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第16回 申告書のしくみ|法人税入門講座

法人税 入門講座|第16回(v3)

申告書のしくみ ── 別表四と別表五(一)

別表四は「その年の所得」を計算する表、別表五(一)は「税法上の純資産」が期首から期末へどう動いたかを示す表です。別表四で「留保」とした金額は別表五(一)に積み上がり、翌期以後に認容されると消えていきます。さくら食品の完成した別表四を、別表五(一)につなげる回です。申告と納付の手続も、ここでまとめます。

所要 15分前提:第4回(留保と社外流出)・第11回(納税充当金)・第13回(賞与引当金の認容)・第15回(税額)条文:法人税法2条16号・18号、71条・74条、国税通則法19条・23条令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
別表四当期純利益から加算・減算をして、所得金額を計算する明細書。その年1年間の「流れ」を表す
別表五(一)利益積立金額と資本金等の額の計算に関する明細書。期首と期末の「残高」を表す
利益積立金額所得のうち、会社の外に出さずに残してきた金額の累計。会計の利益剰余金に、税務調整で留保した分を加えたイメージ
資本金等の額株主が出資した金額など(資本金と、資本金にしなかった払込額など)
認容前の年に加算した金額を、後の年に減算して戻すこと(例:賞与引当金を翌期に支給したとき)
未納法人税等当期の所得にかかる法人税・地方法人税・住民税のうち、期末にまだ納めていない額。別表五(一)ではマイナスで書く
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
別表四の留保は別表五(一)の利益積立金額に積み上がり、社外流出は残らない。留保の行は翌期以後の認容で消えていく。納税充当金はプラス、未納法人税等はマイナスで載り、期首+留保の所得−当期の法人税等=期末で検算できる――このつながりを説明できるようになること。
シンプルな例:M社の期首1,000万円
→
留保した所得440万円
→
期末の利益積立金額計算
さくら食品:期首26,510,000円
→
留保した所得11,856,427円
→
期末の利益積立金額35,519,227円

※ 申告書の様式・欄番号の書き方、e-Taxの操作、資本金等の額が動く取引(増資・自己株式の取得など)は扱いません。別表五(一)は、教材用に行をまとめた簡略版です。

ハルカ先生、第15回で別表四が完成しました。今日は申告書のしくみですね。
先生そうだよ。別表四の留保の行が、別表五(一)にどうつながるかを見るんだ。
ハルカさくら食品の別表五(一)は、どうなるんですか?
先生利益積立金額は、期首の26,510,000円から、期末の35,519,227円になるんだ。
ハルカ増えた分は、所得金額と同じではないんですね。
先生そこが今日のポイントだね。5つのステップで見ていこうか。

図で見る:別表四から別表五(一)へ(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のM社で、5ステップを通してみよう。さくら食品や、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で翌期の認容額を変えると、残りが変わるんですね。
先生そうだよ。留保の行が、少しずつ消えていく様子を見てみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 別表四はその年の「所得」、別表五(一)は積み上がった「税法上の純資産」別表四(所得の金額の計算)その年1年間の「流れ」当期純利益+ 加算 − 減算所得金額4,600,000うち 留保4,400,000うち 社外流出200,000別表五(一)(税法上の純資産)期首から期末への「残高」Ⅰ 利益積立金額期首10,000,000期末13,639,000Ⅱ 資本金等の額10,000,000(増減なし)積み上がるどちらも法人税の確定申告書に付ける明細書(別表)。別表四は第4回から書いてきた表。利益積立金額:所得のうち会社の外に出さずに残してきた額の累計(会計の利益剰余金+留保の調整)。資本金等の額:株主が出資した金額など。増資や自己株式の取得などで動く(この講座では扱わない)。2つの合計が、税法から見た会社の純資産になる。
所得金額 4,600,000円 = 留保 4,400,000円 + 社外流出 200,000円 → 利益積立金額 10,000,000円 → 13,639,000円
ハルカ別表四はわかりました。別表五(一)は、何を書く表ですか?
先生税法から見た会社の純資産だよ。利益積立金額と資本金等の額の、期首と期末の残高を書くんだ。
🤔 迷いポイント別表四と別表五(一)は、別々に作る表?
ハルカ名前が似ているだけで、関係ないと思っていました。
先生別表四で「留保」とした金額が、別表五(一)の利益積立金額に積み上がるんだ。2つはつながっているよ。
ハルカM社の利益積立金額は、10,000,000円から13,639,000円になるんですね。
先生そうだよ。別表四は1年の流れ、別表五(一)は残高、と覚えておくといいね。
💡 そうだったのか!別表四はその年の所得(流れ)、別表五(一)は利益積立金額と資本金等の額(残高)。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 2つの別表の役割

