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経理財務部の物語 第3話(10月5日)|決めたことと、聞くこと

経理財務部の物語 第3話 アイキャッチ(日付補正)
経理財務部の物語第3話2026年10月上旬・本社 経理財務部/学習室/店舗開発部次:第4話(10月12日)|閉じた場合と、続けた場合
この話の中心大野部長登場大野部長・ハルカ・先生・店舗開発部の担当前の話第2話|調査票の空欄
舞台の会社について(開く)
架空の製造小売。グロース上場・3月決算・子会社3社。店舗68・賃貸借契約80件・経理財務部8人。来期(2028年3月期)から新リース会計基準が強制適用になる。年表・会社のいま・話数一覧は 経理財務部の記録 に。会計の知識は各話の末尾「この話に出てきた知識」からラボと学習ノートへ。
PART 1物語
1

十四の質問事前相談メールの下書き

件名:事前相談のお願い(下書き)1 適用時期はこれでよいか2 経過措置はどちらにすべきか3 少額の基準はこれでよいか4 割引率はこれでよいか5 売上連動は…………全14項目覚書 12店分10月上旬の夜。下書きのまま、週末をこえた。

2026年10月上旬。
中間決算の締めが始まり、部の机に試算表が並び始めた週だった。
部長の画面には、先週書き始めたメールが、まだ下書きのまま残っていた。

夜7時。ハルカが、店舗開発部から届いた覚書の束を持って、部長の席に来た。

ハルカ
覚書、届いた分です。
12店分でした。
残りは「現場に聞かないと分からない」そうです。
大野部長
ありがとう。
12店分か……。
全店で何件あるのかも、まだ分からないんだね。
ハルカ
はい。
……部長、それ、監査法人へのメールですか。
大野部長
うん。
事前相談の申込みだよ。
週末をはさんで、書いては消している。

画面には、質問が縦に並んでいた。数えると、14あった。

事前相談のお願い(メール下書き)第0版・未送付

1 適用時期は、2028年3月期の期首からでよいか

2 経過措置は、どちらの方法を選ぶべきか

3 少額リースの金額基準は、300万円でよいか

4 割引率の決め方は、これでよいか

5 売上に連動する賃料は、どう扱うべきか

6 本社の管理費は、区分すべきか

7 倉庫のリース期間は、何年とすべきか

……(全14項目)

ぜんぶ「〜でよいか」「〜べきか」
架空の会社の社内文書(抜粋)
ハルカ
これ、全部聞くんですか。
大野部長
全部聞いておけば、あとで「聞いていない」とは言われない。
……そう思って書いたんだけどね。
ハルカ
少額リースの金額や割引率の決め方も入っています。
それは、部長が基準書で決めたことでは。
大野部長
そうなんだ。
決めたはずのことまで、「これでいいですか」と聞いている。
窓の外が暮れていく。
大野部長
読み返すと、自分の判断を、
監査法人に預けようとしている
メールに見えるんだ。
ハルカ
でも、間違っていたら困りますよね。
聞いておいた方が、安全な気もします。
大野部長
安全に見えるね。
ただ、それで外れたとき、誰が決めたことになるんだろう。

部長は下書きを保存して、画面を閉じた。送信ボタンには、今夜も触れなかった。

大野部長
明日、一人、相談に行ってくるよ。
ハルカさんは、
覚書の12店分を一覧に足しておいてくれるかな。
2

学習室監査法人は、会社の代わりに決められない

翌日の夕方。部長は、若い頃に通った学習室にいた。印刷した下書きを一枚、机に置く。
先生
お疲れさまです、大野さん。
中間決算の締めが始まったところでしょう。
大野部長
ええ、なんとか。
今日は、監査法人への事前相談のことで伺いました。
質問が14項目になってしまって。
先生
拝見します。
……一つ伺ってもいいですか。
先生
この14のうち、基準が決めていること、
会社が選べること、
会社が見積もって判断すること。
それぞれ、どれでしょう。

