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リース会計ラボ【応用編】|先生と一緒に図で学ぶリース期間・契約変更・貸手・経過措置

無料の学習ツール「リース会計ラボ」の読み方ガイドです。ラボの応用タブから、実務で迷いやすい論点を選んで、先生と生徒の会話形式で見ていきます。基礎タブの内容は基礎編で扱っています。左の図はラボの図そのものです。重要な節の最後には、ラボで30秒だけ手を動かす小さな実習を置いています。

📙 応用 今日の地図
今日読む8つの論点(応用タブから)
① リース期間の実務(普通借家・定期借家・借地)A2
② リース料の中身(変動・残価保証・オプション)A3
③ 割引率の決め方(追加借入利子率)A4
④ 契約条件の変更(4つの型)B2
⑤ 契約変更を伴わない見直しB3
⑥ 貸手の分類(90%・75%)C1
⑦ サブリースと転リースC4
⑧ 適用初年度の経過措置D4
はじめに

応用タブの歩き方 ── 今日読む8つの論点

📍 ラボの場所:応用タブ全体
ハルカ
基礎編で事例Aは分かりました。応用タブは項目が多くて、どこから読めばいいか迷います。
先生
左の表が今日の地図だよ。応用タブの中から、実務で迷いやすい8つの論点だけを選んである。A(借手の実務)→B(変更・見直し)→C(貸手・特殊な取引)→D(適用初年度)の順に進むんだ。
ハルカ
応用タブの一番上にある、大きな早見表から読まなくていいんですか。
先生
あの表は、中身を一通り知ってから見ると役に立つものなんだ。だから今日は最後の「おさらい」で一緒に見ることにして、まずは①のリース期間から始めようか。
ラボの応用タブを開きながら読むと分かりやすいですラボで開く ▶
📙 応用 ① ラボの図
(延長オプションの行使の可能性)解約不能 1年合理的に確実1年5年10年シナリオ1:5年(リニューアル前)まで更新合理的に確実より高いシナリオ2:10年(設備の使用可能期間)まで更新合理的に確実より低い借手のリース期間 = 5年(設例8-2のパターン)
応用 ①

リース期間の実務 ── 普通借家・定期借家・借地

📍 ラボの場所:応用タブ A2
ハルカ
店舗の賃貸借契約は「1年契約・自動更新」です。リース期間は1年でいいですよね。
先生
左の図を見て。解約不能は1年でも、普通借家契約では貸手は正当事由がないと更新を拒めない。だから借手は事実上の延長オプションを持っている、と整理するんだ。
迷いポイント 自動更新の契約は、契約書の期間(1年)をそのまま使えばいい?
ハルカ
では、更新できる限りずっと、たとえば20年にしておけば安全ですか。
先生
それも、そうではないのだよ。どこまで延長が「合理的に確実」かを、内装の投資額や使用可能期間、リニューアルの周期、撤退のしやすさといった経済的インセンティブから決めるんだ。図のケースでは、リニューアル前の5年までは合理的に確実より高く、設備の使用可能期間10年までは低いので、借手のリース期間は5年になるよ。
ハルカ
1年契約なのに5年…。契約書が、自分の年齢をサバ読んでいるみたいです。
先生
契約書に罪はないよ。見るのは契約書の数字ではなく、実態の方なんだ。
💡 そうだったのか!
リース期間は「契約期間」でも「更新できる最長期間」でもありません。解約不能期間+合理的に確実な延長期間を、物件ごとの経済的インセンティブで決めます。
📙 応用 ② ラボの図
指数連動の変動リース料:見直しのしくみ開始日の指数で計算した負債(残り9回分) 360,000+36,000指数が上がった後(残り9回分) 396,000指数が動いて支払額が実際に変わったときにだけ見直す(適用指針第48項)。増加分は使用権資産に加算。売上連動分は負債に入れず、発生時に費用(適用指針第51項)。
応用 ②

