状況の確認期限 11月中旬9月末。監査法人からの調査票と、先週できた基準書。

2026年9月末。中間決算の期末を迎える週だった。監査法人から届いたのは、レビューの日程だけではなかった。

部長が、A3の紙を3枚持ってハルカの席に来た。

大野部長
監査法人から調査票が届いた。
「新リース会計基準の適用準備状況の確認」だって。
ハルカ
契約ごとに、リースかどうか、期間を何年と見たか、
その根拠……。
全部、契約単位なんですね。
新リース会計基準の適用準備状況の確認(調査票)A3・3枚 / 回答期限:11月中旬 / 監査チーム 主査より契約ごとの状況1枚目1. リースに該当するか2. リース期間(年)3. 延長・解約オプションの評価4. その根拠簡便的な取扱いと割引率2枚目1. 短期リース・少額リースの範囲2. 割引率の決め方3. 適用初年度の方法網羅性と事前協議3枚目1. 契約の網羅性をどう確認したか2. 事前に協議した会計方針3. 今後のスケジュール監査法人から届いた調査票。契約ごとに「期間」と「根拠」を書く欄がある。
大野部長
そう。
期限は11月中旬。
一覧の続きと一緒に、埋められるところだけ埋めてほしい。
ハルカ
判断が要る欄は、どうしますか。
大野部長
空欄でいいよ。
判断基準書は金曜に書き上げたから、まずそれで当ててみて。
ハルカ
12ページ、週末のうちに2回読みました。
識別、期間、短期・少額、割引率。
判断基準書 新リース会計基準の適用にあたっての当社の判断(第1版)目次(全12ページ)

1 目的と適用範囲

2 リースの識別(契約にリースが含まれるか)

3 リース料と、リースを構成しない部分

4 リース期間(延長・解約オプションの評価)

5 短期リース・少額リースの簡便的な取扱い

6 割引率

7 当初測定と事後の会計処理

8 適用初年度の取扱い(経過措置)

9 体制と記録

架空の会社の社内文書(抜粋)
大野部長
早いね。
読んでみて、どうだった?
ハルカ
分かった、と思います。
設例でやったことと、ほとんど同じなので。
大野部長
そうか。
……当ててみると、また違って見えるかもしれない。
迷ったら持ってきて。

読んで分かることと、当ててみて分かることは、違った。ハルカがそれを知るのは、二日後だった。

2

三つの契約判断基準書に書いていない契約

モール店売上連動?倉庫自動更新?本社3F共用部?判断基準書12ページ41件目で止まった。基準書に書いていない契約が、三つ。

一覧の40件目まで、基準書は効いた。普通借家の店舗は、契約期間と更新条項、出店計画と造作の有無を確かめれば、リース期間が置けた。

ハルカ
心の声
41件目、郊外のモール店。
賃料が売上に連動していて、固定の最低賃料がない。
……基準書のどこに当てればいいんだろう。
ハルカ
心の声
「変動リース料」の項目はある。
でも、最低賃料がないときにリース料をどう見るかは、
書いていない。
判断基準書p.5 3-4 変動リース料

賃料改定条項等により、指数又はレートに応じて変動するリース料は、リース開始日の指数又はレートを用いて算定し、リース料に含める。

指数又はレートの変動により今後支払う借手のリース料が変動したときに、リース負債を再測定する。

売上に連動する賃料は? 最低賃料がない場合は?
架空の会社の社内文書(抜粋)
ハルカ
心の声
次は倉庫。
契約は1年で、解約の申し出がなければ自動更新。
会社は5年使っている。
期間って、どこで切るの?
判断基準書p.7 4-2 延長オプション・解約オプション

解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を加えて、リース期間とする。

判断にあたっては、次の要因を総合的に考慮する。

① オプション期間の賃料など契約条件

② 重要な造作(建物附属設備)の有無

③ 事業上の重要性、代わりの物件の見つけやすさ

④ 出店計画と閉店の可能性(店舗開発部の資料で確認する)

