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税効果会計ラボ【基礎編】|先生と一緒に図で学ぶ一時差異・繰延税金資産・回収可能性

税効果会計ラボ【基礎編】

無料の学習ツール「税効果会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの基礎タブを上から順に、先生と生徒の会話形式で見ていきます。各行の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

🎧 動画で聞く増税で利益が増える?税効果会計を5つのステップで(14分)

この記事の先生とハルカの会話と、ラボの図で解説する音声動画です。クリックすると再生が始まります(YouTubeで開く)

今日の事例
基礎タブ冒頭の例(単位:千円)
税引前当期純利益1,000
損金にならない引当金(翌期以降に損金)200
法定実効税率30%
課税所得1,200
当期の法人税等360
はじめに

今日の題材 ── 利益 1,000 の会社

📍 ラボの場所:基礎タブ全体
ハルカ
先生、税効果会計を最初から教えてください。申告書の数字と決算書の数字が合わないところで、いつも止まってしまうんです。
先生
最初は、この小さな会社で考えようか。利益は 1,000 なのに、損金にならない引当金 200 があるから、税金は 1,200 に 30% を掛けた 360 になるんだ。表を手元に置いて、ラボの「基礎」タブを上から順に読んでいこうか。
ハルカ
360 ÷ 1,000 で 36% ですね。税率は 30% なのに、ずいぶん高く見えます。
先生
その「高く見える」を直すのが税効果会計なんだ。今日の最後には、どの会社の注記を見ても、どこを読めばいいか分かるようになるよ。
ラボの基礎タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📗 基礎 ラボの図
税効果会計なし税引前当期純利益1,000法人税等▲360当期純利益640税金 360 ÷ 利益 1,000 = 36%税効果会計あり税引前当期純利益1,000法人税等▲360法人税等調整額(税金を減らす)+60当期純利益700税金費用 300 ÷ 利益 1,000 = 30%※「+」は利益への影響。損益計算書では「法人税等調整額 △60」と表示(税金費用のマイナス)
基礎

なぜ税効果会計が必要? ── 税金を利益に対応させる

📍 ラボの場所:基礎タブ「なぜ税効果会計が必要?」
ハルカ
税金が多すぎるように見えるのは、なぜなんですか。
先生
図の上の段を見てごらん。引当金 200 は会計では今年の費用なのに、税務では来年以降の損金になる。だから今年の税金 360 だけが先に重くなるんだ。下の段では、将来の税金が減る分 60(200×30%)を繰延税金資産にして、法人税等調整額で税金費用を 300 に戻しているよ。
迷いポイント 税効果会計を使うと、納める税金が減る?
ハルカ
60 も税金費用が減るなら、会社が納める税金も 300 になるんですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。納める税金は 360 のまま変わらない。変わるのは損益計算書に載せる税金費用の期間配分だけなんだ。60 は、将来の税金負担を軽減する効果が見込まれる額として、B/Sに資産計上するんだよ。
ハルカ
納める額は同じなのに、決算書の見た目だけ 30% に整える…。スマホの写真アプリの美肌フィルターみたいですね。
先生
フィルターではなく、ピント合わせだよ。費用と税金を同じ年度にそろえると、利益と税金の関係が読めるようになるんだ。
💡 そうだったのか!
税効果会計は税金を減らす仕組みではなく、税金費用を利益に対応させる仕組みです。納める税金は変わりません。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く(入門の設例の数字が入っています)
  2. 右の「企業の分類」を分類1から分類5に変える

👀 繰延税金資産 90 → 0、税金費用 615 → 705、負担率 30.8% → 35.3%。繰延税金資産を計上できないと、税金が「多すぎるように見える」状態に戻ります。

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📗 基礎 ラボの図
①ズレを仕分ける一時差異/永久差異②残高を出す一時差異×税率③回収できる?分類1〜5・スケジューリング④差額を損益へ法人税等調整額⑤開示する内訳・税率差異実務でいちばん判断が必要なのは③(回収可能性)
基礎