リース料の中身 ── 変動・残価保証・オプション・保証金

📍 ラボの場所:応用タブ A3
ハルカ
家賃が物価指数で改定される契約と、売上の何%という歩合家賃があります。どちらも負債に入れるんですか。
先生
扱いが分かれるんだ。指数連動は、開始日の指数で計算して負債に入れる。左の図のように指数が動いて支払額が実際に変わったら、残り9回分を 360,000 から 396,000 に見直して、増えた 36,000 は使用権資産に加算するんだよ。
迷いポイント 指数が上がりそうなら、上がる前提で最初から負債を大きくしておく?
ハルカ
将来上がりそうなら、最初から見込んで入れておいた方が慎重ですよね。
先生
原則は、開始日の指数のままにしておくんだ。見直すのは支払額が実際に変わったときだけだよ。一方、売上連動の歩合家賃は負債に入れず、発生したときに費用にするんだ。
ハルカ
残価保証も、借手は保証額ではなく支払見込額でしたね。
先生
そうだよ。支払見込額を負債に入れて、見込みが変われば負債を見直すんだ。
💡 そうだったのか!
指数連動は「開始日の指数で入れて、実際に変わったら見直す」。売上連動は「入れずに発生時の費用」。同じ変動リース料でも扱いが分かれます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🏁 開始日の計上」→ プリセット「設例9-1型:機械装置(月末払い)」
  2. 「残価保証の支払見込額」を 0 → 5000 に変える

👀 リース負債(開始日)が 75,753 → 79,280 に増え、使用権資産も同じ額になります。

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📙 応用 ③ ラボの図
借手のリース料の総額 90,000リース負債(現在価値) 75,753利息 14,247割引率 年7%(月ごとに 0.583%)で割り引く同じリース料でも、割引率が高いほど負債は小さく、利息は大きくなる(シミュレーションで確認)
応用 ③

割引率の決め方 ── 追加借入利子率の見積り

📍 ラボの場所:応用タブ A4
ハルカ
割引率は、貸手の計算利子率を使うのが原則なんですよね。
先生
原則はそうだよ。ただ、借手が貸手の計算利子率を知ることはまれなんだ。だから実務では、ほとんどの契約で借手の追加借入利子率を見積ることになるんだよ。
迷いポイント 割引率は小さな違いだから、だいたいで決めてもいい?
ハルカ
7%でも5%でも、負債の大きさはあまり変わらないですよね。
先生
左の図は事例Aを年7%で割り引いたもので、90,000 のリース料が負債 75,753、利息 14,247 に分かれている。割引率が低いほど負債は大きく、利息は小さくなるから、影響は小さくないんだ。同じ期間・担保・金額で追加借入をしたらいくらか、という考え方で、根拠を残して決めることになるよ。
ハルカ
契約ごとに利率を出すのは大変そうです。
先生
特性が似たリースのグループに単一の割引率を使うことは、経過措置で明示的に認められているよ。実務では、期間帯ごとのレート表を作る例が多いんだ。
ハルカ
割引率が2%違うだけで、負債が3,700以上も動く…。私の体重計より敏感です。
先生
体重計と違って、根拠を書いておけば言い訳は要らないよ。
💡 そうだったのか!
割引率は負債の大きさを直接動かします。同じリース料でも、割引率が低いほど負債は大きくなります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🏁 開始日の計上」→ プリセット「設例9-1型:機械装置(月末払い)」
  2. 「割引率(年%・追加借入利子率など)」を 7 → 5 に変える

👀 リース負債(開始日)が 75,753 → 79,486、利息相当額の総額が 14,247 → 10,514 に変わります。

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📙 応用 ④ ラボの図
契約条件の変更(範囲や対価の変更で、当初の契約条件になかったもの)が起きたQ. 原資産の追加で範囲が拡大し、増額が独立価格に見合うか?はい独立したリースとして新規に計上(元のリースは触らない)いいえ変更後の条件でリース負債を再測定(設例は変更日の割引率)範囲の縮小(面積減・早期終了)資産も比例して減らし差額は損益に計上それ以外(期間延長・単価変更)負債の修正額を使用権資産に加減(通常は損益なし※)契約変更がなくても、延長オプションの見直し・指数の変動・残価保証の見込変更では負債を見直し、差額を使用権資産で調整する(※変更・見直しとも、資産をゼロまで減らしても余る負債の減額は損益)
🧾 X5年4月1日:リース料の変更(第45項(2)②)
損益は出ない
借方金額貸方金額
使用権資産12,579リース負債12,579
応用 ④

