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税効果会計ラボ【設例・積立金と評価差額編】|先生と一緒に図で学ぶ設例・基礎3・5/応用3・8 圧縮積立金・その他有価証券・税率の引上げ

税効果会計ラボ【設例・積立金と評価差額編】

無料の学習ツール「税効果会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの設例タブから、圧縮積立金・評価差額・税率の設例(設例・基礎3・5、設例・応用3・8)を1つずつ、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📘 設例・基礎3 ラボの図
当期末(税率 30%)繰延税金負債 360圧縮積立金 840一時差異 1,200税率変更後繰延税金負債 336圧縮積立金 864一時差異 1,200取崩し後(翌期末)繰延税金負債 294圧縮積立金 756一時差異 1,050
🧾 仕訳で確認(当期末)
将来加算一時差異 1,200 × 30%
借方金額貸方金額
法人税等調整額360繰延税金負債360
剰余金の処分(第15項)
借方金額貸方金額
繰越利益剰余金840固定資産圧縮積立金840
はじめに

設例・基礎3 圧縮積立金 ── 繰延税金負債 360 と積立金 840

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ「圧縮積立金(償却資産)と税率変更」ステップ2
ハルカ
先生、今日は評価差額の話と聞きました。最初は圧縮積立金なんですね。
先生
どちらも「将来加算一時差異」と「純資産」がからむ設例なんだ。F社は償却資産に積立金方式で圧縮記帳 1,200 を行った。繰延税金負債は 1,200×30%=360、積立金は残りの 840 だよ。
ハルカ
図の一番左の柱ですね。真ん中と右の柱は何ですか。
先生
翌期に税率が28%に下がったあとと、償却に合わせて取り崩したあとなんだ。今日は圧縮積立金、その他有価証券の差益・差損、減損した銘柄の値上がり、税率の引上げの順に見ていこうか。
設例・基礎タブの圧縮積立金の設例を開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📘 設例・基礎3 ラボの図
🧾 仕訳で確認
税率変更による修正
借方金額貸方金額
繰延税金負債24法人税等調整額24
繰延税金負債の減少額だけ積立金を積み増す
借方金額貸方金額
繰越利益剰余金24固定資産圧縮積立金24
🧾 仕訳で確認
減価償却に応じた繰延税金負債の取崩し
借方金額貸方金額
繰延税金負債42法人税等調整額42
積立金の取崩し
借方金額貸方金額
固定資産圧縮積立金108繰越利益剰余金108
繰延税金負債(翌期末)
294
固定資産圧縮積立金(翌期末)
756
合計=残りの一時差異
1,050

繰延税金負債と積立金の合計は、いつも「残りの将来加算一時差異」(1,200 - 150 = 1,050)に一致します。この関係を図で押さえると、税率変更の年でも迷いません。

設例・基礎3

税率変更と取崩し ── 合計はいつも残りの差異

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ「圧縮積立金」ステップ3〜5
ハルカ
翌期に税率が28%に下がったら、何を直すんですか。
先生
繰延税金負債が 1,200×2%=24 減るから、その分だけ積立金を積み増すんだ。積立金は「圧縮額-繰延税金負債」だから、負債が減れば積立金が増えるよ。
迷いポイント 積立金の取崩しは、償却に対応する 150 全額?
ハルカ
毎期 150 ずつ益金になるなら、積立金も 150 ずつ取り崩しますよね。
先生
150 のうち 42 は繰延税金負債の取崩しなんだ。負債は期首 336 から期末 (1,200-150)×28%=294 に減るから、積立金の取崩しは 150-42=108 だよ。翌期末は負債 294+積立金 756=1,050 で、残りの一時差異と一致するんだ。
ハルカ
負債と積立金を足すと、いつも残りの差異…。二人三脚ですね。片方が転ぶと、もう片方も必ず転ぶ。
先生
転ぶのではなく、税率が変わると片方が縮んで、もう片方が伸びるんだよ。合計はいつも残りの差異なんだ。
💡 そうだったのか!
繰延税金負債+圧縮積立金=残りの将来加算一時差異。税率が変わっても取り崩しても、この関係は崩れません。
📘 設例・基礎5 ラボの図
その他有価証券の評価差益 400(税務は取得原価のまま)繰延税金負債 120評価差額金 280純資産(その他の包括利益)法人税等調整額は使わない(P/Lを通らない)
🧾 仕訳で確認
期末:時価評価(差益 400 × 30% = 120)
借方金額貸方金額
投資有価証券400繰延税金負債120
その他有価証券評価差額金280
その他有価証券の評価差損 150(税務は取得原価のまま)繰延税金資産 45評価差額金 ▲105純資産(その他の包括利益)差損の繰延税金資産は回収可能性を判断して計上
🧾 仕訳で確認
期末:時価評価(差損 150 × 30% = 45)
借方金額貸方金額
繰延税金資産45投資有価証券150
その他有価証券評価差額金105
設例・基礎5

