IFRS移行の純資産への影響は?64社の実額と中央値△1.7%の内訳

IFRSの任意適用を検討すると必ず出てくる問いが「移行すると自社の純資産はいくら動くのか」です。基準の解説は豊富にありますが、移行した日本企業の純資産がどれだけ動いたのかを実額で並べた資料は多くは見当たりません。

結論を先に言えば、

IFRSへの移行で純資産(IFRSでは「資本」)が減った会社のほうが多数です。有価証券報告書の初度適用注記を集計した64社では、資本増減率の中央値が△1.7%、増加20社に対して減少43社でした。

のれんを償却しなくてよくなるから有利になるという印象とは、逆の結果です。

この記事は有価証券報告書の「初度適用」注記=IFRS第1号が要求する資本の調整表から集計した64社のデータを、業種別・上位下位・調整項目別の3方向で整理したものです。

動く方向と幅、業種別の目安、効きやすい項目の順位、自社の当たりのつけ方が手元に残ります。

目次

解説動画

スライド解説

結論:IFRS移行で純資産は「減る」ほうが多数、中央値は△1.7%

集計対象は日本でIFRSを初度適用し、資本の調整表を開示した64社です。うち1社は調整表の金額が未収録のため、金額集計の母数は63社になります。

  • 減少43社(68%)に対して増加20社(32%)
    今回の63社では、未消化有給休暇退職給付減損などのマイナス調整が幅広く見られ、結果として資本が減少した会社が多数となりました。
  • 資本増減率の中央値は△1.7%
    多くは1桁パーセントに収まりますが、分布は増加側に長く、+225.6%(ライフネット生命保険)から△42.5%(リログループ)まで開きます。
  • 増える会社と減る会社で効く項目が違います
    増加側は保険契約・金融商品・みなし原価という大口、減少側は未消化有給休暇・退職給付・のれんの移行日減損・賦課金という小口の積み上げです。
  • 利益の方向はほぼ拮抗します
    比較年度の当期利益が減少した会社は29社/63社(46%)で、増減の方向はほぼ半々でした。

「移行すれば財務数値が良くなる」という期待で検討を始めると、多くの会社は逆の結果を受け取ります。64社の元データはIFRS移行影響ナビで会社別・項目別に確認できます。

集計の前提:この64社はどんな会社の集まりなのか

収録64社の移行日2019年7月1日から2024年4月1日に分布し、適用初年度は2021年6月期から2026年3月期にわたります。

IFRS第16号「リース」(2019年発効)の適用後に移行した比較的新しい初度適用企業が中心で、保険会社についてはIFRS第17号「保険契約」(2023年発効)の影響も含まれます。初期の任意適用組とは前提が異なります。移行日が5年ぶんばらけている点は横断比較の限界です。

業種は18業種です。

  • 情報・通信業:15社
  • サービス業:14社
  • 卸売業:4社
  • 輸送用機器:4社
  • 保険業:4社
  • 機械:3社
  • 電気機器:3社
  • 化学:3社
  • 鉄鋼:2社
  • 医薬品:2社
  • 小売業:2社
  • 繊維製品:2社
  • 不動産業・鉱業・非鉄金属・その他金融業・電気ガス業・食料品:各1社

情報・通信業とサービス業が最も多いため、全体の中央値はこの2業種に影響されます。また60社は日本基準、4社は米国基準からの移行です。

なお、年度の有価証券報告書でまとまった初度適用の調整表を確認できるのは、原則として適用初年度です(IFRS第1号第24項。第32項により、適用初年度に含まれる期中財務報告にも一定の調整表またはその参照が求められます)。翌年度以降の有報はIFRSどうしの比較になります。

表の構造は資本調整表の読み方で整理しています。

【業種別】資本増減率の中央値はここまで違います

2社以上が収録されている12業種の中央値です。

業種社数資本増減率の中央値
保険業4社+50.4%
鉄鋼2社+4.7%
輸送用機器4社+2.4%
医薬品2社+0.6%
情報・通信業15社△0.7%
電気機器3社△1.1%
サービス業14社△1.5%
化学3社△3.0%
機械3社△4.5%
繊維製品2社△4.7%
卸売業4社△12.0%
小売業2社△12.3%