契約条件の変更 ── 4つの型で処理を決める

📍 ラボの場所:応用タブ B2
ハルカ
契約の途中で、面積を減らしたり賃料を変えたりすることがあります。どう処理するんですか。
先生
左のフローで型を決めるんだ。原資産の追加で範囲が広がり、増額が独立価格に見合えば独立したリースとして新しく計上する。そうでなければ、変更後の条件で負債を測り直すんだよ。
迷いポイント 契約変更なら、どんな内容でも差額は損益に出る?
ハルカ
条件が変わったんだから、差額はその期の損益ですよね。
先生
それが、そうではないのだよ。損益が出るのは、原則として範囲の縮小(面積減・早期終了)のときで、資産も比例して減らし、差額を損益にする。期間延長や単価の変更は、負債の修正額を使用権資産に加減するので、ふつうは損益は出ない。ただし、賃料の減額などで使用権資産をゼロまで減らしても負債の減額が余るときは、その余りだけが損益になるんだ。左下の仕訳は、面積の縮小と単価の改定が同時に起きた例の「単価の改定」の部分で、使用権資産とリース負債がどちらも 12,579 増えているよ。
ハルカ
私、全部「契約変更」という一つの箱に入れて、まとめて片づけるつもりでした。
先生
箱は4つ用意してあるよ。1つの変更に2つの要素があれば、要素ごとに順に入れるんだ。
💡 そうだったのか!
契約変更は「独立したリース/範囲の縮小/それ以外/複合」の4つに分けます。損益が出るのは原則として範囲の縮小で、延長や賃料改定は使用権資産で調整します(資産をゼロまで減らしても余る減額だけは損益)。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🔧 条件変更・見直し」→ プリセット「設例15-4型:期間延長」
  2. 「変更時点の割引率(年%)」を 7 → 5 に変える

👀 変更後のリース負債が 485,036 → 520,774、使用権資産が 438,138 → 473,876 に変わり、損益に計上する額は 0 のままです。

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📙 応用 ⑤ ラボの図
見直し前(設例16型・独自数値)使用権資産79,943リース負債85,782見直し後使用権資産157,669リース負債163,508再測定負債 +77,726 資産 +77,726
🧾 X4年3月31日(変更が生じた日)
損益なし。以後は使用権資産 157,669 を残り6年で償却
借方金額貸方金額
使用権資産77,726リース負債77,726
応用 ⑤

契約変更を伴わない見直し ── 期間・指数・残価保証・購入オプション

📍 ラボの場所:応用タブ B3
ハルカ
契約は何も変わっていないのに、負債を直すことがあるんですか。
先生
あるんだ。ただ、きっかけは項目ごとに違う。リース期間は延長・解約オプションの判断が変わったとき、指数・レートに連動するリース料は支払額が実際に変わったとき、残価保証は支払見込額が変わったときだよ。左の図は、延長しないと見ていた契約で、延長が合理的に確実になった例なんだ。
迷いポイント 市場の賃料が上がったら、それだけで期間を見直す?
ハルカ
周りの賃料が上がったら、今の物件に長くいる方が得なので、期間を見直すんですよね。
先生
市場環境の変化だけでは見直さないんだ。リース期間を見直すのは、大規模な改装の決定や事業の集約の決定のように、借手の統制下にあって、オプションの判断に影響する重要な事象が起きたときだよ。
ハルカ
見直したら、金額はどう動くんですか。
先生
この設例では、見直した日の割引率で、残りの期間と延長期間のリース料を割り引き直す(日本基準は再測定の割引率を状況別に一律には定めていない)。図では負債が 85,782 → 163,508、使用権資産も 79,943 → 157,669 と、どちらも 77,726 増える。損益は出なくて、以後は増えた使用権資産を残り6年で償却していくんだよ。
💡 そうだったのか!
リース期間の見直しのきっかけは「借手の統制下にある重要な事象」、指数は支払額が変わったとき、残価保証は見込額が変わったときです。修正額は使用権資産に加減し、資産をゼロまで減らしても余る減額だけが損益になります。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🔧 条件変更・見直し」→ プリセット「設例16型:延長オプションの見直し」
  2. 「延長期間の年額(オプションのとき)」を 33000 → 40000 に変える