ハルカ別表四はわかりました。別表五(一)は、何を書く表ですか?
先生税法から見た会社の純資産だよ。利益積立金額と資本金等の額の、期首と期末の残高を書くんだ。
🤔 迷いポイント別表四と別表五(一)は、別々に作る表?
ハルカ名前が似ているだけで、関係ないと思っていました。
先生別表四で「留保」とした金額が、別表五(一)の利益積立金額に積み上がるんだ。2つはつながっているよ。
ハルカM社の利益積立金額は、10,000,000円から13,639,000円になるんですね。
先生そうだよ。別表四は1年の流れ、別表五(一)は残高、と覚えておくといいね。
💡 そうだったのか!別表四はその年の所得(流れ)、別表五(一)は利益積立金額と資本金等の額(残高)。

所得金額 4,600,000円 = 留保 4,400,000円 + 社外流出 200,000円 → 利益積立金額 10,000,000円 → 13,639,000円

STEP 2 留保は五(一)へ

ハルカ留保の金額は、別表五(一)のどこに入るんですか?
先生同じ名前の行に入るんだ。当期純利益は「繰越損益金」の行、減価償却超過額は「減価償却超過額」の行だよ。
🤔 迷いポイント交際費の加算も、別表五(一)に積み上がる?
ハルカ加算した金額は、全部どこかに残ると思っていました。
先生交際費や役員給与は社外流出だから、会社に残らないんだ。別表五(一)には載らないよ。
ハルカM社の留保は4,400,000円、社外流出は200,000円ですね。
先生そのとおりだよ。留保と社外流出を分けたのは、このためだったんだ。
💡 そうだったのか!別表四の留保は別表五(一)の同じ名前の行へ。社外流出は別表五(一)に載らない。

別表五(一)に積み上がる:留保 4,400,000円 載らない:社外流出 200,000円

STEP 3 翌期の認容で消える

ハルカ別表五(一)に積み上がった行は、ずっと残るんですか?
先生翌期以後に認容されると、減っていくんだ。償却不足が出た年に、その範囲で減算するよ。
🤔 迷いポイント一度加算したら、その分の税金は取られたまま?
ハルカ加算した分は、損したままだと思っていました。
先生留保の加算は、損金になる年がずれるだけなんだ。認容の年に減算するから、合計すると同じになるよ。
ハルカM社の減価償却超過額は、翌期の認容で300,000円になりますね。
先生そうだよ。別表五(一)を見れば、翌期以後に減算できる金額がわかるんだ。
💡 そうだったのか!留保の行は、翌期以後の認容(減算)で減っていく。社外流出は戻ってこない。

減価償却超過額:400,000円 − 翌期の認容 100,000円 = 300,000円

STEP 4 納税充当金と未納法人税等

ハルカ納税充当金や未納法人税等も、別表五(一)に載るんですか?
先生載るんだ。納税充当金はプラス、未納法人税等はマイナスで書くよ。
🤔 迷いポイント納税充当金は負債だから、マイナスで書く?
ハルカ会計では負債なので、マイナスだと思っていました。
先生税法では見積りの負債を認めないから、プラスなんだ。マイナスで書くのは、当期の所得にかかる未納法人税等だよ。
ハルカM社は、納税充当金が761,000円、未納法人税等が△761,000円ですね。
先生そうだよ。この例では、2つの行が打ち消し合うんだ。
💡 そうだったのか!納税充当金はプラス、未納法人税等はマイナス。事業税は未納でも未納法人税等には書かない。

納税充当金 761,000円(プラス)、未納法人税等 △761,000円(マイナス)

STEP 5 検算と申告の手続

ハルカ別表五(一)が合っているか、確かめる方法はありますか?
先生期首に留保の所得を足して、当期に発生した法人税等を引くと、期末になるんだ。
🤔 迷いポイント期首に所得金額を全部足せば、期末になる?
ハルカ所得の分だけ、純資産が増えると思っていました。
先生足すのは留保の分だけなんだ。それに、法人税等は払う義務があるから引くよ。
ハルカM社は、期首10,000,000円から期末13,639,000円ですね。
先生そのとおりだよ。申告と納付は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内だよ。
💡 そうだったのか!検算:期首+留保の所得−当期に発生した法人税等=期末。誤りに気づいたら修正申告・更正の請求。