保険業(+50.4%)は別枠として扱います

保険業4社は他業種から大きく離れています。

利益剰余金への調整では、IFRS第17号による保険契約・再保険契約の再測定と、保険業法上の価格変動準備金の取崩しが大きなプラス要因となっています。ただし資本合計の増減は、その他の包括利益累計額への調整なども含むIFRS移行調整全体の結果です。

4社は増減率で1位・2位・4位・5位、増加額でも1位・2位・4位・6位を占めます。内訳はIFRS第17号の保険会社への影響で扱っています。

下位は卸売業と小売業、社数の多い2業種は小幅です

本サンプルでは卸売業△12.0%・小売業△12.3%が下位で、いずれも純資産の規模が小さく、有給休暇賦課金が比率として大きく出た会社を含みます

社数の多い情報・通信業(△0.7%)とサービス業(△1.5%)は1%台以内に収まる傾向がみられました。ただし卸売業・小売業はそれぞれ4社・2社と少なく、業種の特性による因果と言い切れるだけの社数はありません。

同じ業種でも個社のばらつきは大きく残ります。

【上位・下位】実際にどこまで動いたのか

区分会社(証券コード)資本増減率
上位1ライフネット生命保険(7157)+225.6%
上位2SOMPOホールディングス(8630)+55.5%
上位3CLホールディングス(4286)+53.2%
上位4東京海上ホールディングス(8766)+45.3%
上位5MS&ADインシュアランスグループHD(8725)+31.4%
上位6ソニーグループ(6758)+25.3%
上位7GMOインターネットグループ(9449)+18.6%
上位8愛知製鋼(5482)+11.5%
上位9スズキ(7269)+9.4%
上位10日本工営(1954)+8.3%
下位8BIPROGY(8056)△15.0%
下位7グローリー(6457)△15.4%
下位6GA technologies(3491)△16.9%
下位5ローソン(2651)△17.1%
下位4レカム(3323)△20.4%
下位3ソフィアホールディングス(6942)△28.8%
下位2INEST(3390)△39.5%
下位1リログループ(8876)△42.5%

金額で並べ替えると顔ぶれが変わります。

順位資本増加額 上位8社増加額資本減少額 上位8社減少額
1東京海上ホールディングス23,467億円いすゞ自動車△758億円
2MS&ADインシュアランスグループHD14,155億円INPEX△677億円
3ソニーグループ12,100億円ニトリホールディングス△613億円
4SOMPOホールディングス10,655億円ローソン△467億円
5スズキ2,349億円TDK△439億円
6ライフネット生命保険498億円ヤマハ発動機△351億円
7川崎重工業365億円帝人△347億円
8GMOインターネットグループ321億円グローリー△344億円

増加額は5位のスズキ(2,349億円)で桁が下がり、増減率3位のCLホールディングスは金額の上位8社に登場しません。減少額は△344億円から△758億円に収まり、増加側が伸びる一方で減少側は数百億円で頭打ちです。

見積りでは金額と比率の両方を置いてください

【調整項目別】どの項目が効きやすいのかを順位で見る

調整表の項目を内容ごとにタグ付けし、開示社数金額規模を並べました。効きやすさは金額だけでは測れず、多くの会社に登場するのか一部の会社にだけ巨額で出るのかを分けて見る必要があります。

なお、以下の項目別金額は主として利益剰余金に対する調整額を集計したものであり、資本合計の増減を項目別に分解したものではありません。資本合計にはこのほか、その他の資本の構成要素への調整、累積換算差額の資本内の振替、非支配持分への影響が乗ります(Q4も参照)。

調整項目開示社数(△/+/0)合計中央値単純平均
未消化有給休暇48社(48/0/0)△1,315億円△4億円△27億円
税効果36社(12/24/0)△21,282億円1億円△591億円
有形固定資産33社(15/18/0)1,596億円0億円48億円
金融商品33社(8/24/1)8,124億円1億円246億円
退職給付26社(21/5/0)△5,261億円△20億円△202億円
リース23社(14/8/1)△49億円△0億円△2億円
のれん・無形資産の非償却/移行日減損17社(14/3/0)△2,351億円△6億円△138億円
収益認識14社(10/4/0)△174億円△0億円△12億円
特別法上の準備金(価格変動準備金等の取崩)4社(0/4/0)4,834億円1,256億円1,208億円
資産除去債務・その他の引当金10社(7/3/0)△863億円△0億円△86億円
連結範囲・報告期間の統一13社(3/10/0)5,661億円3億円435億円
賦課金11社(11/0/0)△175億円△10億円△16億円
株式に基づく報酬10社(10/0/0)△105億円△2億円△10億円
持分法投資7社(5/2/0)△139億円△3億円△20億円
開発費の資産化7社(1/6/0)1,384億円68億円198億円
棚卸資産6社(5/1/0)△418億円△6億円△70億円
保険契約(IFRS第17号)4社(0/4/0)69,207億円19,797億円17,302億円

