ANYCOLOR株式会社(証券コード5032)は、バーチャルライバーグループ「にじさんじ」等を運営する企業で、2022年6月8日に東証グロース市場へ上場しました。同社の有価証券届出書では、上場前に3回の株式分割(100倍・100倍・15倍)で株式数を大きく調整し、創業者が筆頭株主を維持しつつ、海外ファンド・海外法人・国内事業法人が株主に参画しています。
公募はわずかで、海外販売を含む売出し中心の上場でした。
本記事はIPO準備会社のCFO・管理部門と、支援する会計税務専門家向けの実例研究です。誰がいくら得をしたかではなく、成長スタートアップが上場に向けて資本構成をどう整え、開示したかを、有価証券届出書の記載に基づいて整理します。
同社の株主構成・価格情報は、当サイトのIPO資本政策データベースの個社カルテでも確認できます。
📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較 →この記事でわかるのは、
- 3回の株式分割による株式数調整
- 創業者保有と海外ファンド・海外法人・国内事業法人の株主構成
- 公募わずか・売出し中心の構成
の3点です。
IPOサマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上場日/市場 | 2022年6月8日/東証グロース |
| 公開価格(仮条件) | 1,530円(仮条件1,490〜1,530円、当初想定1,490円) |
| 初値 | 4,810円 |
| 公開価格ベース時価総額 | 約459億円(=1,530円×上場時発行済29,993,435株。上場前29,943,435株+公募50,000株) |
| 公募・売出し | 公募50,000株/売出し1,515,500株(国内1,354,300+海外161,200)/オーバーアロットメント234,800株 |
| 主幹事 | 大和証券 |
| 監査法人 | 太陽有限責任監査法人 |
| 株価算定方式 | DCF法(第三者評価機関による算定を含む) |
初値は表中の事実として記載しています(本文では論評しません)。
この会社の資本政策 3つの注目点
- 3回の株式分割で株式数を大きく調整(2018年4月100倍・2019年8月100倍・2022年1月15倍)。
結果として上場時までに株式数を大きく増加させています。特に2022年1月の15分割は上場直前ですが、各分割の具体的な目的までは届出書の数値だけからは判定できません。 - 創業者が筆頭株主を維持しつつ、海外ファンド・海外法人・国内事業法人が参画。
届出書記載時点でオーナー個人が筆頭(43.11%)、VC・投資ファンドが25.38%で、海外ファンドや事業法人(ソニー・ミュージックエンタテインメント等)も株主に含まれます。 - 公募わずか・売出し中心の上場。
公募は50,000株にとどまり、売出し1,515,500株(うち海外販売161,200株)が中心です。
1株当たり価格指標の推移──株式移動価格・SO行使価額・公開価格
| 時期 | 主なイベント | 1株当たり価格指標(分割調整後) |
|---|---|---|
| 2018〜2019年 | 株式分割(100倍・100倍) | — |
| 2019〜2021年 | SO行使価額・株式移動・第三者割当 | 27〜410円 |
| 2022年1月 | 株式分割(15倍) | — |
| 2022年6月 | 公開価格(初値4,810円) | 1,530円 |
上場前のSO行使価額・株式移動・第三者割当(分割調整後)は27〜410円で、後期ほど高い傾向が確認できます。公開価格は1,530円です。3回の株式分割により、上場時までに株式数を大きく増加させています。ただし、各価格は取引条件や株式の種類等が異なるため、価格差を企業価値の上昇だけに帰属させることはできません。
※各価格は株式の種類、取引条件、評価目的、付与対象、時点等が異なるため、単純に同一条件の株価推移を示すものではありません。本表では株式分割調整後の価格指標を代表的な時期について整理しています。
売出し前の株主構成(届出書記載時点)
届出書記載時点(売出し前)の筆頭株主は、創業者である役員・大株主個人A(43.11%)で、次いで海外ファンドのLC FUND VIII, L.P.(10.29%)、HODE HK Limited(7.34%)、Skyland Venturesの投資事業有限責任組合(6.91%)、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(5.14%)と続きます。
VC・投資ファンドの合計は25.38%で、創業者が筆頭を維持しつつ、海外ファンド・海外法人・国内事業法人が資本に参画した構成です。個人株主は匿名化しています(ファンド等の法人・組合名は実名)。売出しにより、これらの株主の持分は上場時に変動します。
公募・売出しの構成──公募わずか・海外販売を含む売出し中心
公開にあたっては、公募(募集)50,000株、引受人の買取引受による売出し1,515,500株、オーバーアロットメントによる売出し234,800株が実施されました。売出し1,515,500株のうち161,200株が海外で販売され(国内販売は1,354,300株)、残りは国内販売です(訂正届出書 S100O5TM の記載に基づく確認事実)。公募がごくわずかで、既存株主の保有株式の売出しが中心という構成です。
※データベース側のoffering.saleShares(1,354,300株)は国内販売分のみを取得しているため、本記事では海外分を含む売出総数(1,515,500株)を届出書原典から採用しています。
収録387社との比較(2026年7月時点)
| 指標 | ANYCOLOR | 収録387社の中央値等 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 株式分割の回数 | 3回 | 多くの会社は1回以下 | 収録387社で最多級 |
| VC・投資ファンド比率 | 25.38% | 中央値4.8% | 上位 |
| オーナー個人比率 | 43.11% | — | 創業者が筆頭を維持 |
| 潜在株式比率(SO等) | 8.0% | 中央値7.9% | ほぼ中央値並み |
※順位・中央値は、特記のない限り収録387社全体を対象とし、属性が確認されない会社は0%として含めています。基準日2026年7月。
3回の株式分割による株式数調整と、創業者保有+海外ファンド・海外法人・国内事業法人という株主構成の組み合わせが特徴です。各軸での位置づけはIPO資本政策データベースで確認できます。
📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較 →会計税務の視点
専門家が押さえる論点を、事実・一般論・限界の順に整理します(個別の判断は税理士・公認会計士への相談が必要です)。
まず事実として、上場前に3回の株式分割を行い、海外ファンド・海外法人・国内事業法人が株主に含まれ、算定にDCF法と第三者評価機関の評価が用いられています。
一般に、株式分割自体は1株当たりの権利内容を比例的に調整するもので、それ自体で課税関係が生じるものではありません。海外ファンドが株主・売出人に含まれる場合には、ファンドや投資家の所在地・法的性質、恒久的施設の有無、株式の保有・譲渡割合、国内源泉所得該当性、租税条約などが論点になります。ただし、届出書の記載だけでは各当事者の課税関係の結論までは判断できません。
まとめ
ANYCOLORの資本政策は、上場前に3回の株式分割で株式数を大きく調整し、創業者が筆頭株主を維持しつつ海外ファンド・海外法人・国内事業法人が参画する構成のもとで、公募はわずかにとどめ、海外販売を含む売出し中心で上場した、という点に特徴があります。
成長スタートアップの上場直前の株式数調整と、創業者保有・外部資本のバランスを検討する場面で、開示のされ方の参照点になる実例です。
資本政策の型を横断的に俯瞰するにはIPO資本政策の実例387社を全量分析を、VC・事業法人の保有実態は387社のVC・事業法人の記事を、あわせてご覧ください。
特定銘柄の投資勧誘・個別の税務助言ではありません。個別の税務・会計判断は税理士または公認会計士にご相談ください。
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