【IPO資本政策研究】dely(299A、現・クラシル)|LINEヤフー連結子会社・公募ゼロの上場

2024年の上場時のdely株式会社(証券コード299A、現・クラシル株式会社)は、レシピ動画「クラシル」等を運営する企業で、2024年12月19日に東証グロース市場へ上場しました。同社はLINEヤフー株式会社が議決権の過半を持つ連結子会社で、上場は公募を伴わず、国内・海外の売出し中心で実施されました。親会社が過半を保有したまま上場する「子会社上場」の実例です。

※本記事は2024年の上場時点の資本政策を扱います。上場時の商号はdely株式会社で、会社の公表情報によれば2025年10月1日付でクラシル株式会社へ商号変更しています。

本記事はIPO準備会社のCFO・管理部門と、支援する会計税務専門家向けの実例研究です。誰がいくら得をしたかではなく、親会社を持つ会社が上場に向けて資本構成をどう開示したかを、有価証券届出書の記載に基づいて整理します。

同社の株主構成・価格情報は、当サイトのIPO資本政策データベースの個社カルテでも確認できます。

📈 IPO資本政策データベースβ 新規上場企業の届出書「第四部 株式公開情報」を構造化。資本政策・株式異動・新株予約権・大株主・初値を横断比較

この記事でわかるのは、

  • LINEヤフーグループが過半を保有する連結子会社としての上場
  • 公募を伴わない売出し中心の構成
  • 類似会社比準方式による算定

の3点です。

目次

IPOサマリー

項目内容
上場日/市場2024年12月19日/東証グロース
公開価格(仮条件)1,200円(仮条件1,170〜1,200円)
初値1,001円
公開価格ベース時価総額約496億円(=1,200円×発行済41,313,000株。公募を伴わないため発行済は不変)
公募・売出し公募なし/売出し12,625,800株(国内10,097,800+海外2,528,000)/オーバーアロットメント1,893,800株
主幹事三菱UFJモルガン・スタンレー証券・モルガン・スタンレーMUFG証券・大和証券・みずほ証券(共同主幹事)
監査法人有限責任監査法人トーマツ
株価算定方式類似会社比準方式

初値は表中の事実として記載しています(本文では論評しません)。

この会社の資本政策 3つの注目点

  1. LINEヤフーの連結子会社としての上場
    届出書には、LINEヤフー株式会社が議決権の過半(提出日現在50.1%)を所有し、上場後も連結関係を維持する旨が記載されています。LINEヤフー直接分(31.25%)に加え、その完全子会社が運営するYJ2号投資事業組合(14.58%)等もグループに属します。
  2. 公募を伴わない売出し中心の上場
    新株発行(公募)がなく、上場によって発行会社に入る資金はありません。創業者・VC・事業法人等による既存株式の売出しで上場しました。
  3. 親会社は売出人ではなく指定販売先として取得
    LINEヤフーは売出しに出す側ではなく、指定販売先(親引け)として2,557,800株を取得し、グループの保有比率を維持・上昇させる設計でした。

1株当たり価格指標の推移──株式移動価格・SO行使価額・公開価格

時期主なイベント1株当たり価格指標(分割調整後)
2016〜2024年SO行使価額(14回号)31〜350円
2022〜2024年第三者割当(新株予約権)150〜350円
2024年2月株式移動(ファンド間)1,000円
2024年10月株式分割(1株→10株)
2024年12月公開価格(初値1,001円)1,200円

上場前の第三者割当価格(分割調整後)は150〜350円、SO行使価額は31〜350円で、いずれも公開価格1,200円を下回る水準にありました。

2024年2月のファンド間の株式移動は1株1,000円(分割調整後)です。2024年10月に1株を10株とする株式分割を行い、上場に適した株式数へ調整しています。各価格は取引条件や株式の種類等が異なり、価格の水準は複数の要因を踏まえて形成されたものです。

※各価格は株式の種類、取引条件、評価目的、付与対象、時点等が異なるため、単純に同一条件の株価推移を示すものではありません。本表では株式分割調整後の価格指標を代表的な時期について整理しています。