※各社金額は百万円単位の開示額を億円単位に四捨五入しているため、表示額の合計と合計欄が一致しない場合があります。

※「特別法上の準備金」の4社は、MS&ADインシュアランスグループHD+2,319億円、東京海上ホールディングス+1,403億円、SOMPOホールディングス+1,109億円(いずれも価格変動準備金の取崩)と、GMOインターネットグループ+4億円(金融商品取引責任準備金の取崩)です。ライフネット生命保険はこの項目を初度適用調整として個別開示していないため、集計に含めていませんIFRS第17号の保険会社への影響の内訳表で同社が「—」となっているのと同じ理由です)。

開示頻度の首位は未消化有給休暇です

64社中48社(75%)が未消化有給休暇に関する調整を個別開示し、48社すべてがマイナスでした。

プラスもゼロも1社もありません。IFRSでは累積型有給休暇について、未使用の権利の累積により将来追加的に支払うと見込まれる額を負債として認識します(IAS第19号第13項〜第17項)。

したがって未消化日数の全量がそのまま負債になるわけではありません。残りの16社は個別開示がなかった会社であり、開示がない=調整が発生していない、とは限りません(「その他」に含めている可能性があります)。

中央値は△4億円ですが実額最大はパーソルホールディングスの△359億円(日本基準純資産の17.6%)で、スズキ△144億円が続きます。分布は有給休暇引当の実額で扱っています。

金額規模では税効果と保険契約が突出します

合計では保険契約が69,207億円のプラス、税効果が21,282億円のマイナスで際立ちます。

ただし保険契約は4社のみ、税効果のマイナス上位3社も東京海上ホールディングス△8,805億円、MS&AD△7,849億円、SOMPOホールディングス△5,770億円と保険会社です。この3社を除けば税効果は中央値1億円の小口で、合計と中央値の乖離が大きい項目は一部の会社にだけ効きます。

開示社数の多い項目金額が大きいのは退職給付です。

26社中21社がマイナス、中央値△20億円、最大はソニーグループ△3,172億円、次にTDK△959億円です。ただしその原因を単純に「日本基準で未認識だった数理差異の一括認識」と説明することはできません。日本基準でも連結財務諸表では、未認識の数理計算上の差異・過去勤務費用はその他の包括利益を通じて純資産に認識されています。

ここに現れるのは、日本基準IAS第19号測定方法や認識・表示方法などの差異を含む調整です。詳しくは退職給付の数理計算上の差異で解説しています。

なお退職給付の合計額△5,261億円は、米国基準から移行したソニーグループ(△3,172億円)とTDK(△959億円)の2社で約79%を占めます。合計額を日本基準から移行する会社の典型値とはみなせません。中央値△20億円は合計額より外れ値の影響が小さいものの、これも米国基準からの移行4社を含む26社の中央値であり、あくまで参考値です。

移行前の基準で分けると次のようになります。日本基準からの移行を前提に見積もるなら、日本基準22社の中央値△13億円のほうが目安として適切です。

移行前の基準開示社数(△/+)合計中央値
日本基準からの移行22社(17/5)△1,025億円△13億円
米国基準からの移行4社(4/0)△4,236億円△528億円

本サンプルでは、のれん関連の調整は資本減少側が多い

IFRS移行の利点として最もよく語られるのがのれんの非償却です。

しかし移行日の資本では17社中14社がマイナス、合計△2,351億円でした。プラスは3社、最大でも日本工営の6億円です。

IFRSではのれんを償却せず、減損テストを行います。またIFRS第1号の企業結合に関する免除規定(C4項)を使う場合、過去の日本基準の償却を単純に巻き戻すのではなく、移行日にIAS第36号による減損テストを行います。本サンプルで実際に減損が計上された例としては、ソニーグループ△968億円、TDK△388億円、ニトリホールディングス△327億円、INPEX△296億円があります。