部長はペンを取り、項目の横に印を付け始めた。基、選、判。迷う印が、三つ残った。

基準の定め読めば足りる当社の選択理由を付けて説明当社の判断材料と期日迷う 3A基準が決めていること、会社が選ぶこと、会社が判断すること。
先生
基準で処理が明確に決まっていることは、
監査法人に聞いても答えは同じです。
まず基準を確認すれば足ります。
先生
選ぶことと判断することは、
監査法人が会社の代わりに決めることはできません。
決めるのは会社です。
大野部長
……そうですね。
分かっていたつもりでした。
先生
ええ。
事前相談は、決めた考え方と根拠を見てもらって、
材料に足りないものがないかを確かめる場になることが多いですね。
先生
質問だけを並べて持っていくと、
「御社はどうお考えですか」と返されて、
そこで止まる会社もあります。
大野部長
目に浮かびます。
では、決めきれないものはどうしますか。
1年ごとの自動更新の倉庫です。
先生
そこは……正直に言うと、
私も今ここで簡単には判断できません。
大野部長
先生でも、ですか。
先生
どちらが、どんな条件で解約できるのか。
解約したときの不利益はどの程度か。
それに、倉庫を集約するかどうかが、
まだ決まっていませんよね。
先生
材料がそろっていない段階で、
私が結論を言うのは違うと思います。
大野部長
倉庫の集約の話は、私は知っていたんです。
でも、ハルカさんに渡していなかった。
基準書にも、情報の経路を書きませんでした。
先生
そこに気づけたのは大きいですよ。
一つ伺います。
もし集約が決まったら、動くのはリース期間だけでしょうか。
大野部長
……いえ。
倉庫の造作は、使う期間が短くなれば耐用年数を見直します。
原状回復が早まれば、資産除去債務の見積りも変わる。
大野部長
使わなくなる設備が出れば、
減損の兆候も見ないといけませんね。
先生
ええ。
倉庫を物流子会社に使わせる形なら、親会社では転貸、
サブリースの検討も出てきます。
連結と単体で、見え方が変わりますね。
大野部長
一つの経営判断で、論点がいくつも動くわけですか。
先生
だから、決まってから知るのでは遅いことがあるんです。
では、倉庫は「未決」として持っていきますか。
大野部長
……そうしようと思います。
先生
それなら、何がそろえば決められるのかと、
いつまでにを書いておくといいですね。
未決と、預けることは違いますから。
先生
それと、社長がそのメモを読んだら、
どこで手が止まるかも一度考えてみてください。
大野部長
「倉庫の集約」の行ですね。
まだ経営会議の中の話です。
誰に断ってから出すかも、決めないといけない。

帰りの電車で、部長は14の項目を三つの箱に分け直した。基準の定め、当社の選択、当社の判断。

3

一緒に行く店舗開発部と、覚書の続き

出店計画・図面造作の覚書最低保証 月額…20店・10月末約束どおり、二人で。「『ない』を確かめる方が大変なんですよ」

二日後。部長は約束どおり、ハルカと二人で店舗開発部の島へ行った。

大野部長
お忙しいところすみません、経理財務部の大野です。
覚書の件で、お願いに来ました。
店舗開発部
ああ、部長さんまで。
12店分は出しましたよね。
大野部長
ええ、ありがとうございます。
助かりました。
残りの店舗に、覚書がいくつあるかを知りたいんです。
店舗開発部
正直、分からないんです。
開店のときに、現場と大家さんで交わしたものもあるので。
ハルカ
店舗ごとに「覚書なし」と分かるだけでも、助かります。
店舗開発部
「ない」を確かめる方が大変なんですよ。
全店に聞くことになるので。

