MENU

第9回 減価償却と繰延資産|法人税入門講座

法人税 入門講座|第9回(v3)

減価償却と繰延資産 ── 損金になるのは「限度額まで」

建物や機械などは、買った年に全額を損金にせず、使う期間に分けて費用にします。損金になるのは、会社が損金経理した減価償却費のうち「償却限度額」まで。定額法・定率法、期中取得の月数、少額の資産、修繕費と資本的支出、繰延資産を整理し、さくら食品の別表四に4行目を書く回です。

所要 15分前提:第4回(損金経理・留保)条文:法人税法31条・32条、施行令48条の2・133条・133条の2・132条令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
減価償却資産建物・機械・器具備品など、使うにつれて価値が減っていく資産(土地は含まない)
償却限度額税法で損金にできる減価償却費の上限。償却方法・耐用年数・使った月数で決まる
償却超過額会社が損金経理した減価償却費のうち、償却限度額を超える部分。損金にならず、別表四で加算(留保)
定額法取得価額×定額法の償却率。毎年同じ額を償却する
定率法期首の帳簿価額×定率法の償却率。最初に多く、だんだん少なく償却する
法定償却方法償却方法を届け出なかったときの方法。機械・器具備品などは定率法、建物などは定額法
一括償却資産取得価額20万円未満の資産をまとめて、3年で均等に損金にする方法
資本的支出修理・改良のうち、使える期間を延ばしたり価値を高めたりする部分。修繕費ではなく資産の取得価額になる
繰延資産支出の効果が1年以上に及ぶ費用(創立費、借家の権利金など)。効果が及ぶ期間に分けて償却する
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
損金になる減価償却費は、会社が損金経理した額のうち償却限度額まで。限度額は償却方法(定額法・定率法)・耐用年数・使った月数で決まり、超えた部分は償却超過額として加算(留保)。少額の資産、修繕費と資本的支出、繰延資産の扱いも区別できるようになること。
シンプルな例:V社が計上した減価償却費75万円
→
定率法の償却限度額60万円
→
償却超過額15万円
さくら食品:業務用電気冷蔵庫に計上100万円
→
償却限度額749,250円
→
別表四に加算250,750円

※ 特別償却、圧縮記帳、リース資産の償却、償却方法の変更の手続、耐用年数の短縮は、名前の紹介にとどめます。

ハルカ先生、第8回は別表四に行を足しませんでした。今日は書きますか?
先生今日は4行目を書くんだ。さくら食品が買った業務用電気冷蔵庫の、減価償却を見るよ。
ハルカ冷蔵庫の代金は、買った年の費用にならないんですか?
先生何年も使うものは、使う期間に分けて費用にするんだ。さくら食品は100万円を計上したけど、損金になるのは749,250円までだよ。
ハルカ会計と税法で、償却の額が違うんですね。
先生今日は、その限度額の計算を、5つのステップで見ていこうか。

図で見る:減価償却の償却限度額(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のV社で、5ステップを通してみよう。さくら食品や、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、定額法と定率法を切り替えられるんですね。
先生耐用年数や月数を変えて、償却限度額がどう動くかを確かめてみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 損金になるのは、損金経理した償却費のうち「償却限度額」まで(31条)会計で計上した償却費750,000円税法の償却限度額600,000円償却超過額 150,000円(点線の部分)→ 損金にならない(加算・留保)損金になる減価償却費・確定した決算で、償却費として損金経理した額・そのうち、償却限度額に達するまで・限度額は、償却方法・耐用年数・使った月数で 決まる→ 多く計上しても、損金は増えない超えたとき・足りないとき超過額:別表四で加算(留保)。帳簿価額に 残り、翌期以後の不足額の範囲で損金に なる(認容)不足額:損金にならない。申告書で減算して 取り戻すことはできない
損金 = 損金経理した償却費のうち 償却限度額まで → 超過 150,000円 は加算(留保)
ハルカ減価償却費は、会計で計上した額がそのまま損金ですか?
先生損金になるのは、損金経理した償却費のうち、償却限度額までなんだ。法人税法31条で決まっているよ。
🤔 迷いポイント会社が多めに償却すれば、その分だけ税金を減らせる?
ハルカ早く費用にすれば、得をする気がしていました。
先生V社は750,000円を計上したけど、償却限度額は600,000円なんだ。超えた150,000円は償却超過額で、損金にならないよ。
ハルカ償却限度額は、どうやって決まるんですか?
先生償却方法と耐用年数、それに使った月数で決まるんだ。順に見ていこうか。
💡 そうだったのか!損金になる減価償却費は、損金経理した額のうち償却限度額まで。超えた部分は償却超過額。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 償却費は限度額まで

