同族会社とグループの税務
株主の上位3グループで発行済株式などの過半数を持つ会社を「同族会社」といい、役員の範囲などに特別な扱いがあります。また、親会社と100%子会社のように「完全支配関係」がある会社の間では、資産を譲渡したときの損益を繰り延べたり、寄附金を全額損金不算入(受け取った側は全額益金不算入)にしたりします(寄附金・受贈益の扱いは、親会社が法人である完全支配関係のときだけ)。さくら食品の同族会社判定と、親子2社の簡単な設例で、位置づけを押さえる回です。
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
| 株主グループ | 1人の株主と、その親族や、その株主が支配している会社などをまとめた1つのグループ |
| 同族会社 | 上位3つの株主グループで、発行済株式(または議決権など)の50%超を持たれている会社 |
| 特定同族会社 | 1つの株主グループで50%超を持たれている会社のうち、資本金1億円超など。留保金課税がある(中小法人は原則として対象外。ただし大法人の100%子会社などは対象になりうる) |
| 完全支配関係 | 発行済株式の全部を直接または間接に持つ関係(100%グループ) |
| 譲渡損益調整資産 | 100%グループ内で譲渡したとき、損益を繰り延べる資産(固定資産・土地・有価証券など。帳簿価額1,000万円未満のものを除く) |
| グループ通算制度 | 100%グループの会社が、承認を受けて選ぶ制度。各社が申告しつつ、所得と欠損を通算する |
| 法令と数字 | この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます |
はじめに:今日のゴール
上位3株主グループの持株割合が50%超なら同族会社。さくら食品は同族会社だが、資本金1億円以下なので留保金課税はない。100%グループの会社の間では、資産の譲渡損益を繰り延べる。法人による完全支配関係なら、寄附金は全額損金不算入・受贈益は全額益金不算入。グループ通算制度は選択制――この位置づけを説明できるようになること。
※ 株主グループの細かな範囲(特殊関係者の範囲)、留保金課税の計算、グループ通算制度の計算、組織再編税制は扱いません。グループの論点は、さくら食品とは別の簡単な設例(親子2社)で見ます。
図で見る:同族会社の判定と100%グループ(5ステップ)
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)
STEP 1 同族会社の判定
上位3グループ 48% ≦ 50% → 同族会社ではない
STEP 2 同族会社の特別な扱い
同族会社ではない → 特別な扱いは なし
STEP 3 100%グループ:譲渡損益の繰延べ
譲渡益 20,000,000円 → 繰り延べる(帳簿価額 1,000万円以上)
STEP 4 100%グループ:寄附金と受贈益
A社 加算 3,000,000円(全額損金不算入)/ B社 減算 3,000,000円(全額益金不算入)
STEP 5 グループ通算制度の位置づけ
通算しない:A社 50,000,000円 / 通算する:A社 40,000,000円(グループ通算制度は選択制)
さくら食品は同族会社 ── でも留保金課税はない
※ この回では別表四に新しい行を書きません(所得金額 13,270,773円 のまま)。同族会社であることは、第10回の役員の範囲(佳代さんは使用人兼務役員になれない)にすでに出てきました。
やってみよう:同族会社とグループの判定(6問)
判定のしかたと、100%グループの扱いを確かめます。
よくある間違い
① 社長の一族が50%以下しか持っていなければ、同族会社ではない
判定は上位3つの株主グループの合計です。取引先や元従業員なども、それぞれ1つのグループとして数えます。② 同族会社なら、必ず留保金課税がある
留保金課税は特定同族会社だけです。資本金1億円以下の中小法人は、原則として対象外です(大法人の100%子会社などを除く)。③ 100%グループの中の取引には、税金がかからない
譲渡損益は繰り延べるだけで、グループの外に売ったときなどに課税されます。所得と欠損をまとめて計算するのは、承認を受けて選ぶグループ通算制度です。ミニテスト(3問)
おわりに ── 今日のふりかえり
- 同族会社:上位3株主グループで50%超。株主グループは、株主とその親族・支配している会社などをまとめたもの。
- 同族会社の特別な扱い:役員の範囲(みなし役員・使用人兼務役員の制限)、行為計算の否認、特定同族会社の留保金課税(名前の紹介)。
- さくら食品は上位3グループで92%の同族会社。資本金1億円以下なので留保金課税はない。
- 100%グループ:資産の譲渡損益は繰り延べ(外に売ったときに戻す)。法人による完全支配関係なら、寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入。
- グループ通算制度は承認を受けて選ぶ制度。グループの所得と欠損を通算する(計算は発展講座へ)。
参照条文・出典
参照条文:法人税法2条10号(同族会社)・12号の7の6(完全支配関係)、法人税法施行令4条(同族関係者の範囲)・71条1項5号(使用人兼務役員の制限)、法人税法25条の2(受贈益)・37条2項(完全支配関係がある法人への寄附金)・61条の11(完全支配関係がある法人の間の譲渡損益)・67条(特定同族会社の特別税率)・132条(同族会社等の行為又は計算の否認)・64条の5(損益通算)・64条の9(通算承認)、法人税法施行令122条の12(譲渡損益調整資産)
参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第9章第2節(同族会社)・第11章(グループ法人税制・グループ通算制度)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)
本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。
本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。