担当の言うことは、もっともだった。部長は、すぐには次の言葉を出さなかった。

大野部長
……全店でなくていいです。
今月末までに、造作の大きい店から20店。
分かる範囲でお願いできますか。
店舗開発部
20店なら、なんとか。
ただ、残りはいつになるか約束できません。
造作の覚書 ── 店舗ごとの確認状況(1マス=1店)受領受領受領受領受領受領受領受領受領受領受領受領優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先優先……………………受領済み 12店優先調査 20店(10月末まで)その他の店舗は未確認優先調査の20店は、受領済みの12店とは別。残りの店舗は、まだ分からない。
大野部長
それで構いません。
……ところで、契約書の原本は、どこで保管されていますか。
店舗開発部
うちのキャビネットです。
総務には写しを回しているはずですけど、全部かどうかは。
大野部長
原本がどこにあって、誰が最新のものを持っているか。
会社として、決まっていないんですね。
店舗開発部
総務にまとめるって話、前にもありましたよ。
でも、更新の交渉はうちがやるので、
手元にないと困るんです。

どちらの言い分にも、理由があった。部長は、その場で答えを出さなかった。

大野部長
分かりました。
原本の置き場所と覚書の残りは、
私から総務部長と店舗開発部長に相談します。
店舗開発部
あ、それと。
出した12店分に、郊外モール店の覚書がありましたよね。
あれ、最低保証が書いてあるはずです。
ハルカ
……最低保証、ですか。
賃貸借契約の方には、売上連動としか書いていませんでした。
店舗開発部
売上が落ちても、月にいくらかは払う約束です。
大家さんの条件で。

ハルカは、ノートの「仮:負債に載せない」の行に、小さく線を引いた。

大野部長
最低保証の部分は、実質的に固定の支払だね。
その分はリース料に入る。
仮判断が一つ動いたね。
ハルカ
覚書を読んでいなかったら、気づきませんでした。
大野部長
「80件」を、もう一度数え直すつもりで行こう。
4

三つの箱論点整理表と、ハルカの異論

翌朝。部長は、14の質問を一枚の表に組み直していた。ハルカが、調査票の回答の最終稿を持ってきた。
大野部長
ちょうどよかった。
事前相談のメモ、見てもらえるかな。
聞くことは5つに減ったんだ。
事前相談メモ(論点整理表)第1版案 抜粋
基準の定め当社の選択当社の判断
No.3短期・少額リース当社の選択方針ご説明のみ
No.6リースを構成しない部分当社の選択区分しない本社1件の影響は軽微
No.7倉庫のリース期間当社の判断未決材料:解約条件・集約の結論
期日:12月中旬

伺いたいこと:5項目

No.6 ── 区分しないのは資産の種類ごと? 店舗の共益費は?
架空の会社の社内文書(抜粋)
ハルカ
「基準の定め」「当社の選択」「当社の判断」……。
決めたことには、理由が書いてありますね。
大野部長
決めたことは説明する。
聞くのは、考え方が分かれそうなところと、
材料が足りているかどうかだけにした。
ハルカ
倉庫は「未決」なんですね。
大野部長
うん。
契約の解約条件と、集約の結論。
この二つがそろったら、12月中旬までに決める。
大野部長
それと、ハルカさんに言っておくことがある。
倉庫の集約の話、私は知っていたのに、渡していなかった。
あれは私の判断の誤りだよ。
ハルカ
……はい。
大野部長
社長に話して、拠点の出店・閉店や集約が議題に出たら、
経営企画から一報をもらうことにした。
「全部は見せられない」とは言われたけどね。
ハルカ
No.9の網羅性も、気になっています。
契約の原本がどこにあるか決まっていないなら、
来年も同じことになりませんか。
大野部長
なると思う。
今の台帳は、Excelと、私たちの記憶だ。
網羅的です、とは言えないね。
ハルカ
契約を一か所で管理して、
そこからリースの台帳に流れてくれば、
覚書も漏れにくいですよね。
大野部長
そうだね。
第1話で、
Excelかシステムかは要件を書いてから相談すると先生に言ったけど、
順番が見えてきた。
大野部長
先に、契約がどこに集まるか。
次に、それがリースの台帳と計算にどうつながるか。
Excelかシステムかは、その後だ。
ハルカ
総務には、話をしてあるんですか。
大野部長
まだだよ。
人が足りないと言われるだろうね。
社長に一枚で出す話になると思う。
ハルカ
部長、一つだけ、いいですか。
大野部長
どうぞ。
ハルカ
No.6の本社の管理費、「区分しない」になっています。
大野部長
うん。
内訳が取れないし、本社の1件なら、
分けずに全部リースとしても影響は小さいと思ってね。
ハルカ
区分しないかどうかは、
資産の種類ごとに選びますよね。
建物で選ぶと、店舗の共益費も全部、リース負債に入ります。