1年ごとの自動更新は「延長オプション」? 解約不能期間はどこまで?
架空の会社の社内文書(抜粋)
ハルカ
心の声
三つ目は本社の3フロア。
専有部分の賃料と共用部の管理費が、
一つの契約に入っている。
分けるとは書いてある。
分け方は書いていない。
判断基準書p.4 3-2 リースを構成する部分と構成しない部分

一つの契約に、リースを構成しない部分(共用部分の管理費、清掃・警備などのサービス等)が含まれる場合は、これを区分して会計処理する。

分け方は? 管理費が専有部と一本で書いてある
架空の会社の社内文書(抜粋)

調査票の根拠の欄を見て、ハルカはペンを置いた。

1. 契約ごとの状況1枚目No.契約資産リースに該当リース期間延長・解約の評価根拠39駅前店店舗該当5年延長しない出店計画5年・造作なし40駅南店店舗該当10年延長を見込む戦略店舗・重要な造作あり41郊外モール店店舗該当??ここから、基準書で当てられない42本社近くの倉庫倉庫該当??43本社ビル3F事務所該当(一部)5年延長しない管理費の区分:?※ 青字はハルカの記入。根拠の欄は「どの資料で、何を確かめたか」まで書くよう指示がある。  回答できない欄は、その理由と回答予定日を備考に記載すること。調査票の1枚目。40件目までは埋まった。41件目から、根拠の欄が書けない。
ハルカ
心の声
空欄でいい、と言われた。
でも、空欄を3つ並べて渡したら、
「まだ分かっていません」と言うのと同じ
だ。
ハルカ
心の声
設例ではできた。
戦略店舗の10年も、普通借家の5年も、自分で置いた。
なのに、本物の契約書はどの設例にも当てはまらない。
ハルカ
心の声
……空欄のかわりに、書けることを書こう。
仮の判断。
そう考えた理由。
迷っている点。

ノートを開いて、3件それぞれに三行ずつ書き始めた。そのうち2件は、契約書の外の情報がないと書けなかった。

3

店舗開発部契約書の外にある情報

出店計画・図面物件資料造作の覚書店舗開発部。「経理に言う必要あるんですか」

店舗開発部は、同じフロアの反対側にある。「新リースの契約収集は、店舗開発部も協力するように」という社長の一言は、先週出ていた。

ハルカ
すみません、経理のハルカです。
郊外モール店の、
過去3年の売上と賃料の実績をいただけますか。
店舗開発部
ああ、新リースの件ですね。
……出しますけど、これ、経理に言う必要あるんですか。
賃料は毎月払ってるのに。
ハルカ
来期から、契約の内容で会計処理が変わるんです。
期間をどう見るかで、載せる金額も変わって。
店舗開発部
期間なんて、契約書に書いてあるでしょう。
ハルカ
書いてあるのは契約の期間で、
会計では「実際に使い続けそうな期間」を見るんです。
倉庫は、5年先も使う予定ですか。
店舗開発部
倉庫? それはうちじゃなくて、総務か物流の話ですね。

ハルカは、もう一度説明しようとして、口を閉じた。自分には要る情報だと分かっている。でも、相手が要らないと思う理由も、少し分かる気がした。

理由は正しい。それでも、頼まれた側の温度は、社長の一言では変わらなかった。

ハルカ
ありがとうございました。
また伺うかもしれません。
店舗開発部
あ、そうだ。
賃貸借契約とは別に、
造作の覚書が何件かありますよ。
本部には出してないやつ。
要ります?
ハルカ
……要ります。

そう言うまでに、一瞬かかった。基準書にも、一覧にも、調査票にも、覚書の欄はなかった。

4

部長の席空欄ではなく、仮の判断を

翌日の夕方。期末の締めの段取りを終えた部長の席へ、ハルカが調査票と自分のノートを持っていった。
ハルカ
調査票、埋められるところは埋めました。
3件、基準書で当てられなかったものがあります。
大野部長
空欄のまま持ってきてくれたんだね。
ありがとう。
ハルカ
……空欄ではなくて、仮の判断と理由と、
迷っている点を書いてきました。
間違っているかもしれませんが。