ハルカ減価償却費は、会計で計上した額がそのまま損金ですか?
先生損金になるのは、損金経理した償却費のうち、償却限度額までなんだ。法人税法31条で決まっているよ。
🤔 迷いポイント会社が多めに償却すれば、その分だけ税金を減らせる?
ハルカ早く費用にすれば、得をする気がしていました。
先生V社は750,000円を計上したけど、償却限度額は600,000円なんだ。超えた150,000円は償却超過額で、損金にならないよ。
ハルカ償却限度額は、どうやって決まるんですか?
先生償却方法と耐用年数、それに使った月数で決まるんだ。順に見ていこうか。
💡 そうだったのか!損金になる減価償却費は、損金経理した額のうち償却限度額まで。超えた部分は償却超過額。

損金 = 損金経理した償却費のうち 償却限度額まで → 超過 150,000円 は加算(留保)

STEP 2 定額法と定率法

ハルカ定額法と定率法は、何が違うんですか?
先生定額法は取得価額に償却率を掛けて、毎年同じ額を償却するんだ。定率法は期首の帳簿価額に償却率を掛けるから、最初に多く償却するよ。
🤔 迷いポイント償却方法は、その年ごとに自由に選べる?
ハルカ利益が多い年だけ、定率法にできると思っていました。
先生資産の種類ごとに選んで、税務署長に届け出るんだ。届け出なければ法定償却方法で、機械や器具備品は定率法、建物は定額法だよ。
ハルカV社は届出がないから、定率法ですね。
先生1年分にすると600,000円だよ。定額法なら300,000円だから、1年目は定率法の方が多いんだ。
💡 そうだったのか!定額法は取得価額×償却率、定率法は期首の帳簿価額×償却率。届け出なければ、機械・器具備品などは定率法。

V社:定率法(5年・償却率 0.400)→ 1年分 600,000円(定額法なら 300,000円)

STEP 3 期中取得は月数で

ハルカ期の途中で使い始めた資産も、1年分を償却できますか?
先生期の途中から使い始めたら、使った月数で按分するんだ。1年分に、月数÷12を掛けるよ。
🤔 迷いポイント期末の直前に使い始めても、1年分を償却していい?
ハルカ買った年は、まるごと1年分を費用にできると思っていました。
先生償却できるのは、事業に使い始めてからの月数だけなんだ。1か月未満の端数は、1か月に数えるよ。
ハルカV社は期首から使っているから、12か月分ですね。
先生そうだよ。償却限度額は600,000円になるんだ。
💡 そうだったのか!期の途中で使い始めたら、使った月数で按分する。1か月未満の端数は1か月。

償却限度額 = 1年分 600,000円 × 12/12 = 600,000円

STEP 4 少額の資産

ハルカパソコンのような安いものも、何年もかけて償却するんですか?
先生取得価額が10万円未満なら、使い始めた年に全額を損金にできるんだ。20万円未満なら、一括償却資産として3年で均等に損金にする方法もあるよ。
🤔 迷いポイント中小企業なら、いくらの物でも買った年に全額を損金にできる?
ハルカ中小企業には、特別な扱いがあると聞いていました。
先生中小企業者等の特例は40万円未満の資産で、合計で年300万円までなんだ。令和8年4月1日以後の取得から、30万円未満から上がったよ。
ハルカV社の器具備品は150万円だから、どれにも当たらないんですね。
先生そうだね。資産に計上して、通常の減価償却をするんだ。
💡 そうだったのか!10万円未満は全額損金、20万円未満は一括償却資産、中小企業者等は40万円未満を全額損金(年300万円まで)。

取得価額 1,500,000円 → 通常の減価償却

STEP 5 修繕費・繰延資産と別表四

ハルカ修理にかかったお金も、減価償却と関係がありますか?
先生使える期間を延ばしたり、価値を高めたりする部分は資本的支出で、資産として償却していくんだ。元に戻すだけの修理は修繕費で、その年の損金だよ。
🤔 迷いポイント修理の請求書なら、全部が修繕費でいい?
ハルカ修理という名前なら、全部が費用だと思っていました。
先生名前ではなく、中身で判定するんだ。借家の権利金のように、効果が1年以上に及ぶ支出は、繰延資産として償却するよ。
ハルカV社の償却超過額150,000円は、別表四で加算するんですね。
先生そうだよ。資産の帳簿価額に残るから「留保」なんだ。
💡 そうだったのか!使える期間を延ばす・価値を高める修理は資本的支出。効果が1年以上に及ぶ権利金などは繰延資産。