部長の手が止まった。指が、表の「本社3F」の行と「店舗」の行を行き来した。

大野部長
……そうか。
本社の1件だけを見て決めていた。
ハルカ
店舗の共益費は、賃料の1割を超える店もあります。
大野部長
それは大きいね。
ありがとう。
ここは、私が早く決めすぎた。
大野部長
建物は区分するに戻そう。
そのかわり、店舗の共益費の内訳を集める仕事が増える。
ハルカ
……はい。
店舗開発部に、もう一度行くことになりますね。
大野部長
今度も、一緒に行くよ。
5

部会AIの利用ルールを決める

AIの利用ルール(当面・仮)・入れない:契約書・個人情報・入れない:公表前の数字・経営会議の情報・使える:情報システムが確認したもの(現在なし)・読み取りは手作業+部長の抜き取り・3か月後に見直す金曜の部会。「説明できる遅さを選びたい」
その日の午後、金曜の部会。議題の最後は、第1話から持ち越していた「AIの使い方」だった。
大野部長
情報システムと確認した結果を踏まえて、
当面のルールを決めます。
大野部長
契約書、個人情報、公表前の数字、経営会議の情報。
この四つは、外部のAIサービスに入れない。
大野部長
使っていいのは、
情報システムが設定と契約条件を確認したサービスだけ。
今の時点では、まだ一つもない。

部員の一人が、小さく手を挙げた。「それだと、契約書の読み取りは全部手作業ですか。年内に終わりますか」

大野部長
手作業に戻します。
かわりに、読み取りを二人増やして、
私が抜き取りで確認する。
大野部長
遅くなるのは分かっている。
それでも、何を入れたか説明できない便利さより、
説明できる遅さを選びたい。
ハルカ
心の声
20件を入れたのは、私だ。
あの夜の便利さが、今、部の全員の手間になっている。
大野部長
このルールは仮のものです。
サービスの確認が済んだら、3か月後に見直します。
ハルカ
心の声
見直す、と最初に言ってくれた。
それだけで、少し顔を上げられた。
結び

一報送ったメールと、最初に流れてきた話

送信済事前相談のお願い(論点整理表 第1版)受信Re: 10月下旬に1時間。ご判断と根拠のご説明を受信経営企画:郊外の二店、閉店を含め検討開始経路は、できた。最初に流れてきたのは、閉店の話だった。

部会のあと、部長は事前相談のメモを添えて、メールを送った。
聞くことは5つ。
決めたことは、理由と一緒に書いた。

返信は、その日の夕方に来た。

✉監査法人 監査チーム 主査
10月下旬に1時間お取りします。
当日は、御社のご判断と根拠をご説明ください。
未決の事項は、判断の時期と判断材料を伺います。

退社の少し前。
経営企画から、初めての一報が届いた。

✉経営企画(新しい連絡経路の、最初の一報)
郊外の店舗のうち二つについて、閉店を含めた検討を始めます。

部長の机には、書きかけの紙がもう一枚あった。
総務部長には、まだ話していない。

契約の管理を、どこに置くか

経路は、できた。
最初に流れてきたのは、当てはめたばかりの店舗のリース期間を揺らす話だった。

次の話へ持ち越したこと
  • 倉庫のリース期間 ── 未決(12月中旬までに判断)
  • 郊外の二店舗 ── 閉店を含めて検討開始
  • 契約の管理をどこに置くか ── 総務部長とは未調整
  • 覚書の残り ── 20店分は10月末、その先は未定
  • 事前相談 ── 10月下旬
学び