部長はノートを受け取って、しばらく黙って読んだ。ページをめくる音だけがした。

大野部長
売上だけに連動する賃料なら、
その部分は原則としてリース負債の計算に入れない。
契約がリースであることは変わらないけれどね。
大野部長
ただ、実質的に固定されている支払がないかは、
契約をもう一度確かめよう。
この扱いは基準書に足すべきだった。
方向はハルカさんの仮判断でいいよ。
ハルカ
本社フロアの共用部は、管理費の部分を分けて、
分けられない分は……合理的に配分、と書きました。
大野部長
そこも方向は合っている。
まず、管理費が何の対価なのかを確かめよう。
分けるなら、それぞれの独立価格をどう見積もったか、
その根拠を聞かれる。
大野部長
分けない方針を選ぶこともできる。
ただ、それは資産の種類ごとに会社として決めることだから、
基準書に書いておこう。
モール店(売上連動)仮:変動リース料。負債に載せない迷い:最低賃料がない倉庫(自動更新)仮:5年。5年使っている迷い:期間をどこで切る?本社3F(共用部)仮:管理費を分けて配分迷い:配分の根拠空欄のかわりに、仮の判断・理由・迷っている点。
ハルカ
倉庫の自動更新は、5年使っているので、5年で置きました。
大野部長
そこは、私の見方は少し違うんだ。

ハルカの手が、ノートの端で止まった。

大野部長
「5年使ってきた」は過去の事実だね。
期間を決めるのは、
これから解約する可能性がどれだけあるかなんだ。
倉庫は来年、物流子会社に集約する話が出ている。
ハルカ
……それは、知りませんでした。
大野部長
知らなくて当然だよ。
経営会議の話で、まだ部の外には出ていない。
だから、ハルカさんの判断が間違っていたんじゃない。
判断に要る情報が、ハルカさんの手元になかった。
ハルカ
基準書に、
「出店計画と閉店の可能性を確認する」とは書いてあります。
でも、どこで確認するのかは……
判断基準書p.7 4-2 (抜粋)

判断にあたっては、次の要因を総合的に考慮する。

④ 出店計画と閉店の可能性(店舗開発部の資料で確認する)

経営会議の話は、どこから来る?
架空の会社の社内文書(抜粋)
大野部長
そう。
それが基準書の穴だね。
経営会議の情報を、誰がどのタイミングで経理に渡すか。
仕組みがない。
これは私の宿題だ。
ハルカ
それと、店舗開発部で、
造作の覚書が何件かあると言われました。
本部に出していないものです。
大野部長
……覚書か。

部長は調査票の3枚目を見た。「契約の網羅性をどのように確認したか」という欄が、まだ空いていた。

3. 網羅性と事前協議3枚目3-1 契約の網羅性をどのように確認したか(契約の収集方法・依頼した部署・確認した日)各部署から集めた80件の賃貸借契約書を一覧化……本当に、80件で全部か?3-2 会計方針について、監査法人と事前に協議した事項(論点・協議した日・結論)3-3 本番適用までのスケジュール(主な工程と完了予定)基準書確定 10月/契約一覧 11月/試算 12月〜調査票の3枚目。「網羅性をどのように確認したか」が、まだ書けない。
大野部長
80件は、把握している80件だった。
覚書は全店舗分を店舗開発部に出してもらおう。
私から頼む。
ハルカさんが行ってくれたから、分かったことだ。
ハルカ
「経理に言う必要あるんですか」と言われました。
大野部長
言われるだろうね。
それでも行ってくれて、ありがとう。
次は私も一緒に行くよ。

