大栄環境株式会社(証券コード9336)は、廃棄物処理・リサイクルを手がける環境関連企業で、2022年12月14日に東証プライム市場へ上場しました。同社の有価証券届出書では、届出書記載時点(売出し前)でオーナーの資産管理会社が発行済株式の98.3%を保有しており、収録387社の中で資産管理会社比率が最も高い水準(上位0.3%)です。
売出しは、この資産管理会社を中心とした保有株式の流動化で、引受人買取分では海外売出しが国内売出しを上回るルール144Aの大型グローバルオファリングとして実施されました。
本記事はIPO準備会社のCFO・管理部門と、支援する会計税務専門家向けの実例研究です。誰がいくら得をしたかではなく、資産管理会社を軸とした株主構成と大型オファリングがどう開示されているかを、有価証券届出書の記載に基づいて整理します。同社の株主構成・価格情報は、当サイトのIPO資本政策データベースの個社カルテでも確認できます。
📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較 →この記事でわかるのは、
- 資産管理会社が98.3%を保有する構成
- 複数の方式(時価純資産・DCF・簿価純資産)を使い分けた算定
- 海外売出し比率の高い大型グローバルオファリング
の3点です。
IPOサマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上場日/市場 | 2022年12月14日/東証プライム |
| 公開価格 | 1,350円 |
| 初値 | 1,710円 |
| 公開価格ベース時価総額 | 約1,284億円(=1,350円×上場時発行済95,077,900株。上場前91,577,900株+公募3,500,000株) |
| 公募・売出し | 公募3,500,000株(国内1,750,000+海外1,750,000)/売出し28,600,000株(国内11,892,500+海外16,707,500)/オーバーアロットメント4,815,000株 |
| 主幹事 | SMBC日興証券 |
| 監査法人 | 仰星監査法人 |
| 株価算定方式 | 時価純資産方式+DCF法の総合勘案(株式(1)(3))/簿価純資産方式(株式(2)(4)) |
初値は表中の事実として記載しています(本文では論評しません)。
この会社の資本政策 3つの注目点
- 資産管理会社が98.3%を保有
届出書記載時点の筆頭株主はオーナーの資産管理会社(ウイングトワ株式会社)で、収録387社の中で資産管理会社比率が最も高い水準(上位0.3%)です。 - 売出しは資産管理会社を中心とする流動化
公募3,500,000株に対し、売出しは28,600,000株と売出し中心の構成で、株数構成では発行会社による資金調達よりも既存株主の保有株式の流動化の比重が大きい設計です。 - 海外売出し比率の高い大型グローバルオファリング
引受人買取分では海外売出16,707,500株が国内売出11,892,500株を上回り、米国の適格機関投資家向け(ルール144A)を含む形で実施されました(OA4,815,000株を国内側に全数含めると、国内・海外はともに18,457,500株で同数)。
1株当たり価格指標の推移──株式移動価格・第三者割当価格・公開価格
| 時期 | 主なイベント | 1株当たり価格指標(分割調整後) |
|---|---|---|
| 2020年4月 | 株式移動 | 約360円 |
| 2020年10月 | 株式分割(1株→500株) | — |
| 2021年3月 | 第三者割当 | 570〜640円 |
| 2022年3月 | 第三者割当 | 580〜690円 |
| 2022年12月 | 公開価格(初値1,710円) | 1,350円 |
上場前の株式移動・第三者割当の価格(分割調整後)は360〜690円で、公開価格1,350円へと段階的に切り上がっています。2020年10月に1株を500株とする株式分割を行い、上場に適した株式数へ調整しています。
算定方式は株式の種類・回号により使い分けられており、届出書では、株式(1)・(3)の発行価格は時価純資産方式およびDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式による価格を総合的に勘案し、株式(2)・(4)の発行価格は簿価純資産方式による価格を勘案して決定した旨が記載されています。
純資産方式に加えてDCF方式も用いられていますが、各方式を選択した具体的理由までは、届出書の記載だけからは特定できません。
※各価格は株式の種類、取引条件、評価目的、時点等が異なるため、単純に同一条件の株価推移を示すものではありません。本表では株式分割調整後の価格指標を代表的な時期について整理しています。
売出し前の株主構成(届出書記載時点)