全体の流れ ── 5つのステップで最後まで

📍 ラボの場所:基礎タブ「全体の流れ」
ハルカ
手順が多そうで、どこから覚えればいいのか分かりません。
先生
図の5つの箱を順に進めばいいよ。①ズレを仕分ける、②一時差異に税率を掛けて残高を出す、③回収できるかを判断する、④期首との差額を法人税等調整額にする、⑤注記で説明する。ラボのタブもこの順に並んでいるんだ。
迷いポイント いちばん大変なのは税率を掛ける計算?
ハルカ
一時差異に税率を掛けるところが、いちばん間違えそうです。
先生
①②は申告書の加算・減算を仕分けて掛けるだけだから、機械的にできるよ。時間がかかるのは③の回収可能性なんだ。将来の課税所得の見積りが入るから、監査でも重点的に見られるんだよ。
💡 そうだったのか!
計算は①②で機械的に終わります。判断が要るのは③の回収可能性で、決算の時間の多くはここに使います。
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📗 基礎 ラボの図
法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金○ 税効果会計の対象法人税住民税(法人税割)事業税(所得割)→ 利益(所得)をもとに計算する× 対象外事業税の付加価値割・資本割住民税の均等割特定同族会社の留保金課税→ 利益を基礎としない(第91項)2026年改正は定義の言い回しの変更で、対象となる税金は従来と同じ
基礎 範囲

対象になる税金 ── 「課税対象利益を基礎とする税金」

📍 ラボの場所:基礎タブ「対象になる税金」
ハルカ
会社が払う税金なら、全部が税効果会計の対象ですよね。
先生
対象は、図の上の箱のとおり「課税対象利益を基礎とする税金」だけなんだ。緑の箱の法人税、住民税の法人税割、事業税の所得割がそうだよ。
迷いポイント 事業税なら、どの部分でも対象?
ハルカ
事業税は利益に関係する税金だから、全部対象だと思っていました。
先生
事業税でも、付加価値割と資本割は利益を基礎としないから対象外なんだ。住民税の均等割や、特定同族会社の留保金課税も入れないよ。2026年改正は定義の言い回しを変えただけで、対象の税金そのものは従来と同じなんだ。
💡 そうだったのか!
対象は利益(所得)をもとに計算する税金だけ。事業税の付加価値割・資本割、住民税の均等割は対象外です。
📗 基礎 ① ラボの図
会計の利益と税務の所得のズレ(申告書の加算・減算)一時差異等いつか解消する(タイミングのズレ)永久差異解消しない(交際費・受取配当等)将来減算一時差異解消時に所得を減らす→ 繰延税金資産将来加算一時差異解消時に所得を増やす→ 繰延税金負債税効果の対象外→ 税率差異の原因になる(負担率が法定実効税率とずれる)繰越欠損金も「一時差異等」に含めて同じように扱う(税効果会計基準 第二 一4)
基礎 ①

① 一時差異と永久差異 ── 解消するズレだけが対象

📍 ラボの場所:基礎タブ ①
ハルカ
申告書の加算・減算は、全部が税効果の対象になるんですか。
先生
図のとおり、まず「いつか解消するか」で分けるんだ。解消するのが一時差異、解消しないのが永久差異。一時差異は、解消するときに所得を減らす将来減算と、増やす将来加算に分かれるよ。
迷いポイント 交際費も、いつかは損金になる?
ハルカ
交際費の損金不算入も、来年あたり損金に戻ってくるんですよね。
先生
交際費は将来も損金にならないから、永久差異なんだ。税効果の対象外で、法定実効税率と負担率がずれる原因になるよ。受取配当金の益金不算入も同じだね。
ハルカ
一度食べたら戻ってこない…。冷蔵庫のプリンと同じですね。妹に食べられたプリンも、二度と戻ってきませんでした。
先生
戻らないから、繰延税金資産も作らないんだよ。
💡 そうだったのか!
税効果の対象はいつか解消する一時差異だけ。交際費などの永久差異は、負担率を法定実効税率からずらす原因になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く
  2. 右の「永久差異(交際費など・加算)」を 50 から 150 に変える

👀 繰延税金資産は 90 のまま、税金費用は 615 → 645、負担率は 30.8% → 32.3%。永久差異は税効果で打ち消されず、負担率だけが上がります。

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📗 基礎 ラボの図
資産の例:棚卸資産の評価損 300負債の例:賞与引当金 500税務 1,000会計 700差 300会計の資産 < 税務の資産 → 将来減算税務 0会計 500会計の負債 > 税務の負債 → 将来減算将来加算の例:積立金方式の圧縮記帳(会計の資産 > 税務の資産)
基礎