本サンプルでは、償却停止のプラスより移行日の減損のマイナスが先に出ていますのれん償却を止めた実額で掘り下げています。

小さく見えて比率で効く項目があります

純資産が薄い会社では中央値の小さい項目が致命的に効きます。ペプチドリームの株式報酬△59億円は日本基準純資産の28.0%、ソフィアホールディングスのれん△5億円は23.7%、ラウンドワンの有形固定資産△98億円は16.0%です。

極端な例はINESTの未消化有給休暇で、金額は△1億円ですが純資産の41.9%を占めます。

純資産と利益は同じ方向に動きません

比較年度の当期利益が日本基準より減少した会社は29社/63社(46%)で、増減はほぼ拮抗しています。

ローソンは資本が△467億円(△17.1%)と減った一方、当期利益は180億円から227億円へ増えました。

逆に帝人は資本△347億円に加え利益も136億円から△86億円へ転落しています。移行日の資本調整と比較年度の損益調整では、対象となる期間や認識・測定の差異が異なるため、両者が同じ方向に動くとは限りません。

米国基準からIFRSへ移行した4社は顔ぶれが違います

会社(証券コード)移行日適用初年度資本の増減額増減率比較年度の当期利益
ソニーグループ(6758)2020年4月1日2022年3月期+12,100億円+25.3%11,914億円 → 10,439億円
TDK(6762)2020年4月1日2022年3月期△439億円△5.2%792億円 → 746億円
村田製作所(6981)2022年4月1日2024年3月期△239億円△1.1%2,534億円 → 2,436億円
ワコールホールディングス(3591)2021年4月1日2023年3月期△37億円△1.7%45億円 → 16億円

4社に共通するのは、未消化有給休暇が主役ではないことです。

米国基準でも従業員給付の負債認識が行われているため、日本基準からIFRSへの移行で頻繁に見られた有給休暇の調整が現れません。代わりに退職後給付とのれんの減損テスト単位の差異が中心で、TDKは退職後給付△959億円とのれん減損△388億円、村田製作所は退職後給付△96億円です。

米国基準からIFRSへ移行した日本企業で扱っています。

自社の影響額に当たりをつける5ステップ

ステップ1:業種別中央値で出発点の目安を置く

自社業種の中央値を出発点にします。目安であって予測ではありません。

同じ業種でも上下で50ポイント以上開くため、「1桁パーセントのマイナスで収まりそうか」の判定だけに使ってください。

ステップ2:未消化有給休暇を人件費から概算する

個別開示した48社が例外なくマイナスだった項目なので、まず当たりを取る価値があります。

IAS第19号第16項は累積型有給休暇について「未使用の権利の累積により企業が追加的に支払うと予想される額」で測定することを求めています。したがって、未消化日数、繰越条件、過去の消化実績等を基礎に、未使用権利の累積によって追加的に発生すると見込まれる人件費を見積もります(社会保険料の会社負担分を含む)。

未消化日数の総量に単価を掛けた金額とは一致しません。自社の制度(繰越の可否、買取の有無、消化率の実績)で金額は大きく変わります。

ステップ3:退職給付とのれんの前提を確認する

退職給付は、割引率・期間帰属の方法・制度資産の上限(資産上限額)といった前提が日本基準IAS第19号でどう違うかを、連結財務諸表の注記から確認します。

日本基準で未認識とされる数理計算上の差異の残高が、そのまま資本のマイナス額になるわけではありません。連結財務諸表では、それらはすでにその他の包括利益を通じて純資産に反映されているためです。のれんは残高と、減損テストの単位が日本基準の資産グループとどう違うかを見てください。

ステップ4:IFRS第1号の免除規定をどう使うかを決める

影響額は選択で変わります。

有形固定資産の調整には、IFRS第1号のみなし原価(移行日の公正価値を取得原価とみなす選択。D5項以下)が大きく影響する会社があります。ただし有形固定資産の調整33社には減損や減価償却方法の差異なども含まれるため、プラス18社をすべてみなし原価に帰することはできません。