この話の、二人の反省と学び

大野部長の反省と学び
1質問を並べる前に、三つに分ける
基準が決めていること/会社が選ぶこと/会社が判断すること。基準が決めていることは読めば足りる。選択と判断は、監査法人が会社の代わりに決めることはできない。決めたことは理由を付けて説明する
2一つの判断が、論点をいくつも動かす
倉庫の集約が決まれば、リース期間・造作の耐用年数・資産除去債務・減損・子会社への転貸が一度に動く。だから倉庫は「未決」とし、何がそろえば・いつまでに決めるかを書いた。未決と、判断を預けることは違う
3一件を見て決めると、全件に効く
「区分しない」は資産の種類ごとの選択。本社1件の手間を減らすつもりが、店舗の負債を膨らませるところだった。自分の即決を、部下の異論で撤回できた
ハルカの反省と学び
1異論は、根拠と影響を添えて言う
「区分しないのは資産の種類ごと」「店舗の共益費も入る」。部長の判断に反対するときは、どの定めで、どこに効くかを一緒に出した
2覚書一枚で、仮判断は動く
売上連動だけに見えたモール店に、覚書で最低保証があった。実質的に固定の部分はリース料に入る。契約書だけを読んでも、契約は分からない
3網羅性は、契約がどこに集まるかで決まる
原本は店舗開発部、写しは総務。会社として契約を管理する部署が決まっていなければ、毎年同じ漏れが起きる。契約の管理→リースの台帳→計算がつながっているかが、Excelかシステムかより先の問い
PART 2物語に登場した社内資料
付録

事前相談メモ(論点整理表)第1版 全文大野部長が監査法人に送ったもの

この物語の会社(架空)で、大野部長が監査法人への事前相談の前に送ったメモの第1版です。最初の下書き(第0版)は質問を14項目並べたものでしたが、論点を「基準の定め/当社の選択/当社の判断」に分け、決めた事項は結論と根拠を書き、伺う事項を5つに絞りました。実在の会社・監査法人の文書ではありません。自社で作るときは、自社の契約と監査人との協議にもとづいて作成してください。

新リース会計基準の適用に関する事前相談メモ(論点整理表)(第1版)

宛先監査法人 監査チーム 主査 殿作成経理財務部長 大野(2026年10月)状態第1版・送付済み(事前相談の前)社内の扱い部会に報告済み。経営会議で検討中の事項は社長の了承を得て記載
⚠ これは第1版・事前相談の前の文書です。No.7(倉庫)は未決、No.8・No.9 は作業中のまま送っています。相談の結果を受けて第2版を作る予定です(結果は物語の後の話で描きます)。

1 この相談の目的

当社は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「基準等」)を、2028年3月期の期首(2027年4月1日)から適用する予定である。

10月下旬に予定している事前相談に向けて、当社がすでに決めた事項についてはその考え方と根拠をご説明し、判断の材料に不足がないかについてご意見を伺いたい。未決の事項は、12月中旬を目途に判断する。

会計処理の選択と判断は当社が行う。未決の事項は、判断に必要な材料と判断の時期をお示しする。

2 当社の現状(2026年10月上旬)

  • ① 判断基準書:第1版を作成済み(部会の承認前)。契約への当てはめで、第2版への追記事項5件を把握している
  • ② 契約一覧:把握済みの賃貸借契約80件の当てはめを継続中。本部に提出されていなかった造作等の覚書を回収中(12店分を受領。造作の大きい20店分を10月末までに受領予定。残りの店舗は時期未定)
  • ③ 適用準備状況の調査票:11月中旬までに回答予定