会計の簿価と税務の簿価 ── B/Sで見る一時差異

📍 ラボの場所:基礎タブ「会計の簿価と税務の簿価」
ハルカ
一時差異を、申告書ではなくB/Sで見ることもできるんですか。
先生
できるよ。図の左は棚卸資産で、会計の簿価 700、税務の簿価 1,000。差の 300 は、売ったときに損金になるから将来減算なんだ。右の賞与引当金は、会計の負債 500 に対して税務の負債は 0 だね。
迷いポイント 資産が小さいなら、いつも将来減算?
ハルカ
「会計の方が小さい」なら将来減算、と覚えればいいですか。
先生
資産と負債で向きが逆になるんだ。資産は会計の方が小さいとき、負債は会計の方が大きいとき将来減算になるよ。逆に、積立金方式の圧縮記帳のように会計の資産の方が大きいと将来加算なんだ。
💡 そうだったのか!
資産は「会計<税務」、負債は「会計>税務」で将来減算一時差異。向きが逆になると将来加算です。
📗 基礎 ② ラボの図
期首期末繰延税金資産 300繰延税金資産 420増加 120法人税等調整額(貸方)120→ 税金費用を減らす
🧾 仕訳で確認(例:期首 300 → 期末 420)
期末:繰延税金資産の増加額を計上
借方金額貸方金額
繰延税金資産120法人税等調整額120

法人税等調整額が貸方(マイナスの費用)になり、税金費用が減ります。

基礎 ②

② 繰延税金資産・負債と法人税等調整額

📍 ラボの場所:基礎タブ ②
ハルカ
法人税等調整額の金額は、どうやって決まるんですか。
先生
図のとおり、期末の繰延税金資産 420 から期首の 300 を引いた増加 120 が法人税等調整額になるんだ。仕訳は、繰延税金資産 120 / 法人税等調整額 120 だよ。
迷いポイント 当期に生じた一時差異に税率を掛けて、そのまま調整額にする?
ハルカ
当期に増えた引当金に 30% を掛ければ、それが法人税等調整額ですよね。
先生
考え方の出発点は期末の残高なんだ。期末の一時差異に税率を掛け、回収が見込まれない額を引いて残高を出す。その残高と期首の差額が調整額になるよ。税率が変わった年や回収可能性を見直した年も、同じ手順で自然に入るんだ。
💡 そうだったのか!
法人税等調整額は期末残高-期首残高。当期の発生額を積み上げるのではなく、残高から逆算します。
📗 基礎 ラボの図
将来減算一時差異 1,000 に対する繰延税金資産300改正前 30%280税率が下がる 28%資産が減る → 費用(利益↓)320税率が上がる 32%資産が増える → 収益(利益↑)
基礎

税率 ── 解消する年の税率で計算する

📍 ラボの場所:基礎タブ「税率」
ハルカ
税率は、今年の税率を使えばいいんですよね。
先生
使うのは、差異が解消する年の税率なんだ。図は将来減算一時差異 1,000 の例で、30% なら 300、28% に下がれば 280、32% に上がれば 320 になるよ。決算日までに国会で成立した税法の税率を使うんだ。
迷いポイント 税率が上がると、会社の利益は減る?
ハルカ
増税なら、決算書の利益も減りますよね。
先生
繰延税金資産が大きい会社では、そうではないのだよ。税率が上がると資産が 300 から 320 に増えて、差額 20 が法人税等調整額の貸方、つまり利益を増やす方に入るんだ。ほかの条件が同じなら、損益を通じる繰延税金資産の純額が大きい会社ほどこうなる。評価差額に係る分は損益に入らないよ。下がれば逆だね。
ハルカ
増税のニュースで経理の人がにっこりしていたら、この仕組みのせいなんですね。今度から顔色で繰延税金資産の大きさを当ててみます。
先生
にっこりするのは帳簿の上だけだよ。繰延税金資産と負債のどちらが大きいかで、向きが決まるんだ。
💡 そうだったのか!
税率が変わったら残高を計算し直します。損益を通じる繰延税金資産の純額が大きい会社は、税率が上がると利益が増えます(ほかの条件が同じ場合)。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクから「税率変更」のシミュレーションを開く(改正後 28% の例)
  2. 右の「改正後の法定実効税率(%)」を 28 から 32 に変える

