収益認識ラボ①【設例・一定の期間と進捗度編】|先生と一緒に図で学ぶ設例7〜9 転用不能・完了部分の対価の権利・未据付の設備
無料の学習ツール「収益認識ラボ①」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、一定の期間か一時点かと進捗度の設例(設例7、8-1〜8-3、9)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📕 設例・応用6 ラボの画面
はじめに
設例7〜9 ── 「いつ」売上にするか
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用6 ステップ2の関連図
ハルカ
先生、今日は一定の期間か一時点かの設例ですね。
先生
そうだよ。図の3つの要件のどれかを満たせば一定の期間、どれも満たさなければ一時点なんだ。今日は、いちばん迷う(3)の「転用できない資産+完了部分の対価の権利」を、コンサルティングと分譲住戸で比べるよ。最後の設例9では、一定の期間の収益を進捗度でどう測るかを見るんだ。
先生
契約条件を少しずつ変えた3つなんだ。どこで結論が変わるかを、並べて見ていこうか。
設例・応用タブの応用6を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📕 設例・応用6 ラボの画面
○
① 別の用途に転用できないB固有の事実に関するもので、他の顧客に使うことは実務上制約される(適用指針第10項)
○
② 完了部分の対価を収受する強制力のある権利費用+合理的な利益相当額の補償を受けられる(適用指針第11・12項)
第38項(3)を満たす → 一定の期間にわたり充足(進捗度で収益認識)
成果物を一括で渡す契約でも、転用不能+完了部分の対価の権利があれば「一定の期間」になります。
補償額が費用だけ(利益なし)なら(3)②を満たしません。
設例7
コンサルティング ── 最後に渡すレポートでも一定の期間
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用6 ステップ3・4
ハルカ
調査レポートは最後に1回渡すだけです。一時点ですよね。
先生
(1)は×なんだ。他社に引き継ぐと作業を大幅にやり直す必要があるし、顧客はレポートを受け取るまで便益を得ないからね。でも(3)を見ると、レポートはその顧客の事情に固有で他に転用できない。しかも途中で解約されても、費用+12%の利益相当額の補償を受けられるんだ。
迷いポイント 補償があれば、どんな補償でも(3)②を満たす?
ハルカ
解約したときに何かしら補償があれば、(3)②は○ですよね。
先生
補償は、合理的な利益を含む完了部分の販売価格相当である必要があるんだ(適用指針第12項)。この設例の12%は類似の契約の利益率に近いから○だけれど、費用だけの補償なら×になるよ。
💡 そうだったのか!
最後に渡す成果物でも、
転用不能+合理的な利益を含む補償があれば一定の期間。進捗度に応じて収益を認識します。
📘 設例・基礎6 ラボの画面
—
① 別の用途に転用できない②を満たさないので判定不要
×
② 完了部分の対価を収受する強制力のある権利手付金の没収だけで、完了部分の補償を受ける権利がない
○
① 別の用途に転用できない他の顧客への移転が契約上禁止されている(解約の可能性は考慮しない)
○
② 完了部分の対価を収受する強制力のある権利履行を続ければ対価の全額に強制力のある権利を持つ(適用指針第11〜13項)
設例8-1・8-2
分譲住戸 ── 手付金だけか、全額の請求権か
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎6/設例・応用タブ 応用7 ステップ3
ハルカ
同じマンションの住戸なのに、8-1は一時点、8-2は一定の期間なんですね。
先生
上の判定が8-1、下が8-2だよ。8-1は、顧客が途中で払えなくなっても、A社は手付金を没収できるだけ。完了部分の補償を受ける権利がないから、(3)②が×で一時点なんだ。8-2は、他の顧客への転用が契約で禁止され、建設を完了すれば対価の全額を請求できる。判例も同じ方向だから、(3)①②とも○なんだ。
迷いポイント (3)①の転用できないが○なら、一定の期間?
ハルカ
8-1でも、その住戸は特定の顧客に売ると決まっているから、転用できないですよね。それなら一定の期間では。
先生
(3)は①と②の両方が必要なんだ。8-1は②が×だから、①を判定するまでもなく一時点になるよ。
ハルカ
2つ条件があるのに、片方だけで合格にしてもらおうとしていました。テストの答案で、途中式だけ書いて丸をもらう作戦です。
先生
その作戦は、採点する人にも監査する人にも通じないと思うよ。
💡 そうだったのか!
(3)は
転用不能と完了部分の対価の権利の両方が必要。同じ住戸でも、契約条件と判例で結論が変わります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから設例・基礎タブの基礎6(設例8-1)を開き、ステップ3を見る
- 「設例・応用」タブで応用7(設例8-2)のステップ3を開く
👀 「② 完了部分の対価を収受する強制力のある権利」が × → ○ に、ステップ4の結論が 一時点 → 一定の期間 に変わります。
ラボを開く ▶
📕 設例・応用8 ラボの画面
○
② 完了部分の対価を収受する強制力のある権利全額の支払を求める権利も選べる。解約を選べることは評価に影響しない
第38項(3)を満たす → 一定の期間にわたり充足支払継続を求める権利に強制力があることが前提
選択肢の一つとして全額を請求できる強制力のある権利があれば足ります。
設例8-3
解約も選べる ── 選択肢があっても権利はある
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用8 ステップ3・4
ハルカ
8-3では、顧客が払えなくなったら、A社は解約して違約金をもらう道も選べるんですね。それなら全額の請求権があるとは言えない気がします。
先生
A社は、解約するか、契約どおりの支払を求めるかを選べるんだ。全額を求める道がある以上、完了部分の対価を収受する強制力のある権利を持っているよ。解約を選べることは、評価に影響しないんだ。
迷いポイント 選択肢が増えると、権利は弱くなる?