3 論点整理表

「区分」は、基準の定め(基準等が処理を定めており、当社に選択の余地がないもの)/当社の選択(基準等が認める方法から当社が選ぶもの)/当社の判断(見積りや事実の評価にもとづき当社が判断するもの)の三つで示す。

基準の定め当社の選択当社の判断
No.1適用時期当社の選択決定
当社の結論
2028年3月期の期首から適用する(早期適用はしない)
根拠・判断材料
契約の収集と台帳の整備に要する期間
伺いたいこと
なし(ご報告)
No.2経過措置当社の選択方針(部会の承認前)
当社の結論
適用初年度の期首に累積的影響額を利益剰余金に加減する方法を採る
根拠・判断材料
過去の契約条件を遡って入手できない契約があること。比較情報を作り直す負担
伺いたいこと
経過措置の実務上の便法のうち、当社が使う予定のもの(当日一覧をお持ちします)について、適用にあたって留意すべき点
No.3短期リース・少額リース当社の選択方針(判断基準書5・部会の承認前)
当社の結論
短期リース(12か月以内・購入オプションなし)は原資産の種類ごとに簡便的な取扱いを適用する。少額リースは、①当社の減価償却資産の費用処理基準額(10万円)以下のもの、又は②企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約ごとの金額が300万円以下のものについて、所定の要件を満たす場合に簡便的な取扱いを適用する。②は、適用指針が認める方法のうち、リース契約ごとの金額による方法を当社が選択したもの。300万円の判定に用いる金額は、原則として借手のリース期間に係る借手のリース料とする
根拠・判断材料
対象契約の件数と金額の集計(当日お持ちします)
伺いたいこと
なし(ご説明のみ)
No.4割引率当社の判断方針(判断基準書6・部会の承認前)
当社の結論
貸手の計算利子率を知り得ない場合は、追加借入利子率を用いる。新規契約等の測定に使う期間別の利率表を財務担当が作成し、半期ごとに更新する(計上済みのリース負債の割引率を半期ごとに変えるものではない)
根拠・判断材料
主要取引銀行の借入条件
伺いたいこと
なし(ご説明のみ)
No.5売上に連動する賃料基準の定め当てはめ中
当社の結論
指数又はレートに応じて決まるもの以外の変動リース料は、リース料に含めない。ただし、最低保証など実質的に固定されている支払は含める
根拠・判断材料
郊外モール店:造作の覚書で最低保証を確認。賃貸借契約書には記載がなかった。他の店舗は覚書の回収を待って確認する
伺いたいこと
なし(覚書の回収状況をご報告)
No.6リースを構成しない部分当社の選択方針(部会に報告済み・承認は判断基準書第2版で)
当社の結論
建物(店舗・事務所・倉庫)は、リースを構成する部分と構成しない部分を区分する(区分しない方法は採らない)。区分は独立価格の比率で配分する
根拠・判断材料
区分しない方法は原資産の種類ごとの選択で、選ぶと店舗の共益費等もリース負債に含まれ、影響が大きい。契約書に内訳がない契約は、貸主への照会又は見積りで配分する
伺いたいこと
独立価格が観察できない管理費・共益費の見積り方法(当社案:貸主への照会、それができない場合は類似物件の管理費水準)が合理的か
No.7倉庫(1年ごとの自動更新)のリース期間当社の判断未決(12月中旬に判断)
当社の結論
未決
根拠・判断材料
①契約上、当社と貸主のそれぞれが解約できる条件と、解約したときの不利益の程度 ②拠点集約の検討の結論(経営会議・12月上旬予定)。集約が決まった場合は、リース期間の見直しに加え、造作の耐用年数、資産除去債務の見積り、減損の兆候、物流子会社に使わせる場合の転貸(サブリース)を併せて検討する
伺いたいこと
当社と貸主の双方が解約できる自動更新契約について、解約不能期間と評価の対象とする更新期間の捉え方に関する当社の考え方(当日ご説明)に、不足している観点がないか
No.8造作等の覚書当社の判断作業中
当社の結論
賃貸借契約と一体のものとして検討する方針
根拠・判断材料
覚書の回収(12店分受領・20店分を10月末までに受領予定)
伺いたいこと
賃貸借契約と別に締結された覚書について、一体として検討すべきかを判断する際の着眼点
No.9契約の網羅性当社の判断(手続)作業中
当社の結論
各部署(店舗開発部・総務部・物流子会社)から契約と覚書の提出を受け、提出漏れがない旨の確認を書面で受ける
根拠・判断材料
覚書が本部に提出されていなかった経緯。契約の原本は店舗開発部、写しは総務部が保管しており、会社として契約を管理する部署が定まっていない(一元管理の要否を社内で検討中)
伺いたいこと
上記の手続が、契約の網羅性の確認として十分か
伺いたいこと:5項目(No.2・No.6・No.7・No.8・No.9)。それ以外は、当社の結論と根拠のご説明です。