ハルカが席に戻ろうとしたとき、情報システムから、先日の20件の件で回答が届いた。

大野部長
情報システムから回答が来た。
個人の無料アカウントで、入力が学習に使われる設定だった。
件数は、ハルカさんの申告と利用履歴を照らして20件。
ハルカ
履歴を消せば、大丈夫でしょうか。
大野部長
履歴は消そう。
ただ、送った情報が向こうでどう扱われるかは、
それだけでは分からない。
経緯を記録して、情報システムと対応を続ける。
大野部長
「部として入れていい文書と使っていいサービス」は、
来週の部会で決める。
決めていなかったのは、私の方だから。
結び

事前相談決めることと、聞くこと

件名:事前相談のお願い監査法人 主査 殿新リース基準の適用準備について、論点整理のための事前相談を……20件:記録・確認中

その夜、部長は調査票の最後の欄を見ていた。「会計方針について、監査法人と事前に協議した事項」。

例外が3件。基準書の穴が2つ。覚書が何件あるかは、まだ分からない。12月中旬の正式な協議まで待てば、全部が「未確認」のまま監査法人に渡る。

部長は、監査法人の主査あてに、論点整理のための事前相談を申し込むメールを書き始めた。何を決めて、何を聞くのか。それはまだ、書けていない。

第2話 おわり次の話:第3話|決めたことと、聞くこと
学び

この話の、二人の反省と学び

ハルカの反省と学び
1空欄は、理由を付けて出す
「まだ分かりません」ではなく「仮の判断・そう考えた理由・迷っている点」を書いて持っていく。部長は空欄ではなく、考えた跡を見ていた
2判断に要る情報は、契約書の外にある
売上実績、閉店の可能性、経営会議の話。基準書は「確認する」と書くだけで、どこで誰に聞くかは書いていない。聞きに行くのも仕事の一部
3間違いは、情報がなかったことで起きる
倉庫の5年は、過去の事実で置いていた。期間は「これから解約する可能性」で見る。知らなかったことを責めるのではなく、知る仕組みを作る側に回る
大野部長の反省と学び
1基準書の穴は、当ててみて初めて分かる
売上連動の最低賃料なし、共用部の配分、経営情報の経路。3つとも書いていなかった。当てはめる人が持ってくる「空欄」が、基準書を直す材料になる
280件は「把握している80件」だった
造作の覚書は本部に出ていなかった。網羅性は経理の中では確認できない。店舗開発部と一緒に行く
3AIの件は、確認してから決める
履歴は消すが、それで送った情報が消えるとは限らない。経緯を記録し、情報システムと確認を続ける。入れていい文書とサービスは部会で決める
PART 2物語に登場した社内資料
付録

判断基準書(第1版)全文大野部長が10日で書いたもの

この物語の会社(架空)で、大野部長が10日で書き上げた判断基準書の第1版です。第2話でハルカが当てはめて見つけた穴は、あえてそのまま残し、最後に「第2版への追記事項」としてまとめています。ページ番号は原本(A4・全12ページ)のページです。実在の会社の文書ではありません。自社で作るときは、自社の契約と監査人との協議にもとづいて作成してください。

判断基準書 新リース会計基準の適用にあたっての当社の判断(第1版)

作成経理財務部長 大野(2026年9月)状態第1版・作成済み(部会の承認前)適用開始2027年4月1日(予定)対象借手としてのリース(当社と子会社3社)
⚠ これは第1版・部会の承認前の文書で、物語の都合で意図的に未整備の箇所を含みます(例:3-2 の管理費の扱い、3-4 の売上連動賃料、4-2 の自動更新)。ひな形として使うときは、末尾の 第2版への追記事項 もあわせて確認してください。

1 目的と適用範囲p.1

本書は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「基準等」)を当社に当てはめるにあたり、判断が必要な事項について当社の考え方と手順を定める。