👀 変更後のリース負債が 163,508 → 180,161、使用権資産が 157,669 → 174,322 に増えます。

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📙 応用 ⑥ ラボの図
現在価値基準:貸手のリース料の現在価値 ÷ 現金購入価額(計算利子率 7.987%)基準 90%100% ○経済的耐用年数基準:貸手のリース期間 ÷ 経済的耐用年数基準 75%62.5% ×判定:所有権移転外ファイナンス・リース(リース投資資産)
応用 ⑥

貸手の分類 ── 90%・75%と所有権移転の3類型

📍 ラボの場所:応用タブ C1
ハルカ
借手は区別がなくなりましたが、貸手はまだファイナンスとオペレーティングを分けるんですよね。
先生
そうだよ。左の図は、事例Aを貸手の側から見たものなんだ。現在価値基準(貸手のリース料の現在価値÷現金購入価額が概ね90%以上)か、経済的耐用年数基準(リース期間÷経済的耐用年数が概ね75%以上)の、どちらかを満たせばファイナンス・リースになるよ。
迷いポイント 2つの基準のうち、1つでも満たさなければオペレーティング・リース?
ハルカ
耐用年数基準は 5年÷8年で 62.5%なので、×ですね。だからオペレーティング・リースです。
先生
それが、そうではないのだよ。どちらか一方を満たせばファイナンス・リースなんだ。現在価値基準は、計算利子率 7.987%で割り引くと 100%になって、90%を超えている。だからファイナンス・リースだよ。ただ、90%・75%は「概ね」の目安で、最後は経済的実質で判断する。たとえば75%を満たしても、現在価値が90%を大きく下回ることが明らかなら、ファイナンス・リースにはならないんだ。
ハルカ
では、リース債権とリース投資資産は、どう分かれるんですか。
先生
所有権移転条項・割安購入選択権・特別仕様のどれかがあれば所有権移転でリース債権、なければ所有権移転外でリース投資資産なんだ。事例Aはどれもないので、リース投資資産になるよ。
💡 そうだったのか!
貸手の分類は「90%または75%」。1つ満たせばファイナンス・リースで、所有権移転の有無でリース債権かリース投資資産かが決まります。
📙 応用 ⑦ ラボの図
ヘッドリースの貸手(原資産の所有者)中間的な貸手借手として:使用権資産・リース負債貸手として:サブリースをFL/OLに分類サブリースの借手(第三者)ヘッドリースリース料サブリースリース料
🧾 サブリースの開始日(第89項(1))
使用権資産の消滅を認識し、差額は純額で計上
借方金額貸方金額
リース投資資産75,168使用権資産75,753
減価償却累計額15,151サブリース利益14,566
応用 ⑦