売出し前の株主構成(届出書記載時点)

届出書記載時点(売出し前)の筆頭株主は、親会社のLINEヤフー株式会社(直接分31.25%)です。次いで創業者である役員・大株主個人(23.55%)、YJ2号投資事業組合(14.58%)、ジャフコSV5の共有投資事業有限責任組合(13.56%)などが続きます。

YJ2号投資事業組合はLINEヤフーの完全子会社が運営するファンドで、LINEヤフー直接分と合わせるとグループの議決権は届出書提出日現在で50.1%と過半に達し、同社の連結子会社です。

会社の公表情報によれば、グループ保有比率は上場前50.08%から、指定販売先としての取得を経て上場後は56.27%となる設計です。売出しにより、これらの株主の持分は上場時に変動します。

公募・売出しの構成──公募ゼロ/親会社は指定販売先として取得

公開にあたっては、公募(募集)は行われず、引受人の買取引受による売出し12,625,800株(国内販売10,097,800株+海外販売2,528,000株)と、オーバーアロットメントによる売出し1,893,800株が実施されました(訂正届出書の記載に基づく確認事実)。

売出人は創業者・VC・投資ファンド・事業法人等で、親会社LINEヤフーは売出人ではなく、指定販売先(親引け)として2,557,800株を取得しています。公募がないため上場による資金は発行会社には入らず、既存株主の保有株式の流動化を、親会社による取得と組み合わせた構成です。

共同主幹事は三菱UFJモルガン・スタンレー証券・モルガン・スタンレーMUFG証券・大和証券・みずほ証券の4社です。

※データベース側のoffering.saleShares(12,625,800株)は海外販売分を含む売出総数です。国内・海外の内訳は届出書原典から採用しています。

収録387社との比較(2026年7月時点)

指標dely収録387社の中央値等位置づけ
LINEヤフー直接保有比率31.25%親会社が筆頭
LINEヤフーグループ保有比率上場前50.08%→上場後56.27%連結子会社として維持
公募株数0株公募を伴わない売出しのみ
VC・投資ファンド比率33.9%※中央値4.8%上位

※属性分類上はYJ2号投資事業組合をファンドに分類していますが、経済的なグループ関係ではLINEヤフーグループに含まれます。順位・中央値は収録387社全体(属性が確認されない会社は0%として算入)・基準日2026年7月。

親会社が議決権の過半を保有したまま上場する子会社上場という点が最大の特徴です。各軸での位置づけはIPO資本政策データベースで確認できます。

会計税務の視点

専門家が押さえる論点を、事実・一般論・限界の順に整理します(個別の判断は税理士・公認会計士への相談が必要です)。

まず事実として、LINEヤフーが議決権の過半を所有する連結子会社で、上場後も連結関係を維持する旨が届出書に記載されています。上場は公募を伴わない売出し中心で、親会社は指定販売先として株式を取得しています。

一般に、連結子会社の上場(子会社上場)では、上場に伴う親会社の持分比率の変動が持分変動に関する会計処理の論点になり得ますが、本件は親会社の保有比率がむしろ維持・上昇し、連結子会社として維持された事例です。

また、売出人に海外ファンド等が含まれる場合には、所在地・法的性質・恒久的施設・国内源泉所得該当性・租税条約等を個別に確認する必要があります。ただし、届出書の記載だけでは各当事者の課税関係の結論までは判断できません。

まとめ

delyの資本政策は、LINEヤフーグループが議決権の過半を保有する連結子会社として、公募を伴わず、国内・海外の売出し中心で上場した(親会社は売出人ではなく指定販売先として取得)、という点に特徴があります。

親会社が過半を維持したまま上場する子会社上場や、公募を伴わない売出し中心のオファリングを検討する場面で、開示のされ方の参照点になる実例です。

資本政策の型を横断的に俯瞰するにはIPO資本政策の実例387社を全量分析を、公募ゼロ・売出型の対照例としてノバレーゼの事例を、あわせてご覧ください。

特定銘柄の投資勧誘・個別の税務助言ではありません。個別の税務・会計判断は税理士または公認会計士にご相談ください。

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