当社は2028年3月期の期首(2027年4月1日)から基準等を適用する。本書は当社及び連結子会社3社の、借手としてのリースに適用する。

本書に定めのない事項は基準等による。判断に迷う事項は経理財務部長に相談し、必要に応じて監査法人と事前に協議する。

2 リースの識別(契約にリースが含まれるか)p.2

契約が、特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含む。名称が「賃貸借契約」「業務委託契約」「覚書」等のいずれであるかは問わない。

次の順で判定し、判定結果と根拠を契約一覧に記録する。

  • ① 資産が特定されているか(契約書の物件・区画・号機の記載。貸手が実質的な入替権を持つ場合は特定されていない)
  • ② 当社が使用期間全体を通じて、その資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を持つか
  • ③ 当社がその資産の使用方法を指図する権利を持つか(営業時間・用途・レイアウトを当社が決められるか)

店舗・倉庫・事務所の不動産賃貸借契約は、原則としてリースを含むものとして扱う。物流委託、システム利用、複合機の保守付き契約は、上記①〜③で個別に判定する。

3 リース料と、リースを構成しない部分p.4

3-1 リース料に含めるもの

  • ① 固定リース料(リース・インセンティブを受け取る場合は控除する)
  • ② 指数又はレートに応じて決まる変動リース料(3-4による)
  • ③ 残価保証に係る支払見込額
  • ④ 行使することが合理的に確実な購入オプションの行使価額
  • ⑤ リース期間が解約オプションの行使を反映している場合の解約損害金

差入敷金・保証金のうち返還されるものはリース料に含めず、従来どおり資産として扱う。

3-2 リースを構成する部分と構成しない部分

一つの契約に、リースを構成しない部分(共用部分の管理費、清掃・警備などのサービス等)が含まれる場合は、これを区分して会計処理する。

3-3 借手のリース料の確認

契約一覧には、月額の固定賃料、改定条項の有無、変動部分の有無、管理費・共益費の内訳を記載する。契約書で確認できない事項は、店舗開発部又は総務部に確認し、確認先と日付を記録する。

3-4 変動リース料

賃料改定条項等により、指数又はレートに応じて変動するリース料は、リース開始日の指数又はレートを用いて算定し、リース料に含める。

指数又はレートの変動により今後支払う借手のリース料が変動したときに、変動後の借手のリース料にもとづいてリース負債を再測定する(将来の指数又はレートを見積る取扱いは採用しない)。

4 リース期間(延長・解約オプションの評価)p.6

4-1 基本的な考え方

リース期間は、契約上の解約不能期間を出発点に、延長・解約のオプションを評価して決める。契約書に書かれた期間をそのまま使うのではなく、当社が実際にどれだけの期間使うことが「合理的に確実」かで判断する。

4-2 延長オプション・解約オプション

解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を加えて、リース期間とする。

判断にあたっては、次の要因を総合的に考慮する。

  • ① オプション期間の賃料など契約条件
  • ② 重要な造作(建物附属設備)の有無
  • ③ 事業上の重要性、代わりの物件の見つけやすさ
  • ④ 出店計画と閉店の可能性(店舗開発部の資料で確認する)

4-3 普通借家契約

普通借家契約は、当社が更新を望めば継続できることが多い。契約期間と更新条項に加え、4-2の要因、とくに造作の投資額と残存耐用年数、出店計画上の位置づけから、更新後の期間を含めるかを店舗ごとに判断する。過去の使用実績は判断材料の一つにとどめ、将来の使用の見込みで判断する。

4-4 見直し

当社がコントロールできる重要な事象(大規模な改装、移転・閉店の決定等)が生じ、合理的に確実かどうかの判断が変わった場合は、リース期間を見直し、リース負債を再測定する。

5 短期リース・少額リースの簡便的な取扱いp.8

次のリースは、使用権資産とリース負債を計上せず、借手のリース料を費用として処理する。

  • ① 短期リース:リース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないもの(原資産の種類ごとに適用する)
  • ② 少額リース:(a) 当社の減価償却資産の費用処理基準額(10万円)以下のもの、又は (b) 企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約ごとの金額が300万円以下のもの。(b) の判定に用いる金額は、原則として借手のリース期間に係る借手のリース料とする