その他有価証券 ── 差益 400 と差損 150

📍 ラボの場所:設例・基礎タブ「その他有価証券の評価差額(差益・差損)」ステップ2〜3
ハルカ
D社は銘柄Pに評価差益 400、銘柄Qに評価差損 150 があります。仕訳はどうなりますか。
先生
Pは差益 400 のうち 120 を繰延税金負債、残り 280 を評価差額金にするんだ。Qは差損 150 のうち 45 を繰延税金資産にして、評価差額金は 105 のマイナスだよ。どちらも法人税等調整額は出てこないんだ。
迷いポイント 評価差損の繰延税金資産は、差損があれば必ず計上できる?
ハルカ
差益に繰延税金負債を立てるなら、差損にも必ず繰延税金資産を立てますよね。
先生
差損の繰延税金資産は、回収可能性を判断してから計上するんだ。回収できなければ計上せず、差損 150 がそのまま評価差額金になるよ。ここまでは原則の銘柄ごとの処理だよ。これとは別に、売る予定がなくスケジューリング不能な場合は、はじめから差益と差損を相殺した純額で処理するんだ。この例なら差益 250 で、繰延税金負債は 75 だね。120 と 45 を計上してから 75 に直すわけではないよ。
💡 そうだったのか!
評価差額の税効果は評価差額金から直接控除。差損の繰延税金資産は、ほかの差異と同じく回収可能性を判断します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「税率変更」のシミュレーションを開く(評価差益 400・差損 150、30%→32%)
  2. 右の「改正後の法定実効税率(%)」を 32 から 28 に変える

👀 評価差額への影響が ▲5 → 5 に反転し、法人税等調整額はどちらも 0 のままです。評価差額の税効果は、税率が変わってもP/Lを通りません。

ラボを開く ▶
📝 【早見表】繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針早見表を開く ▶
📕 設例・応用3 ラボの図
1,500取得原価(税務の簿価)700前期末の時価(減損後)1,000当期末の時価将来減算一時差異前期末 800 → 当期末 500値上がり 300 は差異の戻入れ(差益ではない:第38項)
🧾 前期
減損処理
借方金額貸方金額
投資有価証券評価損800投資有価証券800
800 × 30%
借方金額貸方金額
繰延税金資産240法人税等調整額240
🧾 当期
時価の上昇
借方金額貸方金額
投資有価証券300その他有価証券評価差額金300
戻入れ 300 × 30% の繰延税金資産を取り崩す
借方金額貸方金額
その他有価証券評価差額金90繰延税金資産90
🧾 当期
時価の上昇(取り崩す繰延税金資産がないので税効果の仕訳は不要)
借方金額貸方金額
投資有価証券300その他有価証券評価差額金300

評価差益 300 に対して繰延税金負債を計上しない点がポイント。普通の銘柄の差益とは扱いが違います。

設例・応用3

減損した銘柄が値上がりしたら

📍 ラボの場所:設例・応用タブ「減損したその他有価証券が値上がりしたら」ステップ2〜5
ハルカ
H社は前期に銘柄を減損して、時価 700 にしました。当期は 1,000 に戻って、評価差益 300 です。繰延税金負債 90 を立てればいいですか。
先生
図のとおり、税務上の簿価は 1,500 のままなんだ。取得原価 1,500 に戻るまでは、値上がり 300 は将来加算一時差異ではなく、減損で生じた将来減算一時差異 800 の戻入れだよ。当期末の将来減算一時差異は 1,500-1,000=500 になるんだ。
迷いポイント 値上がり 300 には、ふつうの銘柄と同じく繰延税金負債を立てる?
ハルカ
差益は差益なので、どの銘柄でも繰延税金負債ですよね。
先生
この銘柄は違うんだ。前期に繰延税金資産 240 を計上していたら、戻入れ 300×30%=90 を評価差額金から取り崩す。前期も当期も回収可能性がなければ、取り崩す資産がないから、税効果の仕訳は要らないよ。どちらのケースでも繰延税金負債は立てないんだ。
ハルカ
値上がりしたのに「利益」じゃなくて「戻入れ」…。3,000円落として1,000円拾ったのを、「もうけ」とは言わないのと同じですね。
先生
そうだよ。取得原価 1,500 に戻るまでは、落とした分を拾っているだけなんだ。
💡 そうだったのか!
減損した銘柄の値上がりは、取得原価に戻るまで将来減算一時差異の戻入れ。繰延税金負債は計上しません。
設例・応用タブの「減損したその他有価証券が値上がりしたら」を開くラボで開く ▶
📕 設例・応用8 ラボの図
将来減算一時差異 1,000 に対する繰延税金資産300改正前 30%280税率が下がる 28%資産が減る → 費用(利益↓)320税率が上がる 32%資産が増える → 収益(利益↑)
🧾 仕訳で確認
税率変更による修正
借方金額貸方金額
繰延税金資産80法人税等調整額80
税率変更による修正
借方金額貸方金額
法人税等調整額16繰延税金負債16
その他有価証券の評価差益 400(税務は取得原価のまま)繰延税金負債 120評価差額金 280純資産(その他の包括利益)法人税等調整額は使わない(P/Lを通らない)
🧾 仕訳で確認
評価差額に係る分は評価差額に加減(注解(注7))
借方金額貸方金額
その他有価証券評価差額金12繰延税金負債12
設例・応用8

税率が上がると利益が増える?

