MENU

第17回 同族会社とグループの税務|法人税入門講座

法人税 入門講座|第17回(v3)

同族会社とグループの税務

株主の上位3グループで発行済株式などの過半数を持つ会社を「同族会社」といい、役員の範囲などに特別な扱いがあります。また、親会社と100%子会社のように「完全支配関係」がある会社の間では、資産を譲渡したときの損益を繰り延べたり、寄附金を全額損金不算入(受け取った側は全額益金不算入)にしたりします(寄附金・受贈益の扱いは、親会社が法人である完全支配関係のときだけ)。さくら食品の同族会社判定と、親子2社の簡単な設例で、位置づけを押さえる回です。

所要 15分前提:第6回(無償取引)・第10回(役員の範囲)・第11回(寄附金)条文:法人税法2条10号・12号の7の6、25条の2・37条2項・61条の11・67条・132条、64条の5以下(グループ通算)令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度で解説
第1章 全体像1234
第2章 益金567
第3章 損金8910111213
第4章 税額と申告141516
第5章 グループと総合演習1718
📘 用語表と、この講座の読み方(クリックで開く)
株主グループ1人の株主と、その親族や、その株主が支配している会社などをまとめた1つのグループ
同族会社上位3つの株主グループで、発行済株式(または議決権など)の50%超を持たれている会社
特定同族会社1つの株主グループで50%超を持たれている会社のうち、資本金1億円超など。留保金課税がある(中小法人は原則として対象外。ただし大法人の100%子会社などは対象になりうる)
完全支配関係発行済株式の全部を直接または間接に持つ関係(100%グループ)
譲渡損益調整資産100%グループ内で譲渡したとき、損益を繰り延べる資産(固定資産・土地・有価証券など。帳簿価額1,000万円未満のものを除く)
グループ通算制度100%グループの会社が、承認を受けて選ぶ制度。各社が申告しつつ、所得と欠損を通算する
法令と数字この講座は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の事業年度に適用される法令で解説しています。数字は改正で変わることがあり、改正のたびに差し替えます

はじめに:今日のゴール

🎯
今日のゴール
上位3株主グループの持株割合が50%超なら同族会社。さくら食品は同族会社だが、資本金1億円以下なので留保金課税はない。100%グループの会社の間では、資産の譲渡損益を繰り延べる。法人による完全支配関係なら、寄附金は全額損金不算入・受贈益は全額益金不算入。グループ通算制度は選択制――この位置づけを説明できるようになること。
シンプルな例:L社の上位3グループ48%
→
同族会社か判定
→
親子2社の設例譲渡・寄附・通算
さくら食品:上位3グループ92%
→
同族会社か同族会社
→
留保金課税なし

※ 株主グループの細かな範囲(特殊関係者の範囲)、留保金課税の計算、グループ通算制度の計算、組織再編税制は扱いません。グループの論点は、さくら食品とは別の簡単な設例(親子2社)で見ます。

ハルカ先生、第16回で申告書のしくみを見ました。今日は同族会社とグループですね。
先生そうだよ。会社の株主や、親子の会社の関係で変わる扱いを見るんだ。
ハルカさくら食品は、同族会社ですか?
先生上位3つの株主グループで92%を持たれているから、同族会社なんだ。でも、留保金課税はないよ。
ハルカ子会社がある会社の話も、出てきますか?
先生親子2社の簡単な例で、位置づけまで見ていこうか。

図で見る:同族会社の判定と100%グループ(5ステップ)

先生最初は「シンプルな例」のL社で、同族会社の判定から見てみよう。さくら食品や、自分で入力にも切り替えられるんだ。
ハルカ「自分で入力」で、帳簿価額を1,000万円以上にすると、繰延べになるんですね。
先生そうだよ。株主の割合も変えて、判定がどう変わるかを見てみようか。
👆下のステップをクリックタップすると、図と会話が切り替わります← →キーでも移動できます
← 図は横にスクロールできます →
① 同族会社の判定 ── 上位3つの株主グループで50%超L社の株主グループ(持株割合)25%15%8%7%40%50%のライン上位3グループ 48%1位グループ25%2位グループ15%3位グループ8%4位グループ7%5位グループ5%その他(多数)40%判定:上位3グループ 48% ≦ 50%→ 同族会社ではない発行済株式(または議決権など)の割合で判定する株主グループ=1人の株主+その親族+その株主が支配している会社など。社長と妻は1つのグループ。取引先や元従業員も、それぞれ1つのグループとして数える(社長の一族だけで判定しない)。中小企業の多くは同族会社。上場会社など株主が分散した会社は、同族会社でないことが多い。
上位3グループ 48% ≦ 50% → 同族会社ではない
ハルカ同族会社というのは、家族で経営している会社のことですか?
先生上位3つの株主グループで、株式の50%超を持たれている会社のことなんだ。
🤔 迷いポイント社長の一族が50%以下なら、同族会社ではない?
ハルカ社長の家族の持株だけで、判定すると思っていました。
先生取引先や元従業員も、それぞれ1つのグループとして数えるんだ。上位3つを足して判定するよ。
ハルカL社の上位3グループは48%だから、同族会社ではないですね。
先生そうだよ。株主が分散していると、同族会社にならないこともあるんだ。
💡 そうだったのか!同族会社=上位3株主グループで50%超。株主グループは株主とその親族などをまとめて数える。
STEP1〜5の会話をまとめて読む(文字だけ)

STEP 1 同族会社の判定

ハルカ同族会社というのは、家族で経営している会社のことですか?
先生上位3つの株主グループで、株式の50%超を持たれている会社のことなんだ。
🤔 迷いポイント社長の一族が50%以下なら、同族会社ではない?
ハルカ社長の家族の持株だけで、判定すると思っていました。
先生取引先や元従業員も、それぞれ1つのグループとして数えるんだ。上位3つを足して判定するよ。
ハルカL社の上位3グループは48%だから、同族会社ではないですね。
先生そうだよ。株主が分散していると、同族会社にならないこともあるんだ。
💡 そうだったのか!同族会社=上位3株主グループで50%超。株主グループは株主とその親族などをまとめて数える。

上位3グループ 48% ≦ 50% → 同族会社ではない

STEP 2 同族会社の特別な扱い

ハルカ同族会社だと、法人税が高くなるんですか?
先生税率や所得の計算は、ふつうの会社と同じなんだ。特別な扱いが3つあるよ。
🤔 迷いポイント同族会社なら、留保金課税もかかる?
ハルカ同族会社には、必ず留保金課税があると思っていました。
先生留保金課税は、資本金1億円超などの特定同族会社だけなんだ。中小法人は、原則として対象外だよ。
ハルカL社は、留保金課税がないんですね。
先生そうだよ。判定の結果で、どの扱いがあるかが決まるんだ。
💡 そうだったのか!同族会社の特別な扱いは、役員の範囲・行為計算の否認・留保金課税(特定同族会社だけ)。

同族会社ではない → 特別な扱いは なし

STEP 3 100%グループ:譲渡損益の繰延べ

ハルカ親会社が子会社に資産を売ったら、どうなりますか?
先生親子2社の例で見るよ。100%グループの中で土地などを譲渡したら、譲渡益は繰り延べるんだ。
🤔 迷いポイントグループの中の取引だから、ずっと税金がかからない?
ハルカグループの中なら、ずっと課税されないと思っていました。
先生子会社がグループの外に売ったときなどに、親会社で戻して課税するんだ。繰り延べるだけだよ。
ハルカこの例の譲渡益20,000,000円は、繰り延べるんですね。
先生そうだよ。帳簿価額が1,000万円未満の資産は、繰延べの対象にならないんだ。
💡 そうだったのか!100%グループ内の譲渡損益は繰り延べ、外に売ったときなどに戻す(帳簿価額1,000万円未満は除く)。

譲渡益 20,000,000円 → 繰り延べる(帳簿価額 1,000万円以上)

STEP 4 100%グループ:寄附金と受贈益

ハルカ親会社が子会社に、お金をただで渡したらどうなりますか?
先生法人による100%グループなら、渡した側は全額損金不算入、受けた側は全額益金不算入なんだ。
🤔 迷いポイント受けた側は、もらった分が利益になって課税される?
ハルカ第6回のように、受贈益に課税されると思っていました。
先生グループの中でお金を移しただけだから、どちらにも課税関係を生じさせないんだ。
ハルカA社は3,000,000円を加算、B社は3,000,000円を減算ですね。
先生そのとおりだよ。個人が100%持つ兄弟会社の間では、この扱いはないんだ。
💡 そうだったのか!法人による100%グループ:寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入。

A社 加算 3,000,000円(全額損金不算入)/ B社 減算 3,000,000円(全額益金不算入)

STEP 5 グループ通算制度の位置づけ

ハルカグループ全体で、黒字と赤字を合わせて計算できますか?
先生グループ通算制度を選べば、できるんだ。承認を受けて選ぶ制度だよ。
🤔 迷いポイント100%グループなら、自動で通算される?
ハルカグループ法人税制と、同じだと思っていました。
先生グループ法人税制は自動で適用されるけれど、グループ通算制度は選択なんだ。
ハルカ通算すると、A社の所得は40,000,000円になるんですね。
先生そうだよ。計算の細かいところは、ラボで確かめてみようか。
💡 そうだったのか!グループ法人税制は自動で適用、グループ通算制度は承認を受けて選ぶ制度。

通算しない:A社 50,000,000円 / 通算する:A社 40,000,000円(グループ通算制度は選択制)

さくら食品は同族会社 ── でも留保金課税はない

※ この回では別表四に新しい行を書きません(所得金額 13,270,773円 のまま)。同族会社であることは、第10回の役員の範囲(佳代さんは使用人兼務役員になれない)にすでに出てきました。