サブリースと転リース ── 中間的な貸手の処理

📍 ラボの場所:応用タブ C4
ハルカ
借りた機械を、別の会社にまた貸しすることになりました。何をすればいいですか。
先生
左の図の真ん中が自社、つまり中間的な貸手だよ。ヘッドリースは借手として使用権資産・リース負債のまま処理して、サブリースは貸手としてファイナンスかオペレーティングかを分類するんだ。
迷いポイント サブリースの分類は、機械そのもの(原資産)の耐用年数で判定する?
ハルカ
機械の耐用年数8年に対してサブリースは4年なので、50%でオペレーティングですよね。
先生
サブリースは、原資産ではなく使用権資産を基礎に分類するんだ。ヘッドリースの残りが4年で、サブリースも4年なら 100%で、75%を超えるからファイナンス・リースになるよ。ただ、現在価値基準の結果が90%を大きく下回ることが明らかな場合は、75%基準は使わないんだ。
ハルカ
ファイナンス・リースだと、仕訳はどうなるんですか。
先生
左下の仕訳のとおり、サブリースの開始日に使用権資産(取得原価 75,753、減価償却累計額 15,151、簿価 60,602)を消して、リース投資資産 75,168 を計上する。差額の 14,566 はサブリース利益として損益に出る。B/Sでは、使用権資産がリース投資資産に置き換わるんだよ。
ハルカ
借りたものを貸しただけで、いきなり 14,566 の利益…。ちょっと得した気分です。
先生
喜ぶのは、回収が終わってからにしようか。
💡 そうだったのか!
サブリースは使用権資産を基礎に分類します。ファイナンス・リースなら使用権資産を消してリース投資資産を計上し、差額を損益にします。ほぼ同一条件の転リースは、原資産を基礎に分類してファイナンス・リースに当たる場合に、受払の差額だけを損益にできます。
📙 応用 ⑧ ラボの図
適用初年度の期首:旧基準でオペレーティング・リースだった契約(新たに識別したリースも)原則:遡及適用リース開始日から新基準を適用していたとして過去の期間を修正再表示簡便法(第118項ただし書き・第123項)期首の残りのリース料を期首の追加借入利子率で割引→ 負債。資産は①開始日から適用した簿価 or ②負債と同額累積的影響額は期首の利益剰余金で調整。①を選ぶと(資産<負債になり)利益剰余金が減る。②なら差額なし
🧾 X2年4月1日(適用初年度の期首)
① 開始日から適用した簿価:差額 821 は期首の利益剰余金を減らす
借方金額貸方金額
使用権資産42,738リース負債43,559
利益剰余金821
② 負債と同額:利益剰余金への影響なし
借方金額貸方金額
使用権資産43,559リース負債43,559
応用 ⑧

適用初年度 ── 経過措置の選び方

📍 ラボの場所:応用タブ D4
ハルカ
適用初年度は、過去の決算を全部やり直すんですか。
先生
原則は遡及適用だけど、左の図の右側の簡便法が用意されているんだ。旧基準でオペレーティング・リースだった契約は、期首の残りのリース料を期首の追加借入利子率で割り引いて負債にして、累積的影響額は期首の利益剰余金で調整するんだよ。
迷いポイント 使用権資産は、負債と同じ額にするしかない?
ハルカ
資産は負債と同じ額にしておけば、それで終わりですよね。
先生
資産は2つから選べるんだ。①開始日から新基準を適用していたとした簿価か、②負債と同額か、をリース1件ごとに選ぶ。左下の仕訳では、負債 43,559 に対して、①なら資産 42,738 で、差額 821 だけ期首の利益剰余金が減る。②なら資産も 43,559 で、利益剰余金への影響はないよ。
ハルカ
①の方が、利益剰余金が減るんですね。
先生
そうだよ。その代わり、①は以後の償却費が小さくなる。期首の負債に使った追加借入利子率の加重平均などは、注記の対象になるんだ。
ハルカ
過去を全部やり直さずに、期首にまとめて片づける…。年末の大掃除を、大晦日に一気にやる作戦ですね。
先生
一気にやっても、押し入れの奥まで1件ずつ開けて確かめるのは忘れずにね。
💡 そうだったのか!
経過措置の簡便法では、負債は期首の利子率で割り引き、資産は「開始日からの簿価」か「負債と同額」を1件ごとに選べます。
⏱ 30秒だけラボで試す
  1. シミュレーションタブ →「🏁 開始日の計上」→ プリセット「設例20型:適用初年度の期首計上(残り4年)」
  2. 「割引率(年%・追加借入利子率など)」を 4 → 6 に変える