①②は、基準等で認められた簡便的な取扱いのうち当社が選択した方法である。②(b) は、基準等が認める方法のうち、リース契約ごとの金額による方法を選択したものである(他社では別の方法を選ぶこともある)。選択した方法は首尾一貫して適用する。

簡便的な取扱いを適用した契約も契約一覧に残し、適用した理由を記載する。

6 割引率p.9

貸手の計算利子率を知り得る場合はそれを用い、知り得ない場合は、当社の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を用いる。

追加借入利子率は、リース期間に応じた期間別の利率表(主要取引銀行の借入条件をもとに財務担当が作成)から選ぶ。利率表は半期ごとに更新し、新規契約等の測定に用いる(計上済みのリース負債の割引率を半期ごとに変えるものではない)。

7 当初測定と事後の会計処理p.10

リース負債は、リース開始日において未払の借手のリース料を6の割引率で割り引いた現在価値で測定する。

使用権資産は、リース負債の額に、前払リース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加え、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で測定する。

使用権資産は、所有権が当社に移転すると認められるリースは自社所有の同種資産と同じ方法で、それ以外はリース期間を耐用年数とし残存価額をゼロとして定額法で償却する。リース負債は利息法で利息費用を配分する。

8 適用初年度の取扱い(経過措置)p.11

適用初年度の期首に、基準等を適用した累積的影響額を利益剰余金に加減する方法を採用する予定である。採用する経過措置と実務上の便法は、監査法人との協議を経て確定する。

9 体制と記録p.12

  • ① 契約一覧(リース台帳)は経理財務部が管理し、店舗開発部・総務部・物流子会社から契約の提出を受ける
  • ② 判断の記録は、契約ごとに「判断・理由・確認先・日付・判断の状態(確定・仮・要相談)」を残す
  • ③ 本書は年1回及び基準等の改正時に見直し、部会で承認する
第2話で見つかった穴 ── 第2版への追記事項(未確定)
3-4売上に連動する賃料

指数又はレートに応じて決まるもの以外の変動リース料(売上・使用量に連動する賃料)は、原則としてリース料に含めず、発生時の費用とする。ただし、形式上は変動でも実質的に固定されている支払は固定リース料として含める。最低賃料がある契約は、その部分をリース料に含める。

3-2構成部分の配分と、区分しない選択

区分する場合は、リース部分とそれ以外の部分の独立価格の比率で対価を配分する(独立価格が観察できない部分は見積る)。管理費・共益費は、まず何の対価なのかを確かめる。区分しない方針を選ぶかどうかは、原資産の種類ごとに決めて本書に書く。

4-2自動更新の契約

1年ごとの自動更新契約(解約通知6か月前)について、当社と貸主のどちらが解約できるか、解約したときの不利益はどの程度かを契約書で確かめたうえで、解約不能期間と、評価の対象とする更新後の期間をどう捉えるかの手順を書く。

4-2④経営情報の経路

出店・退店・拠点の集約など、経営会議で検討中の情報を、誰がいつ経理財務部に伝えるかを定める(例:経理財務部長が四半期ごとに確認し、判断に反映する)。

9①網羅性の確認

本部に提出されていない造作の覚書・付帯契約を含め、各部署に契約の網羅的な提出を依頼し、提出漏れがないことの確認を取る。80件の調査範囲を再確認する。

第2版は、監査法人との事前協議で論点を確認したうえで、社内承認を経て確定させる予定です。

PART 3学ぶ世界へ・前後の話
→

この話に出てきた知識・前後の話

この話に出てきた知識(学ぶ世界へ)
経理財務部の物語|第2話|2026年9月末
前の話:第1話|80件の契約書は、誰が読むのか / 次の話:第3話|決めたことと、聞くこと / 記録ページ(年表・会社のいま・話数一覧) / ハルカの学習ノート(リース会計ラボの章)

この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。