償却超過額 150,000円 → 加算(留保)。翌期以後は不足額の範囲で認容

さくら食品の「育つ別表四」── 4行目を書く

※ 償却超過額は、翌期以後に償却不足額が出たとき、その範囲で損金になります(認容)。別表五(一)で翌期に引き継ぎます(第16回)。

先生これが、4行目を書いたさくら食品の別表四だよ。
ハルカ黄色の行が、今日書いた償却超過額ですね。
先生加算の理由、留保の区分、所得への影響を、下のカードにまとめておいたんだ。
ハルカこの超過額は、翌期以後に戻ってくることがあるんですよね。
先生そのとおりだね。償却不足額が出た年に、その範囲で減算するんだ。

やってみよう:この支出はどう処理する?(6問)

資本金1,000万円の中小企業者等(青色申告、従業員45人)が、令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に支出したものです。

ハルカ少額の資産と、修理の判定を練習したいです。
先生左の6問で、取得価額と中身を見ながら判定してみようか。
ハルカ取得した日も、忘れずに見るようにします。
先生少額の特例は、令和8年4月1日をはさんで金額が変わるから大事だね。

よくある間違い

① 会計で計上した減価償却費は、全額が損金

損金になるのは、損金経理した額のうち償却限度額までです。会社が耐用年数より短い期間で償却したり、多めに計上したりした部分は償却超過額として加算(留保)します。

② 少なく計上した年の不足分は、別表四で減算できる

償却限度額に満たない償却不足額は、損金になりません。申告書で減算して取り戻すことはできません。ただし、前期以前の償却超過額があれば、不足額の範囲で損金になります(認容)。

③ 修理にかかった費用は、全部が修繕費

使える期間を延ばしたり、価値を高めたりする部分は資本的支出で、資産の取得価額になります。通常の維持管理や元に戻すための支出が修繕費です。
ハルカ①は、会計の償却費をそのまま損金にしてしまう間違いですね。
先生そうだね。損金になるのは、償却限度額までなんだ。
ハルカ②の不足額は、取り戻せないんですね。
先生計上しなかった年の分は、申告書で減算できないよ。前期以前の償却超過額があるときだけ、認容されるんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 損金になる減価償却費は?
Q2. 償却方法を届け出ていない器具備品は、どの方法で償却する?
Q3. 償却限度額を超えて計上した償却超過額は、別表四でどうする?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 損金になる減価償却費は、損金経理した額のうち償却限度額まで(31条)。超えた部分は償却超過額で加算(留保)。不足しても減算はできない。
  2. 定額法=取得価額×定額法の償却率、定率法=期首の帳簿価額×定率法の償却率。届け出なければ、機械・器具備品などは定率法、建物などは定額法。
  3. 期中に取得したときは、使った月数/12を掛ける(1か月未満の端数は1か月)。
  4. 10万円未満は全額損金、20万円未満は一括償却資産(3年で均等)、中小企業者等は40万円未満を全額損金(年300万円まで。令和8年4月1日以後の取得)。
  5. 使える期間を延ばす・価値を高める修理は資本的支出(資産)。支出の効果が1年以上に及ぶ権利金などは繰延資産(20万円未満は支出時に損金)。
先生今日のまとめだよ。損金になる減価償却費は、損金経理した額のうち償却限度額までなんだ。
ハルカ限度額は、償却方法と耐用年数と月数で決まる。少額の資産には特例があって、修理は資本的支出か修繕費かを見る……ですね。
先生そのとおりだよ。1つだけ足すと、償却不足額は、申告書で減算して取り戻すことはできないんだ。
ハルカ会計で償却するときに、限度額を先に計算しておきます。
先生いい心がけだね。次の第10回では、役員給与が損金になるかを見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法31条(減価償却資産の償却費)・32条(繰延資産の償却費)、法人税法施行令48条の2(償却の方法)・53条(法定償却方法)・58条〜63条、132条(資本的支出)・133条(少額の減価償却資産)・133条の2(一括償却資産)・134条(少額の繰延資産)、租税特別措置法67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産)、法人税基本通達7-8-1〜7-8-6、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一・第七・第八)

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第5章第2節・第3節(pp.52〜73)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)、国税庁『令和8年度 法人税関係法令の改正の概要』(少額減価償却資産)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生減価償却は法人税法31条、繰延資産は32条なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ償却率は、どこに載っていますか?
先生耐用年数省令の別表に載っているよ。講本の第5章にも計算例があって、この教材の図はそれを参考にTaxJudgeが独自に作っているんだ。
法人税 入門講座 第9回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる