収益認識ラボ①【設例・5ステップと契約変更編】|先生と一緒に図で学ぶ設例1〜4 取引価格の配分・価格の譲歩・契約変更
無料の学習ツール「収益認識ラボ①」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、5ステップと契約変更の設例(設例1〜4)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。
📘 設例・基礎1 ラボの画面
前提条件(独自の数値・設定)
- 当期首に、商品Pの販売と3年間の保守サービスを1つの契約で締結。
- 契約の対価は 15,000(契約時に全額受領)。
- 独立販売価格:商品P 13,000、保守 3,250(合計 16,250)。
- 商品Pは当期首に引渡し。保守は当期首から3年間。
はじめに
設例1〜4 ── 1つの契約を、最後まで追いかける
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ1
ハルカ
先生、今日は設例ですね。基礎編で見た、商品Pと3年保守を 15,000 で売る契約からですか。
先生
そうだよ。今日は設例1で5ステップを通しでやってから、設例2で「価格の譲歩」、設例3・4で「途中で契約が変わる」場面を見るんだ。どれも、取引価格をどこに、いつ割り振るかの話なんだ。
先生
そう。数字が出てくるたびに、ラボのステップで同じ数字を確かめながら読んでいこうか。
設例・基礎タブの基礎1を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎1 ラボの画面
商品P:15,000 × 13,000 ÷ 16,250 = 12,000
保守:15,000 × 3,250 ÷ 16,250 = 3,000
独立販売価格の合計 16,250 に対して 1,250 の値引きがあり、比率どおり両方に配分されます(値引きを一部の履行義務に配分する特例は②編・設例15)。
契約時(商品の引渡し・対価を全額受領)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 現金預金 | 15,000 | 売上高(商品) | 12,000 |
| | 契約負債 | 3,000 |
当期末(サービス提供分)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約負債 | 1,000 | 売上高(サービス) | 1,000 |
前受けした保守の対価のうち、未提供分 2,000 は契約負債として残ります(第78項)。
設例1
5ステップ ── 15,000 を 12,000 と 3,000 に分ける
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎1 ステップ5・7
ハルカ
独立販売価格は 13,000 と 3,250 なのに、配分は 12,000 と 3,000 なんですね。
先生
独立販売価格の合計 16,250 に対して、実際の対価は 15,000。差の 1,250 はセットの値引きなんだ。第66項のとおり、この値引きを独立販売価格の比率 80:20 で両方に配るから、12,000 と 3,000 になるよ。
迷いポイント 値引きは、安く見える方にまとめて寄せていい?
ハルカ
保守はおまけみたいなものだから、値引きは全部保守に寄せたくなります。
先生
原則は、すべての履行義務に比率で配るんだ。一部だけに寄せられるのは、第71項の3つの要件を満たすときだけだよ。②編の設例15で詳しく見るね。
ハルカ
パン屋さんのセットも、コーヒーが安くなったと思っていたら、クロワッサンも少しずつ安くなっていたんですね。
先生
セットの値引きは、みんなで少しずつ分け合うと考えるんだよ。
💡 そうだったのか!
セットの値引きは
独立販売価格の比率で全部に配るのが原則。前受けした保守の未提供分は契約負債に残ります。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクからシミュレーションを開く(基礎1の数字)
- 右の「保守の期間(月)」を 36 から 24 に変える
👀 保守 3,000 を2年で割るので、当期の売上高が 13,000 → 13,500、当期末の契約負債が 2,000 → 1,500 に。配分の 12,000/3,000 は変わりません。
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📘 設例・基礎2 ラボの画面
契約書の価格は 2,000 ですが、価格の譲歩(一部を回収しない)を受け入れるつもりなので、対価は変動対価です(第50項・適用指針第24項(2))。
A社が権利を得ると見込む額は 700 → 取引価格の見積りは 700。
部品の引渡時| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売掛金 | 700 | 売上高 | 700 |
譲歩を見込んだ差額 1,300 は、はじめから売上にも売掛金にも入れません。
その後、顧客の信用状態が悪化して回収できなくなる分は、収益の減額ではなく債権の減損(金融商品会計基準)の問題になります。
設例2
価格の譲歩 ── 契約書は 2,000 でも取引価格は 700
📍 ラボの場所:設例・基礎タブ 基礎2 ステップ2・4
ハルカ
契約書は 2,000 なのに、売上は 700 なんですか。
先生
この会社は、新しい国の顧客との関係づくりのために、代金の一部をあきらめる価格の譲歩を最初から受け入れるつもりなんだ。だから対価は変動対価で、権利を得ると見込む額は 700。第19項(5)の回収可能性も、この 700 で判定するよ。
迷いポイント 回収できない 1,300 は、貸倒れとして処理する?
ハルカ
回収できない分は、売上 2,000 を立ててから貸倒引当金で落とすのかと思っていました。
先生
最初から譲歩するつもりの 1,300 は、はじめから売上にも売掛金にも入れないんだ。売った後で顧客の信用状態が悪くなって回収できなくなる分とは、区別するよ。そちらは債権の減損の問題なんだ。
💡 そうだったのか!
最初から見込む
価格の譲歩は取引価格から除きます。売った後の信用悪化による回収不能とは区別します。
基礎2のステップを順に開くと、変動対価から回収可能性の判定までを追えますラボで開く ▶
📕 設例・応用1 ラボの画面
×
第30項:独立した契約かZは別個の財の追加だが、増額 500 は独立販売価格を反映していない
○
第31項(1):残りは移転済みと別個かY・Zは引渡済みのXと別個
既存の契約を解約して新しい契約を締結したと仮定(第31項(1))
Yに配分済みの 1,200 + 追加の対価 500 = 1,700 → Y・Zに 850 ずつ
仕訳なし(まだ引き渡していない)。
設例3
契約変更 ── 独立販売価格を反映しない追加は「解約+新契約」
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用1 ステップ3
ハルカ
製品Zを 500 で追加したのに、Zの売上は 500 ではないんですね。
先生
Zの独立販売価格はX・Yと同じ 1,200 なのに、増額は 500。独立販売価格を反映していないから、第30項の独立した契約には当たらないんだ。残りのY・Zは引渡済みのXと別個だから、第31項(1)で解約して新しい契約を結んだと考えるよ。
迷いポイント Yの単価は、元の契約の 1,200 のまま?
ハルカ
Yは元の契約の製品だから、1,200 のまま売上にすればいいですよね。
先生
Yに配分していた 1,200 と追加の 500 を合わせた 1,700 を、Y・Zに 850 ずつ配り直すんだ。Yの単価も、新しい契約の単価に変わるよ。
ハルカ
後から来たZのせいで、Yまで値下げされるなんて…。Yだけ、閉店間際のタイムセールに巻き込まれた気分です。
先生
巻き込まれたのではなく、YとZで 1,700 を分け合う新しい契約になったんだよ。
💡 そうだったのか!
独立販売価格を反映しない追加は、
残りと追加の対価を合わせて配り直す。過去に売上にしたXはそのままです。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「契約変更」のシミュレーションを開く
- 右の「追加の数量」を 30 から 60 に変える
👀 残り40個と追加60個の単価が 75.71 → 74 に、変更後に認識する収益が 5,300 → 7,400 になります。追加が多いほど、値引きの影響が単価に強く出ます。
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📕 設例・応用1 ラボの画面
増加額 60 は、契約変更前に約束した変動対価に起因する → まず当初の契約と同じ基礎でX・Yに配分(第76項(1))。
Xは引渡済み → Xの分 30 は、変動した期の収益にする(第74項)。
Yの分 30 は、変更後の契約の残りの履行義務(Y・Z)に配分 → 15 ずつ。
決算日:Xに係る取引価格の変動| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売掛金 | 30 | 売上高 | 30 |
製品Zの引渡時| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 売掛金 | 865 | 売上高 | 865 |
| 製品 | 収益 |
|---|
| X(引渡時+決算日の修正) | 1,230 |
| Y | 865 |
| Z | 865 |
| 合計(固定 2,000+変動 460+追加 500) | 2,960 |
設例3
変動対価の見直し ── 増えた 60 はどこへ?
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用1 ステップ4・6
ハルカ
決算日に変動対価の見積りが 400 から 460 に増えました。増えた 60 は、新しい契約のY・Zに配ればいいですか。
先生
60 は契約変更の前に約束した変動対価から生まれたものなんだ。だから、まず元の契約と同じ基礎でX・Yに 30 ずつ配るよ(第76項(1))。Xは引き渡し済みだから、第74項により、その 30 は見積りが変わった期の売上にするんだ。
迷いポイント Yの 30 は、Yだけに付ける?
ハルカ
Yに配った 30 は、Yの売上に全部足せばいいですよね。
先生
Yの 30 は、変更後の契約の残りの履行義務、つまりY・Zに 15 ずつ配るんだ。だからYもZも 865 になるよ。合計は 1,230+865+865=2,960 で、固定 2,000・変動 460・追加 500 と一致するね。
💡 そうだったのか!
変動対価の変動は
いつ約束した対価かで配分先が決まります。変更前の変動対価は、まず元の契約の基礎で配ります。
📕 設例・応用2 ラボの画面
変更後の取引価格 640,000(固定 560,000+割増金 80,000)
変更後の進捗度 240,000 ÷ 450,000 = 53.3%(小数第2位を四捨五入)
640,000 × 53.3% − 300,000 = 41,120
契約変更日(累積的な影響で修正)| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|
| 契約資産 | 41,120 | 工事収益 | 41,120 |
設例4
工事の契約変更 ── 変更日に 41,120 を一括で修正
📍 ラボの場所:設例・応用タブ 応用2 ステップ4
ハルカ
倉庫の設計変更は、設例3と同じように将来に向かって処理すればいいですか。
先生
残りの作業は、すでに建てた部分と一体の単一の履行義務だから、第31項(2)の累積的な影響による修正なんだ。変更後の取引価格 640,000 に変更後の進捗度 53.3% を掛けた 341,120 から、認識済みの 300,000 を引いた 41,120 を、変更日に一括で収益にするよ。
迷いポイント 進捗度が下がったのに、収益が増えるのはなぜ?
ハルカ
進捗度は 60% から 53.3% に下がっているのに、収益を足すんですか。
先生
見積原価が増えて進捗度は下がったけれど、取引価格が対価の増額 60,000 と割増金 80,000 で大きく増えたからなんだ。仕訳は契約資産 41,120/工事収益 41,120 で、B/Sの契約資産も同じだけ増えるよ。
ハルカ
割増金が、最初は仲間外れで、途中から急に取引価格に入ってくるんですね。転校生みたいです。
先生
入れるかどうかは、第54項の「著しい減額が起きない可能性が高いか」で毎回判断するんだよ。
💡 そうだったのか!
単一の履行義務の途中の変更は、
変更日に過去分も含めて一括で修正。進捗度と取引価格の両方を見直します。
⏱ 30秒だけラボで試す
- リンクから「工事の契約変更」のシミュレーションを開く(応用2の数字)
- 右の「変更前:割増金を取引価格に」を「含めない」から 「含める」 に変える
👀 変更前の収益が 300,000 → 348,000 に増え、変更日の修正額は 41,120 → ▲6,880 に。変更後の累計 341,120 は同じなので、先に多く認識していた分だけ減らす修正になります。
ラボを開く ▶
今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?
この記事の図は、すべて収益認識ラボ①の画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。
収益認識ラボ①を開く ▶今日のまとめ ── 設例ごとの結論
おわりに
今日のふりかえり
先生
今日のまとめだよ。取引価格は、独立販売価格の比率で配るのが基本。契約が途中で変わったら、まず独立した契約になるかを確かめる。ならない場合は、残りが別個なら将来に向かって配り直し、一体なら変更日に累積的な影響を一括で修正。この分かれ道を持ち帰ってほしいんだ。
ハルカ
妹とのクローゼットの貸し借りも、途中で範囲を広げました。プリン2個の約束が、今は3個です。
先生
クローゼットは貸し借りだから、会計ならリースの話に近いね。収益認識の練習としてなら、残りの期間と追加の範囲に、プリンを配り直すことになるよ。
ハルカ
では、先月もう食べてしまったプリンの分は、そのままでいいんですね。安心しました。
先生
食べた分は、もう移転済みだからね。次の設例編では、設例5・6で履行義務をいくつに数えるかを見ていこうか。
参考資料
企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(第17・19・30・31・50・54・66・74・76・78項)/企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(第24項、設例1〜4)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの設例は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。基準確認日:2026年9月29日。
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このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・履行義務の識別編(設例5・6)/設例・一定の期間と進捗度編(設例7〜9)
この記事を書いた人
TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。