ハルカ
選べる道が2つあると、どちらの権利も中途半端になりそうです。
先生
見るのは「全額を求める権利に強制力があるか」なんだ。それが前提なら、選べる道が増えても(3)②は○のままで、一定の期間になるよ。
💡 そうだったのか!
全額の支払を求める強制力のある権利を
選べれば十分。解約という別の選択肢があっても、一定の期間の判定は変わりません。
📕 設例・応用9 ラボの画面
○
① 財が別個のものではない改装サービスと一体の単一の履行義務
○
② サービスより相当前に顧客が財の支配を獲得12月に搬入、設置は6月
○
③ 財のコストが総コストに対して重要2,000 ÷ 7,000
○
④ 第三者から調達し、設計・製造に重要な関与なし本人に該当(③編で扱う)
空調設備のコストは進捗度から除き、同額の収益を認識(利益ゼロ)
進捗度:1,500 ÷ 5,000 = 30%
収益:(8,000 − 2,000)× 30% + 2,000 = 3,800
| 除外する(適用指針第22項) | 除外しない場合 |
|---|
| 進捗度 | 30% | 50% |
| 収益 | 3,800 | 4,000 |
| 原価 | 3,500 | 3,500 |
| 利益 | 300 | 500 |
除外しないと、据え付けていない設備の購入だけで進捗度が跳ね上がり、履行の程度を過大に表示してしまいます。
決算日:収益の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約資産 | 3,800 | 売上高 | 3,800 |
決算日:原価の計上| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売上原価 | 3,500 | 未払金 | 3,500 |
設例9
未据付の空調設備 ── 進捗度から外して利益ゼロ
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用9 ステップ2〜4
ハルカ
空調設備 2,000 は12月に現場に届いています。原価が発生したんだから、進捗度にも入れていいですよね。
先生
4つの要件を見てごらん。設備は改装と一体で別個ではなく、顧客は据付より相当前に支配を得る。コストは総額に対して重要で、A社は設計・製造に関与していない。4つとも○だから、設備のコストは進捗度から外して、同じ額 2,000 の収益を利益ゼロで認識するんだ。適用指針第22項(2)の取扱いだよ。
迷いポイント 外すと、収益が減ってしまう?
ハルカ
外すと進捗度が 50% から 30% に下がるので、売上が減って損をした気分です。
先生
収益は 3,800 で、外さない場合の 4,000 より 200 少ないけれど、原価は同じ 3,500 だよ。据え付けていない設備で利益を先に出さないための調整なんだ。仕訳は契約資産 3,800/売上高 3,800、売上原価 3,500/未払金 3,500 だね。
💡 そうだったのか!
要件を満たす調達品は、
進捗度から外してコストと同額の収益。据え付ける前に利益を前倒ししないための修正です。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「進捗度」のシミュレーションを開く(応用9の数字)
- 右の「発生したその他の原価(期末まで)」を 1,500 から 2,500 に変える
👀 進捗度が 30% → 50%、収益が 3,800 → 5,000、原価が 3,500 → 4,500、利益が 300 → 500 に。設備分 2,000 は利益ゼロのまま、その他の作業の進み具合だけで利益が増えます。
ラボを開く ▶⏱ 30秒だけラボで試す
- 同じシミュレーションで、プリセット「設備がまだ搬入されていない」を選ぶ
👀 設備の支配が顧客に移っていないので、設備分の収益も原価も入らず、収益 1,800・原価 1,500・利益 300 になります。設備をすでに取得していれば、その 2,000 は費用ではなく、顧客に支配が移るまで棚卸資産等として残る前提です。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて収益認識ラボ①の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
収益認識ラボ①を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。一定の期間かどうかは、第38項の3つの要件を順に確かめる。特に(3)では、契約条件と法的な強制力が結論を左右するんだ。そして進捗度は、履行を忠実に描写するものだけで測る。この2つを持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
今日で①編の設例を全部見ました。最初は「請求書の金額が売上」だと思っていたのに、今は請求書を見ると、履行義務を数えたくなります。
先生
大きな一歩だね。ただ、スマホの料金明細まで履行義務に分けなくていいよ。個人の支払いは考え方の練習だけにしておこうか。
ハルカ
分かりました。でも、分割払いの明細だけは「契約負債は私の方にあるのかな」と、つい考えてしまいそうです。
先生
ハルカさんが負っているのは代金の支払義務だね。基礎編から読み返すと、図の見え方がきっと変わるよ。
参考資料
企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(第35〜45項)/企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(第9〜13・15〜22項、設例7〜9)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値・設定で組み立てたものです。基準確認日:2026年9月29日。
サイト内の関連:【早見表】収益認識基準・適用指針/売上の期間帰属のKAM事例分析
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・5ステップと契約変更編(設例1〜4)/設例・履行義務の識別編(設例5・6)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。