👀 「リース負債(開始日)」(ここでは適用初年度の期首)が 43,559 → 41,581 に減ります。期首の利子率の見積りが、そのまま負債の大きさに効きます。

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📙 応用 処理早見表
状況借手の処理オンバランス補足
短期リース
12か月以内・購入オプションなし
費用処理を選択可(原資産の表示科目ごと)×(選択時)注記:短期リース費用の発生額(区分表示している場合、リース期間1か月以下のもの、少額リースに係る費用の扱いに定めあり)
少額リース
(1)購入時費用処理の基準額以下/(2)①重要性が乏しく1件300万円以下 または ②新品時およそUS$5,000以下
費用処理を選択可((2)は①②のどちらかを選択)×(選択時)基準額は購入時費用処理の基準額+利息分まで
使用権資産総額の重要性
未経過リース料の割合10%未満
利息を控除しない/利息を定額配分 を選択可○負債=リース料総額(控除しない方法)
指数・レート連動の変動リース料開始日の指数で負債に含める。指数が変わって支払額が変わったら見直し○将来の指数を見積る例外選択あり
売上・使用量連動の変動リース料負債に含めない。発生時に費用×注記:発生額と科目
残価保証支払見込額を負債に含める(保証額ではない)○貸手は残価保証額を貸手のリース料に含める
購入オプション
行使が合理的に確実
行使価額を負債に含め、償却は経済的耐用年数・自己所有と同じ方法○所有権移転ファイナンス・リースに相当
敷金・保証金・建設協力金返還される部分は債権(建設協力金は現在価値)、返還されない部分と割引差額は使用権資産○敷金は取得原価が原則
無形固定資産のリース
ソフトウェアのリースなど
この基準を適用しないことができる(借手・貸手とも)△(選択)選ばなければ新基準で処理
借地権の権利金等使用権資産に含め、原則リース期間で償却(旧借地権・普通借地権は非償却を選択可)○会計方針の注記
原状回復義務(資産除去債務)除去費用を使用権資産の取得原価に加算○資産除去債務会計基準第7項
契約変更:原資産の追加で範囲拡大+独立価格相当の増額独立したリースとして新規計上○(追加分)元のリースは触らない
契約変更:範囲の縮小(面積減・期間短縮)負債を再測定、資産を比例して減額、差額は損益○変更前の割引率を使う例(設例15-2・15-3)
契約変更:期間延長・賃料改定など負債を再測定(設例は変更日の割引率)、修正額を使用権資産に加減○通常は損益なし(資産をゼロまで減らしても余る減額は損益)
変更を伴わない見直し
延長・解約オプションの判断が変わる/指数変動/残価保証の見込変更
負債を再測定、修正額を使用権資産に加減(資産ゼロで残額は損益)○きっかけは項目ごと(期間=統制下の重要な事象/指数・レート=支払額が実際に変わったとき/残価保証=見込額が変わったとき)
セール・アンド・リースバック売却に当たらない/ほとんどすべてが残る → 金融取引。それ以外は売却+リースバック○対価が時価と明らかに違うときは調整
サブリース(中間的な貸手)ヘッドリースは借手の処理。サブリースはFL/OLを判定(残存期間の75%など)○FLなら使用権資産を消しリース投資資産へ
転リース
原資産を基礎に分類してFLに該当する場合
リース投資資産とリース負債の両建て、差額は手数料収入(転リース差益)○利息控除前で計上も可
適用初年度(旧オペレーティング・リース)期首の残りのリース料を期首の追加借入利子率で割引。資産は①開始日から適用した簿価 or ②負債と同額○累積的影響額は期首利益剰余金
おさらい