📍 ラボの場所:設例・応用タブ「税率が上がると利益が増える?」ステップ2〜3
ハルカ
N社は税率が30%から32%に上がりました。増税だから、利益は減りますよね。
先生
この会社では、回収可能な将来減算一時差異 5,000-1,000=4,000 の繰延税金資産が 4,000×2%=80 増えて、将来加算一時差異 800 の繰延税金負債は 16 増えるんだ。資産の増加が負債の増加を上回るから、差し引き 64 が法人税等調整額の貸方、つまり利益が増える方に入るよ。
迷いポイント 評価差益 600 の繰延税金負債の増加も、法人税等調整額に入れる?
ハルカ
評価差益の繰延税金負債も 12 増えるなら、法人税等調整額は 64-12 で 52 ですよね。
先生
評価差額に係る分は、評価差額に加減するんだ(注解(注7))。12 はその他有価証券評価差額金を減らすだけで、法人税等調整額は 64 のままだよ。
ハルカ
増税なのに増益なんて、苦い薬を飲んだら甘かった、みたいな話ですね。
先生
甘いのは帳簿の上だけだよ。繰延税金資産の純額が大きい会社ほど、そう見えるんだ。
💡 そうだったのか!
税率の引上げは、損益を通じる繰延税金資産の純額が大きい会社では増益になります(ほかの条件が同じ場合)。評価差額に係る分は評価差額に加減します。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「税率変更」のシミュレーションを開く(この設例の数字・30%→32%)
  2. 右の「評価差益に係る将来加算一時差異」を 600 から 0 に変える

👀 繰延税金負債の修正 28 → 16、評価差額への影響 ▲12 → 0。法人税等調整額は貸方 64 のままで、評価差額の分がP/Lに入っていないことが分かります。

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📝 税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方|上場2,186社の頻出項目データ記事を読む ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて税効果会計ラボの画面そのものです。設例タブを開けば、同じ図を見ながら、ステップを1つずつ読み返せます。

税効果会計ラボを開く ▶

今日のまとめ ── 設例ごとの結論

設例迷いポイント答え
基礎3積立金の取崩しは償却対応の 150 全額?繰延税金負債の取崩し 42 を除いた 108
基礎5評価差額の税効果も法人税等調整額?使わない。評価差額金から控除。差損の資産は回収可能性を判断。不能なら最初から純額で処理
応用3減損した銘柄の値上がりに繰延税金負債?立てない。取得原価に戻るまでは将来減算一時差異の戻入れ
応用8増税なら利益は減る?損益を通じる繰延税金資産の純額が大きいと増える(貸方 64)。評価差額の分 12 は評価差額に加減
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。繰延税金負債と圧縮積立金の合計は、いつも残りの差異。評価差額の税効果はP/Lを通らない。減損した銘柄の値上がりは戻入れで、増税でも増益になる会社があるんだ。
ハルカ
部屋のモンステラが、買ったときの倍くらいに育ちました。これはもう、含み益ですよね。
先生
育ったのは立派だけれど、観葉植物はその他有価証券ではないから、時価評価はしないよ。取得原価のままだね。
ハルカ
では繰延税金負債も立てずに、純資産の部の片すみで静かに見守ります。棚も買ったので、もう売れませんし。
先生
売却の意思決定がないなら、それで正しいよ。次の回収可能性編では、繰越欠損金と企業の分類の設例を見ていこうか。

参考資料

企業会計審議会「税効果会計に係る会計基準」注解(注6)(注7)/企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(設例2)/企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(第38・39項、設例2)(いずれも企業会計基準委員会ほか)。ラボの設例の数値は、原典の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
サイト内の関連:早見表:適用指針第26号/税率差異分析のやり方/税効果注記データベース
動画で聞く:増税で利益が増える?税効果会計を5つのステップで(YouTube・14分)
動画で聞く:監査を納得させる税効果の回収可能性(YouTube・21分)
このシリーズの記事:基礎編/応用編/設例・入門と基本の計算編(基礎1・2・4)/設例・回収可能性編(基礎6/応用1・2・4)/設例・特殊論点編(応用5〜7)

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。