申告書のしくみ ── 別表四と別表五(一)
別表四は「その年の所得」を計算する表、別表五(一)は「税法上の純資産」が期首から期末へどう動いたかを示す表です。別表四で「留保」とした金額は別表五(一)に積み上がり、翌期以後に認容されると消えていきます。さくら食品の完成した別表四を、別表五(一)につなげる回です。申告と納付の手続も、ここでまとめます。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 別表四 | 当期純利益から加算・減算をして、所得金額を計算する明細書。その年1年間の「流れ」を表す |
| 別表五(一) | 利益積立金額と資本金等の額の計算に関する明細書。期首と期末の「残高」を表す |
| 利益積立金額 | 所得のうち、会社の外に出さずに残してきた金額の累計。会計の利益剰余金に、税務調整で留保した分を加えたイメージ |
| 資本金等の額 | 株主が出資した金額など(資本金と、資本金にしなかった払込額など) |
| 認容 | 前の年に加算した金額を、後の年に減算して戻すこと(例:賞与引当金を翌期に支給したとき) |
| 未納法人税等 | 当期の所得にかかる法人税・地方法人税・住民税のうち、期末にまだ納めていない額。別表五(一)ではマイナスで書く |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
別表四の留保は別表五(一)の利益積立金額に積み上がり、社外流出は残らない。留保の行は翌期以後の認容で消えていく。納税充当金はプラス、未納法人税等はマイナスで載り、期首+留保の所得−当期の法人税等=期末で検算できる――このつながりを説明できるようになること。
※ 申告書の様式・欄番号の書き方、e-Taxの操作、資本金等の額が動く取引(増資・自己株式の取得など)は扱いません。別表五(一)は、教材用に行をまとめた簡略版です。
図で見る:別表四から別表五(一)へ(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 2つの別表の役割
所得金額 4,600,000円 = 留保 4,400,000円 + 社外流出 200,000円 → 利益積立金額 10,000,000円 → 13,639,000円
STEP 2 留保は五(一)へ
別表五(一)に積み上がる:留保 4,400,000円 載らない:社外流出 200,000円
STEP 3 翌期の認容で消える
減価償却超過額:400,000円 − 翌期の認容 100,000円 = 300,000円
STEP 4 納税充当金と未納法人税等
納税充当金 761,000円(プラス)、未納法人税等 △761,000円(マイナス)
STEP 5 検算と申告の手続
期首 10,000,000円 + 留保 4,400,000円 − 法人税等 761,000円 = 13,639,000円
さくら食品の別表五(一) ── 育てた別表四の行が、ここに積み上がる
※ 別表四の行は、第15回で完成しました(所得金額 13,270,773円)。この回では新しい行を書かず、留保の行を別表五(一)につなげます。第18回では、当期純利益から納付額までを通しで計算します。
やってみよう:別表五(一)に載る?載らない?(6問)
別表四と別表五(一)のつながりを確かめます。
よくある間違い
① 別表四で加算した金額は、すべて別表五(一)に積み上がる
別表五(一)に積み上がるのは留保の金額だけです。役員給与・交際費・寄附金などの社外流出は、会社に残らないので載りません。② 納税充当金は負債だから、別表五(一)でもマイナスで書く
税法では納税充当金を負債と認めないので、プラスで載ります。マイナスで載るのは、当期の所得にかかる未納法人税等です。③ 未納の事業税も、未納法人税等と一緒にマイナスで書く
事業税は原則として申告した事業年度の損金になるので(第11回)、未納でも別表五(一)の「未納法人税等」の行には書きません(未納の事業税は、税金の納付状況の明細書である別表五(二)で管理します)。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 別表四はその年の所得(流れ)、別表五(一)は利益積立金額と資本金等の額(残高)。
- 別表四の留保は別表五(一)の同じ名前の行に積み上がる。社外流出は載らない。
- 留保の行は、翌期以後に認容(減算)されると減っていき、やがて消える。社外流出は戻ってこない。
- 納税充当金はプラス、当期の所得にかかる未納法人税等はマイナス。事業税は未納でも未納法人税等には書かない(原則として申告した期の損金)。
- 検算:期首+留保の所得−当期に発生した法人税等=期末。さくら食品は 26,510,000円 → 35,519,227円。
- 申告・納付は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。申告後に税額の誤りに気づいたら、少なすぎれば修正申告、多すぎれば更正の請求(名前の紹介)。
参照条文・出典
参照条文:法人税法2条16号(資本金等の額)・18号(利益積立金額)、法人税法施行令8条・9条、法人税法71条(中間申告)・74条(確定申告)・77条(納付)、法人税法施行規則34条(別表四・別表五(一)の様式)、国税通則法19条(修正申告)・23条(更正の請求)・24条(更正)・25条(決定)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第1章(資本金等の額・利益積立金額)・第10章(申告・納付)・第12章(更正の請求など)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。