応用タブの処理早見表 ── 今日の8つを1枚で

📍 ラボの場所:応用タブ 冒頭
ハルカ
最後に、応用タブの一番上にある早見表を見ておきたいです。
先生
左の表だよ。行が「状況」、列が「オンバランスになるか」なんだ。今日読んだ8つの論点が、どの行に当たるかを確かめながら見るといいよ。
ハルカ
「選択可」と書いてある行が、けっこう多いですね。
先生
そこが応用の大事なところだよ。短期リースや少額リースは会計方針として選ぶもので、選ぶ単位は、短期リースなら原資産の表示科目ごと、少額リースなら(2)の①か②のどちらか(②は1件ごと)と項目ごとに違う。選んだら首尾一貫して使い、注記もするんだ。
ハルカ
最初にこの表を見ていたら、「選択可」の多さに圧倒されて帰っていたと思います。
先生
中身を知ったあとなら、1行ずつ意味が分かるはずだよ。迷ったら、この表から該当する節に戻ればいいんだ。
💡 そうだったのか!
早見表は「自分の契約がどの行か」を探す地図。詳しい考え方は、それぞれの節(A〜D)に戻って確かめます。

今日の内容を、ラボで確かめてみませんか?

この記事の図は、すべてリース会計ラボの画面そのものです。応用タブを開けば、同じ図を見ながら読み返せます。

リース会計ラボを開く ▶

今日のまとめ ── 迷いポイント早見表

迷いポイント答えラボ
自動更新の契約は契約書の期間を使う?使わない。解約不能期間+合理的に確実な延長期間を経済的インセンティブで決める応用A2
指数が上がりそうなら先に負債を大きくする?しない。開始日の指数で入れ、支払額が実際に変わったら見直す応用A3
割引率はだいたいでいい?負債の大きさを直接動かす。追加借入利子率を根拠つきで見積る応用A4
契約変更なら差額は損益?損益は原則、範囲の縮小のとき。延長・賃料改定は使用権資産で調整(資産ゼロを超える減額は損益)応用B2
市場の賃料が上がったら期間を見直す?見直さない。期間は借手の統制下にある重要な事象が起きたとき(指数・残価保証は別のきっかけ)応用B3
貸手は2つの基準を両方満たす必要がある?どちらか一方でファイナンス・リース(数値は概ねの目安。最後は経済的実質)応用C1
サブリースは原資産の耐用年数で判定?使用権資産(ヘッドリースの残存期間)を基礎に判定応用C4
経過措置で資産は負債と同額しかない?「開始日からの簿価」か「負債と同額」を1件ごとに選べる応用D4
おわりに

今日のふりかえり

先生
今日のまとめだよ。リース期間は経済的インセンティブで決め、割引率は根拠を残して見積もる。契約変更で損益が出るのは原則範囲の縮小のときで、貸手は90%か75%のどちらかを目安に、経済的実質で分類する。適用初年度は、資産の測り方の選び方で利益剰余金が変わるんだ。
ハルカ
応用は、覚えることより「選ぶこと」が多いんですね。私、パン屋さんでも毎回15分迷うので、会計方針も迷いそうです。
先生
迷うのは悪くないよ。迷った理由を書き残しておけば、それがそのまま会計方針の根拠になるんだ。
ハルカ
じゃあ、今朝クロワッサンとメロンパンで迷った理由も、ちゃんとメモしておきます。
先生
その記録は監査の対象外だから、安心していいよ。次からは設例編で、ラボの設例を1つずつ一緒に見ていこうか。

参考資料

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(同・設例)(いずれも企業会計基準委員会)。ラボの事例の数値は、適用指針の設例と同じパターンを独自の数値で組み立てたものです。
サイト内の関連:新リース基準(第34号)まとめ/「リースの識別」実務ガイド/リース管理台帳・仕訳ジェネレーターβ/会計方針書ジェネレーターβ
設例の会話解説:識別編/リース期間編/基本の計算編/特殊なリース料編/契約変更・見直し編/サブリース・経過措置編

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この記事を書いた人

TaxJudge編集部|公認会計士・税理士(実務25年)による企画・監修。会計基準・税法・裁決・有価証券報告書などの一次情報をもとに、検索できるデータベースと計算・判定・文書作成ツールを制作しています。