先生これが、さくら食品の株主グループだよ。
ハルカ桜井家だけで70%なんですね。
先生上位3つで92%だから、同族会社なんだ。
ハルカ資本金が1,000万円だから、留保金課税はないんですね。
先生そのとおりだね。別表四の所得金額も、変わらないよ。

やってみよう:同族会社とグループの判定(6問)

判定のしかたと、100%グループの扱いを確かめます。

ハルカ判定を練習したいです。
先生左の6問で、同族会社と100%グループの扱いを確かめてみようか。
ハルカ上位3グループを足すのを、忘れないようにします。
先生そこがいちばん大事なところだね。

よくある間違い

① 社長の一族が50%以下しか持っていなければ、同族会社ではない

判定は上位3つの株主グループの合計です。取引先や元従業員なども、それぞれ1つのグループとして数えます。

② 同族会社なら、必ず留保金課税がある

留保金課税は特定同族会社だけです。資本金1億円以下の中小法人は、原則として対象外です(大法人の100%子会社などを除く)。

③ 100%グループの中の取引には、税金がかからない

譲渡損益は繰り延べるだけで、グループの外に売ったときなどに課税されます。所得と欠損をまとめて計算するのは、承認を受けて選ぶグループ通算制度です。
ハルカ①は、社長の一族だけで判定してしまう間違いですね。
先生そうだね。上位3つの株主グループを足すんだ。
ハルカ③の100%グループは、課税されないのではなく、繰り延べるんですね。
先生そのとおりだよ。グループの外に売ったときに、課税されるんだ。

ミニテスト(3問)

Q1. 同族会社の判定は?
Q2. 資本金1億円以下の同族会社の留保金課税は?
Q3. 法人による100%グループで、子会社が親会社から受けた寄附(受贈益)は?

おわりに ── 今日のふりかえり

1分まとめ
  1. 同族会社:上位3株主グループで50%超。株主グループは、株主とその親族・支配している会社などをまとめたもの。
  2. 同族会社の特別な扱い:役員の範囲(みなし役員・使用人兼務役員の制限)、行為計算の否認、特定同族会社の留保金課税(名前の紹介)。
  3. さくら食品は上位3グループで92%の同族会社。資本金1億円以下なので留保金課税はない。
  4. 100%グループ:資産の譲渡損益は繰り延べ(外に売ったときに戻す)。法人による完全支配関係なら、寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入。
  5. グループ通算制度は承認を受けて選ぶ制度。グループの所得と欠損を通算する(計算は発展講座へ)。
先生今日のまとめだよ。同族会社は、上位3株主グループで判定するんだ。
ハルカ留保金課税は特定同族会社だけ。さくら食品にはない……ですね。
先生そのとおりだよ。100%グループでは、譲渡損益の繰延べと寄附金・受贈益の扱いがあるんだ。
ハルカグループ通算制度は、承認を受けて選ぶ制度でした。
先生よくがんばったね。次の第18回は、総合演習と卒業テストだよ。

参照条文・出典

参照条文:法人税法2条10号(同族会社)・12号の7の6(完全支配関係)、法人税法施行令4条(同族関係者の範囲)・71条1項5号(使用人兼務役員の制限)、法人税法25条の2(受贈益)・37条2項(完全支配関係がある法人への寄附金)・61条の11(完全支配関係がある法人の間の譲渡損益)・67条(特定同族会社の特別税率)・132条(同族会社等の行為又は計算の否認)・64条の5(損益通算)・64条の9(通算承認)、法人税法施行令122条の12(譲渡損益調整資産)

参考資料:税務大学校『法人税法(基礎編)令和8年度版』第9章第2節(同族会社)・第11章(グループ法人税制・グループ通算制度)(国税庁ホームページ「税務大学校講本」で公開)

本教材は、上記講本を参考に、TaxJudgeが独自に構成・解説したものです。講本の基準日は令和8年1月1日で、その後の令和8年度税制改正(少額減価償却資産の特例の見直しなど)と防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から)は国税庁の資料で反映しています。

本教材は国税庁による監修・保証を受けたものではありません。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度を共通事例とし、各制度の適用時期に応じた法令に基づく学習用の解説・試算です。個別の判断は税理士等にご確認ください。さくら食品などの数字は学習用に設定した仮定の数値です。

ハルカ条文で確かめたいときは、どこを見ればいいですか?
先生同族会社は法人税法2条10号、完全支配関係は2条12号の7の6なんだ。法人税法ラボ ↗で条文から引けるよ。
ハルカグループ通算制度の条文もありますか?
先生64条の5から始まる規定なんだ。この教材の図は、講本を参考にTaxJudgeが独自に作っているよ。
法人税 入門講座 第17回|taxjudge.com
→ / スペースで次の発言(最後の発言のあとは次のステップ)/ ← で戻る / Esc で閉じる