届出書記載時点(売出し前)の筆頭株主は、オーナーの資産管理会社であるウイングトワ株式会社で、発行済株式の98.28%を保有します。次いで大栄環境従業員持株会(1.30%)、役員・大株主個人(各0.05%前後)と続きます。
オーナー個人が直接保有するのではなく、資産管理会社を通じて集中的に保有する構成で、収録387社の中でも突出した水準です。なお、ウイングトワ株式会社がどのような目的で設立・利用されたかは、本記事で参照した届出書の数値だけからは判定できません。
個人株主は属性表記に匿名化しています(法人名は実名)。売出しにより、資産管理会社の持分は上場時に低下します。
公募・売出しの構成──海外売出し比率の高い大型グローバルオファリング
公開にあたっては、公募(募集)3,500,000株(国内募集1,750,000株+海外募集1,750,000株)、引受人の買取引受による売出し28,600,000株(国内売出11,892,500株+海外売出16,707,500株)、オーバーアロットメントによる売出し4,815,000株が実施されました。
海外市場は米国(1933年米国証券法に基づくルール144Aによる適格機関投資家向け)、欧州およびアジアを中心とし、引受人買取分では海外売出しが国内売出しを上回る構成です(訂正届出書 S100PQZS の記載に基づく確認事実。OA4,815,000株を国内側に加えると、国内・海外はともに18,457,500株となります)。
オファリングの株数構成では、発行会社による資金調達よりも、既存株主の保有株式の流動化の比重が大きい設計です。
※データベース側のoffering.saleShares(11,892,500株)は国内売出分のみを取得しているため、本記事では海外分を含む売出総数(28,600,000株)を届出書原典から採用しています。
収録387社との比較(2026年7月時点)
| 指標 | 大栄環境 | 収録387社の中央値等 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 資産管理会社比率 | 98.28% | 保有確認は38.0%(147社)/確認された場合の保有比率は中央値約37% | 387社中で最上位級(上位約0.3%) |
| 公開価格ベース時価総額 | 約1,284億円 | 中央値約63億円 | 収録387社で超大型 |
| VC・投資ファンド比率 | 0% | 中央値4.8% | 外部ファンドの受け入れなし |
| 潜在株式比率(SO等) | 0% | 中央値7.9% | SOの記載なし |
※順位・中央値は、特記のない限り収録387社全体を対象とし、属性が確認されない会社は0%として含めています。基準日2026年7月。
資産管理会社に保有を集中させた株主構成と、超大型のグローバルオファリングの組み合わせが特徴です。
各軸での位置づけはIPO資本政策データベースで確認できます。
📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較 →会計税務の視点
専門家が押さえる論点を、事実・一般論・限界の順に整理します(個別の判断は税理士・公認会計士への相談が必要です)。
まず事実として、オーナーの資産管理会社が98.3%を保有し、上場時の売出しはこの資産管理会社を中心とする流動化です。また算定には、時価純資産方式・DCF方式・簿価純資産方式が、株式の種類・回号により使い分けられています。
一般に、資産管理会社を通じた保有は、資産の集約や事業承継の観点から用いられ、資産管理会社が保有株式を売り出す場合は法人段階での課税が論点になります。
株価算定方式の選択は税務上の時価概念(財産評価基本通達等)とも関わり得ますが、本件で各方式が選択された理由や税務との関係は個別に確認が必要です。ただし、届出書の記載だけでは各取引の課税関係の結論までは判断できません。資産管理会社の使われ方の全体傾向は、387社の資産管理会社の記事を参照してください。
まとめ
大栄環境の資本政策は、オーナーの資産管理会社に保有を集中させたまま、公募を伴いつつも売出し中心で、海外売出し比率の高い大型グローバルオファリングによって東証プライムへ上場した、という点に特徴があります。資産管理会社を軸とする資本政策や、大型・海外を含むオファリングを検討する会社にとって、開示のされ方の参照点になる実例です。
資本政策の型を横断的に俯瞰するにはIPO資本政策の実例387社を全量分析を、資産管理会社の論点はオーナーの資産管理会社の記事を、あわせてご覧ください。
特定銘柄の投資勧誘・個別の税務助言ではありません。個別の税務・会計判断は税理士または公認会計士にご相談ください。
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