減価償却と繰延資産 ── 損金になるのは「限度額まで」
建物や機械などは、買った年に全額を損金にせず、使う期間に分けて費用にします。損金になるのは、会社が損金経理した減価償却費のうち「償却限度額」まで。定額法・定率法、期中取得の月数、少額の資産、修繕費と資本的支出、繰延資産を整理し、さくら食品の別表四に4行目を書く回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 減価償却資産 | 建物・機械・器具備品など、使うにつれて価値が減っていく資産(土地は含まない) |
| 償却限度額 | 税法で損金にできる減価償却費の上限。償却方法・耐用年数・使った月数で決まる |
| 償却超過額 | 会社が損金経理した減価償却費のうち、償却限度額を超える部分。損金にならず、別表四で加算(留保) |
| 定額法 | 取得価額×定額法の償却率。毎年同じ額を償却する |
| 定率法 | 期首の帳簿価額×定率法の償却率。最初に多く、だんだん少なく償却する |
| 法定償却方法 | 償却方法を届け出なかったときの方法。機械・器具備品などは定率法、建物などは定額法 |
| 一括償却資産 | 取得価額20万円未満の資産をまとめて、3年で均等に損金にする方法 |
| 資本的支出 | 修理・改良のうち、使える期間を延ばしたり価値を高めたりする部分。修繕費ではなく資産の取得価額になる |
| 繰延資産 | 支出の効果が1年以上に及ぶ費用(創立費、借家の権利金など)。効果が及ぶ期間に分けて償却する |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
損金になる減価償却費は、会社が損金経理した額のうち償却限度額まで。限度額は償却方法(定額法・定率法)・耐用年数・使った月数で決まり、超えた部分は償却超過額として加算(留保)。少額の資産、修繕費と資本的支出、繰延資産の扱いも区別できるようになること。
※ 特別償却、圧縮記帳、リース資産の償却、償却方法の変更の手続、耐用年数の短縮は、名前の紹介にとどめます。
図で見る:減価償却の償却限度額(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 償却費は限度額まで
損金 = 損金経理した償却費のうち 償却限度額まで → 超過 150,000円 は加算(留保)
STEP 2 定額法と定率法
V社:定率法(5年・償却率 0.400)→ 1年分 600,000円(定額法なら 300,000円)
STEP 3 期中取得は月数で
償却限度額 = 1年分 600,000円 × 12/12 = 600,000円
STEP 4 少額の資産
取得価額 1,500,000円 → 通常の減価償却
STEP 5 修繕費・繰延資産と別表四
償却超過額 150,000円 → 加算(留保)。翌期以後は不足額の範囲で認容
さくら食品の「育つ別表四」── 4行目を書く
※ 償却超過額は、翌期以後に償却不足額が出たとき、その範囲で損金になります(認容)。別表五(一)で翌期に引き継ぎます(第16回)。
やってみよう:この支出はどう処理する?(6問)
資本金1,000万円の中小企業者等(青色申告、従業員45人)が、令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に支出したものです。
よくある間違い
① 会計で計上した減価償却費は、全額が損金
損金になるのは、損金経理した額のうち償却限度額までです。会社が耐用年数より短い期間で償却したり、多めに計上したりした部分は償却超過額として加算(留保)します。② 少なく計上した年の不足分は、別表四で減算できる
償却限度額に満たない償却不足額は、損金になりません。申告書で減算して取り戻すことはできません。ただし、前期以前の償却超過額があれば、不足額の範囲で損金になります(認容)。③ 修理にかかった費用は、全部が修繕費
使える期間を延ばしたり、価値を高めたりする部分は資本的支出で、資産の取得価額になります。通常の維持管理や元に戻すための支出が修繕費です。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 損金になる減価償却費は、損金経理した額のうち償却限度額まで(31条)。超えた部分は償却超過額で加算(留保)。不足しても減算はできない。
- 定額法=取得価額×定額法の償却率、定率法=期首の帳簿価額×定率法の償却率。届け出なければ、機械・器具備品などは定率法、建物などは定額法。
- 期中に取得したときは、使った月数/12を掛ける(1か月未満の端数は1か月)。
- 10万円未満は全額損金、20万円未満は一括償却資産(3年で均等)、中小企業者等は40万円未満を全額損金(年300万円まで。令和8年4月1日以後の取得)。
- 使える期間を延ばす・価値を高める修理は資本的支出(資産)。支出の効果が1年以上に及ぶ権利金などは繰延資産(20万円未満は支出時に損金)。
参照条文・出典
参照条文:法人税法31条(減価償却資産の償却費)・32条(繰延資産の償却費)、法人税法施行令48条の2(償却の方法)・53条(法定償却方法)・58条〜63条、132条(資本的支出)・133条(少額の減価償却資産)・133条の2(一括償却資産)・134条(少額の繰延資産)、租税特別措置法67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産)、法人税基本通達7-8-1〜7-8-6、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一・第七・第八)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第5章第2節・第3節(pp.52〜73)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)、国税庁『令和8年度 法人税関係法令の改正の概要』(少額減価償却資産)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。