期首 10,000,000円 + 留保 4,400,000円 − 法人税等 761,000円 = 13,639,000円

さくら食品の別表五(一) ── 育てた別表四の行が、ここに積み上がる

※ 別表四の行は、第15回で完成しました(所得金額 13,270,773円)。この回では新しい行を書かず、留保の行を別表五(一)につなげます。第18回では、当期純利益から納付額までを通しで計算します。

先生これが、さくら食品の別表五(一)だよ。
ハルカ賞与引当金や納税充当金は、期首の分が消えて、期末の分が入っていますね。
先生そうだね。売上計上もれや償却超過額は、今年はじめて積まれたんだ。
ハルカ検算も合っています。
先生別表四と別表五(一)が、ぴったりつながっているね。

やってみよう:別表五(一)に載る?載らない?(6問)

別表四と別表五(一)のつながりを確かめます。

ハルカ載るもの、載らないものを練習したいです。
先生左の6問で、留保と社外流出の違いを確かめてみようか。
ハルカ納税充当金と事業税は、間違えないようにします。
先生そこがいちばん間違えやすいところだね。

よくある間違い

① 別表四で加算した金額は、すべて別表五(一)に積み上がる

別表五(一)に積み上がるのは留保の金額だけです。役員給与・交際費・寄附金などの社外流出は、会社に残らないので載りません。

② 納税充当金は負債だから、別表五(一)でもマイナスで書く

税法では納税充当金を負債と認めないので、プラスで載ります。マイナスで載るのは、当期の所得にかかる未納法人税等です。

③ 未納の事業税も、未納法人税等と一緒にマイナスで書く

事業税は原則として申告した事業年度の損金になるので(第11回)、未納でも別表五(一)の「未納法人税等」の行には書きません(未納の事業税は、税金の納付状況の明細書である別表五(二)で管理します)。
ハルカ①は、社外流出も積み上がると思ってしまう間違いですね。
先生そうだね。積み上がるのは留保だけなんだ。
ハルカ③の事業税は、未納でも載せないんですね。
先生そのとおりだよ。事業税は、原則として申告した期の損金になるからなんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 別表五(一)の利益積立金額を増やすのは?
Q2. 期末の利益積立金額の検算式は?
Q3. 申告した法人税が多すぎたと気づいたときの手続は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 別表四はその年の所得(流れ)、別表五(一)は利益積立金額と資本金等の額(残高)。
  2. 別表四の留保は別表五(一)の同じ名前の行に積み上がる。社外流出は載らない。
  3. 留保の行は、翌期以後に認容(減算)されると減っていき、やがて消える。社外流出は戻ってこない。
  4. 納税充当金はプラス、当期の所得にかかる未納法人税等はマイナス。事業税は未納でも未納法人税等には書かない(原則として申告した期の損金)。
  5. 検算:期首+留保の所得−当期に発生した法人税等=期末。さくら食品は 26,510,000円 → 35,519,227円。
  6. 申告・納付は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。申告後に税額の誤りに気づいたら、少なすぎれば修正申告、多すぎれば更正の請求(名前の紹介)。
先生今日のまとめだよ。別表四の留保が、別表五(一)に積み上がるんだ。
ハルカ社外流出は載らない。留保の行は、認容で消えていく……ですね。
先生そのとおりだよ。納税充当金はプラス、未納法人税等はマイナスも大事だね。
ハルカ検算の式で、別表五(一)を確かめられるようになりました。
先生よくがんばったね。次の第17回では、同族会社とグループの税務を見ていこうか。

参照条文・出典

参照条文:法人税法2条16号(資本金等の額)・18号(利益積立金額)、法人税法施行令8条・9条、法人税法71条(中間申告)・74条(確定申告)・77条(納付)、法人税法施行規則34条(別表四・別表五(一)の様式)、国税通則法19条(修正申告)・23条(更正の請求)・24条(更正)・25条(決定)

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第1章(資本金等の額・利益積立金額)・第10章(申告・納付)・第12章(更正の請求など)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生利益積立金額は法人税法2条18号、資本金等の額は2条16号なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカ修正申告や更正の請求は、どこに書いてありますか?
先生国税通則法なんだ。この教材の図は、講本を参考にTaxJudgeが独自に作っているよ。
法人税 入門講座 第16回|taxjudge.com
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