👀 法人税等調整額が 借方 64 → 貸方 64 に反転します。税率が下がると利益が減り、上がると利益が増えます。

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📗 基礎 ラボの図
その他有価証券の評価差益 400(税務は取得原価のまま)繰延税金負債 120評価差額金 280純資産(その他の包括利益)法人税等調整額は使わない(P/Lを通らない)
基礎

評価差額の税効果 ── P/Lを通らない

📍 ラボの場所:基礎タブ「評価差額の税効果」
ハルカ
その他有価証券の評価差益にも、税効果はありますか。
先生
あるよ。図の例では評価差益 400 に 30% を掛けた 120 を繰延税金負債にして、残りの 280 をその他有価証券評価差額金として純資産に入れるんだ。
迷いポイント 評価差額の税効果も、法人税等調整額を使う?
ハルカ
繰延税金負債を立てるなら、相手は法人税等調整額ですよね。
先生
評価差額はP/Lを通らないから、税効果も評価差額から直接差し引くんだ。法人税等調整額は使わないよ。繰延ヘッジ損益や土地再評価差額金も同じ考え方なんだ。
💡 そうだったのか!
純資産に直接入れる評価差額の税効果は、評価差額から控除します。法人税等調整額は通りません。
📗 基礎 ③ ラボの図
繰延税金資産(将来の税金が減る効果)① 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得② タックス・プランニング(含み益のある資産の売却など)③ 将来加算一時差異の解消(相殺できる)どれかで吸収できる分だけ計上し、吸収できない分は控除する(=評価性引当額)
基礎 ③

③ 回収可能性 ── 将来の税金を本当に減らせるか

📍 ラボの場所:基礎タブ ③
ハルカ
将来減算一時差異があれば、その分の繰延税金資産は必ず計上できるんですか。
先生
繰延税金資産は「将来の税金が減る効果」だから、将来に税金を払うだけの所得がないと効果が出ないんだ。図の3つの源泉、①収益力に基づく課税所得、②タックス・プランニング、③将来加算一時差異の解消のどれかで吸収できる分だけ計上するよ。
迷いポイント 吸収できない分は、どこに行く?
ハルカ
計上できなかった分は、なかったことになるんですか。
先生
吸収できない分は評価性引当額として、繰延税金資産から控除するんだ。注記ではこの金額を必ず書くよ。回収可能性は毎期見直して、見直した年の法人税等調整額に入れるんだ。
💡 そうだったのか!
繰延税金資産は将来の所得で吸収できる分だけ。吸収できない分は評価性引当額として控除し、注記で開示します。
📝 評価性引当額とは?計上ロジックと上場2,274社の水準比較記事を読む ▶
📗 基礎 ラボの図
(1)(2)解消年度を割り付ける将来減算・将来加算とも(3)同じ年度で相殺将来減算 × 将来加算(4)繰戻・繰越期間で相殺残りの将来加算と(5)所得の見積りと相殺一時差異等加減算前課税所得(6)繰戻・繰越期間で相殺残りの所得と(7)残りは回収できない→ 評価性引当額税務上の繰越欠損金は、繰越期間にわたり将来の課税所得(欠損金控除前)で控除できる額をスケジューリング(第11項また書き)
基礎