4 判断の前提とした社内の手続

  • ① 判断基準書は経理財務部長が作成し、部会で承認する(第1版は承認前)
  • ② 契約ごとの判断は担当者が当てはめ、経理財務部長が例外と通常案件の抜き取りを確認する
  • ③ 経営会議の検討事項の連絡経路(2026年10月から運用):拠点の出店・閉店・集約が経営会議の議題になった場合、経営企画から経理財務部長へ一報する。経理財務部長は、リース期間等の判断に影響するかを確認し、判断の記録に残す
  • ④ 契約書の読み取りに外部のAIサービスは使用しない(2026年10月の部会で決定。3か月後に見直す)
  • ⑤ 契約の管理(未決):契約を管理する部署、原本の保管場所、契約管理からリース台帳への連携の方法を社内で検討中。リース台帳をExcelで運用するか専用のシステムにするかは、その後に決める

5 当日お持ちする資料

  • ① 判断基準書(第1版)と、第2版への追記事項
  • ② 契約一覧(80件)と、受領済みの覚書の一覧
  • ③ 短期リース・少額リースの対象契約の集計
  • ④ 期間別の利率表(割引率)
  • ⑤ 倉庫の賃貸借契約書(写し)と、No.7 の当社の考え方

6 今後のスケジュール

  • 10月下旬 事前相談(本メモ)
  • 11月中旬 調査票の回答
  • 12月上旬 拠点集約の検討結果(経営会議)
  • 12月中旬 未決事項の判断・協議
  • 12月 影響額の試算と取締役会への報告
変更履歴
第0版2026年10月上旬・未送付
質問14項目の箇条書き(メールの下書き)。決めた事項も「〜でよいか」と聞く形だった
第1版2026年10月上旬・送付
論点を「基準の定め/当社の選択/当社の判断」に分け、決めた事項は結論と根拠を記載。伺う事項を5つに絞った。送付前に No.6 を「区分しない」から「区分する」に修正。No.5 に覚書の最低保証を反映
第2版(予定)
事前相談の結果を受けて作成する
PART 3学ぶ世界へ・前後の話
→

この話に出てきた知識・前後の話

この話に出てきた知識(学ぶ世界へ)
経理財務部の物語|第3話|2026年10月上旬
前の話:第2話|調査票の空欄 / 次の話:第4話(10月12日)|閉じた場合と、続けた場合 / 記録ページ(年表・会社のいま・話数一覧) / ハルカの学習ノート(リース会計ラボの章)

この物語は、上場企業の経理財務部の実務をモデルにしたフィクションです。登場する会社・人物・団体は架空のもので、特定の監査法人・企業・製品の手続や見解を描くものではありません。会計・税務の記述は公認会計士・税理士が監修しています。製品名・サービス名は本文に出てきません。

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。