個社の内訳ではスズキ+1,321億円、INPEX+627億円がプラス側、ローソン△307億円、ニトリホールディングス△271億円がマイナス側で、同じ免除規定でも符号が変わります

IFRS第1号の免除規定を数字で見るで整理しています。

ステップ5:同業・同規模の実例を有報で確認する

EDINETで対象会社の適用初年度の有価証券報告書を開き、連結財務諸表注記の末尾付近にある「初度適用」の注記を探します。

慣れれば1社15分程度です。同業・同規模を探す作業はIFRS移行影響ナビのほうが速く済みます。

よくある質問(FAQ)

Q1. IFRSに移行すると純資産は必ず減るのですか

必ずではありません。

64社では減少43社(68%)に対し増加20社(32%)で、3社に1社は増えています。ただし増加側は保険業4社、金融事業を抱えるソニーグループ、みなし原価を適用したスズキのように特定の要因を持つ会社が中心です。

今回の64社全体の中央値△1.7%は一つの参考値になりますが、業種・規模・移行前基準による差が大きいため、標準値とみなすことはできません。

Q2. のれんを償却しなくてよくなる分、純資産は増えないのですか

本サンプルでは、増えた会社より減った会社のほうが多い結果でした。

のれん・無形資産に関する調整は17社中14社がマイナスで合計△2,351億円、プラスは3社です。IFRSではのれんを償却せず減損テストを行い、企業結合の免除規定を使う場合は移行日にIAS第36号による減損テストが必要になります。

持ち続けていたのれんに含み損があれば、そこで認識されます。償却停止そのものの効果は移行後の利益に現れるものです。

Q3. 業種別の中央値をそのまま自社の見積りに使ってよいですか

出発点には使えますが、そのままの適用は避けてください。

2社や3社の業種の中央値は個社事情の影響が大きく、社数の多い業種でもばらつきは大きいです。中央値は桁の検算に使い、金額は未消化有給休暇、退職給付債務・制度資産と主要な計算前提、のれん残高から積み上げるのが確実です。

Q4. 調整項目の内訳を合計しても資本の増減額と一致しません

それが通常です。

各社が開示する項目別の内訳は、多くの場合「利益剰余金に対する調整」の内訳です。資本合計にはこれに加え、その他の資本の構成要素への調整累積換算差額の資本内の振替非支配持分への影響が乗ります。

差額が出たらこの3つを探してください。

Q5. 純資産が減ると配当や財務制限条項に影響しますか

連結の資本が減っても、会社法上の分配可能額単体の計算に基づくため直接には連動しません。

ただし連結ベースの自己資本比率や純資産額を基準とする財務制限条項、格付評価、社内の資本政策には影響し得ます。意思決定の前に借入契約の条項を洗い出し、中央値程度(△1.7%)と下位並み(△15%程度)の2通りで確認してください。

個別の判断は税理士・公認会計士にご相談ください。

まとめ:まず「小幅減少」をベースケースに置き、個別調整を積み上げる

IFRSの任意適用は財務数値を良くするための手段ではありません。64社の実額が示すのは、小幅な資本の減少が最も多い着地であり、大きく増えたのは保険や金融事業を持つ会社に偏っている、ということです。

まず中央値△1.7%程度の小幅減少をベースケースに置き、そこへ自社固有の調整を積み上げて検証するのが現実的な進め方です。

  • 資本増減率の中央値は△1.7%で、減少43社(68%)に対し増加20社(32%)です。
  • 業種別の中央値は保険業+50.4%から小売業△12.3%まで開き、情報・通信業△0.7%、サービス業△1.5%です。
  • 個別開示の頻度が最も高いのは未消化有給休暇(64社中48社、75%)で、開示した48社はすべてマイナスでした。次に退職給付(26社中21社がマイナス、中央値△20億円)です。
  • のれん関連の調整は本サンプルでは資本減少側が多く、17社中14社がマイナス、合計△2,351億円でした。
  • 比較年度の当期利益が減った会社は29社/63社(46%)で増減はほぼ拮抗しており、純資産と利益は連動しません。

次の一歩として、未消化有給休暇、退職給付債務・制度資産と主要な計算前提、のれん残高の3つを集めてください。この3項目を初期スクリーニングとし、金融商品・有形固定資産・税効果など自社固有の重要項目を追加します。

実例はIFRS移行影響ナビで確認できます。

参考一次情報

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