スケジューリングの手順 ── 7つのステップ

📍 ラボの場所:基礎タブ「スケジューリングの手順」
ハルカ
「吸収できるか」は、どうやって確かめるんですか。
先生
図の7つの手順で、差異が解消する年度を割り付けていくんだ。まず同じ年度の将来減算と将来加算を相殺して、残りを一時差異等加減算前課税所得と突き合わせる。それでも残る分が回収できない額だよ。
迷いポイント 課税所得の見積りと、そのまま突き合わせる?
ハルカ
事業計画の「課税所得」の数字と比べればいいんですよね。
先生
比べるのは、計画の課税所得から当期末の一時差異の解消分を除いた数字なんだ。そうしないと、同じ解消額を二重に数えてしまうよ。計算の中身は設例・基礎の「一時差異等加減算前課税所得の算定」で1ステップずつ追えるんだ。
💡 そうだったのか!
突き合わせる相手は一時差異等加減算前課税所得。当期末の差異の解消分を除いた「本業の儲け」です。
設例・基礎の「一時差異等加減算前課税所得の算定」を開くラボで開く ▶
📗 基礎 ラボの図
1年目2年目3年目4年目5年目6年目7年目8年目9年目10年目分類1全額(スケジューリング不能分も)分類2スケジューリングできる範囲分類3おおむね5年+長期の差異分類4翌期のみ分類5原則なし
分類主な要件(要約)計上できる範囲項番号
分類1過去3年と当期に、将来減算一時差異を十分に上回る課税所得全額回収可能第17・18項
分類2臨時的な原因を除き、課税所得が安定的(重要な欠損金なし)スケジューリングできる分は回収可能(不能分は原則不可)第19〜21項
分類3臨時的な原因を除いた課税所得が大きく増減(重要な欠損金なし)おおむね5年以内の見積りの範囲で回収可能第22〜25項
分類4重要な欠損金・繰越期限切れがあり、翌期は課税所得が見込まれる翌期の見積りの範囲で回収可能第26〜29項
分類5過去3年と当期すべてに重要な欠損金、翌期も欠損見込み原則として回収可能性なし第30・31項
基礎

企業の分類1〜5 ── 業績で「計上できる範囲」が決まる

📍 ラボの場所:基礎タブ「企業の分類1〜5」
ハルカ
会社によって、見積りに使える年数が違うんですか。
先生
過去と当期の課税所得や欠損金の状況で、会社を5つに分けるんだ。図の帯のとおり、分類1は全額、分類2はスケジューリングできる範囲、分類3はおおむね5年、分類4は翌期だけ、分類5は原則なしだよ。
迷いポイント 業績が悪くなったら、繰延税金資産は少し減るだけ?
ハルカ
業績が悪くなっても、繰延税金資産は少し減るくらいですよね。
先生
分類が下がると、計上できる範囲が一気に狭くなるんだ。取り崩した分は法人税等調整額の借方に入るから、赤字がさらに膨らむよ。決算発表で「繰延税金資産の取崩し」がよく話題になるのは、このためなんだ。
ハルカ
分類5って、通知表と逆なんですね。5が一番いいと思って、途中まで拍手しながら読んでいました。
先生
税効果では1がいちばん上なんだ。拍手は分類1の会社に取っておこうか。
💡 そうだったのか!
分類は1が最も広く、5が最も狭い。分類が下がると繰延税金資産を取り崩し、赤字が膨らみます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. リンクからシミュレーションを開く(分類2の会社の数字が入っています)
  2. 右の「企業の分類」を分類2から分類4に変える

👀 繰延税金資産 912 → 216、税金費用 738 → 1,434。分類1にすると 1,212、分類5では 60 です。

ラボを開く ▶
「●●は繰延税金資産を取れる?」は 🔍 項目別判定タブで約40項目を確認できますラボで開く ▶
📝 【判定】繰延税金資産の回収可能性|会社区分(分類1〜5)の自己診断と試算判定ツールを開く ▶
📗 基礎 ⑤ ラボの図
税引前当期純利益法人税、住民税及び事業税(例)← 当期の申告に基づく税額(現金の支払額とは別)法人税等調整額← 繰延税金資産・負債の増減(評価差額等の分を除く)法人税等合計(=税金費用)← 注記の「負担率」の分子当期純利益表示科目の名称は例です(2026年改正の第27号で表示科目の例の記述が見直されています:適用指針第28号 第73-5項)。
繰延税金資産 税務上の繰越欠損金(*)XXX 退職給付に係る負債XXX 減損損失XXX その他XXX繰延税金資産小計XXX 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額(*)△XXX 将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額△XXX評価性引当額小計△XXX繰延税金資産合計XXX欠損金が重要なとき評価性引当額を2つに分け、繰越期限別の表も付ける(注解(注8)(注9))
基礎 ⑤

⑤ 表示と注記 ── 評価性引当額と税率差異

📍 ラボの場所:基礎タブ ⑤
ハルカ
税効果の注記は表が多くて、どこを読めばいいのか迷います。
先生
まず図の損益計算書で、法人税等と法人税等調整額の合計が税金費用になることを押さえるんだ。注記の「負担率」は、この税金費用を税引前当期純利益で割った数字だよ。
迷いポイント 評価性引当額は、繰延税金資産の内訳の1行にすぎない?
ハルカ
内訳表の下の方にある評価性引当額は、細かい数字だから読み飛ばしていいですか。
先生
評価性引当額は、会社が「回収できない」と判断した金額だから、読むべき数字なんだ。欠損金が重要な会社は、欠損金に係る分とそれ以外に分けて、繰越期限別の表も付けるよ。税率差異の内訳と合わせると、負担率がずれた理由が分かるんだ。
💡 そうだったのか!
注記は内訳・評価性引当額・税率差異の3点を読みます。評価性引当額は「回収できない」と判断した額です。
📝 税効果注記データベース(上場会社の繰延税金資産内訳・評価性引当額・税率差異・繰越欠損金)データを見る ▶
📝 税率差異分析(タックスプルーフ)のやり方|上場2,186社の頻出項目データ記事を読む ▶

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべて税効果会計ラボの画面そのものです。基礎タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

税効果会計ラボを開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
税効果会計で納める税金が減る?減らない。税金費用の期間配分が変わるだけなぜ必要?
いちばん大変なのは計算?回収可能性の判断(③)全体の流れ
事業税は全部対象?所得割だけ。付加価値割・資本割、住民税の均等割は対象外範囲
交際費もいつか損金になる?ならない。永久差異で税率差異の原因①
会計の方が小さければ将来減算?資産は会計<税務、負債は会計>税務で将来減算簿価
当期の発生額×税率が調整額?期末残高-期首残高(例:420-300=120)②
増税なら利益は減る?損益を通じる繰延税金資産の純額が大きい会社は増える税率
評価差額も法人税等調整額?使わない。評価差額から控除評価差額
一時差異があれば必ず計上?将来の所得で吸収できる分だけ。残りは評価性引当額③
計画の課税所得と比べる?一時差異等加減算前課税所得と比べる手順
分類が下がっても少し減るだけ?範囲が一気に狭まり、取崩しで赤字が膨らむ(912→216)分類
評価性引当額は読み飛ばしていい?「回収できない」と判断した額。必ず読む⑤
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。税効果会計は納める税金を変えずに、税金費用を利益に対応させる仕組みなんだ。残高は解消する年の税率で出して、期首との差額を法人税等調整額にする。そして、将来の所得で吸収できる分だけ繰延税金資産にするんだ。
ハルカ
私も週末のパン屋巡りで「今日はクロワッサンを我慢したから、来週は2個買える」と、繰延パン資産を積んでいます。
先生
個人の家計に会計基準は要らないけれど、考え方の練習にはちょうどいいね。ただ、資産にするなら回収可能性も見ないといけないよ。来週、本当に2個買えそうかな。
ハルカ
……来週もメロンパンと15分迷って、結局どちらも買わずに帰る気がします。評価性引当額を全額積んでおきます。
先生
自己評価が正確で何よりだよ。次の応用編では、その「回収できるか」を分類とスケジューリングでもう少し詰めていこうか。

参考資料

企業会計審議会「税効果会計に係る会計基準」(企業会計基準第43号による一部改正を含む)/企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」/企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」/実務対応報告第42号(いずれも企業会計基準委員会ほか)。ラボの設例の数値は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
動画で聞く:監査を納得させる税効果の回収可能性(YouTube・21分)
このシリーズの記事:応用編/設例・入門と基本の計算編/設例・積立金と評価差額編/設例・回収可能性編/設例・特殊論点編
サイト内の関連:税効果注記データベース/評価性引当額とは?/税率差異分析のやり方/税負担率が法定実効税率より低いのはなぜ?/回収可能性のKAM分析/会社区分(分類1〜5)の自己診断/早見表:適用指針第28号/早見表:適用指針第26号/連結税効果ラボ/会計基準ラボ一覧

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。